司法書士の登記書類とAI|証明書から写させる5項目と補正を減らす照合
相続登記の転記と照合が補助者の手に追いつかなくなってきた司法書士事務所で、所長・司法書士・補助者が分担を決めるための記事です。
相続登記と住所変更登記の依頼が重なると、補助者は登記事項証明書・除票・附票から申請情報・遺産分割協議書・委任状へ、同じ値を何度も写すことになります。照合表の行の分け方、住所が合わないときの扱い、補正の連絡を受けたときの直し方の順に、AIに写させてよい値と司法書士が原本で確かめる値の境目を説明します。

先に結論
相続登記の転記でAIに任せるのは、写す元の書類と欄が決まっている項目(被相続人の氏名・住所・地番と家屋番号・持分・原因の日付)と、申請情報・協議書・委任状の3通で値が違う欄の一覧です。値の横には、どの書類のどの欄から写したかを添えさせ、読めない字は空欄で返させます。
附票で住所のつながりが途切れないか、住居表示の変更の証明書などを取るか、一覧に出ない欄も含めた申請情報の全欄の確定は、司法書士が原本を開いて判断します。住居表示の実施や地番の変更が挟まる案件は照合表から外し、最初から手で確かめます。
附票の画像を外部のAIサービスで読ませるかは、所長が入力可否表に可と書くまで決めず、それまでは所内の照合表で進めます。
申請情報の確定は司法書士の業務なので、AIの行と分ける
登記の手続の代理と、法務局に提出する書類や電磁的記録の作成は、司法書士法第3条が司法書士の業務と定めています。第73条は、司法書士会に入会した司法書士や司法書士法人でない者がこの業務を行うことを禁じる条文です。AIが作るのは司法書士が確定する書類の下書きなので、次の章の照合表でも、申請情報の確定の行は司法書士の担当にしています。
もう1つの理由は、食い違いの一覧の性質にあります。一覧に載るのは、申請情報・協議書・委任状の3通の間で値が違う欄だけです。地番の書き誤りが3通へそのまま写れば、3通は同じ誤りでそろい、一覧には出てきません。一覧が空でも、司法書士が申請情報の全欄を原本と見比べる手順を省けないのはこのためです。
照合表の9行のうち、AIに写させるのは6行
照合表の9行のうちAIに写させるのは、写す元の書類と欄が決まっている6行です。AIが写す行には、値の横に「どの書類のどの欄から写したか」を必ず添えさせます。
図の要点:転記照合表の9行。AIが写す6行は、被相続人の氏名(除票の氏名欄・読めない字は空欄)、住所(登記記録と除票の最後の住所を並べる)、地番と家屋番号(登記事項証明書の表題部)、持分(協議書の条項)、原因の日付(戸籍の死亡の日)、申請情報・協議書・委任状で値が違う欄の一覧で、値の横に元の書類と欄名を添える。司法書士が原本で埋める3行は、附票で住所のつながりが途切れないか、住居表示の変更の証明書などを取るか、一覧に出ない欄も含めた申請情報の全欄の確定。
元の欄名が付いた6行は開く原本が決まり、残る3行は司法書士が一から埋める
- AIが写す行(値の横に元の書類と欄名を添える)
- 被相続人の氏名: 除票の氏名欄。読めない字は空欄
- 住所: 登記記録の住所と除票の最後の住所を並べる
- 地番と家屋番号: 登記事項証明書の表題部
- 持分: 協議書の、その不動産を取得する相続人の条項
- 原因の日付: 戸籍の死亡の日
- 食い違いの一覧: 申請情報・協議書・委任状で値が違う欄
- 司法書士が原本で埋める行
- 住所のつながり: 附票で途切れないか
- 追加の書類: 住居表示の変更の証明書などを取るか
- 申請情報の確定: 一覧に出ない欄も含め全欄を原本で
氏名と地番の行には、推測で埋めた字が紛れ込みます。所長は、異体字の置き換えと、読めない文字を推測で埋めることを指示の段階で禁じ、空欄で返させます。空欄なら、補助者が原本を開くのはその欄だけで済みます。推測で埋められた字は見た目が整っているぶん、かえって見落とされます。
【説明用の架空の記入例】
地番と家屋番号
1234番5・家屋番号1234番5(登記事項証明書の表題部)持分
2分の1(遺産分割協議書第2条)原因の日付
空欄(戸籍の画像で日付の一部が読めないため)食い違いの一覧
委任状の地番だけが「1243番5」で、申請情報・協議書と違う
