介護記録を退勤後に書く時間は労働時間。勤務内に収める記録の分け方
通所介護・入所施設で、パート職員の勤怠と人件費を見る施設長・管理者と、勤怠の書き出しを受け持つ事務担当の困りごとを扱います。
月末に勤怠を締めていたら、退勤を打った後の時刻にサービス提供記録を入れているパートの職員が何人か見つかりました。シフト表で立てた人件費の見込みも、勤怠の実額と合いません。その時間の分を払う必要があるのか、何年分さかのぼるのか、この先どう止めるのかが、まだ決まっていません。

先に結論
業務として求めた介護記録を事業所で書いた時間は、退勤の打刻の後でも労働時間で、時給制のパート職員なら賃金の対象です。払っていない分の請求権は、当分の間3年あります。
実態は、事務が退勤打刻と記録ソフトの最終入力時刻を1日ずつ並べ、差のある日を管理者が本人から聞き取って確かめます。過去の分をどの時間で数え、いくら払うかは、施設長が社会保険労務士と決めます。
この先は記録枠をシフトに入れるか、時間外として申請してもらう形で勤務の中へ戻し、ケア直後のメモからの下書きはその後に足します。生成AIが作るのは下書きと定型項目への整形までで、記録の確定と異変を報告するかはケアをした職員が決めます。下書きを入れても、記録の時間を払う判断は変わりません。
打刻の後でも、求めた記録は指揮命令下の時間
労働時間かどうかを分けるのは、打刻の前か後かではなく、使用者の指揮命令下に置かれているかどうかです。明示の指示だけでなく、黙示の指示で業務をしている時間も労働時間に含まれます。
翌日の申し送りに要る記録を、管理者が知っていながら打刻後に書かせている状態は、黙示の指示と見られやすくなります。「自主的に残っていた」では片づきません。
介護事業者に向けた厚生労働省などの資料は、交替勤務の引継ぎ時間や業務報告書等の作成時間を労働時間として扱っていない例を挙げています。そのうえで、労働時間として把握・管理するよう求めています。訪問介護については、作成が介護保険制度や業務規定で義務付けられ、指揮監督のもと事業場や利用者宅で書く記録は労働時間に当たるとされています。
時給制のパート職員も同じです。時給制では、介護サービスに直接従事した時間以外の労働時間も通算して賃金を出すので、引継ぎ、業務報告書の作成、会議、研修も通算に入ります。入浴介助の時間だけ払い、記録の時間を外す計算は通りません。
人件費の見込みが勤怠の実額と合わなくなるのも、ここからです。見込みはシフト表の所定時間×時給で立てますが、打刻後の記録はシフト表にも勤怠にも載りません。払っていなければ未払いが残り、払えば実額が見込みを上回ります。
外れるのは、サービス提供記録でもケース記録でもない私的なメモを書いていた場合です。自宅に持ち帰って書いていた場合は事情で判断が分かれるので、社会保険労務士に個別に確かめます。
未払いの記録時間は当分の間3年さかのぼる
賃金の請求権は、労働基準法第115条の本則では5年で、第143条の経過措置により当分の間は3年とされています(退職手当は5年)。打刻後の記録の時間を払っていなかったなら、さかのぼって確かめる範囲も3年です。
記録の側も同じ年数で考えます。賃金台帳などの労働関係の重要な書類は、第109条の本則で5年、当分の間は3年の保存で、出勤簿やタイムカードもこの保存の対象に入ります。賃金台帳に労働時間数を記入していない場合や、故意に虚偽の労働時間数を記入した場合は、第120条により30万円以下の罰金です。
過去の分は、打刻と在社の記録を基礎に実態を調べて補正します。自己申告の時間と在社の時間に大きな差があれば実態を調べて補正すること、申告できる時間に上限を設けないことも、厚生労働省のガイドラインが求めています。払う時間の数え方と金額は、施設長が社会保険労務士と決めます。
打刻と記録ソフトの入力時刻を並べて確かめる
実態は、勤怠の退勤打刻と記録ソフトの最終入力時刻を1日ずつ並べ、差が出た日を本人に確かめてつかみます。始業・終業の時刻は、タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録を基礎に確認するとされているので、記録ソフトの入力時刻はその材料になります。
記録ソフトの操作履歴から最終入力時刻を取れない製品なら、2週間ほど業務日誌に「記録を書き終えた時刻」の欄を足します。差のある日には曜日と担当工程(入浴・送迎など)を横に書いておくと、次の節の一日の流れと結び付けられます。
