建設業の見積書をAIで作成する方法|積算2時間→大幅短縮の実践手順
「見積書を1件作るのに2時間もかかる」「単価表を探すだけで午前中が終わる」「わかる人に聞きたいのに、その人が現場に出ていて捕まらない」——建設業の積算現場では、こうした声が日常的に上がっています。
人手不足が深刻化する建設業界で、見積書作成の負担は年々重くなる一方です。しかし、生成AIを「正しい方法」で活用すれば、積算業務の時間を大幅に削減しながら、見積もりの精度も保つことができます。
本記事では、実際に建築リフォーム会社の積算業務をAIで効率化した経験をもとに、NotebookLMと自社データを組み合わせた見積書作成の具体的な手順を解説します。「AIが勝手に金額を決めるのでは?」という不安にも、現場の実態からお答えします。
目次
- 建設業の見積書作成が「2時間」かかる本当の理由
- └ 紙ファイルを探し、人に聞く——積算業務の実態
- └ ベテラン依存が生む「作業ストップ」の悪循環
- 見積書AI化とは——自社データ×AIで積算精度を保つ仕組み
- └ NotebookLMを使った「自社データ検索」の全体像
- └ なぜハルシネーションが起きないのか
- 建設業の見積書をAIで作成する3ステップ実践手順
- └ Step1:物件データをGoogleドキュメントに集約する
- └ Step2:NotebookLMに読み込ませて検索可能にする
- └ Step3:過去実績と紐付けて見積もり作成、最終確認は人が行う
- AI見積書が「進まない」3つのボトルネックと突破法
- 「AIが勝手に金額を決める」は誤解——よくある質問
- まとめ
建設業の見積書作成が「2時間」かかる本当の理由
【結論】建設業の見積書作成に時間がかかる最大の原因は、AIツールの不足ではなく「過去データの検索性の低さ」と「特定の人への知識集中」にある。
建設業の見積書作成が遅い原因は、計算そのものが複雑だからではありません。実際に建築リフォーム会社の積算業務を要素分解してみると、時間を奪っているのは「情報を探す作業」と「人に聞く作業」でした。
紙ファイルを探し、人に聞く——積算業務の実態
私が支援した建築リフォーム会社では、新しい見積書を作る際に「過去に作成した類似案件の見積もり」をベースにしていました。これ自体は合理的な方法です。しかし問題は、その過去の見積書がどこにあるかわからないことでした。
担当者は紙のファイルを棚から引っ張り出し、該当する案件を探します。見つからなければ、過去にその案件を担当した人に聞きに行く。しかし相手が現場に出ていれば、そこで作業がストップします。聞く側も聞かれる側も時間を奪われ、1件の見積書に最大2時間かかるケースもありました。
さらに、過去見積書が見つかった後も、最新の部材単価表と突合する作業が待っています。単価表のどこに該当する部材があるかを探す——この「探す」作業の連続が、積算業務の時間を膨らませていたのです。
ベテラン依存が生む「作業ストップ」の悪循環
建設業界では深刻な人手不足が続いています。国土交通省の統計でも建設業の就業者数は減少傾向にあり、高齢化も進んでいます。この状況で、積算業務がベテラン社員の記憶と経験に依存していると、その人が不在のときに業務が回らなくなります。
「あの案件の見積もり、どこにあるか知ってる?」「この部材の単価、前回いくらで出した?」——こうした質問がベテランに集中し、本来の業務まで圧迫してしまう。これは属人化(とくていのひとにしかできない状態)の典型的なパターンです。
見積書AI化とは——自社データ×AIで積算精度を保つ仕組み
【結論】見積書AI化とは、自社の過去実績データをAIに読み込ませ、必要な情報を即座に検索・提示させる仕組みのこと。AIが「創作」するのではなく、自社データから「引き出す」点が最大の特徴。
「見積書をAIで作る」と聞くと、ChatGPTのようなツールに「この工事の見積もりを作って」と指示するイメージを持つかもしれません。しかし、それでは正確な金額は出せません。生成AI(人間の指示に応じて文章や画像を生成するAI)は、学習データに基づいて回答を生成するため、自社固有の単価や過去実績の数字を正確に反映することはできないからです。
本記事で解説する方法は、それとはまったく異なります。自社が保有する過去の見積書、実績金額、部材単価表などのデータをGoogleドキュメントに整理し、Google NotebookLMに読み込ませる。これにより、AIが自社データの中から必要な情報を検索・提示してくれる仕組みです。