この例では、補助者は戸籍の原本で日付を確かめ、司法書士は委任状の地番を直したうえで、一覧に出ていない欄も含めて申請情報の全欄を原本と見比べます。
照合表のひな型は事務所で1つにし、共有フォルダの案件ごとの場所へ複製して使います。値を3通へ配る前の案件、つまり遺産分割協議書の案をまだ作っていない相続登記なら、6行を写させてから3行を埋める順番をそのまま試せます。証明書を紙のまま受け取り、案件ごとのPDFが共有フォルダに無い事務所には、照合表はまだ向きません。先にPDFで保存する運用が要ります。
一人の補助者が照合まで持っていた事務所なら、補助者が退職するときの登記書類の引き継ぎで担当を先に決め直してください。許認可の書類で同じ照合表を組むなら、外へ頼める範囲を行政書士の許認可申請とAIの内製・外注が条文から追っています。
登記記録と除票の住所が合わないときは?
差の理由が転居だけなら、附票がそろえば一覧からつながりを追えます。住居表示の実施や地番の変更が挟まると、一覧に出た差がどちらの理由かを文字の並びからは見分けられません。
附票が届くまで、除票の住所を仮に写して先へ進めない
-
転居だけで説明がつく
附票の住所の履歴をAIに並べさせ、司法書士が附票の原本で確かめる
-
住居表示の実施か地番の変更が挟まる
一覧を使わず司法書士が手で確かめ、証明書を取るか決める
-
附票がまだ届いていない
申請を止め、取り寄せを待つ
附票が届く前に除票の住所を仮に写すと、仮の値が協議書と委任状にも入り、後で3か所を直すことになります。止める判断は補助者に任せず、司法書士が案件ごとに付けます。
附票には転居先の住所が並び、相続人の分も含めて個人データがそのまま載っています。所内の環境で読ませるなら、画像は所外へ出ません。外部のAIサービスで読ませるなら、運営会社が画像に含まれる個人データを取り扱う契約か、国外の事業者かによって、事務所が負う義務が変わります。その見分け方は法人向け生成AIサービスの選定比較表にまとめてあります。
司法書士法第24条の秘密保持の義務も、同じ附票に掛かります。このため、所長が入力可否表に可と書くまで画像は送らず、それまでは補助者が値を打ち込んだ所内の照合表で進めます。
補正の連絡からの戻し方は、第25条の却下事由で決まる
補正の連絡を受けたら、第25条のどの号の不備かを見て、照合表の対応する行へ戻します。不動産登記法第25条は、申請情報の不動産や権利が登記記録と合致しないとき(第6号)に、申請の却下を定めています。
申請情報が登記原因を証する情報と合致しないとき(第8号)と、申請情報と併せて提供すべき情報が提供されないとき(第9号)も同じです。補正できる不備を、登記官が定めた相当の期間内に補正すれば、却下はされません。
照合表の行に置き直すと、地番と家屋番号の行は第6号、持分と原因の日付の行は第8号、追加の書類の行は第9号の不備を照合の段階で確かめる行です。どの号の補正かを読めば、直す行を探し回らずに済みます。同じ行に補正が集まったときの戻り先は、その行の写す元の欄の指定で、地番と家屋番号の取り違えなら、表題部のどの欄から写すかを司法書士が行に書き足します。
住所のつながりを示す書類が欠けたまま出た申請は、第9号の不備として補正を求められやすくなります。附票の取り寄せはそこから始まるため、却下は避けられても、相続人と約束した完了の日は守れません。相続人から預かる住民票などの抜けも完了の日を遅らせるので、不足と不備を締め日に1通でまとめる追加依頼で申請の前にそろえておきます。
相続と住所変更の期限が重なり、照合表を使う案件が増える
転記の件数を押し上げているのは、申請の義務と期限です。不動産登記法第76条の2は、相続で所有権を取得した者に、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内の申請を求めています。第76条の5は、所有権の登記名義人の氏名や住所が変わった日から2年以内の申請を求めます。
正当な理由なく怠ると、相続の登記は10万円以下、氏名や住所の変更の登記は5万円以下の過料の対象です(第164条)。法務省の案内では、過料の通知は、登記官が相当の期間を定めて催告しても正当な理由なく申請されないときに限られるとされています。
法務省は、住所等変更登記の義務化の施行日を令和8年(2026年)4月1日としています。施行日より前の変更でも、令和10年(2028年)3月31日までの変更登記が要ります。2つの期限の案件が同じ時期に重なるほど、補助者が同じ値を3通へ写す回数は増えます。
スマート変更登記が始まっても、相続登記の照合は事務所の手元に残ります。所有者が簡単な申出を1回しておけば法務局が住所等の変更を確かめて登記する仕組みで、根拠は職権での変更登記を定めた第76条の6です。自然人の登記名義人については申出があるときに限られ、相続による所有権の移転の登記には及びません。
照合表のうち、氏名・住所・地番と家屋番号の3行は住所変更登記でも使え、持分と原因の日付の行は相続登記だけのものです。住所変更だけの依頼に広げるかは、補助者が案件台帳から前年の件数を数え、所長が決めます。申出をした所有者の分は法務局の側で済むため、件数が減る見込みも含めて判断します。
照合表の書き直しは所内で行い、附票の読み取りは外部への依頼も検討する
写す元の欄の指定を書き直す仕事は、事務所の中に置きます。どの欄から写すかは、登記記録と原本を読んできた司法書士でなければ決められないからです。照合表のひな型と案件ごとのPDFの置き場所が決まっていれば、6行の転記は、補助者と事務所で契約した法人向け生成AIサービスのアカウントで始められます。
外部の支援と比べる意味があるのは、証明書と附票をPDFで案件フォルダに保存する運用は回っているのに、6行の転記を補助者の手打ちに頼っている事務所です。附票の画像を所内の環境で読ませ、照合表へ写す仕組みまで作るなら、開発を担うAIエージェント開発が比較の対象になります。行の設計と入力可否表の書き方から詰める段階なら、AI顧問で足ります。
見極めの手がかりは、補正の連絡より前に見つかる誤りの数です。食い違いの一覧が空のまま、司法書士の全欄の照合で誤りが見つかった件数が減らないうちは、仕組みを足しても3通に同じ誤りが入る原因は消えないので、写す元の欄の指定を先に直します。
明日から始める3ステップ
担当 補助者
最初に、遺産分割協議書の案をまだ作っていない相続登記を1件選び、照合表のひな型を案件フォルダへ複製して6行をAIに写させる
次へ進む目安6行すべてに値と元の書類・欄名が入り、読めない字は空欄のまま返っている
担当 司法書士
住所のつながり・追加の書類・申請情報の確定の3行を、附票と証明書の原本を開いて埋める
次へ進む目安住居表示の実施か地番の変更が挟まる案件を照合表から外し、手で確かめる側へ回してある
担当 司法書士
補正の連絡を受けるたびに照合表のその行へ印を残し、3か月ごとに行ごとの件数を数える
次へ進む目安行ごとの補正の件数が表に残り、補正が重なった行(たとえば3か月で2件)は、写す元の欄の指定を書き直してある
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BoostXは、士業事務所の資料回収・書面作成・手続きへのAI導入を支援しています
01無料相談
資料の回収・書面の下書き・手続きから、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)(第76条の2第1項・第76条の5・第164条第1項・第164条第2項・第25条第6号・第25条第8号・第76条の6・第25条第9号) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 法務省「住所等変更登記の義務化について」施行日・施行日前の変更・変更登記の方法(スマート変更登記)・義務違反と過料について 法務省 確認日 2026.09.28
- 司法書士法(昭和25年法律第197号)(第3条・第24条・第73条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条・第27条第1項・第28条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-1(外国にある第三者への委託)・Q12-3(外国にあるサーバへの保存) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
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