介護記録を勤務後の残業にしない、ケアの合間の吹き込みと2回の確定
AIはケア直後に吹き込んだ言葉を記録の下書きにし、確定と異変の報告はケアをした介護職員が持つ
吹き込む時刻と下書きを確定する2つの区切りを、日勤の時間割に書き込める。生成AIは文に整えるまでで、確定と異変を伝える判断は介護職員に残す。

30秒でわかること
何が問題か
未入力の記録が終業前に積み上がるのは、ケアの直後に何も残さず、確定を終業前に一度でまとめているため。
何を見れば判断できるか
確定の置き方はケアのたび・区切りに2回・終業前に一括の3通りがあり、介助の止まり方と記憶の薄れ方で選ぶ。
誰が何をすれば解決するか
ユニットリーダーが時間割に吹き込みと確定の時刻を書き、介護職員が区切りごとに自分の下書きを読んで確定する。
勤務後の残業で介護記録を書く日が続くなら、書く手の速さを疑う前に、日勤の時間割に記録の時刻が書かれているかを確かめます。
日勤の時間割に介護記録を書く時点を入れる
日勤の介護記録が勤務後に残る原因は、ケアの直後に何も残さず覚えておくことと、下書きの確定が終業前に集まることの2つです。時刻は特養のユニット日勤に当てはめた一例で、入浴日や行事の日は区切りが前後します。
図の要点:ユニット日勤の8時30分の申し送りから16時30分の夜勤への申し送りまでを時刻順に並べた図。排泄・入浴・昼食・離床・おやつの各介助の直後に介護職員が吹き込み、AIが下書きにする。13時と16時の2回、ケアをした介護職員が下書きを読んで確定し、転倒・発熱・皮膚の変化は時刻を問わず確定を待たずに看護職員へ口頭で伝える。
吹き込みはケアの直後に、確定は昼食後と申し送り前の2回に寄せる(時刻は一例)
-
8:30
夜勤から申し送り。日勤の介護職員が特記を控える -
9:00
起床・排泄介助。手袋を外すたびに吹き込み、AIが下書きにする -
9:30
検温。値は測った居室でその場で入力 -
10:00
入浴介助。浴室を出て手を拭いてから吹き込む -
12:00
昼食介助。食事量と水分は下膳のときに吹き込む -
13:00
1回目の確定。紙メモと照らし、話していない介助は職員が書き足す -
14:00
排泄介助と離床。区切りごとに吹き込む -
15:00
おやつ。水分量とレクの様子を吹き込む -
16:00
2回目の確定。午後の下書きを読み、夜勤へ渡す特記に印を付ける -
16:30
夜勤へ申し送り。確定済みの記録から伝える -
随時
転倒・発熱・皮膚の変化は確定を待たず看護職員へ口頭で
2回の確定を自分のユニットのどこに置けるかは、昼食介助が終わる時刻と夜勤への申し送りの時刻を書き出すと見えてきます。その2つの間が短すぎるなら、2回目を申し送りの30分前ではなく、おやつの後へ前倒しします。
令和7年度(2025年10月時点)の全国の介護事業所の調査でも、利用者の記録の入力と転記に介護ソフトを毎日のように使う所は72.2%あります。記録ソフトはすでに手元にある事業所が多いので、動かすのは道具ではなく、ケアのどの直後に入力するかという時点です。検温の値は、測った居室でその場で入力しておく前提です。
申し送りから保存までの工程の並びは介護記録のカテゴリに、請求やシフトの記事は介護の業務別の入口から開けます。
施設の形によって、1回目の確定を置きやすい区切りは変わります。
- ユニット型の特養・有料老人ホーム: 昼食後と申し送り前。少人数の日勤で区切りがそろう
- 従来型の多床室のフロア: 昼休憩の交代の前。担当の居室が広く介助の終わりがずれる
- デイサービスを併設し日勤が行き来する施設: 併設側へ移る前。移った後は入所側の端末に戻らない
ケアの合間に吹き込むのは時刻と事実と違い
ケアの直後に話す中身は、時刻としたことといつもと違う点までにとどめ、なぜそうなったかという観察の解釈はAIの文に入れさせません。話す量を増やすほど介助の手が止まり、減らしすぎると前回の記録と比べられなくなります。
仮の文面で、午後の排泄介助の後なら、介護職員はタブレットの音声入力に向けて次のように話します。
