経理の請求書業務をAIで自動化|100社分を一括作成・送信する方法
「毎月の請求書作成に丸1日かかっている」「取引先が増えるほど経理の負担が重くなる」——中小企業の経営者や経理担当者から、こうした声をよく耳にします。
人手不足が深刻化する中、経理業務の効率化は待ったなしの課題です。しかし、高額な会計システムを導入する余裕がない企業も多いのが現実ではないでしょうか。
本記事では、生成AIとGoogle Apps Script(GAS)を組み合わせて、請求書の作成からメール送信までを自動化した実践事例をご紹介します。100社分の請求書発行がボタン1つで完了する仕組みを、具体的な手順とともに解説します。
経理業務におけるAI活用とは
経理業務のAI活用とは、生成AIを使ってコードを書いたり、定型業務を自動化したりすることで、人手不足を解消し業務効率を大幅に向上させる取り組みです。
経理業務におけるAI活用とは、ChatGPTやGeminiなどの生成AIを活用して、これまで手作業で行っていた業務を効率化・自動化することを指します。
具体的には、以下のような活用方法があります。
重要なのは、AIは「人間の代わりに考える」のではなく、「人間がやらなくてもいい作業を代行する」という点です。経理担当者の専門知識や判断力は引き続き必要ですが、単純作業から解放されることで、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。
請求書業務の課題:手作業の限界
請求書の作成・送信を手作業で行うと、100社分で1〜2日かかることも珍しくありません。取引先が増えるほど負担は膨らみ、人手不足の中小企業では深刻な課題となっています。
手作業による請求書業務の実態
毎月の請求書発行業務は、多くの中小企業で大きな負担となっています。一般的な手作業のフローを見てみましょう。
顧客情報・請求内容の確認
取引先ごとに請求金額、支払条件、送付先を確認
請求書の作成
ExcelやWordで1社ずつ請求書を作成し、PDF化
メール送信
1社ずつメールを作成し、PDFを添付して送信
送信履歴の管理
誰に、いつ、何を送ったかを記録
この作業を取引先の数だけ繰り返すと、100社であれば100回同じ作業を行うことになります。1社あたり10〜15分かかるとして、100社分では15時間以上、つまり丸1〜2日が請求書業務だけで消えてしまいます。
手作業が抱える3つの問題
特に人手不足が深刻な中小企業では、経理担当者が1人しかいないケースも珍しくありません。その1人が月末の請求書業務に忙殺されている状況は、経営リスクでもあります。
解決策:AI×GASで請求書業務を自動化
生成AIでGoogle Apps Script(GAS)のコードを書き、Googleスプレッドシート・ドキュメント・Gmailを連携させることで、ボタン1つで100社分の請求書作成・送信が完了する仕組みを構築できます。
自動化の全体像
今回ご紹介する自動化の仕組みは、Google Workspaceの無料ツールと生成AIを組み合わせたものです。高額なシステム投資は不要で、中小企業でもすぐに導入できます。
Googleスプレッドシート
顧客情報(社名、メールアドレス、請求金額など)を一元管理
Googleドキュメント(テンプレート)
請求書のテンプレートを用意し、GASで差し込み印刷のように使用
Google Apps Script(GAS)
スプレッドシートのデータを読み込み、請求書PDFを自動生成
Gmail自動送信
生成したPDFを添付し、各取引先へ自動でメール送信
なぜGASと生成AIの組み合わせなのか
Google Apps Script(GAS)は、Googleのサービスを自動化できる無料のプログラミング環境です。従来、GASを使うにはプログラミング知識が必要でしたが、今はGeminiやChatGPTなどの生成AIがコードを書いてくれます。
「やりたいことをイメージできれば、自動化できる。今のAIの精度はかなり高いので、どこのデータを参照して、何を出力したいのかを明確に伝えれば、GASのコードは簡単に書ける」
— 生成AI顧問の視点
つまり、プログラミングができなくても、「スプレッドシートのA列からメールアドレスを取得して、請求書PDFを添付してメールを送りたい」と伝えれば、AIがコードを生成してくれるのです。
生成AIを活用した業務改善の進め方について詳しく知りたい方は、生成AI顧問サービスとはをご覧ください。
導入ステップ:自動化の具体的な手順
自動化の導入は、顧客情報の整理→テンプレート作成→GASコード生成→テスト運用の4ステップで進めます。AIにコードを書かせるため、プログラミング知識は不要です。
Step 1:顧客情報をスプレッドシートに整理
まず、Googleスプレッドシートに顧客情報を一覧化します。以下のような項目を列として設定します。
既存の顧客リストがExcelにある場合は、そのままGoogleスプレッドシートにインポートできます。
Step 2:請求書テンプレートを作成
Googleドキュメントで請求書のテンプレートを作成します。既存の請求書フォーマットがあれば、それをベースにGAS用にチューニングします。
ポイントは、差し込みたい箇所を「{{会社名}}」「{{請求金額}}」のようなプレースホルダーにしておくことです。GASがスプレッドシートのデータをこのプレースホルダーに差し込んでいきます。
Step 3:生成AIでGASコードを作成
ここが自動化の核心部分です。GeminiやChatGPTに以下のように依頼します。
「Googleスプレッドシートの顧客リストを読み込み、Googleドキュメントのテンプレートに差し込んでPDFを生成し、各顧客のメールアドレスにGmailで自動送信するGASコードを書いてください。スプレッドシートのA列は会社名、B列は担当者名、C列はメールアドレス、D列は請求金額です。」
AIが生成したコードをGASエディタに貼り付け、必要に応じて微調整します。うまく動かない場合は、エラーメッセージをAIに伝えれば修正案を出してくれます。
ポイント
AIにコードを書かせる際は、「どのシートの、どの列を参照するか」を具体的に伝えることが重要です。曖昧な指示だと、意図と違うコードが生成されることがあります。
Step 4:テスト運用と本番稼働
いきなり全取引先に送信するのではなく、まずは自分のメールアドレスでテストします。請求書の内容、添付ファイル、メール本文を確認し、問題なければ本番稼働に移行します。
本番稼働後は、スプレッドシートにボタンを設置しておけば、毎月の請求日にボタンを押すだけで全取引先への請求書送付が完了します。
「自社でも導入したいが、設定に不安がある」という方は、生成AIコンサルティングで構築サポートを行っています。
AI活用を成功させるポイント
AI活用の成功の鍵は「自分がやらなくてもいい業務を見極めること」。完璧を求めず、まずは定型業務から自動化を始めることで、確実に効果を実感できます。
「自分がやらなくてもいい業務」を見極める
AI活用で最も重要なのは、「何を自動化するか」の見極めです。すべての業務をAI化しようとするのではなく、以下の基準で優先順位をつけましょう。
「何事も自分でやると時間がかかる。自分がやらなくてもいい業務にAIを活用して、スピードを上げながら精度も高めていく。これが中小企業の経理が目指すべき姿だと考えている」
— 生成AI顧問の視点
完璧を求めない
AI活用でありがちな失敗は、「100%自動化しよう」と完璧を求めすぎることです。80%の精度で動く仕組みができれば、残り20%は人間がチェックすればいいのです。
請求書の自動化でいえば、金額の最終確認は人間が行い、作成・送信の作業だけをAIに任せる。この割り切りが、スムーズな導入につながります。
小さく始めて成功体験を積む
いきなり大規模な自動化に取り組むのではなく、まずは1つの業務から始めることをおすすめします。請求書の自動化で効果を実感できれば、次は見積書、次は経費精算と、徐々に範囲を広げていけます。
当社が多くの中小企業に選ばれている理由について詳しくは、選ばれる理由をご覧ください。
よくある質問
まとめ
「自社でも請求書業務を自動化したい」「まずは何から始めればいいか相談したい」という方は、無料相談の流れをご確認のうえ、お気軽にお問い合わせください。
この記事のまとめ
- 経理の請求書業務は、手作業だと100社分で1〜2日かかることもある
- 生成AI(Gemini等)でGASコードを書けば、プログラミング知識なしで自動化できる
- スプレッドシート→テンプレート→GAS→Gmailの連携で、ボタン1つで請求書作成・送信が完了
- 「やりたいこと」を明確にAIに伝えることが、自動化成功の鍵
- 自分がやらなくてもいい業務から、小さく始めて成功体験を積むことが重要
人手不足が深刻化する中、経理業務のAI活用は「やるかやらないか」ではなく「いつやるか」のフェーズに入っています。月末の請求書業務に追われる時間を、本来の経営判断や業務改善に使えるようになれば、会社全体の生産性は大きく向上します。
まずは1つの業務から、AI活用を始めてみてはいかがでしょうか。
執筆者
吉元大輝(よしもとひろき)
株式会社BoostX 代表取締役社長
中小企業の生成AI導入を支援する「生成AI伴走顧問」サービスを提供。業務可視化から定着支援まで、一気通貫で企業のAI活用を推進している。
※本記事の情報は2026年2月時点のものです。
貴社の業務に、
AIという確かな選択肢を。
「何から始めればいいか分からない」という段階でも構いません。現状の課題を伺い、最適な導入計画をプロと一緒に整理します。