この記事の要点
- 配送順序づくりは、納品先の並べ替え・所要時間の見積もり・遅延の検知と連絡文の下書きをAIに渡せます。
- 搬入口や待機場所の事情を踏まえた順序の採否と、荷主へ連絡するかどうかは配車担当と運行管理者に残ります。
- 本メディアでは、順序の自動作成より先に到着予測と遅延の検知から始めるべきだと判断します。
配送順序は、地図の上では単純な並べ替えに見えます。実際に効くのは、どの現場が朝一番しか空いていないか、どこの搬入口で待たされるかという、地図に載っていない情報です。この情報は配車担当かドライバーの記憶にあり、紙にも画面にも残っていません。
だからこそ、ルート作成にAIを入れる話は、順序を自動で作る前段から始まります。走った結果がどこにも残っていなければ、作った順序が良かったのかも判定できません。
配送順序を決める仕事は運行のどこにあるか?
扱うのは、確定した配車表を受け取ってから配送順序を組み、運行指示を出し、到着予測と遅延を見て、運転日報に実績を残すまでです。車両とドライバーの割り当ては前工程、請求明細への反映は後工程として扱います。
棚卸しで書くと、起点は配車表の確定です。担当は配車担当で、運行中の把握と乗務可否は運行管理者が持ちます。入力は配車表、納品先の時間指定、車両の制約、過去の走行実績です。
出力はルート計画、運行指示書、到着予測、遅延記録、運転日報の5つです。判断が入るのは順序の採否と遅延時の連絡の2か所で、それ以外は並べる・見積もる・検知する・書くの作業です。使うのは地図・ルート作成ツール、動態管理とデジタコ、配車システム、電話とチャットです。
納品先の件数と1便あたりの所要は会社ごとに違うため、この記事では数値を置きません。表には、自社で測るときの単位だけを書きます。ルート配送が中心か、貸切の長距離が中心かで、着手の順番は変わります。

積み込みから帰庫までを7工程に割る
ルート作成は、地図を開いて線を引く作業ではありません。着手から完了までを時系列に並べると、担当も帳票も違う7つの工程が並びます。まず担当・帳票・量・詰まる点を見ます。
| 工程 | 担当 | 使う帳票・システム | 量・時間(測る単位) | 詰まる点 |
|---|---|---|---|---|
| 1 納品先を並べる | 配車担当 | 配車表、時間指定の一覧 | 1便あたりの納品先数 | 指定時間が備考欄にある |
| 2 配送順序を組む | 配車担当 | 地図・ルート作成ツール | 組むまでの分 | 現場の事情が地図に無い |
| 3 休憩と枠を織り込む | 配車担当・運行管理者 | デジタコ、拘束時間の集計 | 見直しの回数 | 休憩を省いた順序が通る |
| 4 運行指示を出す | 配車担当 | 運行指示書、チャット | ドライバーの人数 | 注意事項が口頭で消える |
| 5 到着予測と遅延を把握する | 運行管理者 | 動態管理、ルート計画 | 遅れに気づくまでの分 | 電話で聞くまで分からない |
| 6 遅延を連絡し再配車する | 配車担当 | 電話、変更記録 | 1日あたりの遅延件数 | 事後連絡になる |
| 7 運転日報に実績を残す | ドライバー・運行管理者 | デジタコ、運転日報 | 記入にかかる分 | 荷待ちが書かれない |
同じ7工程を、AIと人の受け持ちで見直したのが次の表です。空欄はありません。AIを入れない工程には、その旨を書いています。
| 工程 | AIが解決すること | 人が決めること | 失敗したときの損失 |
|---|---|---|---|
| 1 | 配車表と備考欄から納品先と指定時間を抜き出して一覧にする | 指定時間の読み取りの確認 | 指定時間を落として遅配 |
| 2 | 時間指定を満たす配送順序の案と、過去実績に基づく所要を出す | 順序の採否と現場事情の反映 | 搬入できず待機が伸びる |
| 3 | 休憩を入れた場合の拘束時間を再計算し、枠に近い便を示す | 乗務可否と枠の確認 | 休憩を省いた運行になる |
| 4 | 集荷先・納品先・指定時間・注意事項を入れた指示文を下書きする | 送信の可否と伝え方 | 現場での積み直しが起きる |
| 5 | 位置情報と計画の差から遅れを検知し、遅れる納品先を並べる | 順序を変えるかどうか | 着荷主から先に電話が来る |
| 6 | 遅延の連絡文と再配達の候補時間を下書きする | 連絡の要否と伝える内容 | 信用を落として運賃に響く |
| 7 | デジタコと音声メモから日報を下書きし、荷待ちの時間を切り出す | 記録内容の確認と異常の報告 | 荷待ちが請求に載らない |
図の見方は、色枠がAIの担う工程、灰色が配車担当や運行管理者が確定する工程、二重枠がその両方です。右上の小さな三角は、失敗が起きやすい工程を指しています。
AIで消える工程は1の書き写しです。配車表の備考欄から指定時間を拾い直す手作業が無くなります。
短くなる工程は2・4・7です。順序の案、指示文、日報の下書きが先に用意され、人は読む側に回ります。
新しく増える確認工程は3です。休憩を入れた後の拘束時間を見る確認が、指示を出す前に必ず入ります。
順序案をAIに出させ、現場の事情は人が足す
工程に割ると、渡してよい仕事の性質が見えます。並べる・見積もる・検知する・下書きするは作業なのでAIへ、採ると決める・連絡すると決めるは判断なので人に残ります。
境目で効くのは工程2です。地図の上で最短になる順序が、現場では成立しないことがあります。搬入口が9時前しか空かない、待機場所が無く路上に着けられない、担当替えを嫌う現場がある。これらは走ってみた人しか知らない条件で、記録に残っていなければ案にも入りません。
工程3の重みは数字にも表れます。国土交通省の調査では、1運行当たりの平均拘束時間は10時間13分、うち荷待ち・荷役等時間は2時間2分です(2026-09-22確認)。これは実運送を行う事業者の業界全体の平均で、個社の値ではありません。荷待ちが読めない前提で順序を詰めると、休憩が最初に削られます。
貨物自動車運送事業法は運行管理者の選任、点呼、乗務記録の備付けを定めています。順序の案に警告が出なかったことを、改善基準告示の枠に収まっている根拠にはできません。枠の確認と乗務可否は運行管理者が行います。
最初の着手は到着予測と遅延の検知です
着手する1工程は、3つの問いで選びます。判断か作業か、記録が電子で揃っているか、失敗したときの損失がどれくらいか。この3つで工程5が残ります。
工程5は検知の作業です。動態管理の位置情報とルート計画という電子の記録から作れ、誤っても実際の到着で正されます。損失は検知が遅れるところまでで、荷主への連絡が後手になる前に人が気づけます。
工程2は判断を含み、現場の条件が文字になっていない会社では案の良し悪しを測れません。搬入口や待機場所の事情が納品先ごとに書き出されていないなら、順序の自動作成より条件の書き出しが先です。
本メディアでは、走行実績がたまっていない段階でルートの自動作成から着手するのは勧めません。理由は、所要時間の見積もりが過去の走行に依存し、実績が無い状態では案が机上の数字になるからです。前提は、同じ納品先を繰り返し回る配送であることです。毎回行き先が変わるスポットの傭車が中心なら、この前提が外れます。
試行の2週間で数えるのは遅れと手直し
試行は6つの段で足ります。長い手順書は要りません。
- コースを1本選び、導入前のひと月分を測ります。時間指定に遅れた件数、遅れに気づいた時刻、順序の手直し回数の3つです。
- 納品先ごとの条件を書き出します。搬入口、受入時間、待機場所、荷役の有無をドライバーへの聞き取りで拾います。
- 動態管理とルート計画をひもづけます。便名が両方で一致していないと、遅延の検知が別の便に当たります。
- 工程5をAIに検知させ、運行管理者が遅れる納品先の一覧を朝と昼に見ます。検知の外れも記録に残します。
- 工程6の連絡文を下書きさせ、送信は配車担当が押します。事前連絡と事後連絡を分けて数えます。
- 2週間後に同じ3つの数字を並べ、運行管理者が続けるか止めるかを決めます。合否の線は開始前に決めておきます。
測る3指標は、時間・誤り・発見時期の3種類に対応しています。遅れに気づいた時刻が発見時期、手直し回数が誤り、遅れた件数が結果の出方です。曜日と荷主を分けて数えると、効いた工程が読めます。
本番で決めるのは指示の出し方と記録の残し方
承認は、工程2で配車担当が順序を採り、工程3で運行管理者が枠を見る形から動かしません。案をそのまま指示へ流す運用に広げるのは、手直しが出ない状態がひと月続いてからです。広げる範囲はコース単位で区切ります。
記録は、順序の案・採った順序・外した理由・実際の走行・荷待ちの時間・確定者の6つを残します。走った結果だけを残すと、案が良かったのかどうかを次の月に持ち越せません。納品先ごとの荷待ちがたまれば、荷主と話す材料にもなります。
例外は先に文字で決めます。事故、通行止め、荷主の受入停止、車両故障の日は案を待たずに人が組みます。戻し方を1枚の手順にしておかないと、止まった日にコースそのものが出ません。
地図の経路をそのまま指示するとなぜ崩れるのか?
起きやすいのは、地図の経路をそのまま運行指示にして、現場で積めずに待機が伸びることです。原因は、搬入口の条件や待機場所の有無が納品先の記録に無く、案の前提に入らないためです。防ぎ方は、納品先ごとの条件を1行ずつ書き出し、案が外した条件を画面で目立たせることです。
もう一つは、遅延の検知を信じて確認をやめることです。位置情報が欠ける区間や、車載端末の電源が落ちた日は検知そのものが出ません。検知が出ない日も、運行管理者が到着予定を目で確かめる手順を残します。
国土交通省「物流改正法の施行について」では、令和10年度までに全体の車両で積載効率44%、荷待ち・荷役等時間を1人当たり年間125時間削減する目標が示されています(2026-09-22確認)。本メディアでは、順序を詰めて走行時間を削る前に、納品先ごとの荷待ちを日報に残すのが先だと判断します。理由は、削れる時間の大半が走行ではなく待機に乗っているからです。前提は、着荷主の受入に待ち時間が発生していることで、時間指定が厳密に守られる取引では当てはまりません。
ルート自動作成を急がない方がよい会社
動態管理が入っておらず、車両の現在地を電話で聞いているなら、位置の記録が先です。納品先の条件がドライバーの記憶にしか無いなら、条件の書き出しが先になります。配車表と地図の便名が一致していないなら、名寄せが先です。
この3つが揃わない状態で自動作成を足すと、工程2の手直しだけが増えて、指示は早く出せません。順序は毎日作り直すものなので、手直しが続く限り作業量は減りません。
出典
- 国土交通省 報道発表「トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間に関する調査結果の公表」(令和8年7月10日) 国土交通省 確認日 2026.09.22
- 国土交通省 物流・自動車局「物流改正法の施行について」(令和7年3月10日) 国土交通省 確認日 2026.09.22
- 貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22