「14時10分トイレ誘導、排尿あり普通量、便なし。立ち上がりで膝が折れかけ、手すりを強く握った」と吹き込みます。
AIは利用者を画面で選んだ後の音声の文字起こしを受け取り、記録ソフトの経過記録の欄に未確定の下書きとして返します。返ってくるのは「14:10 トイレ誘導。排尿あり(普通量)、排便なし。立ち上がり時に膝折れしかけ、手すりを強く把持」のような文です。
ここに「下肢筋力の低下がみられる」のような、話していない見立てが足されることがあります。確定する介護職員はその一文を消します。見立てを書くかどうかは、見た本人が自分の言葉で決めることだからです。
聞き違いで数値や時刻がずれた下書きは、直そうとせず消して手で打ち直し、その件数を業務日誌の欄に1日ずつ書きます。どの欄を選択肢や数値にしておくかは、定型の8欄と基準範囲を扱う記事で様式を決めてから吹き込みを始めます。
下書きの確定は昼食後と申し送り前にまとめる
下書きの確定をケアのたびに置くと介助が止まり、終業前にまとめると記憶が薄れた状態で読むことになるため、昼食後と申し送り前の区切りに置きます。
| 確定の置き方 | 介助への影響 | 読むときの記憶 |
|---|---|---|
| ケアのたびに確定 | 1件ごとに画面で手が止まる | 新しく、直しやすい |
| 昼食後と申し送り前 | 区切りでまとめて読む | 半日以内で残っている |
| 終業前に一括 | 介助は止まらない | 朝の分が薄れている |
選ぶときの物差しは、午前の分を昼過ぎに読んで、その場面を思い出せるかどうかです。思い出せない下書きが毎日出るなら、1回目の確定を昼食前へ寄せます。
確定するのはそのケアをした介護職員本人で、13時と16時では読む目的が違います。13時は入浴の紙メモと午前の下書きを並べ、メモにあって下書きに無い介助を手で書き足します。AIは話していないことを足せないので、ここで埋めないと抜けたまま確定されます。
16時は午後の下書きを読んだうえで、夜勤が夜間に気をつける様子を選び、申し送りの特記に印を付けます。膝折れのような立ち上がりの変化は夜間のトイレ誘導に関わるので、この時点で拾います。ユニットリーダーは申し送りの前に、未確定の一覧が空になっているかを見ます。
仮の場面で言えば、16時に一覧を開いたユニットリーダーが、朝の排泄介助の下書きが何人分も未確定のまま残っているのに気づく、というのが終業前一括で起きる形です。この状態で読むと、膝折れのような「いつもと違う点」を本人も思い出せず、確定を押すだけの作業になります。
異変は介護記録の確定を待たず口頭で伝える
転倒・発熱・皮膚の変化などの異変は、AIの下書きと確定を待たずに看護職員へ口頭で先に伝え、誰に何時に話したかを後で記録へ足します。下書きは13時か16時まで未確定のまま置かれ、看護職員が一覧を開くのはその後になるからです。
伝えた後で「13時20分、看護職員へ伝えた」と吹き込めば、伝えた事実も下書きに入ります。異変かどうか迷う様子、たとえば先の膝折れは、見た介護職員がユニットリーダーへ声をかけて一緒に決めます。受けた後の処置や受診の判断は看護職員が持ち、下書きの文はその材料にとどまります。
吹き込む言葉には利用者の名前と心身の状態が入り、病歴などは要配慮個人情報に当たります。外部の生成AIを使うなら、施設長が利用規約と契約を確かめます。
サービス事業者が入力された中身を取り扱わない旨が契約に書かれ、そのうえでアクセスが適切に制御されている場合は、そもそも提供に当たりません。入力の中身に手を触れる契約なら、委託として扱える内容かを契約書で確かめ、扱えないときは本人同意を前提にした第三者提供になります。あわせて、入力が学習に使われない設定か、保存先と保存期間、契約を終えたときの削除を確かめます。
確かめ終えるまでは、記録ソフトの音声入力で文字にするところまでにとどめ、AIの下書きは入れません。吹き込みの時刻と2回の確定は、AIが無くても先に試せます。
合間に吹き込めない入浴・排泄介助の記録はどうする?
