建設の追加工事をAIで書面に:電話の指示を5欄に分け着工前に変更契約
追加工事は、定例で話がまとまってから変更契約を結べば足りる、と考えられがちです。ところが国土交通省のガイドラインは、工事に手を付けた後に交わした変更の書面を、建設業法違反の例に挙げています。電話で指示を受けたその日に何を記録に残すかで、着工前に書面を交わせるかが決まります。

先に結論
口頭で受けた追加の指示は、変更記録の「指示の範囲」の欄が埋まり、変更の書面を交わし終えるまで着手しません。記録には指示者・日時・指示の範囲・着手予定日・当初契約との関係の欄を持たせ、空いた欄がその日のうちに見えるようにします。
掘るまで量が出ない追加だけは順番が違います。変更契約より前に、作業内容・契約変更の対象と時期・単価を書いた書面を交わし、着工前の合意を残します。
AIに回せるのは、音声メモとメールを変更記録の欄へ分けて空欄を示す下書きと、判定の済んだ記録から起こす変更の書面・説明資料の下書きです。空欄を指示者に聞き直すのは現場代理人です。追加か契約内かの判定と金額・工期は工事部長が決め、締結と協力会社の注文書の差し替えは決裁者が受け持ちます。
着工後に交わした変更の書面は違反の例になる
追加工事の書面を、工事に手を付けた後や終わった後に交わすと、国土交通省のガイドラインでは建設業法第19条第2項違反の事例として扱われます。そのため変更記録には、着手予定日と書面を交わした日を並べて残します。
第19条第2項は、工事内容、請負代金の額、着手と完成の時期など第1項の事項を変えるときの定めです。変更の中身を書面にし、双方が署名か記名押印をして交付し合います。義務は発注者と受注者の双方にかかり、元請と協力会社の間の契約にも同じようにかかるので、協力会社の注文書の差し替えも同じ日に済ませます。
発注者と元請の取引向けの法令遵守ガイドライン(第8版)は、違反の例を3つ挙げています。価格が動いても契約後の増額や工期の変更を認めないなど、実質的に契約変更の定めを置かない場合。追加工事が出たのに、発注者が書面で契約を変えなかった場合。着手後か終了後に書面で変えた場合です。
災害時などを除き、着工前に済ませるのが原則です。理由としてガイドラインは、口約束では明確さが担保されず紛争のもとになる点を挙げています。
書面は紙に限りません。相手方の承諾を得れば、省令で定める電子的な方法で交わしても、書面を交わしたものとみなされます(第19条第3項)。電子契約を使うかどうかは、発注者ごとの承諾で決まります。
費用の負担にも決まりがあります。受注者が追加を理由に代金や工期の変更の協議を申し出たのに、発注者が取引上の地位を不当に使って応じない場合です。
その結果、代金の額が「通常必要と認められる原価」を下回れば、取引依存度などの状況によっては第19条の3に違反するおそれがあります。不当に低い請負代金の禁止の定めなので、協議を申し出た日付も変更記録に残します。
電話の指示から締結までで、AIが下書きするのは2工程
電話を受けてから書面を交わすまでは6つの工程に分かれ、AIが下書きするのは変更記録と変更の書面の2つです。聞き直しと判定は、その間に人の工程として挟まります。
図の要点:電話の指示から着工前の締結までの6工程の流れ図。現場代理人が発注者の担当者から電話で指示を受けて音声メモを残す。AIが音声メモとメールを変更記録の欄に分けて空欄を示す。現場代理人が空いた欄を指示者に聞き直し、範囲が空けば着手しない。工事部長が契約書・設計図書・内訳書と照合して追加か契約内かを判定する。AIが変更の書面と説明資料を下書きし、金額と工期は工事部長が書き入れる。決裁者が着工前に書面を交わし、協力会社の注文書も差し替える。
聞き直しと工事部長の判定を通った指示だけが、着工前の書面へ進む
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発注者の担当者から電話で指示を受ける
音声メモを残す
現場代理人
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変更記録を下書きする
音声メモとメールを欄に分け、空欄を示す
AI
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空いた欄を指示者に聞き直す
範囲が空けば着手しない
現場代理人
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追加か契約内かを判定する
契約書・設計図書・内訳書と照合する
工事部長
