資料の追加依頼の回数を減らす締め日|士業事務所で不足と不備を1通に
突き合わせと依頼文の下書きはAI、原本確認は補助者、頼み直す判断と送信は有資格者
追加依頼が割れるのは届いた順に点検するからで、提出期限の翌営業日の締め日で1通にまとまる。締め日と、数える2つの数字を決められる。

30秒でわかること
何が問題か
届いた順に不足を知らせると、追加依頼が2回、3回と分かれ、顧客に「まだあるのか」と言われる。
何を見れば判断できるか
締め日の置き場所、ヒアリングで足した一覧の行、受任時に予告した資料かどうかで回数が変わる。
誰が何をすれば解決するか
補助者は返信と原本確認、AIは突き合わせの下書き、有資格者が不備を判断して締め日に1通で送る。
補助者が封筒やメールを開けるたびに足りない物を見つけ、その日のうちに顧客へ知らせる事務所では、追加依頼が2回、3回と分かれます。
締め日までは、届いた資料に受け取りの返信だけを返す
締め日より前に届いた資料には受け取りの返信だけを送り、不足と不備は締め日にまとめた1通で頼みます。
図の要点:今と締め日の運用の比較。今は開封のたびに補助者が不足を連絡し、不備の判断を待つ間に顧客へ2通目、3通目が届く。締め日の運用では、締め日までは補助者が受け取りの返信だけを送り、突き合わせの下書きはAI、全行の原本確認は補助者、不備の判断と1通での送信は有資格者が行う。
不備の判断を締め日の1回に寄せ、顧客への連絡も1通にする
届いた順に連絡する今
- 開封のたびに補助者が不足を連絡
- 不備の判断を待つ間に、顧客へ2通目、3通目が届く
締め日にまとめる運用
- 締め日までは受け取りの返信だけ(補助者)
- 突き合わせの下書きはAI、全行の原本確認は補助者
- 不備の判断と1通での送信は有資格者
締め日を案件管理システムに入れる日には、その朝の有資格者の予定も押さえておきます。不備の判断が手待ちになると、補助者は判断の要らない不足から先に出してしまい、1通にまとまりません。
受領したファイルは「案件番号_書類名_受領日」の名前で共有フォルダへ入れ、必要資料一覧の行に対応付けておきます。締め日の朝にAIが突き合わせる材料は、この一覧とファイル名です。
締め日は、提出期限の翌営業日に置く
締め日は1案件に1つです。初回の依頼文に提出期限を書き、その翌営業日を、依頼を送った日のうちに案件管理システムかカレンダーへ入れます。
初回の依頼文には、提出期限と並べて「期限の翌営業日に、足りない物と差し替えをまとめて1回でお知らせします」と書いておきます。顧客は、その日まで事務所から個別の連絡が来ない理由を知ったうえで資料を集められます。
例外は、締め日まで待つと法定期限に間に合わなくなる資料です。その1点だけを先に頼み、「ほかの不足は締め日にまとめてご連絡します」と一言添えます。次の連絡がいつ来るかが顧客に見えていれば、1通増えても不満にはなりにくいはずです。
住所変更登記の住民票のように、顧客から届く資料が数点で済む案件なら、締め日を置かなくても往復は増えません。提出期限を過ぎても資料の半分しか届いていないなら、締め日を1回だけ延ばします。届いていない物の催促と、届いた物の不備の連絡を別々に出すと、顧客には2回の追加依頼として残るからです。
届いた順に連絡すると、なぜ3回に分かれるのか?
