事故受付票は契約特定から、どの店舗でも日・物件・補償の順に聞く
店舗の窓口でも事故の連絡を受け始めた損保代理店で、受付のやり方を店舗間でそろえる立場の業務責任者・事務責任者と経営者のための記事です。
店舗から上がった事故受付票の証券番号が空いていて、本店の事務担当が来店客へ電話をかけ直すことがあります。店舗を増やした損保代理店では、聞き方とメモの書き方が店舗ごとに違うまま、こうした聞き直しが続きがちです。受付票にどの欄をどの順に置けば報告がそろうか、AIの下書きをいつから足せるかに答えます。

先に結論
事故受付票は、事故の状況より先に契約特定の欄を置き、事故日に有効な契約、事故にあった車や建物、使う補償の順に1契約へ絞ります。この欄と順番をどの店舗でも同じにすれば、保険会社への報告の中身がそろいます。補償に当てはまるかと支払の可否は、店舗で言い切らず保険会社の判断に渡します。
受付票がまだ店舗ごとに違うなら、AIは使わずに欄の統一から始めます。そろった後なら、聞き取りメモから受付票の下書きを作らせ、空欄を指摘させる使い方が合います。1契約への確定は店舗の受付担当、報告前の確認は本店の事務担当が持ち、来店客が話していない内容が下書きに入ったら、その下書きは使いません。
状況から聞き始めると契約を取り違える
どの証券の事故かを状況より先に決めておかないと、複数の契約を持つ顧客ほど、別の契約のまま話を書き進めてしまいます。受付票でいう契約特定とは、事故日に有効な1契約を証券番号で確定することです。契約特定の欄を受付票の一番上に置けば、状況を聞き始める前に対象の証券が決まります。
説明用の仮の場面で考えます。新しく出した店舗の窓口に、軽自動車と営業用のバンの2台、それに店舗の火災保険を契約している顧客が来て、「昨日、スーパーの駐車場でバックしてこすった」と話します。受付担当が氏名で顧客画面を検索し、最初に出た軽自動車の証券で状況を書きましたが、事故にあったのはバンでした。
本店の事務担当が保険会社へ報告すると、登録番号が合わずに聞き直され、来店客へもう一度電話をかけることになります。氏名は候補の契約を出す手がかりにはなっても、1契約に確定する材料にはなりません。
保険会社が契約者に配る自動車の事故受付票も、①契約者の名前、②証券番号と車の登録番号から始まります。車両事故・対物事故には、損害保険会社などの間で事故の受付の有無を確かめる仕組みもあります。
その仕組みに登録する項目は、契約者の氏名、契約車両の登録番号、事故の発生日、受付日などです。代理店の受付票の最初の欄をこれらと同じ項目で埋めておけば、報告のときにそのまま写せます。
受付票は、その後に続く保険金の話の最初の記録にもなります。そんぽADRセンターが2025年度に受け付けた苦情解決手続を内容別に見ると、保険金支払が4,178件で、合計5,012件の83.4%でした。最初の記録で契約がずれたまま気づかなければ、その後のやりとりも別の証券の上で進みます。
顧客がすでに保険会社の事故受付センターへ電話している場合は、店舗の受付は契約特定の確認と、受付済みであることの記録で足ります。同じ状況を二重に聞き取る必要はありません。
複数契約の顧客は日・物件・補償の順に絞る
絞る材料は、事故の日、車の登録番号か建物の所在地、壊れたものとケガの3つで、この順に聞きます。氏名は候補を出す入口にとどめ、確定には使いません。
| 絞る順 | 聞くことと照合する先 | 1つに決まらない時 |
|---|---|---|
| 1 事故の日 | 事故の日(盗難・あて逃げは被害を確認した日)を、顧客画面の保険期間と照合 | 更新前と更新後の両方の証券番号を控える |
| 2 物件 | 車の登録番号か建物の所在地を、証券に記載の車・所在地と照合 | 車両入替があったかを確かめる |
| 3 補償 | 何が壊れ、誰がケガをしたかを、証券の補償の欄と照合 | 当てはまるかの判断は保険会社へ回す |
1番目で、満期をまたぐ事故を見分けます。更新の直前と直後は、旧証券と新証券の両方が顧客画面に出るためです。2番目は、証券番号が分からない来店客への聞き方を兼ねます。車なら車検証かナンバープレートの登録番号、建物なら所在地を聞けば、顧客画面で証券にたどり着けます。
