ホテルの価格はAIでどこまで?料金候補と在庫配分、誤料金を止める4条件
料金とOTAごとの在庫の割り振りを担当者の経験で決めていて、AIにどこまで任せてよいかを決めかねている支配人・レベニュー担当の方へ
週末の料金を上げるか、OTAに残す部屋を減らすか。毎週この判断を担当者の経験で下していると、その人が休んだ週は見直しが止まります。ホテルの価格と在庫配分のうち、どこまでをAIに渡してよいかと、どの判断を館に残すかを、急変の週にAIの候補を外す条件とあわせて答えます。

先に結論
AIに出させてよいのは、過去の実績と予約の入り方から読む需要の見立て、客室タイプと曜日ごとの料金候補、OTA・自社サイト・電話へのチャネル別の配分案までです。急変を補正し、サイトコントローラーへ反映する前に料金表と見比べるのはレベニュー担当で、料金と配分を確定するのは支配人です。
線をそこに引くのは、単価を守るか稼働を取るかという館の方針や、法人・団体との約束がPMSの実績に載っておらず、誤った料金で入った予約は取り消しにくいからです。実績に無いイベントや天候の急変、実績の欠け、前週から大きく外れた候補、団体ブロックが未確定の日の4つは、候補を使わずに手で決めます。
需要の見立ては実績から、料金の確定は館の方針から
需要の見立てと料金候補、チャネル別の在庫配分案は、AIが過去の実績と予約の入り方から出せます。その案に実績に無い事情を書き足すのはレベニュー担当で、料金表に載せる数字として確定するのは、館の方針を知る支配人です。
週の料金の見直しは、たとえば火曜の朝に始まります。レベニュー担当がPMSの予約一覧と前年同週の実績表を並べ、「週末の料金を上げるか」「OTAに残す部屋を減らすか」を支配人と立ち話で決めます。このとき見ているのは、今週末の予約の積み上がりが前年より早いか遅いかと、客室タイプごとの残室です。
前年との比べ方は数字の作業なので、AIに向いています。料金は客室タイプ、曜日、チャネルの組み合わせで決まり、週に一度の見直しでも直す欄が多くなります。その全部について上げ・据え置き・下げの候補と根拠を並べる作業なら、担当が休んだ週でも同じ条件で出せます。
一方で、単価を守るか稼働を取るかは館の方針で、法人や団体と約束した料金もあります。どちらもPMSの実績には載っていないため、AIの候補には入りません。
誤った料金がOTAに出てしまうと、その料金で入った予約の取り消しや差額の扱いで宿泊客と揉めます。確定を人の手に残すのはそのためです。価格・収益の業務の流れはホテルの価格・収益の業務に、ほかの業務でのAIの使い方はホテル・旅館のAI活用ジャーナルにまとめています。
予約の入り方から料金の反映まで、5工程の受け持ち
工程は、需要の見立て、料金候補、料金と配分の確定、サイトコントローラーへの反映、稼働・ADR・RevPARの確認の5つです。AIは見立てと候補・配分案、反映後の突き合わせと集計を持ち、補正と確定、反映前の照合、外れた理由の判断はレベニュー担当と支配人が持ちます。
図の要点:料金と在庫配分が決まるまでの5工程を、AI・レベニュー担当・支配人の3つの受け持ちに分けた図。AIが需要の見立てと料金候補、チャネル別の配分案を出し、レベニュー担当が実績に無い事情を補正して反映し、支配人が料金と配分を確定し、反映後の照合と前年同曜日の集計はAIが出して外れた理由を支配人が判断する。
料金表に載る数字を決めるのは支配人で、AIの候補はその判断材料にとどまる
AI
レベニュー担当
支配人
- AI
需要の見立て:前年同週と比べ、日別・客室タイプ別の予約の積み上がりを出す
- レベニュー担当
需要の見立て:近隣のイベントや天候など、実績に無い事情を書き足す
戻す実績に無い需要がある日は候補を使わない
- AI
料金候補:客室タイプ×曜日ごとに上げ・据え置き・下げの候補と根拠を出す
チャネル別の配分案も並べる
- 支配人
料金と配分の確定:館の下限の料金や法人・団体との約束と見比べて決める
戻す前週から大きく外れた候補は担当へ返す
- レベニュー担当
サイトコントローラーへの反映:確定した料金と配分を入力し、公開前に料金表と見比べる
- AI
サイトコントローラーへの反映:反映直後にOTAごとの設定と料金表を突き合わせる
戻す漏れと桁違いの行は担当がすぐ直す
