設計変更の見積をAIで直す:新旧図面の差分一覧と約款第25条の単価区分
訂正図が届くたびに連動する明細行を目で探している積算担当と、修正見積の各行の単価の扱いを決める工事部長が、手に取る想定で書いています。
訂正図がメールで届くと、修正見積を出すまでに決めなければならないことが2つあります。どの版を正として新旧の差を取るかと、動いた明細の各行を契約単価のまま出すか協議に回すかです。AIが作る差の一覧はこのどちらも決めてくれないので、版を誤れば発注者の査定で数量が合わないと戻され、単価の扱いを誤れば協議に回すべき行が契約単価のまま出ていきます。

先に結論
修正見積は、正とする新図を質疑回答書と改訂欄で決めてから、差をAIに並べさせて直します。AIに作らせるのは、図番と部位の名前つきの差の一覧と、差が響きそうな明細行の候補までで、金額は出させません。
描き直しで動いただけの線を消し、残った差の数量を拾い直して、漏れた連動の行を足すのは積算担当です。各行を契約単価のままにするか協議に回すかは、工事部長が契約書の算定方法の定めに沿って付けます。
根拠を書けない差には区分を付けず、積算担当へ戻します。急ぎの変更でも、版を決める前に差を取る進め方はしません。
旧版を正にした差分は査定で戻される
いちばん重い失敗は、一つ前の版を正として差を取ることです。質疑回答書で差し替わった図面を見落として古い版と新図を比べても、差分一覧はそれらしく埋まります。数量も金額も計算され、工事部長の区分まで書かれてしまいます。
気づくのは、発注者の査定で数量が合わないと戻されたときです。差分一覧も修正見積も作り直しになるので、正とする版を質疑回答書と改訂欄で決めてから差を取る順番は、急ぎの変更でも崩しません。査定で数量の内訳を問われたときの返し方は、査定表の問いに内訳の1行で答えるやり方が近い作業です。
口頭だけの変更指示は、図面が来ないまま工事が進むので、差分一覧にも載りません。訂正図が届くまでの指示は、変更記録として別に控えておきます。
訂正図の差をAIで見積明細の行につなぐ
訂正図の差は、図番と部位の名前つきの一覧にしてから、響きそうな明細の行へつなぎます。差を取る範囲は、変更指示書の書き方で変えます。変更指示書に範囲が部位で書かれていればその部位に絞り、「別紙のとおり」としか無ければ図面全体で差を取り、誤検出を消す手間のほうを受け入れます。
図の要点:訂正図から区分つきの差分一覧までの入力と出力の図。積算担当が、質疑回答書と改訂欄で正とした新図と、その直前の版と提出済みの見積明細を、比べる2つの版として決める。AIが新旧の差を図番と部位の名前つきで並べ、差が響きそうな明細行の候補を金額なしで出す。積算担当が線が動いただけの差を理由付きで消し、残った差を拾い直して漏れた行を足す。工事部長が各行を契約単価のままか協議に回すかに分け、根拠の書けない差は積算担当へ戻す。
描き直しで動いただけの線を消してから、行に区分を付ける
比べる2つの版(積算担当が決める)
- 質疑回答書と改訂欄で正とした新図
- その直前の版と、提出済みの見積明細
AIが並べる差と響く行
- 新旧の差を図番と部位の名前つきで
- 差が響きそうな明細行の候補(金額は出さない)
積算担当が消す差と足す行
- 線が動いただけの差を消し、理由を1行残す
- 残った差を拾い直し、漏れた連動の行を足す
工事部長が付ける区分
- 各行を契約単価のままか協議に回すかに分ける
- 根拠の書けない差は積算担当へ戻す
描き直しで動いた線に区分が付くと協議に回す行が実際より多く見えるので、誤検出を消す作業は区分の前に置きます。区分つきの差分一覧は、修正見積と変更の書面の両方に添えます。
【説明用の架空の記入例】図番: A-301(建具表)/部位: 2階事務室の北側開口/差: 開口幅が1,800mmから2,400mmへ。AIが出した響く行の候補は、鋼製建具、軽量鉄骨壁下地、ボード張りの3行です。積算担当は線の移動ではなく寸法の変更だと確かめ、3行の数量を拾い直して、候補に無かった照明スイッチの移設の行を足します。区分の欄は、工事部長が契約書の算定方法の定めに沿って書き、根拠の条を添えます。