【説明用の架空の記入例】ある火曜日の行: 退勤打刻 17:32/記録ソフトの最終入力 18:05/差 33分/担当工程 帰りの送迎の後、サービス提供記録4人分。本人に聞くと、送迎から戻った後にまとめて入力していた、という行です。この行の時刻と人数は、どれも作った値です。
聞き取りは管理者が行い、打刻後に何を書いていたかを聞きます。差がある日を責める場にすると、翌月から「打刻前に書き終えた」形だけが残ります。同じ取り方を翌月も続けると、打刻後の記録が止まったかを比べられます。
| 見る数字 | 取り方 | 読み方 |
|---|---|---|
| 打刻後に入力がある日数 | 退勤打刻と最終入力時刻 | 減れば記録が勤務の中へ戻り始めた |
| 記録1件あたりの時間 | 業務日誌の書き終え時刻 | 記録枠の長さを決める元になる |
| 記録の時間外申請の時間 | 勤怠の申請欄 | 打刻後の日数と並べて読む |
| 下書きを消して書き直した件数 | 業務日誌の件数欄 | 下書きを使う事業所だけ |
見込みに載っていなかった人件費は、1か月ごとに「記録にかかった時間 × 時給」で出します。その日の労働が8時間、その週が40時間を超えた分は、2割5分以上の割増で計算します。打刻後に入力がある日数が減っても、申請の時間が同じだけ増えているなら、記録の量はまだ減っていません。
デイサービスの一日で、まとめ書きを送迎の前へ移す
通所の一日で記録が打刻の後へずれやすいのは、帰りの送迎から戻った後のまとめ書きです。午前からの記憶と紙のメモがそこに積み上がり、送迎の間は記録の手が止まります。
確定を送迎の前に置けば、送迎の後にまとめ書きが残らない
看護職員
介護職員
機能訓練指導員
生活相談員
- 看護職員
到着時のバイタルを測り、その場で入力
紙に書けば後で転記が残る
- 介護職員
入浴・食事・排泄の直後に一言を吹き込む
AIが定型項目の下書きにする
- 機能訓練指導員
機能訓練・レクの様子を記録する
参加者の分をその場で
- 介護職員
送迎に出る前の記録枠で下書きを読み、確定
戻す聞き違いで数や時刻が違う下書きは消し、手で書く
- 介護職員
帰りの送迎
送迎に出ない職員がいれば記録枠はこの時間に
- 生活相談員
業務日誌・申し送り
確定済みの記録から書く
この図で決めるのは、確定の記録枠を送迎の前に置くか、送迎に出ない職員の時間に置くかです。図は看護職員と機能訓練指導員が日中にいる通所の例で、入所の施設でも夕方の申し送りの前に同じまとめ書きが起きます。
いまの一日では、到着時のバイタルを紙に書いて後で転記し、入浴の所見は覚えたまま次の介助へ移り、食事と排泄は手元の紙に書いています。機能訓練やレクの様子も記憶頼みのまま帰りの送迎に出て、戻ってから全員分を入力する流れです。
介護記録の業務の流れは介護記録の業務一覧で工程ごとに並べています。請求やシフトなどの記事は介護AI活用ジャーナルの入口から開けます。
記録枠・時間外の申請・下書きは組み合わせて使う
記録枠を勤務に入れる、時間外として申請・承認する、下書きで記録の量を減らす、の3つは互いの代わりにならないので、組み合わせて使います。下書きで記録が短くなっても、残った記録の時間を労働時間として扱う判断はそのまま要ります。
| 打ち手 | 残る課題 | 向く事業所 |
|---|---|---|
| 記録枠をシフトに入れる | 記録の量は変わらない | 送迎に出ない職員がいる |
| 時間外の申請・承認 | 人件費が見込みを超える | 繁忙日だけ記録が延びる |
| メモから下書きを作る | 確定の手間が増える | 記録ソフトに毎日入力済み |
記録枠は、帰りの送迎に出ない職員に置くと組みやすくなります。全員が送迎に出る事業所なら、午後のレクの時間帯に交代で記録へ回る枠を作ります。
枠の長さは、前の節で測った1件あたりの記録時間に、担当する利用者の数を掛けて決めます。当て推量で決めると、また打刻後にあふれます。利用者が少なく記録が短い事業所なら、記録枠と申請の2つで足り、下書きの仕組みまで入れる必要はありません。
下書きをAIに任せる範囲と、外部へ送る前の確認
下書きでAIが受け持てるのは、ケア直後のメモや音声を記録の文にすることと、食事・排泄・入浴などの定型項目へ整えることです。記録内容の確定と、異変を看護職員や生活相談員に報告するかどうかは、ケアをした職員が決めます。
たとえば(仮の文面)入浴直後に「10時40分入浴、一般浴、右すねに赤み、直径2センチくらい、本人は痛くないと、看護に伝えた」と吹き込みます。下書きは「右下腿に発赤あり(約2cm)。疼痛の訴えなし。看護職員へ報告済み」のような文で返ってきます。
