この記事の要点
- 翌日分の配車表づくりは、注文台帳の作成・拘束時間の集計・配車案の提示をAIに渡せます。
- 荷主ごとの事情を踏まえた割り当ての確定と、改善基準告示の枠の確認は配車責任者と運行管理者に残ります。
- 本メディアでは、案の生成より先に注文の取り込みと拘束時間の集計から始めるべきだと判断します。
配車担当が休んだ日に、翌日の配車表が組めない。車両数十台までの運送会社で、この状態は珍しくありません。荷主ごとの入構ルールも、担当替えを嫌う現場も、配車担当の頭の中に置かれているからです。
AIを入れる前に要るのは、その頭の中の作業を工程に割ることです。割らないまま「配車をAIで自動化する」と決めると、渡し方を誤ります。貨物自動車運送事業法にもとづく運行管理の責任が残る工程まで、機械に回ってしまうからです。
配車表づくりは会社のどこに置かれているか?
扱うのは、翌日分の注文を締めてから配車表を確定し、ドライバーへ運行指示を出すまでです。配送順序とルートの組み立ては後工程にあたり、点呼と日報の記録も別の業務として扱います。
棚卸しの単位で書くと、次のようになります。起点は翌日分の注文の締めで、荷主からの追加や取消によって締め後も動きます。担当は配車担当で、確定は配車責任者と運行管理者が持ちます。
入力は注文台帳、車両一覧と制約、ドライバーの拘束時間と休息の状況、荷主ごとの条件です。制約には車格、パワーゲート、冷凍冷蔵、入構制限が入ります。出力は配車表1本とドライバーへの運行指示で、判断が入るのは割り当てと確定の2か所です。使うのは配車システムまたはExcelの配車表、デジタコと車載端末、電話とチャットです。
件数と所要は会社ごとに違うため、この記事では数値を置きません。以降の表では、自社で測るときの単位だけを示します。自社の車両数や荷主数が違えば、着手の順番も変わります。

注文の締めから当日の組み直しまで、7つの工程に割る
配車表づくりは、ひとまとまりの作業ではありません。着手から完了までを時系列に並べると、担当も帳票も違う7つの工程が並びます。まず担当・帳票・量・詰まる点を見ます。
| 工程 | 担当 | 使う帳票・システム | 量・時間(測る単位) | 詰まる点 |
|---|---|---|---|---|
| 1 注文を締めて台帳に並べる | 配車担当・事務 | FAX、メール、注文台帳 | 1日あたりの注文件数 | 荷主ごとに様式が違う |
| 2 明日出せる車を確かめる | 配車担当・整備担当 | 車両台帳、点検・整備の予定 | 確認にかかる分 | 管理表が分かれている |
| 3 残りの拘束時間を見る | 配車担当・運行管理者 | デジタコ、勤怠システム | 集計が出るまでの時間 | 日次で締めていない |
| 4 荷主の条件を当てて割り当てる | 配車担当 | 配車表、荷主別の条件 | 1日あたりの作成分 | 条件が担当の頭の中にある |
| 5 配車表を確定する | 配車責任者・運行管理者 | 配車表、拘束時間の集計 | 組み直しの回数 | 案が粗い日ほど伸びる |
| 6 運行指示をドライバーへ出す | 配車担当 | 運行指示書、チャット、電話 | ドライバーの人数 | 口頭分が記録に残らない |
| 7 当日の変更で組み直す | 配車担当 | 配車表、動態管理、電話 | 1日あたりの変更件数 | 変更が台帳に書き戻らない |
同じ7工程を、AIと人の受け持ちで見直したのが次の表です。空欄はありません。AIを入れない工程には、その旨を書いています。
| 工程 | AIが解決すること | 人が決めること | 失敗したときの損失 |
|---|---|---|---|
| 1 | 注文書から荷主・集荷先・納品先・時間・数量を抜き出して台帳に並べる | 読み取り結果の確認 | 誤配と積み込みのやり直し |
| 2 | 車両台帳と点検予定から明日停止する車を一覧にする | 整備を前倒しするかどうか | 当日に出せる車が足りない |
