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診療記録

診療報酬改定で増えたカルテの記載漏れを、確認表とテンプレートで防ぐ

対象は、令和8年度改定の後に医事課から医師へ戻すカルテが増えた、外来中心の診療所・中小病院の院長と医事課長です。

改定の内容を院内で説明しても、会計の前に医事課がカルテを開くと算定に要る記載が無く、医師へ戻す件が減らないことがあります。令和8年度改定で記載が変わった算定項目を原文で確かめ、確認表とテンプレートのどこを直し、AIと医師がそれぞれ何を受け持つかを、医事課長と院長が決められるようにします。

診療記録 8分 運営 株式会社BoostX

診療記録の現場のイメージ写真

先に結論

改定後の書き漏れは、自院が算定している項目の「診療録に記載」の要件を医事課が確認表にまとめ、カルテのテンプレートの欄と、医師が書いている時点のAIの照合で防ぎます。

下書きと確認表の照合はAIに任せられますが、示すのは、その日に算定する予定の項目で足りない欄までです。聞いた事実を書き足すか、その日の算定を見送るかを決めて署名するのは医師です。

原文で記載要件を確かめられない行と、疑義解釈を待っている行は照合に入れず、医事課が医師へ直接確かめます。確認表の行の追加と削除は医事課長が受け持ち、院長が承認します。

記載の要件は通知の各区分に散らばっている

診療録に何を書けば算定できるかは、留意事項通知の算定項目ごとの区分に1文ずつ置かれています。そのため、医事課が自院の分だけを書き出し、医師がカルテを書く時点に届ける形をとります。

図の要点:医事課・AI・医師の3列の流れ。医事課は通知と疑義解釈から自院の算定項目の記載の要件を書き出し、確認表とテンプレートの欄に移す。AIは医師の下書きを確認表の行と照合して足りない欄を示す。医師は聞いた事実があれば書き足し、無ければその日の算定を見送って署名する。

記載漏れを示すのはAI、その日に算定するかを決めるのは医師

医事課

AI

医師

  1. 医事課

    通知と疑義解釈から、自院の算定項目の記載の要件を書き出す

    算定しない項目は書き出さない

  2. 医事課

    確認表に行を足し、テンプレートの欄の修正を頼む

    区分番号と疑義解釈の号を残す

  3. AI

    医師の下書きを、確認表の行と照合する

    その日に算定する項目の行だけ

  4. AI

    足りない欄を、確認表の言葉のまま示す

    文は書き足さない

  5. 医師

    聞いた事実があれば書き足し、無ければ算定を見送る

    読みが分かれる行は医事課長に返す

  6. 医師

    記載を読み直して署名する

    会計に回す前に終える

医科の留意事項通知だけでも厚い冊子で、適用の後も疑義解釈が号を重ねます。外来の合間に医師がこれを通して読むのは現実的ではないので、医師が見るのは自院の算定項目にかかる「診療録に記載」の文だけにします。

確認表に行を足し終えていない項目は、AIの照合に回しません。表に行の無い項目まで照合させると、通知に無い欄まで「足りない」と出て、医師が知らせを読み飛ばすようになるからです。

医事課の差し戻しが生まれる、算定と記載のずれ

差し戻しは、改定の中身を知る人とカルテを書く人が別々なところで生まれます。通知を読むのは医事課です。医師は院内の説明の場で点数の増減を聞いても、記載の文言の変化まで追う時間は外来の日に取りにくいものです。

仮の業務例として、6月の適用後のある再診日を置きます。医事課が会計の前にカルテを開きます。地域包括診療加算を付ける予定の患者なのに、他院の処方の把握も残薬の聞き取りも見当たりません。医事課は付箋で医師へ戻し、医師は午後の外来の合間に、診察の記憶をたどって書き足します。

この流れでは、漏れに気づくのが会計の段階で、書き足すのは診察から数時間後になります。記憶に頼った書き足しは、聞いたかどうかがあいまいなまま文になることがあります。漏れを見つける場所を、医師が書いている時点へ前に出したいのはこのためです。

締めたレセプトに点検ソフトが出した指摘の振り分け方は、点検の指摘を医事課・医師・通すの3つに分ける記事が扱っています。ここで直したいのはその手前、医師がカルテを書く時点です。カルテの下書きや音声入力など記録まわりの記事は、診療記録の業務ページにまとめています。予約や請求を含む医療の業務全体は、医療の業務別のAI活用から辿れます。

令和8年度改定で診療録の記載が変わった算定項目

令和8年度の診療報酬改定は、2026年6月1日から適用されています。下の5行は、留意事項通知と個別改定項目の原文で、記載か算定要件が変わったことを確かめた例です。どれも、改定前に作ったテンプレートでは欄が無いか、欄の中身が要件と合わなくなっている項目です。

算定項目 改定で加わった・変わった要件 テンプレートで直す欄
地域包括診療加算・料 処方薬を把握する手段に電子処方箋を明記 他院を含む処方薬の欄
地域包括診療加算・料 患家の残薬の状況の聴取 残薬を聞いた結果の欄
在宅時医学総合管理料等 残薬の状況の聴取(新設・記載の文言なし) 欄を置くかは院内で決める
訪問看護遠隔診療補助料 看護師等の訪問の必要性の記載(新設) 必要性の欄と摘要欄
心理支援加算 心理支援が必要とされる理由等の記載 指示の理由の欄

地域包括診療加算・料では、処方されている医薬品を全て管理して記載することは、改定前から要件でした(加算は「診療録に記載」、診療料は「診療録等に記載」)。今回は、受診先と処方薬を把握する手段に電子処方箋システムが含まれることが明確にされました。あわせて、患家の残薬の状況を患者や家族等から聞き取ることが要件に加わりました。

「診療録に記載」の文言がかかるのは処方薬の管理で、残薬の聴取にはこの文言がありません。聞いた結果をカルテに残す欄を置くかは、算定の根拠を後から示せるかを基準に、医事課長と院長が決めます。在宅時医学総合管理料等で新設された残薬の聴取も、記載までは求められていないので、同じ基準で決めます。

訪問看護遠隔診療補助料は、診療前相談を行い、看護師等が患家へ訪問する必要を医師が認めた場合に限って算定できます。その必要性は、カルテと診療報酬明細書の摘要欄の両方に書きます。カルテの欄と医事課が入れる摘要欄の言葉をそろえておくと、突き合わせの手間が減ります。

心理支援加算は、対象が外傷体験と心的外傷に起因する症状のある患者から、神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害を有する患者に改められました。記載は「心理支援が必要とされる理由等」です。改定前は外傷体験と症状の詳細も記載の対象だったので、旧い要件で作ったテンプレートには、いまは要件に無い必須欄が残っている場合があります。

自院が算定していない項目は、確認表に入れません。自院の算定項目は、留意事項通知の該当区分を開き直して行を作ります。

カルテのテンプレートと確認表を改定に合わせて直す

確認表は、算定項目ごとに診療録へ書く事項・テンプレートの欄・出典の区分番号と疑義解釈の号を1行にまとめた院内の表です。列は次の5つで足ります。

列 入れる中身 主に使う人
算定項目 自院で算定している区分と名称 医事課
記載する事項 通知の文言を崩さず短くした1行 医師・AI
テンプレートの欄 電子カルテ上の欄の名前 設定担当
出典 通知の区分番号と疑義解釈の号 医事課長
最終確認日 原文を開いて照合した日 医事課長

出典と最終確認日の列は、疑義解釈が出たときにどの行を開き直すかを決めるために置きます。1行を埋めると、たとえば次のようになります。

【説明用の架空の記入例】

  • 算定項目

    A001 再診料 地域包括診療加算
  • 記載する事項

    他院分を含め、処方されている医薬品を全て管理して記載する
  • テンプレートの欄

    「他院を含む処方薬」欄
  • 区分番号と号

    A001 (11) オ(ロ)、該当する疑義解釈の号
  • 最終確認日

    医事課長が原文を開いた日付

紙の確認表を外来に配る形は、直すのが速い方法です。ただ、カルテを書く画面の外にあるので、記載の時点では目に入りません。テンプレートの必須欄にすれば、空欄のままでは先へ進めません。その代わり欄を増やすほど、定型文を貼って埋める記載が増え、診療の事実と合わない文が残りやすくなります。

AIの照合は、欄を増やさずに足りない行を示せます。訪問の必要性のように算定のたびに必ず書く行は必須欄にします。処方薬の把握や残薬のように患者ごとに中身が変わる行はAIの照合に回すと、医師の画面が欄で埋まりません。

健診の結果票の所見欄のように、学会の判定区分の改定で直すテンプレートもあります。その直し方は判定区分の改定で所見テンプレートを直す記事で扱っています。ここでの確認表は、診療報酬の通知を起点にする点が違います。