「約2cm」を「2cm」と言い切るような言い換えが出たら、下書きを消して手で書き直し、業務日誌に件数だけ残します。日勤のどこで吹き込み、いつ確定するか、外部の生成AIの契約で何を確かめるかは、ケアの合間の吹き込みと2回の確定を扱う記事が特養のユニットを例に示しています。
病歴や心身の状態を含む利用者の情報は、個人情報保護法の要配慮個人情報です。入力画面に氏名を入れなくても、生年月日や居室番号、連絡帳の家族名から本人に行き着くなら個人データのままです。
外部のAIサービスに送るなら、サービス側が入力の中身をどう扱う契約かを先に確かめます。送る範囲と契約の確認が済んでいない事業所は下書きの仕組みを入れず、記録枠と申請の2つで打刻後の記録を止めます。
試すなら入浴担当の職員の入浴欄と排泄欄から始め、書き直しが減って打刻後の入力が止まったら、食事と様子の欄、別の曜日の職員の順に広げます。たとえば2週間たっても書き直しの件数が減らない間は、確定前の読み合わせを残し、定型項目の欄を先に直します。
社労士と外部の支援が要る場面の見分け方
打刻と入力時刻を並べた結果、打刻後に入力がある日が特定の工程に限られず、職員と日付に広く散っているなら、過去の分の補正は施設の中だけでは数えきれません。払う時間の数え方、自宅へ持ち帰った記録の扱い、補正する金額は、社会保険労務士と決める事柄です。
記録ソフトから操作履歴を書き出せないときや、吹き込みから作った下書きを確定前の状態でソフトに流し込みたいときは、ソフトの提供元か外部の開発支援に相談します。下書きの作らせ方と送る範囲の決め方を毎月少しずつ詰めていくなら、AI顧問のように月ごとに相談できる形が向いています。
聞き取りで「持ち帰って書いた」という答えが出たときは、事業所の中で書いた記録とは扱いが分かれます。打刻と入力時刻の表だけでは見えないので、管理者はその日を表から外して別に書き出し、施設長が社会保険労務士に渡します。
明日から始める3ステップ
担当 事務担当
勤怠管理ソフトから退勤打刻を、記録ソフトの操作履歴から最終入力時刻を、パート職員ごとにひと月分書き出して1日ずつ並べる
次へ進む目安打刻より後に入力がある日に印が付き、その日の曜日と担当工程が横に書かれた
担当 管理者
印の付いた日について、打刻後に何を書いていたかを本人から聞き取り、申告できる時間に上限を付けずに一覧へまとめる
次へ進む目安一覧を施設長が受け取り、社会保険労務士と過去の分の数え方を決める日が決まった
担当 施設長
記録枠か時間外の申請をシフト表に書き込み、翌月も同じ取り方で打刻後に入力がある日数と申請の時間を数える
次へ進む目安打刻後に入力がある日数が前の月より減ったことを確かめ、申請の時間が減っていなければ、入浴欄から下書きの仕組みを試すかを決めた
無料相談(オンライン)
BoostXは、介護事業所の記録・計画・申し送りへのAI導入を支援しています
01無料相談
記録の転記・申し送りから、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(解説リーフレット)(始業・終業時刻の確認と記録・自己申告制の実態調査と補正・賃金台帳の適正な調製・記録の保存) 厚生労働省 確認日 2026.09.27
- 介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント(労働時間・賃金の算定・訪問介護の業務報告書等の作成時間) 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 確認日 2026.09.27
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第115条(時効・労働基準法 第143条第3項(賃金請求権の経過措置・労働基準法 第109条(記録の保存・労働基準法 第143条第1項(記録の保存の経過措置・第32条・第37条第1項 e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.08
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第3項(要配慮個人情報・個人情報の保護に関する法律 第25条(委託先の監督 e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.27
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