| 3 | デジタコと勤怠から拘束時間を集計し枠に近い人を示す | 集計の設定と欠損の確認 | 枠を超えた配車が出る |
| 4 | 制約を満たす配車案と帰り便の積み合わせ候補を並べる | 割り当ての確定 | 条件違反と空車の増加 |
| 5 | 手直しした後の拘束時間を再計算して超過便を指摘する | 配車表の確定と乗務可否 | 枠を超えたまま出発する |
| 6 | 集荷先・納品先・指定時間を入れた指示文を下書きする | 送信の可否と伝え方 | 指示の取り違えで遅延する |
| 7 | 変更の影響を受ける便と代替の候補を抜き出す | 採否と荷主への連絡 | 変更が請求と日報に残らない |
図の見方は、色枠がAIの担う工程、灰色が配車責任者や運行管理者が確定する工程、二重枠がその両方です。右上の小さな三角は、失敗が起きやすい工程を指しています。
AIで消える工程は1の転記です。注文書を見ながら台帳へ打ち込む時間が無くなり、締めの時刻に一覧が揃います。
短くなる工程は2・3・6です。車両の停止予定、拘束時間の集計、指示文の下書きが先に出てきます。
新しく増える確認工程は5です。案が外した条件と手直し後の拘束時間を見る確認が、確定の前に必ず入ります。
AIへ渡す工程と、配車担当へ戻す工程の境目
工程に割ると、渡してよい仕事の性質が見えます。拾う・写す・並べる・下書きするは作業なのでAIへ、確定する・乗せると決めるは判断なので人に残ります。この線を先に引くと、案をどこまで信じるかで迷わなくなります。
境目で効くのは工程5です。拘束時間の集計をAIが出しても、改善基準告示の枠に収まっているかの確認と当日の乗務可否は運行管理者が行います。貨物自動車運送事業法は運行管理者の選任、点呼、乗務記録の備付けを定めています。警告が出なかったことを、法令に適合している根拠にはできません。
工程3の重みは数字にも表れます。国土交通省の調査では、1運行当たりの平均拘束時間は10時間13分、うち荷待ち・荷役等時間は2時間2分です(2026-09-22確認)。これは実運送を行う事業者の業界全体の平均で、個社の値ではありません。1日の枠がここまで埋まる前提なら、残り時間の確認が配車の可否そのものを決めます。
外部のAIサービスへ送る情報の範囲も、使い始める前に決める事項です。荷主名、納品先の住所、ドライバーの健康状態のどこまでを渡してよいかを社内で決めます。学習に使われる設定かどうかは、契約と画面で確かめます。
最初に着手するのは拘束時間の集計です
着手する1工程は、3つの問いで選びます。判断か作業か、記録が電子で揃っているか、失敗したときの損失がどれくらいか。この3つで工程3が残ります。
工程3は作業です。デジタコと勤怠という電子の記録がそのまま手に入り、誤っても元の記録に戻せます。損失は集計がずれるところまでで、配車を組む前に気づけます。
工程4は判断を含み、条件が文字になっていない会社では案の良し悪しを測れません。荷主別の条件一覧が無いなら、案の生成より条件の書き出しが先です。
本メディアでは、注文の取り込みと拘束時間の日次集計が動いていない会社で、配車案の生成から着手するのは勧めません。理由は、案の入力になるデータが揃わず、評価の基準も作れないからです。前提は、注文がFAXとメールで届いていることです。荷主のシステムから注文データを直接受け取れる会社は、この前提が外れるため、取り込みを飛ばして構いません。
2週間の試行では3つの数字だけを追う
試行は5つの段で足ります。長い手順書は要りません。
- 営業所を1つ選び、導入前のひと月分を測ります。工程1から3の所要、案の手直し件数、枠を超えた配車の件数の3つです。
- 荷主別の条件一覧を作ります。配車担当への聞き取りで、指定時間・入構ルール・担当替えを嫌う現場を書き出します。
- 注文の受け皿を一本化します。担当個人の受信箱へ直接届く経路を閉じないと、締めの時刻に台帳が揃いません。
- 工程1と3をAIに下書きさせ、配車担当が読み取りの誤りと集計の欠損を見ます。原本と下書きは並べて残します。