原因は顧客ではなく、事務所の側にあります。仮に、相続の資料が3回に分けて届き、1回目で除籍謄本の不足、2回目で通帳の写しの記帳の抜けを連絡したとします。3回目の受領の後に有資格者が相続人の住民票の欠けに気づけば、顧客には3通目が届き、「まだあるのか」と言われかねません。
この3通を生んだのは、事務所の側の事情です。届いた順に点検していて、全体を見る日が無いこと。必要資料一覧がひな型のままで、代襲相続がある、事業用の口座があるといった案件固有の行が、ヒアリングで足されていないこと。不備の判断が有資格者の手待ちになることです。
締め日で直るのは1つ目だけです。2つ目は一覧を確定する工程で、3つ目は締め日の当日に有資格者の時間を先に押さえることで片付きます。ヒアリングから受領までの他の工程は、情報収集の記事一覧で工程ごとに扱っています。
AIに付けさせるのは、不足の行と理由の印まで
AIには、一覧の各行に対応する受領ファイル名を書かせ、該当の無い行と、年分や発行日が一覧の条件に合わない行に理由を付けて印を付けさせます。返ってくる不足リストは、行ごとに書類名・状態・理由・根拠にしたファイル名が並ぶ形です。補助者は根拠のファイル名から原本へすぐ戻れます。
対応付けが外れやすいのは、源泉徴収票と給与支払報告書、除籍謄本と改製原戸籍のように見た目の似た書類です。この取り違えは印の付かない行に紛れるため、AIが受領済みとした行も補助者が原本で確かめます。1件でも取り違えがあれば、その不足リストは使わずにファイル名をそろえ直し、出し直させます。
誤った不足を顧客へ送ってしまったら、次の依頼に訂正を混ぜません。その日のうちに、取り消しだけを1通で送ります。
資料の受け取りが郵送とFAXだけで、共有フォルダに受領の記録が残らない事務所には、締め日の突き合わせはまだ向きません。届いた紙を読み取って案件番号のフォルダへ入れる運用が先に要ります。
受領資料の中身をAIに渡す前に、利用契約を確かめる
突き合わせに渡すのがファイル名と受領日と一覧だけなら、戸籍や通帳の中身は所内から出ません。所長が利用契約を先に読む必要が出るのは、年分や発行日の食い違いまで拾わせるために、写しの中身を外部のAIサービスへ渡すときです。
契約で見るのは、写しを預かるサーバの事業者が中身に手を触れる定めになっているかです。事業者が中身を取り扱わない定めを置き、アクセスも適切に絞られていれば、戸籍を入れた時点で個人データを渡したとは扱われません。
事業者が写しを取り扱う契約なら、利用目的の範囲で取扱いを任せる委託に当たるかを条項で確かめます。当たれば、事務所は委託先を監督する立場です(個人情報保護法第25条)。
当たらない形で戸籍を入れるなら第27条の第三者提供となり、戸籍に載っている本人の同意が先に要ります。提供先(AIサービスの運営会社)が国外の会社なら、委託であっても第28条により同意が要る場合があるため、契約の段階で見ておきます。
通帳の写しや源泉徴収票のうちどれを外に出さないかは、士業ごとに生成AIへ入れない書類の一覧で事務所の分を先に決めておくと、締め日の朝に迷いません。
後から要る資料は、追加依頼の回数に数えるか?
受任のときに予告しておいた資料なら、数えません。受任に当たって事件の見通し・処理の方法・報酬と費用を適切に説明することは、弁護士職務基本規程第29条の定めです。第36条は、事件の経過と結論を左右しうる事項を、必要なときに依頼者へ伝え、話し合いながら処理を進めるよう定めています。
遺産分割の協議がまとまった後に要る相続人の印鑑証明書なら、受任時の説明で「協議の後にお願いする物」として挙げておき、要る時点で頼みます。予告していない物が後から出たなら、それは一覧の漏れとして1回に数えます。
| 区分 | 依頼の出し方 | 回数に数えるか |
|---|---|---|
| 初回の不足(一覧にあり届いていない) | 締め日に1通へまとめる | 数える |
| 不備の差し替え(年分違い・ページの欠け) | 不足と同じ1通に入れる | 数える |
| 事案の進行で要る資料(協議後の印鑑証明書) | 受任時に予告し、要る時点で頼む | 予告していれば数えない |
区分を付けるのは、依頼を送った補助者です。予告済みの行を分けておかないと、協議の後に頼んだ印鑑証明書まで回数に入り、締め日の効き目が見えなくなります。
第35条が定めるのは、速やかな着手と遅滞のない処理です。1回に収めたいからと締め日を何度も延ばせば、今度は案件が止まります。締めは1回と決め、その後に届いた物で次の手続きへ進めるかは有資格者の判断です。予告した資料を頼む文面は、依頼者へ送る経過報告の組み方に沿わせると、報告と依頼が1通に収まります。
この規程は弁護士の規律です。税理士・社会保険労務士・司法書士・行政書士は、各士業法と所属する会の規則で受任時の説明の定めを確かめます。確定申告なら寄附の受領証明書、労務の手続きなら入社日が決まってからの雇用契約書が、後から届く資料の例です。
回数が減らないときと待ち日数が延びたときは、直す所が違う
直す先は、2つの数字のどちらが思うように動かないかで変わります。見るのは、1案件あたりの追加依頼の通数(予告した分を除く)と、追加依頼から資料が全部そろうまでの日数です。
通数が減らないなら、締め日ではなく一覧を疑います。ヒアリングで足すべき行が抜け、後から要る物が予告していない物として出ているからです。この場合の戻し先はヒアリング記録で、有資格者が質問項目に行を足します。
通数は減ったのに待ち日数が延びたなら、締め日が遅すぎます。提出期限そのものを前へ出し、締め日も一緒に早めるのが先です。確定申告や労務の手続きへ広げる時期は、相続の案件で2つの数字が落ち着いた後に置きます。種類の違う案件を混ぜて数えると、通数の増減が一覧の漏れによるものか、案件の違いによるものかを見分けられません。
明日から始める3ステップ
次に受任する相続の案件1件で試し、初回の依頼文に提出期限を書き、その翌営業日を締め日として案件管理システムに入れる
- 担当
- 補助者
- 次へ進む目安
- 締め日の朝に、不備を判断する有資格者の予定が押さえてある
受任時の説明で、遺産分割の協議の後に頼む印鑑証明書のような後から要る資料を依頼者に予告し、一覧のその行に予告済みと書く
- 担当
- 有資格者
- 次へ進む目安
- 予告済みの行と初回の不足の行が、必要資料一覧の上で分かれている
月末に相続の案件ごとの追加依頼の通数(予告分を除く)と、そろうまでの日数を数え、締め日を置く前の案件と並べて所長へ出す
- 担当
- 補助者
- 次へ進む目安
- 追加依頼が1案件1通に収まった月が2か月そろい、確定申告と労務へ広げるかを所長が決めている
士業事務所のAI活用診断
守秘義務のある事務所で、最初にAIへ任せる1工程を決める。
結果の例
いまの段階Lv.3 チーム活用期
最初にAIに任せる1工程扱う情報の分類と、AIに入れてよい範囲の線引き
2週間で試すこと
- 事務所の業務を書き出し、それぞれで扱う情報の種類をAIに一覧にさせる
- 所長が一覧を見て、入れてよい・伏せれば入れてよい・入れない、に分ける
- 線引きの表を所員に配り、1週間で出た質問を集めて表を直す
人が確かめて決める所も、結果に出ます。
出典・参考資料3件
- 日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」(会規第70号)(第29条第1項・第35条・第36条)日本弁護士連合会 確認日 2026.09.29
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条・第27条第1項・第28条第1項)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-1(外国にある第三者への委託)・Q12-3(外国にあるサーバへの保存)個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
編集・監修体制BoostX編集部
BoostX編集部(株式会社BoostX)が、官公庁・業界団体などの一次情報を原典で確かめて書いています。下書きにはAIを使い、編集担当者が内容と出典を確認してから公開しています。