残った差の数量までAIに拾い直させるかは、数量拾いのAIを試す工種と図面の形と同じ考え方で、工種ごとに決めます。部材が数量の属性を持つモデルで設計している案件なら、差はモデルから数量で取り出せるので、図面の差をAIに探させる場面は減ります。出番が大きいのは、訂正図がPDFや紙で届き、見積明細がExcelにある案件です。
契約単価のままか協議かを約款第25条で読む
単価の扱いを先に決めているのは契約書の算定方法の定めで、会社の都合では選べません。建設業法第19条第1項第6号は、設計変更の申出があったときの工期と請負代金の額の変更、その額の算定方法の定めを、契約書面に書く事項に挙げています。区分を書く前に、この定めが自社の契約書のどの条にあるかを確かめます。
国土交通省の発注者・受注者間のガイドライン(第8版)も、当初の契約書でこの定めをできる限り具体的にしておくことが望ましいとしています。公共工事標準請負契約約款の第25条(A)を採用した契約なら、差分一覧の区分の欄はこの条の場合分けに合わせて書きます。
| 約款第25条(A)の場合分け | 単価の基礎 | 差分一覧の区分 |
|---|---|---|
| 数量の増減が内訳書の数量の一定割合以内 | 内訳書記載の単価 | 契約単価のまま |
| 数量の増減が一定割合を超える | 変更時の価格を基礎に協議 | 協議に回す |
| 施工条件が異なる | 変更時の価格を基礎に協議 | 協議に回す |
| 内訳書に記載の無い項目が生じた | 変更時の価格を基礎に協議 | 協議に回す(新しい行) |
| 内訳書の単価によれないその他の場合 | 変更時の価格を基礎に協議 | 協議に回す |
表の最後の行は、内訳書によることが不適当で特別な理由がない場合と、内訳書が未承認の場合をまとめています。一定割合は契約ごとに書き込まれ、約款の注は例として「二十」を挙げています。
注の例どおりの契約なら、内訳書の数量から2割を超えて増減した行が協議に回ります。協議開始の日から定めた日数の内に整わなければ、発注者が定めて受注者に通知します。
令和7年12月2日の改正では、第25条(A)に第2項が新設されました。発注者は受注者の意見の趣旨をできる限り勘案して十分に協議し、協議が整わなかったことなどを理由に受注者を不利益に扱ってはならない、という定めです。第25条(B)を採用した契約は、すべての変更を協議で定めます。この場合は区分の欄を分けず、全行を協議に回す側として書きます。
民間の工事や自社書式の契約では、約款の条番号が当てはまりません。契約書の該当条を開き、単価の基礎、協議に回る条件、協議が整わないときの決め方の3つを確かめてから区分を書きます。
発注者が変更数量の様式を指定し、新旧の数量まで書いて返してくる工事もあります。差分一覧を別に作ると、同じ数字を二度持つことになります。その場合は発注者の様式の行と自社の見積明細の行の対応だけをAIに並べさせ、区分の欄を様式の側に足します。協議に回した行は、追加工事の変更契約を着工前に書面への段取りで書面に残します。
一式の行は変更の多い部位から割っておく
差分一覧の出来を左右するのは、提出済みの見積明細の切り方です。工種ごとに細かく行が切られた明細なら、差の部位から響く行の候補が出やすくなります。「内装工事 一式」のようにまとめた行が多い明細では、差がどの行にも結び付かず、候補が出ないまま漏れていきます。
最初の対象は、開口部まわり、設備の配管、仕上げの範囲のように、過去の変更で何度も動いた部位です。明細の各行に図番の列を足しておけば、差を明細の行に結び付けやすくなります。
割った行は次の見積から最初の形で出します。変更が来てから割ると、当初の見積と修正見積の行が合わず、発注者に差を説明する対応表が1枚余計に要るためです。どの部位をどう割って拾ったかを行の備考に残せば、担当が替わっても拾い方の理由が残る数量表の備考の材料にもなります。
積算担当がAIの候補に無く後から足した連動の行の数は、漏れた行の原因が明細のどの部位の切り方にあるかを示します。工事部長が見る部位別の合計が2つの四半期続けて減らないなら、明細の行と図面の部位の対応がまだ粗いと読めます。そうした部位は、積算担当が次の見積で図番の列を足し、行を割り直してから出します。
施主の氏名と住所は、工事番号に置き換えても個人データのまま
個人住宅の工事では、変更指示書にも図面の表題欄にも、施主の氏名と現場の所在地が書かれています。社外のAIサービスに渡す前に工事番号へ置き換えることはできますが、工事番号は自社台帳で施主に結びつくため、置き換えても個人データです。減るのは渡る項目だけです。
置き換えても置き換えなくても、渡し方は先に決めます。預けた変更指示書と図面をサービス側が取り扱わないと契約で決まっているとします。サービス側で開ける人も適切に絞られていれば、個人データの提供に当たらず、施主の同意も要りません。
読み取り結果をサービス側の人が点検するなど、中身に触れる約款もあります。その場合は個人情報保護法の委託(第25条)と言える内容かを契約書で確かめ、言えなければ施主本人の同意を先に得る第三者提供(第27条)です。国外の事業者なら第28条も絡むので、確かめる順は作業員名簿を社外へ出す前の整理に沿います。
訂正図の受付から差分一覧までをつなぐ仕組みは、開発に任せられる
訂正図1件ぶんの差分一覧は、積算担当の机で作れます。比べる2つの版を決め、差と響く行の候補をAIに並べさせ、誤検出を消すところまで、要るのは新旧の図面と提出済みの見積明細だからです。
AIエージェント開発に任せられるのは、訂正図の受付から、差の一覧、響く行の候補、区分の欄つきの様式までを1本につなぐ仕組みです。訂正図がメール・共有フォルダ・紙のどこに届くかが案件ごとに違う会社では、比べる版を取り違えない受付の形から作ることになります。
つなぐ部位の順番は、後から足した連動の行が多い部位からにします。数え始める前の会社なら開口部まわりが先で、開口が1か所動くと、建具・下地・仕上げ・電気の行が一緒に動くからです。設備の配管と仕上げの範囲は、見積明細の行を部位で割り直してから足します。
明日から始める3ステップ
担当 積算担当
次に出す見積で、開口部まわりの一式の行を部位ごとに割り、各行に図番の列を付ける
次へ進む目安図番つきで部位ごとに分かれた見積を1件出した
担当 工事部長
自社の契約書で、単価の基礎・協議に回る条件・協議が整わないときの決め方がどの条にあるかを確かめ、差分一覧の区分の欄に書き込む
次へ進む目安次の訂正図で、全行に区分と根拠の条が入った
担当 積算担当
変更1件を締めるたびに、AIの候補に無く後から足した連動の行を部位別に数え、差分一覧の欄外に書く
次へ進む目安四半期の締めに部位別の合計を出し、前の四半期と並べた表を工事部長へ渡した
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出典
- 建設業法(昭和24年法律第100号)(第19条第1項第6号) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
- 国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」(2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約) 国土交通省 確認日 2026.09.29
- 公共工事標準請負契約約款 新旧対照表(令和7年12月2日改正)第二十五条(A)(請負代金額の変更方法等)・第二十五条の注・第二十五条(A)第2項(新設) 国土交通省 確認日 2026.09.29
- 国土交通省「建設工事標準請負契約約款について」(改正の一覧) 国土交通省 確認日 2026.09.29
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条 委託先の監督・第27条第1項 第三者提供の制限・第28条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
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