NotebookLMを使った「自社データ検索」の全体像
Google NotebookLMは、Googleが提供するAIツールで、ユーザーがアップロードした資料だけを情報源として回答を生成します。一般的なChatGPTやGeminiがインターネット上の膨大なデータから回答を作るのに対し、NotebookLMは「あなたが入れたデータだけ」を参照します。
この仕組みはRAG(Retrieval-Augmented Generation/検索拡張生成)と呼ばれる技術に基づいています。簡単に言えば「自社の資料棚をデジタル化して、AIに検索係をやらせる」イメージです。
このようなAI活用の設計・導入支援について詳しく知りたい方は生成AI顧問サービスとは?導入メリットと活用法を解説 →
なぜハルシネーションが起きないのか
生成AIの最大のリスクは、ハルシネーション(もっともらしい嘘)です。ChatGPTに「リフォーム工事の見積もりを出して」と聞けば、それらしい金額を返しますが、その数字に根拠はありません。
しかし、NotebookLMは自社がアップロードしたデータだけを参照して回答します。つまり、過去に自社が実際に作成した見積書や、実際にかかった金額が回答のソースになります。データさえ正確に整備すれば、AIが「嘘の金額」を生成するリスクは極めて低くなります。
「生成AIで見積書を作る」と聞くと身構える方が多いですが、これはAIに金額を”考えさせる”のではなく、自社の過去実績から”引き出させる”仕組みです。使うデータが正しければ、出てくる数字も正しい。ここを理解すれば、AI見積書への不安は大きく減ります。
— 生成AI顧問の現場から
ポイント
NotebookLMは回答の根拠(どの資料のどの部分から情報を取得したか)を表示する機能があります。提示された金額の出典をその場で確認できるため、「なぜこの数字なのか」を担当者自身が検証できます。
建設業の見積書をAIで作成する3ステップ実践手順
【結論】手順は「物件データの集約→NotebookLMへの読み込み→過去実績との紐付け+人による最終確認」の3ステップ。データ整備が最重要工程となる。
ここからは、実際に建築リフォーム会社で実施した手順を解説します。特別なプログラミング知識は不要です。Googleアカウントがあれば、すぐに始められます。
物件データをGoogleドキュメントに集約
写真・過去見積書・実績金額・単価表を1物件1ファイルにまとめる
NotebookLMに読み込ませる
Googleドキュメントをソースとして追加し、AIが検索できる状態にする
過去実績と紐付けて見積もり作成+人が最終確認
AIが提示した情報をもとに見積書を作成し、必ず担当者が金額を確認する
Step1:物件データをGoogleドキュメントに集約する
最初のステップが最も重要です。紙やバラバラのファイルに散在しているデータを、1つの物件につき1つのGoogleドキュメントにまとめます。実際に集約したのは以下の4種類の情報です。
紙の資料はスキャンしてPDF化し、その内容をGoogleドキュメントにテキストとして転記します。手間はかかりますが、このデータ整備の質がAI活用の精度を決定します。「ゴミを入れればゴミが出る」——データの品質がそのまま見積もりの品質に直結するのです。
Step2:NotebookLMに読み込ませて検索可能にする
Googleドキュメントに整理したデータを、NotebookLMの「ソース」として追加します。操作は非常にシンプルで、NotebookLMの画面からGoogleドキュメントを選択するだけです。
読み込みが完了すると、AIに対して「〇〇マンションのキッチンリフォームの見積もり金額はいくらだった?」「防水工事で使った部材の単価は?」といった質問ができるようになります。AIは読み込んだ自社データの中から該当する情報を探し出し、回答を返してくれます。
これまでは紙のファイルを探し、ベテランに確認していた作業が、AIへの質問一つで完了します。しかも、24時間いつでも、誰でも同じ情報にアクセスできます。
Step3:過去実績と紐付けて見積もり作成、最終確認は人が行う
NotebookLMから得た情報をもとに、新しい見積書を作成します。たとえば「今回の案件に似た過去のリフォーム案件を教えて」と質問すれば、類似案件の見積もり金額や使用部材をAIが提示してくれます。その情報をベースに、今回の物件の条件に合わせて金額を調整していきます。
