保険の面談記録をAIで下書きするとき、募集人が確定する3つの欄
対象は、面談のあとに手書きのメモや記憶から面談記録と意向把握の記録を起こしている保険代理店(乗合を含む)・保険会社の募集人と、その記録を点検する責任者で、銀行の保険窓販で面談記録を書く担当にも当てはまります。
録音から面談記録を作る仕組みを試すには、AIが書いた文を募集記録として保存してよいかを先に決めなければなりません。聞き違えた保険期間や言い直す前の意向がAIの文のまま残ると、あとで記録を読む人は面談の中身を確かめにくくなります。記録の欄には、AIの下書きで足りる欄と、面談した本人でなければ書けない欄があります。

先に結論
AIが作った面談記録は、そのまま募集記録にはしません。録音とメモから発言の要約・当初の意向の整理・説明した事項の一覧と抜けの指摘を下書きさせ、最終的な意向・当初の意向との相違点・特記事項の欄は空欄のまま返させます。これらの欄は面談した募集人が書いて確定し、責任者が記載漏れを点検してから保存します。
録音を渡す前に、録音を記録づくりに使うことを顧客にどう示すかと、病歴などをAIに送るかを店で決めておきます。録音を断られた面談や、保険料・保険期間の聞き取りに迷う箇所は、下書きを使わずに募集人が手で書きます。
乗合代理店の比較推奨販売の改正(2028年3月1日施行)でも意向把握義務は対象外のままなので、意向の欄はいまの求めで決めます。
面談記録をAIで下書きしても、意向の欄は空欄で残す理由
面談した募集人が確定する欄を残す理由は、最終的な意向を決めるやりとりが面談の場にしかないからです。録音とメモに残った範囲なら、要約と説明した事項の抜けの指摘はAIの下書きで足ります。
保険業法294条の2が保険募集人などに求めるのは、顧客の意向の把握と、それに沿った提案と説明です。意向と契約内容が合っているかを、顧客自身が確認できる場を用意することも含みます。監督指針はその進め方の例として、最終的な意向が固まった段階で当初の主な意向と比べ、違っていればその相違点を確かめる流れを挙げています。
当初の意向は面談の前のアンケートや冒頭の聞き取りで、最終的な意向は提案を聞いたあとの顧客の言葉で決まります。録音の要約は、時点の違うこの2つを1つの文に混ぜて書くことがあります。どちらを確定した意向とするかは、その場で顧客とやりとりした募集人でなければ決められません。
監督指針は、意向確認書面に募集人の氏名を書く理由を、書面の作成責任者を顧客に明らかにするためとしています。AIが下書きした記録でも、中身に責任を持つ人は面談した募集人のままです。
確定した意向把握の記録をもとに提案書を組む次の工程は、保険の提案書をAIで下書きするときの欄の分け方で扱っています。
面談から募集記録の保存まで、5つの工程の分担
5つの工程は、録音の同意を得て面談で意向を聞く、説明した事項を控える、メモと録音を残す、記録の形にまとめる、点検して募集記録として保存する、です。図は録音の同意から始まる8行に分け、AIが受け持つのは要約と説明事項の一覧づくり、意向の確定は募集人、点検と保存は責任者です。録音を断られた面談では、AIの2行を飛ばして手書きのメモから書きます。
図の要点:AI・募集人・責任者の3レーンで、面談から募集記録の保存までを8行で並べた図。募集人が録音の同意を得て意向と説明事項を聞き取り、AIが要約と当初の意向の整理、説明事項の抜けの指摘を下書きして確定の3欄を空欄で返す。募集人が印の箇所を録音と照合して3欄を書いて確定し、責任者が記載漏れを点検して当初と最終の意向が両方残る形で保存する。
確定も保存もAIの行には置かず、印の付いた箇所から募集人が録音と照合する
募集人
AI
責任者
- 募集人
面談の冒頭で、録音して記録づくりに使うことを伝えて同意を得る
戻す断られたら録音せず、手書きのメモで進める
- 募集人
当初の意向を聞き、提案した内容と説明した事項を意向把握シートに控える
説明事項の一覧に、説明した項目の印を付ける
- AI
録音とメモから、発言の要約と当初の意向の整理を下書きする
録音に無い内容を補った文と、迷った数字に印を付ける
- AI
説明事項の一覧と照合し、説明の記録が無い項目を挙げる
最終的な意向・相違点・特記事項の欄は空欄で返す
- 募集人
印の付いた箇所を録音と照合し、迷う数字は顧客に確かめる
戻す確かめられない箇所は下書きを使わず手で書く
- 募集人
最終的な意向・当初の意向との相違点・特記事項を書いて確定する
意向確認書面には作成責任者として自分の氏名を書く
- 責任者
確定した記録の記載漏れを、説明事項の一覧と照合して点検する
戻す漏れがあれば募集人へ差し戻す
- 責任者
当初の意向と最終的な意向が両方残る形で、募集記録として保存する
録音とAIの下書きの保管先は店の規程に従う
図から決めるのは、下書きを使わず手書きで進める面談と、顧客に確かめ直す箇所です。保障の内容・保険料・保険金額・保障期間は、監督指針が意向確認書面で顧客に再確認を促す事項に挙げています。この4つは、印が付いていない文でも録音と1つずつ照合します。
仮の業務例です。夕方に事務所へ戻った募集人が、面談中のメモと意向把握シートを机に置き、記憶をたどって募集記録のシステムに打ち込んでいます。この作業を録音からの下書きに替えると、募集人の手元に残るのは、印の箇所の照合と空欄の3つの欄の記入です。
欄の分け方は、監督指針が意向確認書面に求める記載事項(顧客の意向に関する情報・契約内容との対応・特記事項)に合わせます。
| 記録の欄 | AIの下書き | 募集人が確定すること |
|---|---|---|
| 発言の要約 | 録音とメモから時系列で要約 | 録音との食い違いの有無 |
| 説明した事項 | 説明事項の一覧と照合した記録の有無 | 説明したかどうか |
| 当初の意向 | 意向把握シートと冒頭の発言の整理 | 聞いた内容と合うか |
| 最終的な意向 | 空欄で返す | 提案のあとに固まった意向 |
| 当初との相違点 | 空欄で返す | 何がなぜ変わったか |
| 特記事項 | 空欄で返す | 強い要望や満たせない意向 |
監督指針は、意向確認書面のうち顧客の意向に関する情報と特記事項について、事実に反する記載がないかを顧客に確かめるよう求めています。顧客に見せるこの欄の文は、面談した募集人が自分の言葉で書きます。
面談記録のAI下書きに出る、3つの取り違え
AIの面談記録の下書きは、言い直した意向を落とす、録音に無い内容を補う、金額や期間を聞き違える、の3か所で間違えやすくなります。この3か所は、募集人が録音と顧客への確認で直します。
1つ目は、言い直した意向を落とすことです。仮の例で、面談の前半に「毎月の保険料は今のままがいい」と話した顧客が、後半で「入院の保障は厚くしたい」と言い直したとします。AIの下書きが前半の意向だけを要約していたら、募集人が最終的な意向と相違点の欄に、入院の保障を優先すると決まった経緯を書きます。
2つ目は、録音に無い内容を補うことです。面談で触れなかった項目を、意向把握シートの選択肢や前後の話から推し量って文にすることがあります。補った文には印を付けさせ、録音で確かめられなければ記録から外すか、顧客に確かめます。
3つ目は、保険料や保険期間などの数字の聞き違いです。仮の例で、録音では「10年」とも「15年」とも聞こえる保険期間を、AIが一方に決めて書いたとします。迷った数字に印を付けさせておけば、募集人はその箇所を顧客に確かめて直せます。
AIに渡す指示には、まず最終的な意向・当初の意向との相違点・特記事項の3つの欄を空欄で返すよう書きます。あわせて、録音に無い内容は「未確認」と書かせ、聞き取りに迷った数字には印を付けさせます。
効果は、記録1件の作成時間と、責任者の点検で見つかった記載漏れの件数を、下書きを使う前と後で比べて確かめます。作成時間は、面談を終えてから記録を確定するまでの分数です。作成時間が縮んでも記載漏れが前より増えたなら、責任者の判断で下書きを止め、空欄と印の指示を見直します。
録音して渡す前に、同意と送る範囲を決める
録音をAIに渡す前に、録音を記録づくりに使うことを顧客にどう示すかと、氏名や病歴を伏せて送るかを決めます。録音を断られた面談は、手書きのメモからの手入力に戻します。
個人情報保護法21条は、個人情報を取得したら、利用目的をあらかじめ公表している場合を除き、速やかに本人に通知するか公表するよう定めています。書面で本人から直接取得するときは、あらかじめ利用目的を明示しなければなりません。利用目的を変えたときも、変えた目的の通知か公表が要ります。
面談の録音をAIによる記録の下書きに使うことが、店が今示している利用目的に入っているかを先に確かめ、入っていなければ示し方を見直します。監督指針も、意向に関する情報を集めるときは個人情報保護法などを守る必要があると注意を促しています。
録音の送り先が外部のAIサービスなら、扱いは3つに分かれます。契約でサービス事業者が録音の中身を取り扱わないと定められ、アクセスも適切に制限されていれば、個人データの提供に当たらないとされています。中身を取り扱う契約なら、店の利用目的の範囲で取扱いを任せる委託と言えるかを確かめ、委託先として監督します(25条)。
委託と言えなければ第三者への提供となり、あらかじめ本人の同意を得る必要があります(27条)。送り先が国外の事業者なら、28条により本人の同意を求められる場合かどうかも確かめます。面談では、要配慮個人情報に当たる病歴の話が出ることがあります。録音から氏名を消しても、契約番号や住所から顧客台帳の本人にたどり着けるなら、個人データとして扱います。
記録の作り方は、録音からの下書きだけではありません。
| 記録の作り方 | 向く店 | 点検で見る所 |
|---|---|---|
| 手書きのメモから手入力 | 面談が少なく、録音の同意を取りにくい店 | 書く人ごとの意向の書き方 |
| 選択式の様式+特記事項の欄 | 種目が限られ、意向の項目を前もって並べられる店 | 空のままの特記事項 |
| 録音からAIの下書き | 面談が多く、同意を得られる面談が多く、点検する責任者がいる店 | 補った文と数字の聞き違い |
面談の数が少ない店では、AIを使わずに、選択式の様式へ特記事項の欄を足すだけで意向の書き方をそろえやすくなります。監督指針も、意向の項目を前もって並べる方法を認めたうえで、想定できない意向を書く特記事項欄を設けるよう求めています。
乗合代理店は2028年3月施行の比較推奨の改正も見る
