建設の技術提案書はAIで内製に戻せる?外注に残る作図と技術者の時間
総合評価の技術提案書を外注と社内でどう分けるかは、案件のたびに営業責任者と工事部長が決め直している判断です。下書きを社内に戻せば外注費は減りそうですが、技術者の手が空かないまま締切を迎えると、数値の約束が前の案件のまま出てしまいます。判断の材料になるのは、入札の型ごとのヒアリングの扱いと、提案書1件にかかる外注費と社内の時間の比べ方です。

先に結論
書く作業はAIの下書きで社内に戻せます。戻せないのは、配置予定技術者が締切の前に読み直す時間と、施工イメージ図の作図です。
入札説明書から評価項目・配点・字数の一覧を作り、過去の提案書と工事成績評定の通知から近い記述を並べ、項目の順に下書きするところまでをAIに回します。短縮日数と品質の目標値は配置予定技術者が決めて欄を埋め、約束する範囲は工事部長が審査します。
読み直しの日を技術者の予定表に入れられない案件では、社内で下書きを書き始めません。参加が年に数件なら、戻すのは評価項目の一覧づくりまでにとどめます。
技術提案書の約束は工事成績で次の入札に戻る
提案書の一文は、履行しなければ減点の対象になり、その工事成績が次の入札の評価に使われます。国の直轄工事の総合評価の運用ガイドライン(2023年3月版)が挙げる評価項目に、誰が書いたかを問うものはありません。ヒアリングで説明し、受注後に約束を果たすのは、提案書に名前の載る配置予定技術者です。
技術提案評価型の入札説明書には、提案を履行しなかった場合の措置として、再度の施工義務、損害賠償、工事成績評定の減点等を行う旨を書く扱いになっています。根にあるのは品確法第3条第2項で、公共工事の品質は「価格及び品質が総合的に優れた内容の契約」で確保するとされています。
価格と品質を合わせて評価する契約なので、提案に書いた約束は受注後に果たす前提で読まれます。読み直しを省いた提案は、後の工事成績に響きます。
仮に、技術者が読み直さないまま、別の現場で通った仮設計画が入った提案を出したとします。S型の案件でヒアリングが入り、なぜこの仮設か、現地の搬入路で成り立つかを問われて、技術者は答えに詰まります。評価は下がり、落札しても、履行の怪しい約束が工事成績評定の対象として残ります。
国の直轄工事で評価に使う工事成績は、標準では企業が同じ工種区分の過去2年間の平均、技術者が過去4年間の平均です。入札説明書の参加資格の例には、企業と配置予定技術者の同種工事の工事成績評点が65点以上であることも挙がります。提案書に書いた一文は、その技術者の名前で4年間、次の入札についてきます。
技術提案書の持ち場を営業・技術者・外注に分ける
持ち場は、営業担当とAIが文面を受け持ち、配置予定技術者が数値と仮設を決め、外注先が図を描く形に割ります。生成AIへの入力を入札説明書や特記仕様書で制限する発注者もあるので、案件ごとにその定めを読むのが先です。
図の要点:技術提案書を作る9つの工程を、営業担当・AI・配置予定技術者・外注先の持ち場に分けた図。営業担当が入札説明書と評価基準を渡し、AIが評価項目・配点・字数・様式の一覧を作り、過去の提案書と工事成績評定の通知から近い記述を並べる。営業担当が使える材料を選び、AIが評価項目の順に下書きして短縮日数と目標値の欄は空けて返す。配置予定技術者が赤を入れて数値の欄を埋め、仮設の配置と寸法を赤書きし、外注先がそこから施工イメージ図と仮設計画図を描く。最後に営業担当が対応漏れを確かめ、約束する範囲と数値は工事部長が審査する。
数値の欄と仮設の図は、配置予定技術者の赤を通らなければ工事部長の審査に進まない
営業担当
AI
配置予定技術者
外注先
- 営業担当
入札説明書と評価基準をAIに渡す
貸与資料は取扱いの定めを読んでから
- AI
評価項目・配点・字数・様式の指定を一覧にする