- 2週間後に同じ3つの数字を並べ、配車責任者が続けるか止めるかを決めます。合否の線は開始前に決めておきます。
測る3指標は、時間・誤り・発見時期の3種類に対応しています。工程1から3の所要が時間、手直し件数が誤り、枠の超過に気づいた日が発見時期です。曜日と荷主を分けて数えると、どの工程が効いたのかが読めます。
本番化で先に決めるのは承認と記録と例外
承認は、工程5で配車責任者が確定し、運行管理者が枠を見る形から動かしません。案をそのまま確定へ流す運用に広げるのは、手直しが出ない状態がひと月続いてからです。広げる範囲は荷主か車種で区切り、全便を一度に開放しません。
記録は、注文の原本・案・外した条件・手直しの内容・確定者・確定時刻の6つを残します。確定した配車表だけを残すと、誤りの原因も組み直しの理由も後から追えません。配車責任者が月次で見るとき、この6つが揃っていれば工程ごとの詰まりが読めます。
例外は先に文字で決めます。締め後の追加注文、車両故障、荷主のシステム障害の日は、案を待たずに手で組みます。戻し方を1枚の手順にしておかないと、止まった日に配車そのものが出ません。
案の生成から始めた会社でなぜ手戻りが増えるのか?
起きやすいのは、配車案を出す仕組みを入れても注文がFAXと電話のまま残り、担当が手で入力してから案を待つ状態です。原因は、入力側のデータが電子化されていない段階で、判断に近い工程から始めたことにあります。防ぎ方は、注文の取り込みと運転日報の電子化を先に終え、案の検証は走行と拘束時間の記録がたまってから行うことです。
もう一つは、枠の判定をAIに任せて運行管理者の確認が形だけになることです。警告が出ない日は確認を省き、集計の設定誤りや位置情報の欠損があった配車がそのまま出発します。AIは超過と接近の一覧を出す役割に限り、乗務可否と確定は点呼記録と併せて人が見ると社内規程に書きます。
国土交通省「物流改正法の施行について」では、令和10年度までに全体の車両で積載効率44%、荷待ち・荷役等時間を1人当たり年間125時間削減する目標が示されています(2026-09-22確認)。本メディアでは、この目標を社内に掲げる前に、便ごとの積載と空車が配車表に残る状態を作るのが先だと判断します。理由は、記録が無ければ改善したかどうかを自社で示せないからです。前提は、帰り便の積み合わせを自社で組める荷主構成であることで、専属で1荷主の往復だけを回している会社では当てはまりません。
いま割り当てをAIに渡さない方がよい条件
注文がすべて電話で、台帳が残っていないなら、AIより先に受け皿づくりです。車両の制約と荷主の条件が誰にも書き出されていないなら、条件の棚卸しが先になります。デジタコが一部の車にしか載っておらず、拘束時間が後追いでしか分からないなら、記録の整備が先です。
この3つが揃わない状態で案の生成を足すと、工程5の確認だけが増えて、配車の締めは早くなりません。全日本トラック協会の経営分析報告書(令和4年度決算版)では、有効回答2,532者の平均で営業損益率は0.0%、車両10台以下の事業者の64%が営業赤字です(2026-09-22確認・最新版は公式サイトで要確認)。便ごとの採算が見えないまま組み続けると、赤字の便を重ねても気づけません。
出典
- 国土交通省 報道発表「トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間に関する調査結果の公表」(令和8年7月10日) 国土交通省 確認日 2026.09.22
- 国土交通省 物流・自動車局「物流改正法の施行について」(令和7年3月10日) 国土交通省 確認日 2026.09.22
- 全日本トラック協会「経営分析報告書(概要版)令和4年度決算版」(令和6年3月) 全日本トラック協会 確認日 2026.09.22
- 貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22