3番目で聞くのは事実だけです。「車両保険で直せますか」と聞かれても、店舗では「保険会社の担当が確認します」と答え、受付票には来店客の言葉のまま書きます。
3つの順で1契約に絞れないときは、契約特定欄に「未確定」と書き、候補の証券番号を並べます。事務責任者が確定するまで、保険会社への報告は出しません。自動車保険だけを扱う代理店なら、2番目は登録番号だけで足ります。
受付票の欄は保険会社の受付項目を漏らさず持つ
受付票の欄は、どの種目でも聞く共通欄と、種目ごとに足す欄に分けます。共通欄には保険会社が受付で聞く項目を漏らさず入れ、並びだけを自社で固定します。
共通欄は、上から次の順に置きます。
受付の欄
受付日時、店舗名、受付者、入口(電話・来店・LINE)契約特定の欄
契約者、証券番号、登録番号か所在地、確定した人事故の欄
日時、場所、状況、警察への届出人と相手の欄
ケガをした人、医療機関、相手方の名前と連絡先対応の欄
修理先、至急の要望(レッカー・代車・病院への連絡)、希望する連絡方法
先ほどの場面なら、契約特定の欄は次のように埋まります。
【説明用の架空の記入例】
– 契約者: 来店した顧客本人
– 証券番号: 当初は候補2件(軽自動車・営業用バン)
– 登録番号: 来店客の車検証で営業用バンの番号を確認
– 確定した人: 店舗の受付担当(氏名)
「入口」の欄を置くのは、事故の連絡が来る経路が店舗ごとに違うためです。LINEで受けた事故が担当者のスマートフォンに残り、本店の記録に上がらない状態を、この欄で見える形にします。「確定した人」の欄には、契約を確定した受付担当か事務責任者の名前を書きます。
受付担当が手帳のメモから後で清書している店舗なら、受付票の用紙かタブレットの入力画面を窓口に置き、聞きながら直接書く形に変えます。手帳に残ったメモは本店から見えず、保険会社に聞き直されたときに誰も開けないためです。
種目別の欄は、自動車なら運転者と記名被保険者の関係、車の損傷箇所、レッカーの有無です。火災や賠償など自動車以外の種目は、取扱保険会社の受付票の欄を確かめてから足します。先に自社で作り込むと、保険会社の様式と欄がずれます。
保険会社の様式との対応
保険会社ごとに受付項目の並びが違うため、自社の受付票は、報告のときに相手の様式へ写す前提で作ります。
| 自社受付票の欄 | FAXで送る受付票の例 | 電話受付で伺う内容の例 |
|---|---|---|
| 契約特定 | ①契約者 ②証券番号・登録番号 | 事故にあった車の登録番号 |
| 事故の日時・場所 | ⑤日時 ⑥場所 | 日時・場所(目印でも可) |
| 状況・届出 | ⑦運転者 ⑧状況 | 状況・警察への届出 |
| 人と相手 | ⑩相手方 ⑪ケガをした人 | ケガ・相手方・医療機関 |
| 対応 | ③連絡方法 ④至急の要望 ⑨修理先 | 修理工場・支払った費用 |
FAX用の受付票は、①から④で契約と連絡方法と至急の要望を先に取り、状況は後ろに置いています。電話受付では日時と場所から入り、登録番号は事故の内容の中で聞かれます。自社の受付票を契約特定から始めておけば、どちらの様式にも写せます。
取扱保険会社が1社なら、その会社の受付票をそのまま自社の様式にする方が早く済みます。乗合代理店で複数社の事故を受けるなら、共通欄は自社の順で持ち、報告のときに各社の様式へ写します。電話で報告する事務担当は、受付票を上から読み上げれば、聞かれる項目に順に答えられます。
店舗の受付から本店の確認までの流れ
事故受付を、連絡を受けてから本店が照合するまでの6工程に分けると、店舗ごとのずれがどこで出るかが見えます。
受付票がそろった後の6工程。契約の確定と報告前の確認は人が持つ
-
連絡を受ける(店舗の受付担当)
電話・来店・LINEのどの入口かを書く
人
-
契約を特定する(店舗の受付担当)
AIは候補の証券を並べるだけ。確定は受付担当
人
-
内容を聞き取る(店舗の受付担当)
共通欄の順に聞き、AIが空欄を指摘する
AI
-
受付記録を作る(店舗の受付担当)
AIのメモからの下書きを来店客の前で読み上げて確定
AI
-
保険会社へ報告する(本店の事務担当)
差し戻し: 「確定した人」が空の票は報告しない
人
-
本店で照合する(事務責任者)
聞き直された欄を店舗別に数え、手引きを直す
人