面談記録の意向の欄は、改正を待たずにいまの求めで作って差し支えありません。変わるのは乗合代理店の比較推奨の記録で、改正府令の施行は2028年3月1日、改正監督指針の適用も同じ日です。
金融庁は2026年8月28日の公表で、意向把握義務と権限明示義務は今回の改正の対象外で、今も適時・適切に対応する必要があると注意しています。あわせて、乗合代理店には294条の3の体制整備義務に基づく取組みを期待するとし、施行日を待たずに体制を整えることが望ましいとの考えも示しました。
比較推奨の記録を面談記録の様式にどう持たせるかは、公表に付いた新旧対照表と保険会社の指導を確かめてから決めます。AIの下書きの欄に新しい項目を足すのは、様式が決まった後です。
録音の保管と記録の点検を店で持てないなら外部と組む
外部と組むのは、録音をどこに何年置くかを店の規程で決めきれないときと、責任者が記録の点検に充てる時間を決まって取れないときです。どちらも下書きの出来とは関わりのない、記録を残す側の条件です。
保険募集人は施行規則227条の7により、意向の適切な把握などの措置について社内規則等を定め、研修などの体制を整えなければなりません。録音の保管先と保管期間、AIの下書きを使う手順、点検で差し戻す基準は、この社内規則の中で決めておく候補です。募集人が少なく、責任者が全件の記録を読める店なら、規則づくりから点検までを店の中で持てます。
拠点ごとに録音の保管先が違う店や、外部のAIサービスの契約で取扱いの定めを読み解く人がいない店では、保管の設計と契約の確認が外部に任せる候補です。契約の手続きや問い合わせの対応にAIを使う話は、金融・保険の記事のトップページから探せます。
高齢の顧客との面談では、監督指針が保険募集内容の記録(録音・報告書への記録など)と保存を取組みの例に挙げています。この録音をAIの下書きに回すかは、記録として残す目的とは別に、利用目的の示し方を見直してから決めます。
明日から始める3ステップ
担当 責任者
録音を記録の下書きに使うことを、店が示している利用目的と照合し、面談の冒頭で顧客に伝える説明文と、AIに送らない話の範囲(病歴など)を書き出す
次へ進む目安面談の冒頭で伝える説明文と、AIに送らない範囲の一覧が店の規程に入っている
担当 募集人と責任者
次の1か月の面談記録で、面談を終えてから記録を確定するまでの分数と、点検で見つかった記載漏れの件数を募集人ごとに控える
次へ進む目安AIの下書きを使う前の作成時間と記載漏れ件数が、募集人ごとの一覧になっている
担当 募集人と責任者
録音の同意を得た面談で、最終的な意向・相違点・特記事項を空欄で返させた下書きから記録を作り、印の箇所を照合して確定したうえで点検に回す
次へ進む目安下書きを使った記録の作成時間と記載漏れ件数が、使う前の一覧と同じ募集人どうしで並んでいる
無料相談(オンライン)
BoostXは、金融機関の審査資料・面談記録へのAI導入を支援しています
01無料相談
決算書の転記・稟議書・面談記録から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 保険業法(平成7年法律第105号)第294条の2(顧客の意向の把握等)・第294条の3(業務運営に関する措置) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.27
- 保険業法施行規則(平成8年大蔵省令第5号)第227条の7(社内規則等) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.27
- 金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」II-4-2-2(3)①ア(意向把握・確認の方法)・II-4-2-2(3)④ア(意向把握に係る体制整備)・II-4-2-2(3)④ア(注)・II-4-2-2(3)④イ(イ)(意向確認書面の記載事項)・II-4-2-2(3)④イ(オ)(意向確認書面の記載内容の確認・修正)・II-4-4-2-1(4)(高齢者に対する保険募集)・II-4-2-2(3)④イ(カ)(保険契約の内容に関する意向の確認)・II-4-2-2(3)④イ(ウ)(意向確認書面の記載方法) 金融庁 確認日 2026.10.27
- 金融庁「令和7年保険業法改正に係る内閣府令等及び「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」2.適用日等・1.改正の概要(※ 権限明示義務・意向把握義務) 金融庁 確認日 2026.10.27
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第21条(取得に際しての利用目的の通知等)・第2条第3項(要配慮個人情報)・第25条(委託先の監督)・第27条(第三者提供の制限)・第28条(外国にある第三者への提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.27
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用) 個人情報保護委員会 確認日 2026.10.27
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり





