士業の生成AIツールの選び方は?4候補の料金と入れない書類の決め方
個人のアカウントで生成AIを使う所員が出てきて、事務所の標準にするサービスを1つに決める役目が回ってきた所長・事務局長に、とくに関係する話です。
所員が個人のアカウントで依頼者の書類を生成AIに入れ始めると、誰がどの書類を入れたかを事務所が後から追えなくなります。事務所の標準にするサービスを1つに絞るときの比べ方と、どのサービスにも入れない書類の一覧の書き方を、所長と事務局長の受け持ちに沿ってまとめました。

先に結論
候補の差は、どの候補も書いている学習の扱いより、月額の表示の条件と、管理画面でしか確かめられない所員ごとの権限と操作の記録に出ます。AIには規約の文面から学習・保存・削除・再委託などの欄を写させ、欄ごとに原文の箇所を添えさせます。
事務局長は写された欄を原文と見比べ、権限と操作の記録を管理画面で試します。入れない書類の一覧と、契約するサービスとアカウントの数は所長が決めます。一覧は「個人情報」とまとめず、法律相談票・源泉徴収票・賃金台帳のように帳票の名前で書きます。
サービスの契約より先に、顧問契約書と顧問先から差し入れられた秘密保持契約を読みます。外部サービスへの送信を断る条項を持つ顧問先の書類は、どのサービスを契約しても入れません。
士業の生成AIツール選びは守秘義務と個人情報保護法から始める
どのサービスを選ぶかを条文が直接定めているわけではありませんが、入れた書類がどこへ渡るかは、守秘義務と個人情報保護法の両方に関わります。料金より先に、書類の行き先を決める欄を比べるのはこのためです。
守秘義務の条文は、士業ごとに書き方が違う
弁護士法第23条は、職務上知り得た秘密を「保持する権利を有し、義務を負う」と、権利の側からも定めています。司法書士法第24条と行政書士法第12条は、秘密を「漏らしてはならない」と書きます。
税理士法第38条は「洩らし、又は窃用してはならない」、社会保険労務士法第21条は「漏らし、又は盗用してはならない」です。自分や他人のために使うことまで禁じています。
税理士と社労士のように資格者が複数いる事務所なら、入れない書類の一覧は1枚にし、窃用・盗用まで禁じる2つの条文に合わせます。資格ごとに所員も顧問先も保管場所も別なら、資格ごとに別のアカウントと別の一覧を持つほうが守らせやすくなります。
外部の生成AIに書類を入れることが、それだけで「漏らす」に当たるかは、条文からは読み取れません。はっきりしているのは、入れた書類が応答を返す以外の用途に回るサービスでは、その先を依頼者に説明できなくなることです。個人情報保護委員会も、提供事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。
個人情報保護法の扱いは、事業者が書類に触れるかで決まる
分かれ目は、提供事業者が書類の中身に手を触れる契約かどうかと、触れるならその契約が委託の形になっているかです。契約の文言で、次の3つのどれに入るかが決まります。
- サーバに保存されていても、契約で提供事業者が中身を取り扱わない旨が定められ、アクセスも適切に制限されていれば、個人データの提供に当たりません
- 事業者が中身を取り扱うなら、取扱いの委託と言える契約かを確かめます。委託なら、第25条の委託先の監督が事務所に残ります
- どちらにも当たらなければ第三者提供で、第27条により本人の同意が要ります
提供事業者が国外の事業者なら、委託の形であっても、第28条の外国にある第三者への提供として本人の同意が要るかを確かめます。国外のサーバに置かれるだけで、事業者が中身を取り扱わないと契約で決まり、事業者の側で開ける担当も絞られているなら、第三者への提供の扱いにはなりません。どの区分に入るかは、次の選定比較表の「提供元が中身を見る条件」と「保存の国と日数」の欄で決まります。
比較表は規約の6欄、管理画面の2欄、所長の記入2欄で作る
選定比較表は候補1本につき1枚作り、規約の文面から写せる欄と、管理画面を操作しないと埋まらない欄を分けておきます。AIに写させるのは規約の6欄で、残る4欄は事務局長と所長が埋めます。
図の要点:候補1本分の選定比較表(10欄)。入力の学習、提供元が中身を見る条件、保存の国と日数、解約したときの削除、再委託先、漏えいのときの連絡の6欄は、AIが規約の文面から原文の箇所を添えて写す。所員ごとの権限と操作の記録は事務局長が管理画面で試し、入れない書類との突き合わせと決裁は所長が記入する。
規約を写した後に、管理画面の2欄と所長の記入2欄が残る
- 入力の学習
- 既定で使わないか、管理者が切る設定かAI が下書き
- 提供元が中身を見る条件
- 保守や調査で中身を見られる条項の有無AI が下書き
- 保存の国と日数
- サーバの所在国と、保存する日数AI が下書き
- 解約したときの削除
- 削除の時期と、削除を示す方法AI が下書き
- 再委託先
- 処理を任せる事業者の一覧の開示AI が下書き
- 漏えいのときの連絡
- 連絡の窓口と、知らせる期限AI が下書き
- 所員ごとの権限
- 所員単位で止められるかを事務局長が試す人が確定
- 操作の記録
- 事務局長が入力の記録を1件取り出す人が確定
- 入れない書類との突き合わせ
- このサービスに入れてよい帳票を所長が記入人が確定
- 決裁
- 契約するサービスとアカウントの数を所長が記入人が確定
決裁の日は、事務局長が管理画面で権限と操作の記録の2欄を埋め終えた後に置きます。権限と記録は、契約書の文言ではなく管理画面の操作でしか確かめられないからです。
AIに写させるときは、欄ごとに原文の箇所を添えさせ、規約に無い欄は空欄のまま残させます。推測で埋めた欄は、書かれていない約束を書かれていると読み違える元です。事務局長は写された欄を原文と1つずつ見比べ、空欄は提供元に問い合わせてから埋めます。
【説明用の架空の記入例】候補Aの選定比較表(一部の欄)
- 入力の学習(AIが写す): 既定で使わない。規約の該当条を添える
- 提供元が中身を見る条件(AIが写す): 規約に記載なし。提供元へ問い合わせ中のため空欄
- 所員ごとの権限(事務局長): 管理画面で所員1人の利用を止められた。試した日を書く
- 入れない書類との突き合わせ(所長): 源泉徴収票と賃金台帳は入れない。顧問先へのお知らせ文のひな型は入れてよい
- 決裁(所長): 未記入。権限と操作の記録の2欄が埋まってから書く
「提供元が中身を見る条件」の欄は、個人情報保護法の上でそのサービスをどう扱うかを分けます。個人情報保護委員会は令和6年3月の注意喚起で、クラウドの業務システムの提供事業者を、委託を受けて個人データを取り扱う側と判断しました。考慮された点には、保守や運用のためにデータを監視・分析できるという規約の定めと、保守用のIDで中身に届く状態がありました。
候補の規約に同じ定めが見つかれば、その提供元は委託先として監督する前提で比べます。定めが無くても、提供元が中身に届かない仕組みかどうかは、比較表の空欄として提供元に問い合わせます。
業務ソフトに付くAI機能も、再委託先の欄で確かめる
会計ソフト、登記申請のソフト、社労士事務所の申請ソフト、案件管理のシステムにも、AI機能が付き始めています。顧問先のデータをすでに提供元に預けた状態で動くため、委託先は変わらないように見えますが、提供元がAIの処理を別の事業者に回していれば、その事業者が再委託先として加わります。
顧問先から個人データの取扱いを任されている事務所なら、顧問先から見て業務ソフトの提供元が再委託先に当たる場合があります。個人情報保護委員会は令和6年3月の同じ注意喚起で、委託元がそのクラウドの安全性を委託先に確かめることを監督の一つに挙げました。顧問先から問われたときに答えられるよう、AIの処理を担う事業者の名前は比較表の再委託先の欄に残します。
学習の設定も保存の場所も提供元が決めていて、事務所の管理画面では切り替えられない機能もあります。AIの処理をどの事業者が行うかが規約に書かれていない機能は、秘密の重い書類を開く画面では使わず、提供元に開示を求めてから判断します。
生成AIツール4候補の月額は、学習の扱いより条件で差が出る
4候補とも、入力を学習に使わない旨を公式ページに書いています。そろっていないのは月額の表示の条件です。
| 候補 | 1人あたりの月額と表示の条件 | 入力の学習(公式ページの書き方) |
|---|---|---|
| ChatGPT Business(標準シート) | 3,050円(年額課金) | 既定では業務データを学習に使わない |
| Claude Team(スタンダードシート) | 20ドル(年払い)。月払いは25ドル | 既定で入力内容をモデルの学習に使わない |
| Google Workspace Business Standard | 1,600円(年間プラン・税別) | 許可なくドメインの外で生成AIの学習に使わない |