戻す営業担当が原文と見比べて直す
- AI
過去の提案書と工事成績評定の通知から近い記述を並べる
評価された工夫に印
- 営業担当
今回の現場で使える材料を選び、現地調査のメモを足す
使わない記述はここで外す
- AI
評価項目の順に下書きし、短縮日数と目標値の欄は空けて返す
条件の合わない記述に印
- 配置予定技術者
できるか、自分の言葉で話せるかで赤を入れ、数値の欄を埋める
戻す説明できない記述は営業担当へ
- 配置予定技術者
仮設の配置と寸法を赤書きする
図を頼むときの材料になる
- 外注先
赤書きから施工イメージ図と仮設計画図を描く
戻す本文と食い違う図は技術者へ
- 営業担当
対応漏れを一覧で確かめ、審査に回す
約束する範囲と数値は工事部長が審査する
配置予定技術者の作業が2つ続くので、外注に出していた頃も社内に戻した後も、この2つの作業の時間は減りません。社内に戻す判断は、この時間を締切の前に取れるかどうかを先に確かめてからにします。
短縮日数や品質の目標値を空けて返させるのは、過去の提案で通った数字をそのまま写すと、条件の違う今回の工事で同じ約束を背負うからです。反対に、早く出た下書きを営業担当が仕上げてしまうと、技術者の読み直しは外注していた頃より薄くなります。
道具は、会社で契約した対話型AI(ChatGPTやClaudeの法人向けプランなど)で足ります。長い入札説明書や過去の提案書をまとめて読ませるなら、一度に扱える文章の量が多いものを選びます。
配置予定技術者の氏名・資格・工事成績が載る様式は、技術者本人の個人データです。預け先の契約で何を見るかは協力会社の名簿を預け先に渡す前の段取りと同じで、決まるまでは様式そのものを渡さずに下書きさせます。
外注先が書いた過去の提案書や描いた図を材料に回すなら、先に外注の契約書で著作権の定めを読みます。文章や図が著作物に当たる限り、著作権は創作した外注先に生じ、契約で譲り受けていなければ外注先に残ります。譲り受ける契約でも、翻案の権利(第27条)などが譲渡の目的として特に書かれていないと、外注先に残ったものと推定されます(著作権法第61条第2項)。
著作者人格権は譲り渡せないので(第59条)、書き直しに異議を出さない旨の定めがあるかも同じ契約書で見ます。定めが無い提案書は、AIで書き直して今回の提案に使う前に、使い方を外注先と取り決めます。
技術提案書の型ごとに書く量とヒアリングが違う
AIの下書きで時間が浮くかどうかは、提案書の型で変わります。国の直轄工事の総合評価落札方式では、型ごとに求める書類とヒアリングの扱いが違い、書く量もそれに付いてきます。
| 型 | 求めるもの | 配置予定技術者のヒアリング |
|---|---|---|
| 施工能力評価型Ⅰ型 | 企業・技術者の能力と、施工計画の提出 | 監理能力か施工計画の理解度を確かめる必要があれば実施 |
| 技術提案評価型S型 | 目的物の変更を伴わない技術提案 | 監理能力か技術提案の理解度を確かめる必要があれば実施 |
| 技術提案評価型A型 | 目的物の変更を伴う技術提案 | 発注者の理解のために必要に応じて実施し、ヒアリング自体は評価しない |
ヒアリングで評価されるⅠ型とS型は、技術者が自分の言葉で話せる下書きかどうかが点数に響くので、読み直しの時間を削れません。施工能力評価型Ⅱ型は施工計画の提出を求めないので、書く作業そのものが小さく、AIの下書きを入れても浮く時間はわずかです。
Ⅰ型の施工計画は、受注後の施工計画書と材料が重なり、その作り方は施工計画書で主任技術者が仕上げる章に続きます。S型とA型は書く量が多く、下書きで浮く時間もここで大きく出ます。自治体の工事は発注者ごとに型の名前も運用も違うので、どの型か、ヒアリングがあるかを入札説明書で確かめてから下書きの量を決めます。
判断できる技術者が1人の会社は内製できるか?
できます。条件は、読み直しの時間を締切から逆に数えて、その技術者の予定表に先に入れることです。技術の妥当性を判断できる人が1人なら、その人の予定表が、1か月に出せる提案書の数の上限になります。
技術者が読むのは、配点の重い項目の本文と、数値の約束の欄です。配点の軽い項目は、営業担当が過去の記述から整えます。同じ月に公告が重なり、読み直しが1件分しか取れないこともあります。そのときは参加を決める会議で工事部長が、ヒアリングのある案件を社内に残し、もう1件は下書きを外に出すか参加を見送るかを決めます。
総合評価への参加が年に数件にとどまる会社では、過去の提案書をAIに読ませる準備の手間のほうが、下書きで浮く時間を上回ることがあります。その場合は、評価項目の一覧づくりだけを社内に戻し、下書きは外注のまま残す組み合わせもあります。
営業責任者は提案書を1件出すたびに、技術者の赤で書き換わった段落の数を数えておきます。書き換わる段落が減らない案件は、材料に渡した過去の提案が今回の現場条件から遠く、材料を選ぶ作業で外す記述が足りていません。
施工イメージ図と仮設計画図の外注の分け方
作図は、何の図かで扱いが変わります。完成予想の絵である施工イメージ図は、社内に描ける人がいなければ外注に残します。画像を作るAIの絵には寸法も仮設の配置の根拠も無いので、提案書の図には使えません。
仮設の計画図や施工の手順図は、技術者の判断が図そのものです。社内のCADで描くか、外注するなら配置と寸法を技術者が赤書きしてから渡します。工程の帯の図は、工程表から写す作業をAIの下書きで足ります。過去の案件の図面から近い仮設計画を探すなら、過去の図面を改訂欄で探す検索AIの比べ方が参考になります。
外注費が上がって見えるときは、修正の往復の回数を案件ごとに数えます。往復の原因が本文と図の食い違いなら、図の外注をやめるより、下書きを先に固めて図の依頼を後ろへずらすほうが、往復は減ります。
費用を比べるなら、同じ提案書1件で、下書きの外注費と、社内で下書きを直す時間と技術者の読み直しの時間に時間単価を掛けた額を並べます。作図の外注費は、どちらの道でも残るなら比べる対象から外します。
社内に戻す1工程目は評価項目の一覧、図は外注先に残す
社内に戻す工程を1つだけ選ぶなら、評価項目の一覧が手戻りの少ない入口です。原文と見比べれば誤りがその場で見え、図の外注先に渡す依頼書の材料にもそのまま使えます。
一覧を社内に戻した案件でも、下書きと図はまだ外注のまま残して構いません。営業担当が原文と見比べて直した行の数が、一覧をAIに任せ続けられるかの材料になります。
S型の案件では、加算点を付ける項目と付けない項目が、競争参加資格の確認の通知と合わせて届きます。
社内で下書きした提案書がたとえば2件たまったら(件数は営業責任者が工事部長と決める)、加算点の付かない項目を外注で書いた頃と比べます。その数が多い型は、技術者の読み直しの時間が足りていないと読めます。営業責任者は、その型の下書きを外注に戻すかを工事部長と話し合います。
社内・AI・外注のどこへどの工程を置くかが案件のたびに揺れる会社は、割り振りの表を外部のAI顧問と1枚にまとめる段階です。ただし、判断する技術者と配置予定技術者が別の人の会社は、表を作る前に読み直す人を決めます。判断は技術部長、配置は現場の主任という会社では、ヒアリングで答えるのは主任の側で、技術部長が読むだけでは足りません。
明日から始める3ステップ
担当 営業担当
次に参加を決めた案件の入札説明書で、評価項目・配点・字数・様式の一覧をAIに作らせ、原文と1行ずつ見比べる
次へ進む目安一覧の全行が原文と合い、図の外注先への依頼書にも同じ一覧を添えた
担当 営業責任者
締切から逆に数えて、配点の重い項目と数値の欄を読み直す日を、配置予定技術者の予定表に入れる
次へ進む目安公告の重なる月の分まで、読み直しの日が技術者の予定表に入った
担当 営業責任者
提案書を出すたびに、技術者の赤で書き換わった段落の数と、加算点の付かなかった項目の数を型ごとに控える
次へ進む目安社内で下書きした提案書がたとえば2件たまった時点で(件数は営業責任者が工事部長と決める)、その数を外注で書いた頃の数と並べて工事部長に見せた
無料相談(オンライン)
BoostXは、建設会社の積算・日報・安全書類へのAI導入を支援しています
01無料相談
積算・日報・安全書類から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 国土交通省直轄工事における総合評価落札方式の運用ガイドライン(2023年3月)総合評価落札方式のタイプ・配置予定技術者へのヒアリング・入札説明書に明示すべき事項の例(評価内容の担保)・表2-11 企業の工事成績の適用範囲・表2-11 施工実績、工事成績の適用範囲・入札説明書に明示すべき事項の例(競争参加資格)・4-2 (2) 技術提案の評価結果の通知 国土交通省 確認日 2026.09.30
- 著作権法(昭和45年法律第48号)(第2条第1項第2号・第17条第1項・第61条第2項 著作権の譲渡・第59条 著作者人格権の一身専属性) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.30
- 公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成17年法律第18号)(第3条第2項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.30
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