- AI
稼働・ADR・RevPARの確認:前年同曜日との差を日別に集計し、外れた日を挙げる
- 支配人
稼働・ADR・RevPARの確認:外れた理由を判断し、翌週の方針を決める
図の「戻す」は、候補を担当の手に返す合図です。どの行に付けるかを支配人が先に書き出しておけば、担当が替わった週でも同じ日に候補が外れます。
AIに渡すのは、PMSから日別・客室タイプ別に集計した予約室数と売上、前年実績表、料金表(Excel)、近隣のイベント情報です。宿泊者の氏名や連絡先が載った予約の明細は、どの工程でも渡しません。反映後の突き合わせで一致と出た行も、公開する料金はレベニュー担当が料金表と見比べてから販売に出します。
料金会議で出やすい困りごとと、そろえる帳票、AIが読めない事情を次の表に並べます。
| 困りごと | 必要な帳票 | AIが読めない所 |
|---|---|---|
| 週末の料金を上げるか迷う | PMSの予約一覧・前年実績表 | 法人・団体と約束した料金 |
| OTAに残す部屋が決まらない | 在庫の配分表・OTAの契約条件 | 団体ブロックの人数の見込み |
| 直す欄が多く反映が漏れる | 料金表・反映後の設定 | 手で上書きした例外の料金 |
| 実績に無い需要の日がある | イベント情報 | 発表直後のイベントの規模 |
AIが読む予約一覧は、PMSへの予約の登録が正しいことが前提です。登録の誤りを到着前に見つける方法は、予約メールからPMSへの転記ミスを当日前に見つける照合で扱っています。
チャネル別の在庫配分は、OTAの締切と手数料で決める
OTAごとに何室残すかの案はAIに出させてかまいませんが、配分はOTAごとの手数料と締切、団体ブロックの戻り日をレベニュー担当が確かめ、支配人が確定します。これらは契約で決まる条件で、PMSの予約実績には入っていないからです。
AIが出せるのは、予約の入り方から見た配分案と根拠の整理です。前年同週に自社サイトと電話の予約が直前まで伸びていたなら、OTAの残室を早めに絞る案を出し、根拠として前年の日別の予約数を添えます。
配分の失敗は、売り止めと売れ残りの両方向で起こります。OTAを早く絞りすぎると直前に売れたはずの部屋が残り、残しすぎると手数料のかかる経路で先に埋まります。どちらの損が重いかは館ごとの手数料と予約の入り方で変わるため、案の比べ方は支配人が決めます。
迷いが大きいのは、旅行会社が仮押さえした団体ブロックの人数が確定していない日です。戻り日までに部屋が返ってくるかは、PMSの数字からは読めません。このような日はAIの配分案を使わず、レベニュー担当が旅行会社に見込みを確かめてから配分を直し、支配人が確定します。
イベントや天候の急変では、AIの候補を使わない
次の4つの場面では、AIの候補を料金会議に出さず、レベニュー担当が手で補正した料金を支配人が確定します。AIの候補は過去の実績から作るので、実績に無い事情や欠けた実績の上では外れ方が読めないからです。
- 実績に無いイベントや天候の急変がある日(近隣の大型イベントの発表、台風の進路予報で取消が出始めた週末など)
- 改装や売り止めでPMSの実績に欠けがある期間
- 前週に確定した料金から大きく外れた候補(桁の誤りの疑いを含む)
- 団体ブロックの人数が確定していない日
この4つが、題に掲げた誤料金を止める条件です。
【仮の場面】近隣で大型イベントの日程が発表された週に、AIは前年の実績から平常どおりの料金候補を出しました。レベニュー担当はイベント当日と前日の候補を外し、イベント情報を見て手で上げた料金を入れ、支配人が確定します。ほかの日はAIの候補を見比べて使えるので、手で決めるのは外した2日分です。
「大きく外れた」の幅は、1回に動かしてよい変更幅として支配人が先に決めます。担当の経験と表計算、AIの候補は、次のように得意な所が違います。
| 決め方 | 扱える入力の量 | 急変・担当の休み |
|---|---|---|
| 担当の経験 | 担当が覚えている範囲 | 急変に強いが休むと止まる |
| 表計算(Excel) | 手で更新した実績と予約数 | 作った人しか式を直せない |
| AIの候補 | 全客室タイプ×曜日×チャネル | 急変は読めないが毎週出る |
AIの候補は担当の経験の代わりではありません。休みの週にも同じ条件で候補が出る点を使い、急変の補正には担当の経験を充てる組み合わせです。
ADRとRevPARの前年同曜日差で、候補の当たりを測る
AIの候補が当たっているかは、前年同曜日とのADRとRevPARの差、料金変更の回数、反映漏れの件数を、候補を使う前と後で比べて確かめます。ADRは客室平均単価、RevPARは販売可能な客室あたりの収益です。
比べる相手を全国の平均にしない理由は、業態で稼働の水準がまるで違うからです。2025年の年間値で見た客室稼働率は、旅館が38.2%、ビジネスホテルが75.3%でした。この幅の中では、全国平均より上か下かを見ても、自館の料金の決め方が良くなったかは分かりません。
前年の同じ曜日と比べるのは、週末と平日で予約の入り方が違うからです。候補を使う前の、たとえば8週分を先に記録しておけば、使い始めた後の同じ週数と並べられます。期間の長さは、季節の変わり目を挟まないように支配人が決めます。
前年同曜日の差が使う前と変わらず、反映漏れも減らないなら、支配人は候補を料金会議の材料から外し、手での見直しに戻します。料金変更の回数が増えて反映漏れも増えたなら、変更幅の決め方を先に直します。稼働の見込みが固まった後の部門ごとの人数の考え方は、ホテルの必要人員をAIでどこまで見立てるかで扱っています。
PMSから実績を出せるかで、自前か社外かが分かれる
PMSとほかのシステムの間でデータを受け渡す仕様は、宿泊業では標準化されていません。そのためAIを選ぶ前に、自館のPMSとサイトコントローラーから予約・実績・料金設定を取り出せるかを確認します。取り出し方は館ごとに違うため、レベニュー担当が提供元へ書き出せる項目を問い合わせるところから始めます。返事が届くまでは、AIの候補を料金会議に出しません。
日別・客室タイプ別の予約室数と売上、チャネル別の料金設定を表の形で書き出せれば、候補を出させて料金会議の材料にするところまでは館の中で始められます。社外の手が要るかは、その先の反映前の照合で分かれます。
料金の欄は客室タイプと曜日と販売経路の掛け算で増えるため、確定した料金と配分を料金表と見比べる作業が、レベニュー担当1人で見比べ切れる数を超える館があります。見比べ切れずに反映漏れが残るなら、反映後の突き合わせを自動で出す仕組みを整える所にだけ、社外の手を借ります。
誤った料金で入った予約をどう処理するかも、館の中で先に決めておく事柄です。候補をそのまま反映する運用にすると、桁の誤りがOTAに出たときの取り消しと差額の扱いが館の負担になります。処理の手順と責任者が決まっていない館は、AIの候補を料金会議の材料にとどめ、反映は手で行う段階から始めます。
明日から始める3ステップ
担当 レベニュー担当
PMSから日別・客室タイプ別の予約室数と売上、サイトコントローラーからチャネル別の料金設定と残室を、どの形で書き出せるかを提供元に問い合わせる
次へ進む目安書き出せる項目と書き出せない項目、更新の頻度を並べた一覧が支配人の手元にある
担当 支配人
館の下限の料金、法人・団体との約束の料金、1回に動かしてよい変更幅、候補を外す4つの場面を1枚に書き出す
次へ進む目安レベニュー担当がAIの候補を見て、使うか外すかをその1枚だけで判断できる
担当 レベニュー担当
AIの候補を料金会議に出す前の期間(長さは支配人が決める。たとえば8週分)について、前年同曜日のADR・RevPAR差、料金変更の回数、反映漏れの件数を週ごとに記録する
次へ進む目安候補を使い始めた後の同じ週数と並べられる記録表が埋まっている
無料相談(オンライン)
BoostXは、旅館・ホテルの予約と問い合わせ対応へのAI導入を支援しています
01無料相談
予約確認・OTAの返信・多言語の問い合わせから、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年(令和7年)年間値(確定値)観光庁 確認日 2026.10.27
- 観光庁「観光DX推進に向けたデジタルツールのデータ連携における標準化に関する調査結果について」観光庁 確認日 2026.10.27
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり