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変更の書面と説明資料を下書きする
金額と工期は工事部長が書き入れる
AI
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着工前に書面を交わす
協力会社の注文書も同じ日に差し替える
決裁者
掘ってみるまで量が分からない追加は、この流れに乗りません。範囲の欄が埋まっても変更契約を結び切れないので、後の章で扱う3つの事項を書いた書面を、着工前に先に交わします。
仮に、掘削の途中で図面にない埋設物が出て、発注者の担当者が電話で撤去を頼み、範囲の欄が「撤去」だけで処分まで含むかが空いていたとします。聞き直さずに重機を回すと、定例の会議で処分は頼んでいないと言われたとき、処分の分を自社で負うことになるので、現場代理人がその日のうちに電話で聞き直します。
締結の日には、協力会社への注文書も差し替えます。旧条件の注文書が残っていると、下請の側で同じ追加が書面の無いまま進みます。下請の追加が実行予算の超過にどう出るかは、予算超過を単価・数量・追加の3つに分けるにつながります。
変更記録は5つの欄で受ける
変更記録の欄は、発注者に書面を出すときに要る項目から決めます。現場代理人が電話の後に埋めるのは、次の5つです。
| 変更記録の欄 | 現場代理人が聞き取る中身 | 空いたときの扱い |
|---|---|---|
| 指示者 | 発注者側の誰が、どの立場で頼んだか | 名前と役職を聞き直す |
| 日時 | 指示を受けた日と時刻 | 現場代理人が書き足す |
| 指示の範囲 | 撤去だけか、処分までか | 着手しない |
| 着手予定日 | いつ手を付けるか | 工程会議で決める |
| 当初契約との関係 | 設計図書に書かれているか | 工事部長の判定まで空ける |
【説明用の架空の記入例】指示者は発注者の工事担当の課長、日時は10月6日14時20分の電話です。指示の範囲は「埋設物の撤去」とだけあり、処分まで含むかは未確認です。着手予定日と当初契約との関係の欄は空けておき、範囲を聞き直した後に工程会議と工事部長の判定で埋めます。
5つの欄のうち、空いたら着手を止めるのは指示の範囲の1つで、ほかの欄は聞き直しと並べて埋めていけます。書面を交わした日と協議を申し出た日は、判定の後に工事部長が同じ記録へ書き足します。
音声メモの氏名と携帯番号を外部のAIに渡すとき
指示者の欄を音声メモから起こすと、発注者の担当者の氏名や携帯番号がそのまま入ります。外部の生成AIサービスで下書きするなら、渡し方の扱いを先に決めます。サービス側は音声メモを取り扱わないという決まりが契約にあり、運営会社の社員が開ける範囲も限られているとします。その場合は、メモの置き場がそのサーバでも、法律上は提供に当たらない扱いです。
中身を扱う契約なら個人情報の取扱いの委託(第25条)に当たるか、委託とも言えず本人の同意を前提とする第三者提供(第27条)になるかを見ます。判断するのは社内の個人情報の担当者で、材料はサービスの規約と契約です。
国外の事業者に渡すときの確かめ方や、学習に使わない設定・保存の期間・解約時の削除の読み方は、作業員名簿を外部のAIへ渡す前の手順に沿います。現場代理人以外の誰が変更記録を開けるかも、同じ日に決めておきます。
数量が決まらない追加は3つを書いた書面を先に
掘ってみるまで量が分からない追加は、発注者が3つの事項を書いた書面を着工前に受注者と取り交わし、内容が確定したら遅滞なく契約を変更します。量が決まらないうちは、着工前に変更契約を結び切れないからです。
1つ目は、追加として施工を頼む工事の具体的な作業内容です。2つ目は、その追加が契約変更の対象になることと、契約を変える時期。3つ目は、追加工事の契約単価の額です。
内訳書に同じ工種があればその単価を使い、無い工種は協議に回します。どの行を内訳書の単価で決め、どの行を協議に回すかは、設計変更の見積修正で単価を振り分ける考え方と同じです。
契約前の通知が、追加工事の協議を申し出る前提になる
第20条の2による協議は、契約前の通知から始まります。そのため、見積書を出す時点で通知の要否を確かめる必要があります。
建設業法第20条の2は、工期や代金に響く事象のおそれがあると認めたとき、契約を結ぶまでに相手へ知らせるよう定めています。知らせる事象は、注文者の側が地盤の沈下や地下埋設物による土壌の汚染など、建設業者の側が主要な資機材の供給の不足や遅延、価格の高騰などです。どちらも、見積の前に有無を確かめます。
建設業者が知らせる事象は、施行規則第13条の16で、天災その他不可抗力により生じるものに限られます。知らせ方は第13条の17が決めていて、見積書を作るときは、情報を書いた書面を添えて見積書を交付するので、見積の時点で積算担当が添付の有無を確かめます。
知らせておいた建設業者は、その事象が起きたとき、工期や工事内容、代金の変更について協議を申し出ることができます。申出を受けた注文者にも、根拠を欠く申出などの正当な理由がある場合を除き、誠実に協議に応ずる努力義務があります。
見積書に添えた通知の書面の控えは、変更記録と同じ案件のフォルダに置きます。協議を申し出るときになって探し始めると、どの資機材について何を知らせたかが出てきません。協議の申出を書くときの材料も、この控えと、仕入先からの値上げの通知です。
合意前の着手が判定待ちで出るなら、受け渡しを外と組み直す
合意より先に手を付けた件は、工事部長が週ごとに数えるとき、どの工程で止まって出たかも書き添えます。月末の定例で探すより週の途中で見つけるほうが、協議を申し出る日付を残せます。聞き直しの遅れで出た件なら、現場代理人がその日のうちに電話する決まりで減らせます。
判定を待つ間、金額と工期を書き入れる間、決裁と協力会社の注文書の差し替えの間で止まる件もあります。こちらは工事部・積算・総務・購買の受け渡しで起きていて、欄をいくら整えても減りません。この受け渡しを自社の会議だけで組み直せないときが、外部の担当者も当事者として加わるFDE型AI伴走支援を比べる場面です。
同じ様式を次の現場へ渡す時期は、工事部長が件数の並びを見て決めます。たとえば、合意前の着手が4週続けて出なかった時点を区切りにする決め方があります。1件でも出た週は、様式を広げずに止まった工程へ戻します。協力会社の注文書が差し替わっていない件も、同じ日付の並びから見つけられます。
入口が1人の現場代理人の電話だけの現場に、AIの下書きは向きません。変更記録を紙の様式に決めて現場代理人が書くだけで足ります。指示が電話・メール・議事録に散る現場で要るのも、5つの欄の様式と、社内で使ってよいと決めた生成AIだけです。
量が掘るまで決まらない追加が続く現場は、数え方を分けます。3つの事項の書面を着工前に交わした件は合意前の着手に入れず、量が確定した日から変更契約までの日数を別の列で追います。
明日から始める3ステップ
担当 工事部長
指示が電話・メール・議事録に散っている現場を1つ選び、5欄の変更記録の様式を現場代理人に渡す
次へ進む目安その現場で次に出た追加の指示が、受けた日のうちに5欄の記録になった
担当 現場代理人
範囲の欄が空いた指示は、その日のうちに指示者へ電話で聞き直し、答えを記録に書き足す
次へ進む目安範囲が空いたまま手を付けた指示が1件も無い
担当 工事部長
毎週、変更記録の着手予定日と合意日を見比べ、合意より先に手を付けた件を現場ごとに数える
次へ進む目安合意より先の着手が出た週のうちに、止まっていた工程を現場代理人と特定して直した
無料相談(オンライン)
BoostXは、建設会社の積算・日報・安全書類へのAI導入を支援しています
01無料相談
積算・日報・安全書類から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 建設業法(昭和24年法律第100号)(第19条第2項・第19条第3項・第20条の2) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」(令和8年1月)2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約・2-2(2)追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応・2-2(3)追加工事等に要する費用の負担 国土交通省 確認日 2026.09.28
- 建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)(第13条の16・第13条の17) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条 委託先の監督・第27条第1項 第三者提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」(Q7-53・Q7-54) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.28
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