| Microsoft 365 Copilot Business | 3,148円(年払い・税別) | AIの学習に使わない |
ChatGPT Business は月額課金なら3,850円で、公式ページに税込・税別の表記がありません。Google Workspace の額はメールと文書の基盤ごとの料金です。Microsoft 365 Copilot Business は利用中の Microsoft 365 に足す形で、割引期間中は2,698円です。
額を比べる前に、年払いか月払いか、税別か表記なしかをそろえます。ChatGPT Business は従業員数2名から200名、Claude の Team プランは2名から150名のチーム向けです。どちらも2名以上のチームを前提にしたプランです。
Google と Microsoft は、メールと文書の基盤にAIが付く形です。顧問先とのメールも預かった書類の保存もすでにどちらかの基盤の上にあるなら、その付属から比べるのが順当です。単体のサービスを足すと、書類をそのサービスへ貼り付ける経路がもう1本増えます。
所内のメールが契約したプロバイダのままで、基盤を持たない事務所もあります。その場合は単体のサービスを1つ選ぶほうが、管理する画面が少なく済みます。料金はどれも改定されるので、決裁の前日には料金ページを開き直してください。
士業ごとに生成AIへ入れない書類は、帳票の名前で書く
一覧は所長が、「個人情報」とまとめずに帳票の名前で書きます。まとめた書き方では、入れてよい範囲の読み方が所員ごとにずれるからです。
弁護士事務所なら、法律相談票、相手方からの内容証明郵便、証拠として預かった資料です。担当外の弁護士に見せない案件もあるため、案件ごとに閲覧を分けられるかも選ぶ条件に足します。契約書のドラフトを置く環境は、契約書レビューにAIを使う3つの進め方の比較と同じ考え方で選べます。
税理士事務所なら、源泉徴収票、顧問先の総勘定元帳と試算表、相続税の申告で預かる財産の一覧です。社労士事務所なら、賃金台帳、雇用契約書、被扶養者の確認書類、個人番号が載る届書です。個人番号の欄をAIに渡さずに届書を作る組み方は、社労士の社会保険手続きとAIの費用にあります。
司法書士事務所なら、登記識別情報通知、戸籍謄本と除籍謄本、遺産分割協議書です。行政書士事務所なら、在留資格の手続きで受け取った旅券と在留カードの写し、許認可の申請で預かる決算書です。
名前を伏せても、生年月日や国籍が並ぶ資料は個人が分かる資料のままです。氏名を記号に置き換えても、事務所の台帳と照合すれば本人に結び付く資料は個人データとして扱い、一覧から外しません。
顧問契約書の秘密保持条項は、サービスの契約より先に読む
サービスを契約する前に、依頼者と交わした顧問契約書や委任契約書の秘密保持条項を読み直します。「第三者に開示しない」とだけあって委託先に触れない条項なら、外部のサービスに書類を入れることが文言と合うかを確かめる必要があります。顧問先から差し入れられた秘密保持契約に、外部サービスへの送信を断る条項が入っていれば、その顧問先の書類はどのサービスを契約しても入れられません。
顧問先の多い事務所なら、1社ずつ同意を取るよりひな型の改訂が早く進みます。書き足すのは、業務に使う外部サービスを委託先として扱うことと、入力を学習に使わないサービスだけを使うことです。送信を断る条項を持つ顧問先の書類は、サービスを契約した後も入れない書類の一覧に残し、所内の手だけで扱います。
送信を断る顧問先が多いほど入れない書類の一覧は長くなり、生成AIで片付く仕事は減ります。何アカウントを契約するかは、この社名の一覧を見た後で所長が決めます。個人のアカウントで依頼者の書類を入れた所員が聞き取りで見つかれば、提供元の削除の手続きを確かめたうえで、その利用を先に止めます。
生成AIサービスの選定で所内に残す仕事と、外に出せる仕事
規約の6欄を事務局長が原文と見比べ、空欄を提供元への問い合わせで埋め切れるなら、サービスの選定は所長と事務局長の間で終えられます。比べる相手が4候補の公式ページと規約で、所員の権限と操作の記録も管理画面で確かめられるからです。
規約の読み合わせを外に求めるのは、業務ソフトのAI機能が複数あって再委託先の欄が埋まらない事務所と、送信を断る顧問先が多く、所内の環境で書類を扱う仕組みまで考える事務所です。比較表と一覧の詰め方なら月ごとに伴走するAI顧問、所内の環境の設計まで進むならFDE型AI伴走支援のように、相手の役割で分けて比べます。
契約した後は、事務局長が月に1回、操作の記録で一覧の帳票名が入力に出た件数を数えます。1件でも出た月は、所長が一覧の書き方とサービスの設定のどちらを直すかを判断し、たとえば3か月(期間は所長が決める)続けて出なければ点検を四半期ごとに移します。
明日から始める3ステップ
担当 事務局長
顧問契約書と、顧問先から差し入れられた秘密保持契約を読み、外部サービスへの送信を断る条項を持つ顧問先を書き出す
次へ進む目安送信を断る顧問先の社名の一覧が所長の手元に届いている
担当 所長
事務所で扱う帳票を名前で並べて入れない書類の一覧を書き、同じ週に、個人のアカウントで使った所員への聞き取りを事務局長に済ませさせる
次へ進む目安聞き取りで所員が入れたと答えた帳票が、どれも一覧のどちらかの側に載っている
担当 事務局長
契約したサービスの操作の記録を月に1回開き、一覧の帳票名が入力に出た件数を数える
次へ進む目安帳票名が出た月はその日のうちに所長へ上げ、たとえば3か月(期間は所長が決める)出なければ点検を四半期ごとへ移す
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01無料相談
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02進め方の提案
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03作って試す
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毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第二十三条e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第三十八条e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)第二十一条e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第二十四条e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 行政書士法(昭和二十六年法律第四号)第十二条e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第二十五条・第二十七条第一項・第二十八条第一項(外国にある第三者への提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-1(外国にある第三者への委託)・Q12-3(外国にあるサーバへの保存) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
- OpenAI「ChatGPT 料金」(Business 標準シートの料金・Business の対象人数とデータの扱い) OpenAI 確認日 2026.09.27
- Anthropic「プランと料金」(Team プランのスタンダードシートの料金・Team プランのデータの扱い・Team プランの対象人数) Anthropic 確認日 2026.09.28
- Google「Google Workspace 料金プラン」Business StandardGoogle 確認日 2026.09.28
- Google「Google Workspace の生成 AI におけるプライバシー」Google 確認日 2026.09.28
- Microsoft「Microsoft 365 Copilot Business」Microsoft 確認日 2026.09.27
- 個人情報保護委員会「クラウドサービス提供事業者が個人情報保護法上の個人情報取扱事業者に該当する場合の留意点について(注意喚起)」1(2)考慮要素・3 委託先がクラウドサービスを利用している場合 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
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