手袋や水濡れで端末に触れない介助は、手袋を外した次の区切りで吹き込み、区切りまで間が空くときだけ紙に1行のメモを残します。手袋をしたまま端末を操作すると、衛生面でも押し間違いでも続きません。
入浴が続く午前は、浴室の出口にメモ用紙を置き、居室番号と時刻と違う点だけを1行で書きます。入浴の流れが終わり昼食の準備に入る前に、そのメモを見ながらまとめて吹き込み、吹き込み終えたメモは確定の後に破棄します。
端末を買い足す前に、置き場所を見直します。浴室の出口の棚と詰所に1台ずつ分けるだけで、介助の後に端末を取りに戻る距離が縮みます。それでも手が空かないのは、介助の区切りそのものが時間割に無い場合です。
離れられない利用者の見守りが続くときも、無理に合間を作らず、次の確定の時点で手で書き足します。吹き込めなかった分が毎日同じ介助に偏るなら、その介助の後に区切りを1つ足すよう時間割を直します。
勤務後に残った介護記録は翌日の時間割で直す
時間割で終わらなかった記録は時間外として申請し、残った理由に合わせて翌日の時間割の区切りを動かします。
厚生労働省が介護事業者向けに出している労働条件の資料でも、引継ぎや業務報告書づくりの時間が労働時間から漏れている例への注意が書かれています。申請した記録の時間をどう扱うかは、社会保険労務士に相談して事業所で確かめておきます。
残った下書きは、理由によって直す場所が違います。吹き込まれないまま残ったものは、介助の後に区切りが無かった印なので、その介助の後に区切りを足します。吹き込んだのに確定できなかったものは、確定の時刻に介助が重なった印で、確定の時刻を前後にずらします。
転倒の対応や受診の付き添いで押した日の分は、時間割を詰め直さず、時間外の申請だけで済ませます。その日に合わせて区切りを増やすと、ふだんの日に空きができ、確定がまた終業前に寄るからです。
仕分けを受け持つのはユニットリーダーです。時間外の申請が出た翌朝、残った下書きを1件ずつ開き、どの区切りから漏れたかを時間割の余白に書きます。同じ区切りの名前が1週間に何度も並べば、そこが動かす場所になります。
試す前の週にユニットリーダーが最初にやるのは、いまの日勤の入力時刻を書き出し、吹き込みと2回の確定の時刻を時間割に足すことです。運用は自分のユニットの日勤から試します。施設長は、異変の対応を除いた時間外の申請を週あたりの件数で受け取って測り、隣のユニットへ時間割を広げる時期を決めます。
明日から始める3ステップ
いまの日勤で、介護職員が記録を入力した時刻と退勤の時刻を、勤務表の横に5日分書き出す
- 担当
- ユニットリーダー
- 次へ進む目安
- 5日分が埋まり、終業後に入力した件数を日ごとに数えられた
時間割に吹き込みの時刻と2回の確定の時刻を書き足し、日勤の介護職員と昼礼で読み合わせる
- 担当
- ユニットリーダー
- 次へ進む目安
- 日勤に入る介護職員の全員が、2回の確定を1日ずつ試し終えた
時間外の申請が出た翌朝、残った下書きを吹き込み漏れ・未確定・異変の対応に分け、漏れた区切りを時間割の余白に書く
- 担当
- ユニットリーダー
- 次へ進む目安
- 異変の対応を除いた申請が出ない週が来て、施設長と隣のユニットの時間割を組む日を決めた
この記事の見方を、自社に当てはめる
- 得られるもの
- ケアの合間のメモと音声からの介護記録の下書き、介護記録からの申し送りと日誌のまとめなど、介護の6つの候補の中から、いまの事業所に合う工程が1つ示される
- 所要時間
- 約1分(6問)
- 登録
- 結果を見るまで登録は要りません
- 押した後
- 答えるとその場で、最初にAIへ任せる1工程と、人が確かめる所、2週間の試し方が出ます。資料として受け取るときだけ、会社名・お名前・メール・役職を入力します。
出典・参考資料4件
- 令和7年度 介護労働実態調査 結果の概要7.(1) 介護テクノロジーの導入状況公益財団法人 介護労働安定センター 確認日 2026.10.02
- 介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント(労働時間の適正な把握)厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 確認日 2026.10.02
- 個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-3(外国にあるサーバへの保存)個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第3項(要配慮個人情報)・第25条・第27条第1項e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.02
編集・監修体制BoostX編集部
BoostX編集部(株式会社BoostX)が、官公庁・業界団体などの一次情報を原典で確かめて書いています。下書きにはAIを使い、編集担当者が内容と出典を確認してから公開しています。
更新履歴
最終更新
ユニット日勤の時間割に、吹き込む時刻と下書きを確定する2つの区切りを書き込んだ図と、確定の置き方3通りの比べ方を載せて公開した