ずれが出やすいのは、契約を特定する工程と受付記録を作る工程です。店舗の受付担当は来店客を待たせたくないので、顧客画面で最初に出た契約を選び、メモは後で清書しようとします。そのため、契約特定欄に「確定した人」の名前が無い受付票は、本店の事務担当が報告の前に止めます。
報告は受けた日のうちに出します。保険会社の受付票には、平日17時以降と土日祝日は夜間・休日の担当者が対応すると書かれたものがあります。夕方に受けた事故は、「至急の要望」の欄に印があるかを先に見て、報告の順を決めます。
損害保険代理店の実在数は、2025年度末で124,024店と、1年で16,114店・11.5%減りました。統合や出店で店舗の顔ぶれが変わる時期ほど、聞く順番をベテランの記憶ではなく受付票と手引きに持たせておく必要があります。
月末の照合で店舗ごとのずれを見つける
月末の締めの後、事務責任者は対応記録から、次の4つを店舗別に並べます。
- 保険会社の担当に聞き直された項目と件数
- 契約特定欄を「未確定」のまま止めた件数
- 「確定した人」の名前が空いていた受付票の枚数
- 受け付けた日と保険会社へ報告した日の差
新しい受付票は、まず1店舗で試します。期間は事務責任者が決め、たとえば2週間です。聞き直された欄が減ったら本店と残りの店舗へ広げ、減らない欄は来店客に言い方が通じていない合図と見て、欄の名前を答えやすい言葉に替えます。
AIの下書きは受付票をそろえた後に足す
AIに任せるのは、聞き取りメモから受付票の下書きを作ることと空欄の指摘までで、始めるのは欄と聞く順番が店舗でそろってからです。欄がばらばらのまま下書きを作らせると、店舗ごとのずれがそのまま清書されます。事故の連絡が店舗で月に数件なら、AIを使わず、受付票の統一と月末の照合で足ります。
聞き取りメモを外部のAIに入れる前に
保険業法第294条の3は、保険募集人に、業務の健全かつ適切な運営を確保する措置を講じるよう義務づけています。その措置の1つが、保険募集の業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いです。
事故受付で聞いた情報がこの「保険募集の業務に関して取得した」情報にあたるかは、条文だけでは決まりません。それでも募集で使う同じ顧客画面に入るので、社内規程では募集の情報と同じ水準で扱う方が、運用を分けずに済みます。
個人情報保護法は、利用目的をできる限り特定すること(第17条)と、個人データの安全管理のための措置を講じること(第23条)を求めています。事故受付で聞く相手方の名前と連絡先、ケガをした人の状態も個人情報です。氏名を伏せても、証券番号・登録番号・事故日から自社の顧客画面で本人に行き着くなら、個人データとして扱います。
外部のAIサービスに個人データの取扱いを委託するなら、委託先への必要かつ適切な監督も求められます(第25条)。事業者が入力をどう扱うかで法律上の扱いが変わるため、管理者が契約書・利用規約・設定画面で外部送信と学習利用の範囲を確かめるまでは、聞き取りメモを入れません。
保険会社の受付票の同意書には、保健医療等のセンシティブ情報は保険業法施行規則で限られた目的以外に使わないと書かれています。ケガの状態と医療機関の欄は、外部のAIに入れない欄として、受付票の上で色を変えておきます。
委託先の監督として確かめるのは、送信と学習利用だけではありません。入力したメモと下書きがどこにいつまで保存され、契約を終えたときに消されるのかを、契約書と規約で見ます。事業者がさらに別の会社へ処理を任せていないか、データが海外のサーバーへ移っていないかも、個人データを預ける前に確かめる点です。
社内では、下書きを見られる人を受付担当と事務責任者に絞り、誰がいつ入力し閲覧したかの記録が残る設定にします。万一漏えいが起きたときに、事業者から代理店へ誰あてに何日で連絡が来るのかも、使い始める前に取り決めておきます。
メモから下書きまでの流れ
渡す入力は、受付担当が来店客の話を聞きながら打った短いメモです。先ほどの場面なら、【説明用の架空の記入例】「9/27夕方、スーパーの駐車場でバック中に隣の車にこすった。相手と連絡先交換済み。ケガなし。警察はまだ。車はバンのほう」のような文面になります。
AIへの指示には、メモを共通欄に振り分けること、メモに無い項目は「未確認」と書くこと、契約特定の欄は空けたまま返すことを入れます。下書きには、「事故の時刻が未確認」「警察への届出が未」「相手の車の登録番号が未確認」と空欄が並びます。
契約特定の欄はAIに埋めさせず、顧客画面の候補を横に並べさせるにとどめます。受付担当は来店客の前で下書きを読み上げ、違う箇所を直してから確定します。
来店客が話していない内容、たとえば過失の割合らしき一文が下書きに入ったら、その下書きは捨てて手で書き直し、対応記録に件数を残します。件数が減らないとき(何週で見るかは事務責任者が決め、たとえば2週間)は、AIの指示より先に受付票の欄の名前を直します。
本店の事務で持てる範囲と外部に頼む作業
外部に頼む意味が出てくるのは、保険会社ごとの様式への写し替えや、顧客画面から候補の証券を並べる仕組みを、AIの下書きとつなぎたくなったときです。受付票の欄をそろえ、月末に聞き直しを数える作業は、紙かタブレットの受付票と表計算で足り、本店の事務責任者が持てます。
乗合代理店で複数社の様式へ写す量が多い場合や、契約管理システムと受付票をつなぎたい場合は、仕組みづくりの話になります。AIエージェント開発のような外部の開発を検討する場面です。
聞き取りメモを外部のAIに入れる前の契約・設定の確認を社内で判断しきれないなら、AI開発セキュリティ顧問のような第三者のレビューを使う方法があります。どの業務からAIを試すかの順番を決めるところで迷っているなら、AI顧問のように月ごとに相談できる形が合います。
受付の後に続く必要書類の案内や進捗の連絡は、保険金・給付の対応の業務一覧に工程ごとに並べています。保険会社の側で損害サービスの拠点を集約するときは、損害サービス拠点の集約と引き継ぎで記録の分け方を扱っています。金融・保険の業務全体は金融・保険AI活用ジャーナルのトップから確かめられます。
外部の仕組みに報告の写し替えを任せる場合も、顧客が保険会社の事故受付センターへ先に連絡していた事故は扱いを分けます。店舗の受付票には契約特定と受付済みの記録だけを残し、仕組みに2件目の事故報告を作らせないことを、頼む前の取り決めに入れておきます。
明日から始める3ステップ
担当 業務責任者・事務責任者
本店で使っている受付票と取扱保険会社の事故受付票を並べ、契約特定の欄を先頭に置いた共通欄と、自動車の種目別の欄を1枚にまとめる
次へ進む目安受付票の版が1つに決まり、契約特定欄に「確定した人」の名前を書く決まりと「未確定」の書き方が手引きに載った
担当 店舗の受付担当・本店の事務担当
新しい受付票を1店舗の窓口に置き、受付担当が来店客の前で直接書き込む。本店の事務担当は報告の前に契約特定欄と「確定した人」の名前を見る
次へ進む目安試す期間(たとえば2週間。決めるのは事務責任者)の受付票がそろい、保険会社から聞き直された欄を件数つきで控えた
担当 事務責任者
月末の締めの後、聞き直された項目、「未確定」で止めた件数、「確定した人」が空の枚数、受付日と報告日の差を店舗別に並べ、減らない欄の名前を直す
次へ進む目安店舗別の一覧が1枚にまとまり、直す欄と、AIの下書きを試す店舗を1つ決めた
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01無料相談
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03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- そんぽADRセンター統計号 2025年度第4四半期(苦情解決手続の内容別件数一般社団法人 日本損害保険協会 確認日 2026.09.28
- 損害保険代理店実在数の推移一般社団法人 日本損害保険協会 確認日 2026.09.28
- 自動車保険事故受付票損害保険ジャパン株式会社 確認日 2026.09.28
- 事故の連絡|自動車の事故|ご契約者さま三井住友海上火災保険株式会社 確認日 2026.09.28
- 自動車事故情報交換システム一般社団法人 日本損害保険協会 確認日 2026.09.28
- 保険業法(平成7年法律第105号)第294条の3(業務運営に関する措置)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり




