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見積・積算

積算の属人化をAIで解消する前に、数量表の備考へ拾い方の理由を残す

積算担当の退職や異動を控えた建設会社の工事部長と積算担当に向けて、後任が前任の数量表を読めるようにする準備を扱います。

積算担当の交代が決まると、前任の数量表を開いた後任が、足場をどう見込んだか、開口部を控除したかが分からず、前任に電話して聞くことになります。数量表に何を書き残しておけば後任が拾い方をたどれるか、AIにどこまで手伝わせ、誰が数量を確定するか。材料費等記載見積書の保存の決まりも含めて、この記事で整理します。

見積・積算 更新 7分 運営 株式会社BoostX

積算の属人化を崩すのは拾い方の記録で、AIには数量表の差分を出させる

先に結論

AIの導入より先に、数量表に備考欄を作ります。仮設の見込み・開口部の控除・数量の単位・比べた過去案件のコードを書く欄があれば、後任は前任に電話せずに拾い方をたどれます。

AIに任せるのは、今回の数量表と構造・規模の近い過去案件1件を突き合わせ、差の大きい順に並べて単位の食い違いに印を付けるところまでです。差の理由を備考に書いて数量を確定するのは積算担当で、印の無い行も見ます。備考を読んで数量表を承認するのは工事部長です。

発注者も工種も固定で、拾う人が当面代わらない積算室なら、差の一覧は入れずに備考欄を足すだけで足ります。一覧を入れた後に備考の空欄が増えてきたら、工事部長が一覧を止めて備考を埋める運用に戻します。

積算の属人化は拾った理由が残らないことで起きる

積算には2種類の仕事が混ざっていて、属人化するのは判断の側です。1つは、図面から決まった項目の数量を数えて数量表に書き込む作業で、担当による差は速さに出ます。もう1つは、どこまで拾うか、足場や仮設をどう見込むか、開口部を控除するかの判断で、理由が備考に書かれないと後任には再現できません。

担当が1人で回している間は、数量を拾うのは速く、実行予算原案との差も小さく見えます。問題が表に出るのは、担当が代わった月か、入札図書の公開が重なって同じ積算担当に依頼が集まった週です。図面の受け取りから承認までのうち、担当の記憶に頼る工程は次の4つです。

  • 似た過去案件を探す(過去の数量表と見積台帳。探す先が担当の記憶)
  • 拾い方針を決める(積算担当と工事部長。方針が口頭で終わる)
  • 図面から数量を拾う(積算ソフトと数量表。拾い方が担当の癖)
  • 単価を決める(単価表と協力会社見積。採用の理由が残らない)

見積台帳の表記がそろっていないこともあります。同じ発注者が台帳に3通りの表記で載り、見積の金額と実行予算原案が別々のファイルにある状態では、過去案件を探す工程で担当の記憶に頼るしかありません。発注者名と構造・規模の欄を台帳でそろえる作業は、AIを入れる前に済ませます。

発注者から数量表を支給される契約が中心の会社なら、数量を拾う工程そのものが外れます。その場合に属人化が残るのは、単価を決める工程と、見積書へ移すときの条件の見込みです。

図面のPDFやCADから部材や面積を拾い出すAIを入れても、属人化は消えません。拾う作業は速くなりますが、どの項目を拾うか、仮設をどう見込むかは決めないからです。拾い出しの結果を若手が確かめて直す形にしても、正しいかを判断する基準が無ければ、確かめる工程がそのまま新しい属人化になります。

判断の基準になるのは、過去に確定した数量と、そのときの拾い方針です。道具の比べ方は積算AIを5つの型で比べるに、拾い出しの進め方は図面から数量を拾うAIの使い方にまとめてあります。

過去の確定数量との差を備考で埋める

比べる相手が遠いと差は数量表の全行に出るので、過去案件は構造と規模で1件に決めてから並べます。並べた差のうち、理由を備考に書けた行から、後任が読める数量表に変わります。

図の要点:担当が代わったときの前と後を比べる図。いまは、後任が前任の数量表を開くと備考が空欄で、型枠や足場の拾い方を前任に電話で聞き、拾い直すか前回の数量を使うかを一人で決めている。差の一覧と備考を回した後は、AIが今回と過去の数量表を突き合わせて差の大きい順に並べ、積算担当が差の理由を備考に1行書き、書けない行は図面へ戻し、工事部長が備考を読んで数量表を承認する。

差の大きい行から備考が埋まれば、後任は前任に電話せずに済む

担当が代わったとき、いま

  • 後任が前任の数量表を開くと、備考は空欄
  • 型枠や足場の拾い方は前任に電話で聞く
  • 拾い直すか前回の数量を使うかを一人で決める

差の一覧と備考を回した後

  • AI: 今回と過去の数量表を突き合わせ、差の大きい順に
  • 積算担当: 差の理由を備考に1行。書けない行は図面へ
  • 工事部長: 備考を読んで数量表を承認する

差の一覧と備考を回した後でも、後任が頼りにするのは一覧ではなく積算担当の書いた備考です。備考が空のまま一覧だけを回すと、後任は担当が代わったいまの状態と同じ所で止まります。

AIに渡すのは、今回の数量表(工種・部位・単位・数量の列)、選んだ過去案件の確定数量表、工種区分の一覧です。数量の定義が違いそうな行、たとえば面積と長さが入れ替わった行には印も付けさせます。

数量表の案件名に施主の氏名が載る会社では、名前を案件コードに置き換えても、見積台帳で施主に結び付く以上は個人データの扱いが変わりません。サービス側が数量表を取り扱わないと規約や契約に明記し、数量表を開ける人を提供会社が社内で限っていれば、数量表が相手のサーバにあっても提供には当たりません。

中身を扱う契約なら、突き合わせに限って取扱いを預ける委託と呼べる内容かを規約で確かめます。呼べれば会社が委託先を監督し(第25条)、委託と言えなければ第三者提供となり、第27条のとおり施主本人の同意が原則です。提供に当たらない・委託・第三者提供のどれに当たるかは個人情報の担当者が規約を読んで決め、国外の事業者なら入場前の名簿チェックで扱った区分も見ます。

印の付いた行も、印の無い行も、数量を確定するのは積算担当です。印は見る順番を決めるだけで、差が小さい行を確かめなくてよいという意味ではありません。理由が書けない行は図面に戻って拾い直し、直した行の数を見積台帳に書き足します。

備考に書く中身は、担当によって粒度がばらつかないよう先に決めます。次の4項目を欄にしておけば、後任は行ごとに拾い方をたどれます。

  • 仮設の見込み方(足場の段数、養生の範囲)
  • 開口部を控除したかどうか
  • 数量の単位(面積か、長さか、個数か)
  • 比べた過去案件の案件コード

【説明用の架空の記入例】工種: 基礎の型枠/仮設の見込み: 足場は2段、養生は打設面の周囲だけ/開口部の控除: 人通口は控除、配管の貫通部は控除しない/単位: 面積(㎡)/比べた過去案件: K-0412(同じRC造で延床面積の近い倉庫)。値はすべて説明のための架空のもので、拾い方の基準ではありません。

拾い方針の候補までAIに出させるかは、過去案件の偏り方で決まります。同じ発注者・同じ構造の案件が続く会社なら、過去の備考から並ぶ候補は当たりやすくなります。案件ごとに構造が変わる会社では候補が外れ続け、候補を読む時間だけ積算担当の手間が増えるので、方針を決める工程は人が担います。

備考は材料費等記載見積書の説明に使える

備考は、見積書の内訳を注文者に説明する根拠にもなります。材料費等記載見積書は、建設業法第20条第1項で建設業者が作成に努めるとされる見積書です。載せるのは、工事の種別ごとに分けた材料費・労務費などの経費の内訳と、工事の工程ごとに要る作業と準備の日数です。

そこに書く材料費等の額は、その工事に通常必要な額より著しく低くしてはいけません(第2項)。注文者から求められたら、請負契約が成立するまでに見積書を渡す義務もあります(第4項)。交付の後に内訳の数量を問われても、どの拾い方針から出たかが備考にあれば、担当が代わっていても答えられます。