ここで絶対に忘れてはいけないのが、最終確認は必ず人が行うということです。AIが提示するのは「過去にこういうデータがあります」という情報であり、最終的な見積もり金額の判断は担当者が行います。現場の状況、お客様との関係性、利益率の方針——こうした要素はAIには判断できません。
「AIは優秀な検索係であって、見積もりの責任者ではありません。過去のデータを瞬時に引き出してくれるから、人間はその分、判断と確認に集中できる。これがAI活用の正しい姿です。」
— 生成AI顧問の現場から
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AI見積書が「進まない」3つのボトルネックと突破法
【結論】AI導入が進まない原因は「データ未整備」「IT抵抗感」「完璧主義」の3つ。いずれも全社一斉ではなく、小さく始めることで突破できる。
「やり方はわかった。でもうちの会社では無理だろう」——そう思った方もいるのではないでしょうか。建設業でAI活用が進まない背景には、共通するボトルネックがあります。しかし、いずれも乗り越え方は存在します。
ボトルネック1:データがデジタル化されていない
最大の壁はここです。紙の見積書、手書きのメモ、個人のPCに保存されたExcelファイル——データが散在していると、AIに読み込ませる以前の問題です。突破法は「全物件を一度にデジタル化しようとしない」こと。まずは直近1年分、あるいは頻出する工事カテゴリだけに絞って始めてください。10件分のデータでも、AIの効果は実感できます。
ボトルネック2:現場のIT抵抗感
建設業はITツールへの抵抗感が強い業界の一つです。しかし、NotebookLMの操作は「質問を入力して、回答を読む」だけ。スマートフォンで検索エンジンを使えるなら、同じ感覚で使えます。重要なのは、最初に触る人を「IT好きな人」ではなく「積算業務で困っている人」にすること。困っている人ほど、便利さを実感した瞬間に味方になってくれます。
ボトルネック3:完璧を求めすぎる
「データを完璧に整備してからAIを導入しよう」と考えると、永遠に始められません。まずは少量のデータで試し、効果を確認してからデータを追加していく。このPDCA(計画・実行・確認・改善)の繰り返しが、現実的な導入の進め方です。
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「AIが勝手に金額を決める」は誤解——よくある質問
【結論】AI見積書は「AIが金額を決定する」のではなく「自社データから情報を引き出し、人が最終判断する」仕組み。不安の多くは仕組みへの誤解から生じている。
建設業の経営者や管理職の方からよくいただく質問をまとめました。
まとめ
建設業の見積書作成は、AIの力を借りることで大幅に効率化できます。ただし、それは「AIに丸投げする」ことではありません。自社の過去実績データを正しく整備し、AIに検索させ、人が最終判断する——この役割分担が、精度と効率の両立を実現します。
「何から始めればいいかわからない」「自社のデータ整備をどう進めるべきか相談したい」という方は、まずは現状の業務フローを整理するところから始めてみてください。
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この記事のまとめ
- 建設業の見積書作成に時間がかかる最大の原因は「情報を探す作業」と「ベテランへの依存」
- NotebookLM×自社データで、過去の見積書・実績金額・単価表を誰でも即座に検索可能にできる
- 自社データだけを参照するため、ハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスクが極めて低い
- AIは「検索係」であり、最終的な金額判断は必ず人が行う
- データのデジタル化は完璧を目指さず、小さく始めてPDCAを回すことが成功の鍵
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執筆者
吉元大輝(よしもとひろき)
株式会社BoostX 代表取締役社長
中小企業の生成AI導入を支援する「生成AI伴走顧問」サービスを提供。業務可視化から定着支援まで、一気通貫で企業のAI活用を推進している。
※本記事の情報は2026年2月時点のものです。
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