保険の提案書はAIでどこまで?比較表の推奨欄は空けて募集人が書く
意向把握の記録と現契約・見積を見ながら、提案書と比較資料を顧客ごとに手で組んでいる保険代理店(乗合を含む)と保険会社の渉外、銀行の窓販の責任者
面談の前日の夕方に、意向把握シートと今の契約の証券、2社の設計書システムの見積を机に並べて提案書を組み直していると、比較資料の書き方は担当者ごとに少しずつ違ってきます。AIに任せたくても、推奨の文や比較の言い回しまで書かせてよいのかで手が止まりがちです。提案書の欄ごとに、AIの下書きにする所と募集人が書く所の分け目を示します。

先に結論
推奨する商品と比較の言い回し、説明の順序は募集人が決め、AIには提案書の構成案・比較表の数値欄・重要事項の要点メモの下書きを任せます。比較表の推奨欄とまとめ文は空欄のまま返させ、数値欄を見積と照合するのも募集人です。仕上がった提案書は、内部点検の担当が誤解させる比較と重要事項の漏れを見てから顧客に出します。
反対に、渡す商品資料の版が分からない案件、意向の記録がまだ固まっていない案件、他社の商品と条件をそろえて並べられない案件では、下書きを使わずにこれまでの作り方で組みます。
提案書でAIに任せられるのは下書きまで、推奨は意向で決まる
保険の提案書でAIに任せられるのは、意向把握の記録・現在の契約・最新の商品資料から、構成と比較表・重要事項の要点を下書きするところまでです。どの商品を推奨するかの判断は、意向を聞いた募集人の手元に残ります。
保険業法294条の2は、保険会社や保険募集人などに、顧客の意向の把握と、意向に沿った契約の提案・契約内容の説明を求めています。意向と契約内容が合っているかを顧客が確かめる機会を設けることも含め、「行わなければならない」と定めた義務です。
どの商品が意向に沿うかを決めるには、面談で聞いた言葉の重みが要ります。意向把握シートに「保険料は今と同じくらい」とあっても、保障を削ってでも据え置きたいのか、少し上がっても不足を埋めたいのかは、その1行では決まりません。AIが受け取るのは書かれた項目だけで、面談での口ぶりや迷い方は入力に入っていません。
意向把握の記録と現契約から提案書までの分担
AIに渡すのは、担当者が確定した意向把握の記録・現在の契約の内容・改定日の分かる商品資料の3つで、返ってくるのは構成案・比較表の数値欄・重要事項の要点メモの下書きです。入力が1つでも確定前の案件と、病歴などの要配慮個人情報を外部のAIサービスへ渡してよいかを店で決める前の段階では、この流れに乗せません。
図の要点:募集人・AI・内部点検の担当の3レーンで、提案書ができるまでの7工程を並べた図。募集人が確定した意向把握の記録・現契約の内容・改定日の分かる商品資料を選び、AIが構成案・比較表の数値欄・重要事項の要点メモを下書きする。推奨欄とまとめ文は空欄で返り、募集人が数値欄を見積と照合して推奨する商品・まとめ文・説明の順序を書き、内部点検の担当が誤解させる比較と重要事項の漏れを見て差し戻す。
推奨欄が空のまま届くので、どの商品を勧めるかは意向を聞いた募集人が書く
募集人
AI
内部点検の担当
- 募集人
確定した意向把握の記録・現契約の内容・改定日の分かる商品資料を選ぶ
戻す改定日が分からない資料は渡さない
- AI
意向の項目の順に提案書の構成案を組む
各項目に商品資料の該当箇所を添える
- AI
比較表の保険料・保障額・保険期間の欄を埋める
推奨欄とまとめ文は空欄で返す
- AI
重要事項の要点メモを下書きする
資料に無い事項は「未確認」と書く
- 募集人
数値欄を設計書システムの見積と欄ごとに照合する
戻す違う数字は見積の値に書き直す
- 募集人
推奨する商品・比較のまとめ文・説明の順序を書く
意向のどの項目に沿うかを添える
- 内部点検の担当
誤解させる比較と重要事項の漏れを見る
戻す該当する欄を募集人へ差し戻す
差し戻しが出る3か所のうち、数値欄と見積の照合を省くと、見積と違う保険料が顧客の手元に渡ります。下書きを使い始める前に、3か所の確認を誰の仕事にするかを店の中で割り当てておきます。
仮の業務例で流れを追います。乗合代理店の募集人が、翌日の面談に向けて夕方に、意向把握シートと現契約の証券、2社の設計書システムの見積を机に並べています。「保険料は今と同じくらい」とある顧客について、AIは2社の数値欄と構成案を下書きし、推奨欄は空けて返します。募集人は数字を見積と照合し、どちらを勧めるかとその理由を意向の言葉で書いて、内部点検に回します。
| 提案書の欄 | AIに書かせる範囲 | 募集人が決めること |
|---|---|---|
| 構成 | 意向の項目順の見出し案 | 説明の順序 |
| 比較表の数値欄 | 保険料・保障額・保険期間 | 見積との一致 |
| 推奨欄 | 空欄で返す | 推奨する商品と理由 |
| 比較のまとめ文 | 空欄で返す | 誤解させない言い回し |
| 重要事項の要点 | 商品資料からの抜き出し | 漏れの有無と伝え方 |
欄と担当の分け方が店の中で決まると、内部点検の担当は、誰が書いた提案書でも同じ欄を同じ順に見られます。前後の作業は提案書・設計書の業務の一覧で確かめられます。
保険の比較表はAIで下書き、誤解させるまとめ文は書かせない
比較表の保険料・保障額・保険期間の欄はAIに下書きさせてよく、「推奨」「おすすめ」の欄と比較のまとめ文は空欄で返させ、誤解させない言い回しを募集人が書きます。保険業法300条1項6号は、ある保険契約の内容を他の契約と比べた事項で、誤解させるおそれのあるものを告げたり表示したりする行為を禁じています。下書きをAIが作っても、顧客に表示するのは店と募集人です。
まとめ文までAIに書かせると、数字の差を強めに言い表す文が混ざるおそれがあります。仮の例で、「保険料は今と同じくらい」の意向に「B社なら月々の保険料が下がります」とだけ書いた一文があるとします。保障額も下がる点に触れていなければ、比べ方として誤解を招きかねないので、募集人が保険料の差と保障額の差を並べて書く形に直します。
今の契約をやめて乗り換える提案では、300条1項4号も関わります。不利益となる事実を告げずに今の契約を消滅させ、新しい契約を申し込ませる行為は禁じられています。比較表に現契約を並べるなら、乗り換えで失う条件の欄を空けたまま出さないことも募集人の仕事です。
約款・料率が最新版でないとき、AIの提案書は使わない
商品資料の改定日が確かめられないとき、意向把握の記録が確定前のときは、AIの提案書の下書きを使わず、手作りかテンプレートの差し込みに戻します。他社商品を同じ条件で並べられない提案も、下書きに回しません。
商品資料の改定日が確かめられない
改定前の約款や料率表から作った要点メモは、300条1項1号が禁じる「判断に影響する重要な事項を告げない」説明につながりかねません。意向把握の記録が担当者の確定前
AIの整理を確定した意向として扱うと、実際の意向とずれた記録と提案書が残ります。他社商品を同じ条件で並べられない
保険期間や補償の範囲がそろわない2社を1つの表に並べると、保険料の差がそのまま誤解の元になります。
| 作り方 | 合う店 | 崩れやすい所 |
|---|---|---|
| 手作り | 扱う商品が少ない店 | 担当者ごとの書き方の差 |
| テンプレートの差し込み | 取り扱う会社と種目が少ない店 | 意向に合わない定型文 |
| AIの下書き | 乗合で資料の版を管理できる店 | 古い資料と推奨文の混入 |
扱う商品と乗合の会社数が多いほど、AIの下書きで減る手間は大きくなります。その分、改定日の管理が崩れたときに古い条件が入る提案書の数も増えます。
意向把握シートには家族構成や資産、健康状態が書かれていることがあり、病歴は個人情報保護法の要配慮個人情報に当たります。構成案と比較表の下書きなら、氏名を伏せた意向の要点と商品資料で足りることが多いものの、店の顧客台帳で本人に結び付くなら個人データのままです。
外部のAIサービスに渡す前に、事業者が中身を取り扱わない旨が契約で定められ、アクセスも制限されているかを確かめます。取り扱う契約なら委託と言えるか(委託先の監督は25条)を確かめ、言えなければ第三者提供として本人の同意が要ります(27条)。
提供先が国外の事業者なら、28条により外国の第三者への提供として本人の同意が要る場合に当たらないかも見ます。構成案と比較表の下書きに病歴が要らない案件では、確認の結果にかかわらず病歴を渡さないと決めておきます。融資の書類を例にした決算書の転記と稟議書の下書きの記事も、送る範囲の決め方を扱っています。
提案書の作成時間と差し戻し回数で、AIの下書きを測る
AIの下書きで速くなったか、点検で戻る件数が増えていないかは、提案書1件の作成時間と内部点検での差し戻し回数を、使う前と後で同じ種目どうし比べて確かめます。作成時間は、意向把握の記録を開いてから内部点検に回すまでの分数です。差し戻し回数は内部点検の担当が1件を戻した回数で、理由を「数字の誤り」「比較の言い回し」「重要事項の漏れ」に分けて残します。
自動車保険と法人の火災保険のように種目が違えば、作成にかかる分数はもともと違います。種目を混ぜて平均すると、AIの下書きの影響と、その月に多かった種目の影響が区別できません。
作成時間が縮んでも「比較の言い回し」での差し戻しが前より増えていれば、まとめ文か推奨欄に下書きの文が残っています。たとえば同じ種目で10件ずつ比べてそうなっていたら、空欄で返させる指示を見直すまで下書きを止めます。比べる件数と止めるかどうかは、内部点検の担当と募集管理の責任者が決めます。
商品資料の版を誰が管理するかで、外部を使うか決める
商品資料の改定を受けて最新版だけをAIに渡す仕組みを店の中で持ち続けられるなら自前で回し、乗合の会社数が多く入れ替えが追いつかないなら外部と組みます。取り扱う保険会社が1〜2社で、改定の知らせを受けた事務担当がその日のうちに資料を差し替えられる店なら、仕組みは店の中で足ります。
乗合の会社数が多く、種目ごとに改定の時期がばらばらな店では、差し替えの漏れが1件でもあれば古い条件の要点メモが出ます。改定日で資料を絞り込んで渡す仕組みの設計と、外部AIサービスに渡す範囲の設定の確認は、外の手を借りる候補です。銀行の窓販で、資料を差し替える本部の担当と支店で下書きを使う募集人が別の人なら、差し替えの記録を支店の誰が確かめるかも決めます。
他社商品を同じ条件にそろえて並べられるかの見極めは、資料の管理を誰に任せても、比較表を前にした募集人がその都度行う作業です。保険期間や補償の範囲が合わない組み合わせが出た提案だけは、下書きを捨てて比較表を手で組み直します。面談の記録や契約の手続きなど、提案書の前後の業務を扱う記事は金融・保険の記事の一覧にまとめています。
明日から始める3ステップ
担当 募集管理の責任者
直近に作った提案書を種目ごとに選び、意向把握の記録を開いてから内部点検に回すまでの分数と、内部点検で戻った回数とその理由を書き出す
次へ進む目安AIを使う前の作成時間と差し戻し回数が、種目別・理由別の一覧になっている
担当 事務担当
取り扱う保険会社ごとに約款・パンフレット・料率表の最新版を1つの保管場所に集め、資料ごとに改定日を書き添える
次へ進む目安AIに渡してよい資料の一覧ができ、改定日の分からない資料は一覧に入っていない
担当 募集人と内部点検の担当
一覧の資料がそろった種目を1つ選び、意向把握の記録が確定した案件で、推奨欄とまとめ文を空欄にさせた下書きから提案書を作って内部点検に回す
次へ進む目安下書きを使った提案書の作成時間と差し戻し回数が、使う前の記録と同じ種目で並んでいる
無料相談(オンライン)
BoostXは、金融機関の審査資料・面談記録へのAI導入を支援しています
01無料相談
決算書の転記・稟議書・面談記録から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 保険業法(平成7年法律第105号)第294条の2(顧客の意向の把握等)・第300条第1項第1号(保険契約の締結等に関する禁止行為)・第300条第1項第4号(保険契約の締結等に関する禁止行為)・第300条第1項第6号(保険契約の締結等に関する禁止行為) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.26
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第3項(要配慮個人情報)・第25条(委託先の監督)・第27条(第三者提供の制限)・第28条(外国にある第三者への提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.26
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用) 個人情報保護委員会 確認日 2026.10.26
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