この記事の要点
- 公告を拾うところから提出までは6工程に割れ、止まるのは過去提案を探す工程と書き出しの工程です。
- AIは要求事項の割り付け、過去提案の検索、構成案の下書きまで担えます。
- 施工方法の約束範囲と提出の承認は、技術担当と営業責任者に残ります。
定義技術提案書とは、発注者の要求事項に対して施工方法・体制・工程・安全対策をどう満たすかを示す文書を指します。
内製で回るかを先に考える価値は、人の数に表れています。国土交通省の参考資料集(令和8年4月3日)では、建設業の就業者は477万人で平成9年のピークから30.4%減り、29歳以下は11.9%です。営業と技術を兼務する体制では、提案書づくりが現場を持つ技術者の夜の時間に乗ります。失注で失う金額は統計に無いので、提案1件あたりの作成時間と、参加を見送った案件の数を自社で数えます。
提案書づくりは営業と技術のどこに挟まっているか?
公告が出てから提出までの数日、営業担当は資料を探し、技術担当は現場から戻って書きます。この間に作られるのが技術提案書です。技術提案書とは、発注者の要求事項に対して施工方法・体制・工程・安全対策をどう満たすかを示す文書を指します。見積の金額とは別に評価される資料で、書き手の経験がそのまま差になります。
この記事の要点
- 提案は6工程に割れ、止まるのは過去提案を探す工程と書き出しの工程です。
- AIは探す・割り付ける・下書きまでで、約束する範囲と提出の承認は人に残ります。
- 内製で回せるかは会社の規模ではなく、過去提案が案件単位で引けるかで決まります。
担当は営業担当、営業責任者、技術担当、工事部長にまたがります。起点は公告の公開か提案依頼の受領で、入力は公告資料、要求水準書、過去の提案書、施工実績台帳です。出力は提案書、技術提案書、案件管理表の記録になります。使う道具は入札情報サービス、提案書テンプレート、共有フォルダ、メールです。例外は、発注者が独自様式を指定する案件と、締切まで3日を切って届く引き合いです。
この記事では、過去3年分の提案書が共有フォルダに残っていることを前提として置きます。紙でしか残っていない会社は、後述の着手工程が変わります。

公告を拾うところから提出までを6工程に割る
提案書づくりという一語では、内製で回るかどうかを判断できません。6工程に割ると、人が減っても回る工程と、経験がないと書けない工程が分かれます。量と時間の欄は公的統計に無いため、自社で測る欄として置いています。
| 工程 | 担当 | 使う帳票・システム | 量か時間 | 詰まるところ |
|---|---|---|---|---|
| 1 公告と引き合いを拾う | 営業担当 | 入札情報サービス、メール | 毎週 | 締切の見落とし |
| 2 参加可否と技術者の配置を見る | 営業責任者、工事部長 | 配置表、資格情報 | 公告のたび | 専任の条件の確認 |
| 3 発注者の要求事項を読み解く | 営業担当、技術担当 | 公告資料、要求水準書 | 提出前の数日 | 評価項目の読み落とし |
| 4 過去提案と施工実績を探す | 営業担当 | 過去の提案書、施工実績台帳 | 探す時間が読めない | どこに何があるか分からない |
| 5 提案書と技術資料を作る | 営業担当、技術担当 | 提案書テンプレート | 提出前に集中 | 書き出しで止まる |
| 6 社内確認して提出し結果を残す | 営業責任者 | 提案書、案件管理表 | 提出のたび | 失注理由が残らない |
同じ6工程を、AIが担えることと人が持つことで並べ直します。AIが返すのは候補と下書きで、発注者への約束はしません。
| 工程 | AIが解決すること | 人が決めること | 失敗したときの損失 |
|---|---|---|---|
| 1 | 公告から工種・規模・場所・締切を抜き出して一覧にし、過去実績との近さで並べる | 参加する案件の選択 | 参加できたはずの案件を落とす |
| 2 | 既存現場の工期の重なりと、資格条件に照らした空き状況を並べる | 受注する案件の選択と配置の決定 | 配置できない案件に労力を使う |
| 3 | 要求事項を項目に割り、評価の観点ごとに答えるべき箇所を並べる | 提案の方針と力点の置き方 | 評価項目に答えていない提案になる |
| 4 | 条件の近い過去提案と該当箇所を探し、実績台帳から該当工事を並べる | 流用する範囲 | 同じ資料をもう一度作り直す |
| 5 | 要求事項に沿った構成案と下書きを作る | 施工方法の約束範囲と工程の前提 | 実行できない約束が契約に残る |
| 6 | 実績の記述と台帳の食い違いを指摘し、失注理由を分類して傾向を整理する | 提出の承認と価格・条件の見直し | 同じ理由で落ち続ける |
色枠がAIの担う工程、灰色が人が確定する工程です。右上の印は、誤りが受注後まで残る工程を示しています。
AIで消える工程は、工程4の探し回る時間と、工程6の失注理由の分類です。短くなる工程は、工程1の公告の読み込み、工程3の要求事項の割り付け、工程5の書き出しです。新しく増える確認工程は、工程5で下書きの約束が実行できるかを技術担当が見る確認と、工程6で実績の記述を台帳と突き合わせる照合です。
AIが探して並べ、技術担当が約束する境界
止めどころは工程5の出口です。提案書に書いた施工方法と工程は、受注後に守る約束になります。この範囲を確定するのは技術担当と工事部長で、AIは構成案と下書きを出すところまでです。
工程2にも人が持つ責任があります。建設業法は工事現場への主任技術者・監理技術者の配置を定めており、専任が要る案件では配置できる人が決まります。AIが空き状況を並べても、誰をどの現場に置くかを決めるのは工事部長です。配置の見込みが立たない案件に提案の時間を使わない判断は、ここで下ります。
工程6の実績の書き方にも境界があります。施工実績を実態より広く書けば、受注後に説明がつきません。AIは台帳との食い違いを指摘できますが、書ける範囲を決めるのは営業責任者です。過去の提案から文を流用するときほど、この確認が要ります。
内製で回せるかを決める3つの問い
内製か外注かは会社の規模では決まりません。三つの問いで分けます。過去提案が案件単位で引けるか、テンプレートが一つに決まっているか、詰まったときに社内で直せる人がいるかです。
過去提案が案件フォルダに電子で残っているなら、工程4と工程5は内製で回せます。提案書が個人のパソコンに散っているなら、AIより先に置き場所を一つに決めます。テンプレートが担当ごとに違うなら、様式を揃えるほうが先です。入札情報サービスを使っておらず公告をメールで受けているだけなら、工程1は仕組みの導入が先になります。年間の提案が数件で、発注者も工種も固定されているなら、これはAIを入れない方がよい条件に当たります。その場合は過去提案を一つのフォルダにまとめるだけで、探す時間は消えます。
本メディアでは、提案書のAI化は工程4の検索から始め、工程5の下書きは検索が使える状態になってから広げるべきだと判断します。探せない状態で下書きだけを入れると、過去の実績と食い違う文章が量産されるためです。前提は、施工実績台帳が最新に保たれていることです。台帳が2年前で止まっている会社では、この順番は当てはまりません。
最初の1工程と2週間の試し方
直近で失注した1件と、今動いている1件で回します。会社としての進め方は次の六つです。
- 直近3件で、過去提案を探した時間と提案書の作成時間、差し戻しの回数を記録します。
- 対象を1工種に絞ります。過去提案が3件以上ある工種を選びます。
- 失注した案件で要求事項の割り付けと過去提案の検索を回し、実際に出した提案書と比べます。
- 進行中の案件で構成案の下書きまで使い、技術担当が約束の範囲を確定します。
- 提出前に、実績の記述を施工実績台帳と突き合わせます。この照合は人の操作に残します。
- 2週間後に営業責任者と工事部長が合否を決めます。続けるか、工種を変えて測り直すかを判断します。
見る数字は三つです。過去提案を探すのにかかった時間、提案書が社内確認に回るまでの日数、差し戻しの回数です。合否の線は開始前に引きます。下書きの直しに白紙から書くより時間がかかるなら、テンプレートの粒度が合っていません。
本番にするときの承認・記録・例外
承認は二段に分けます。技術担当が約束の範囲を確定し、営業責任者が提出を承認します。記録は案件フォルダに残します。公告資料、要求事項の割り付け、流用した過去提案、確定した約束の範囲、提出版と結果、失注理由の六つです。ここが揃うと、次の提案で同じ探し方を繰り返さずに済みます。
例外は先に決めます。発注者が独自様式を指定する案件、締切まで3日を切った引き合い、共同企業体で相手方の資料が入る案件は人が組み立てます。外部のAIサービスへ送る情報の範囲も決めます。提案書には発注者の要求事項と自社の原価に関わる記述が入るため、送ってよい項目と学習利用の有無を確かめてから対象を広げます。
実績の書きすぎが招く失敗と、戻し方
よくある失敗は、過去提案の文をそのまま流用し、実際には手がけていない規模や工種の記述が残ることです。受注後に説明がつかず、発注者との関係に響きます。防ぎ方は、提出前に実績の記述を施工実績台帳と突き合わせ、台帳に無い記述は落とす運用にすることです。
二つ目は、要求事項の割り付けを信じて評価項目を読まなくなる状態です。割り付けは出発点で、評価の重みを読むのは人の仕事です。配点や加点の条件が書かれた箇所は、担当が原文で確かめます。
三つ目は、失注理由が「価格」の一語で記録される状態です。本メディアでは、失注理由の分類を入れずに提案書の下書きだけを増やすことは勧めません。同じ理由で落ち続けても気づけないためです。案件管理表に失注理由を項目で残している会社は、この限りではありません。
次に広げる営業の業務
次に広げる先は、同じ案件管理表を使う業務です。休眠先へのフォロー文の作成、引き合いの分類、見積条件の整理が当たります。工程4の検索が安定すると、この三つは同じ材料で回せます。
後ろの工程へつなぐ広げ方もあります。提案で約束した施工方法は、見積の条件書と実行予算に引き継がれます。提案と見積が別々の資料になっている会社は、ここをつなぐだけで受注後の手戻りが減ります。
出典
- 国土交通省 不動産・建設経済局建設業課「参考資料集」(令和8年4月3日) 国土交通省 確認日 2026.09.22
- 建設業法(昭和24年法律第100号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22