施行規則は、材料費等記載見積書を作ったときはその見積書を、契約前に中身を注文者とすり合わせた打合せ記録とあわせて、営業に関する図書としています。保存期間は引渡しから10年間です。備考を数量表と同じ案件フォルダに置けば、打合せ記録と一緒に10年後まで読めます。

差の一覧が長すぎると積算担当は見なくなる

差の一覧が数量表のほぼ全行に付くと、担当は一覧を開かなくなります。原因は比べる過去案件が遠いことで、構造も規模も違う案件と比べれば、差は全行に出ます。候補を見積台帳の構造と規模の欄で絞り、比べる相手を案件ごとに1件に決めれば、一覧は読める長さに収まります。

旧図と改訂図が同じフォルダにあると、差分は違う版どうしで出ます。比べる図面は最新版のフォルダにだけ置き、改訂図を受け取った日のうちに旧図を別の場所へ移します。

一覧が使われなくなるもう1つの原因は、差分が「過去と違う」としか出ず、理由がどこにも書かれない状態です。後任は一覧を前にしても、どちらの数量を信じるか決められません。拾い方は担当の頭から一覧の読み方へ移るだけで、属人化は形を変えて戻ります。

若手が拾った数量は差の大きい行だけベテランに聞く

若手には、拾った数量表を過去の確定数量と並べさせ、差の大きい行だけをベテランに聞かせます。答えはベテランが備考に書き、その備考が次の若手の教材になります。勘所を文字にする段取りは、技能継承の引継ぎ資料をAIで文字にする手順が近い業務です。

若手へ渡すのは、数量の定義が仕様書で決まる工種から始めます。仮設の見込みや開口部の控除のように判断が入る行は、ベテランが備考を書き終えるまでベテランが担当します。

若手からベテランへの、工種ごとに数えた質問の件数が減れば、備考が引き継ぎに使えている印です。質問が残る工種は、比べた過去案件の備考が薄いと読めるので、工事部長はその工種を若手に渡す前に、ベテランが備考を書き足したかを確かめます。

差の一覧は外部に頼めても、備考と数量の確定は積算室に残る

備考を書くことと数量の確定は、どの道を選んでも積算担当と工事部長の手に残ります。外に出せるのは、過去案件を探して差の一覧を出すところまでです。

見積台帳の発注者名と構造・規模の欄がそろい、積算担当が比べる過去案件を台帳から1件選べるなら、社内だけで進められます。今回と過去の数量表を生成AIサービスに渡せば、差の一覧は作らせられるからです。

過去の数量表が担当ごとのフォルダに散って案件単位で引けない会社では、一覧を出す前の探す工程で積算担当の時間が尽きます。過去案件の数量表を案件コードで引いて差を出すところまでを、積算と工事部にまたがって組み直すなら、外部の伴走(FDE型AI伴走支援)と進め方を比べる段階です。

若手の質問が減った工種があれば、渡す範囲を広げます。どの工種も減らないままなら、工事部長は外の仕組みを広げる前に差の一覧を止め、ベテランが備考を書き足す運用に戻します。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 積算担当

    見積台帳の発注者名と構造・規模の欄をそろえ、数量表に仮設・控除・単位・案件コードの4項目を書く備考の欄を足す

    次へ進む目安次に拾う案件の数量表で、4項目の欄が1行も空かずに埋まった

  2. 担当 積算担当

    構造と規模の近い過去案件を1件選び、AIに差の大きい順の一覧を作らせ、理由の書けない行は図面で拾い直す

    次へ進む目安一覧の全行に理由か拾い直しの印が入り、工事部長が数量表を承認した

  3. 担当 工事部長

    積算担当が工種別に数えた若手の質問の件数を、3案件分そろえて見積台帳の上で並べる

    次へ進む目安質問の減った工種を1つ選び、次の案件からその工種を若手に任せた

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出典

  1. 建設業法(昭和24年法律第100号)(第20条第1項・第2項・第4項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
  2. 建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)(第26条第5項・第28条第2項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
  3. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第25条(委託先の監督)・第27条第1項(第三者提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  4. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」(Q7-53・Q7-54) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29

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