直した効果は、医事課から医師へ戻した件数を改定項目ごとに月で数えて見ます。記載が無くて算定を見送った件数も並べると、書き足しで済んだのか、その日の算定まで諦めたのかが分かれます。テンプレートを直した項目で、たとえば3か月たっても戻りが減らなければ(何か月で見るかは医事課長が決めます)、欄の置き方か医師に示す言葉のどちらかを直します。

AIが下書きで示す記載漏れと、医師が決める算定

AIの受け持ちは、医師の下書きや記載を確認表の行と照合し、足りない欄を示すところで終わります。カルテを書く義務は、医師法の第24条で診療した医師本人に置かれています。健康保険の診療では、保険医療機関及び保険医療養担当規則も第22条で、診療に関し必要な事項の記載を保険医に求めています。

下書きを院外のAIで照合するなら、診療録の文が院外へ出ます。学習に使われるか、どこに保存され、いつ消されるかを契約で確かめ、院内で送ってよいと決めてから使います。確かめる事柄は、電子カルテの音声入力を口述と会話記録で選ぶ記事で扱っています。

記載は診療の事実の記録です。聞いていない残薬の状況を、算定を通すためにAIに文として作らせることはしません。AIに渡すのは、その日の下書き、会計に回す予定の算定項目、確認表のうちその項目の行の3つです。返すのは「地域包括診療加算: 残薬を聞いた結果の欄が空」のように、確認表の言葉で書いた不足の一覧にとどめます。

不足を見た医師が選ぶのは、聞いた事実を書き足すか、その日の算定を見送るかのどちらかです。聞いていなければ、次の診察で聞く予定をカルテに残し、その日は算定しません。この扱いを医師と医事課の間で先に決めておくと、外来の途中で迷いません。

留意事項通知の原文で記載要件を確かめられない行は、AIの照合に入れません。疑義解釈の待ちになっている行も同じで、医事課が医師へ直接確かめます。

改定で記載が変わった項目を月に数件しか算定しない院には、AIの照合は向きません。確認表を外来に1枚貼り、医事課が会計の前に見る形で足ります。照合を入れるのは、対象の項目を算定する再診が毎日のように続き、医事課の目だけでは会計の前に追いつかない院です。

疑義解釈が出るたびに確認表を直す役を誰が持つか

確認表を直す役は、疑義解釈の号が出た週に原文を開ける医事課の職員に置きます。令和8年度改定の疑義解釈は、2026年3月23日のその1から9月25日のその13まで出ており、適用日の後も解釈は足されてきました。自院の算定項目に関わる問いを号ごとに探し、出典の列と最終確認日を書き換える職員が院内にいれば、表は院内で持てます。

医事課長は、この職員が書き換えた行を確かめてから院長の承認に回します。

テンプレートの欄を直す作業は、表を直す作業と分けて考えます。院内で作ったテンプレートは、電子カルテの点数マスタの更新とは別物です。設定できる人が院内にいなければ、欄の追加や必須の指定は電子カルテの事業者か外部の担当に頼みます。AIの照合を電子カルテの中で動かすか外に置くかも、この頼み先の範囲で変わります。

外部に頼めるのは、照合の仕組みを組むことと欄を設定することまでです。どの行を表に入れるかは、自院の届出と算定の方針から決まります。算定するかどうかの判断と切り離せないので、行の追加と削除は医事課長が受け持ちます。

表を直すときに見落としやすいのは、足す行より消す行です。心理支援加算のように記載の要件が軽くなった項目では、旧い必須欄を外さない限り、医師は要件に無くなった欄を毎回埋め続けます。

医事課長が自院のテンプレートの必須欄を確認表の行と突き合わせ、どの行にも当たらない欄を外す候補として書き出します。この一覧があれば、欄の設定を外部に頼む場合も依頼の範囲がはっきりします。

疑義解釈の号が出てから最終確認日を書き換えるまでの日数は、医事課長が号ごとに記録します。この日数が次の号の公表をまたぐようになったら、院内の職員だけでは表が追いついていない状態です。そのときは、欄の設定のほかに照合の組み直しも外部へ頼むかを、院長と医事課長で決めます。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 医事課長

    レセコンから過去3か月に算定した項目を書き出し、留意事項通知の医科(10月7日訂正後)で各区分を開いて「診療録に記載」「診療録等に記載」の文を書き出す。同じ期間に医師へ戻したカルテの件数も項目ごとに数える

    次へ進む目安自院で算定している項目すべてに、記載の文の有無と区分番号、直す前の戻した件数が並んだ一覧がある

  2. 担当 医事課長(案)・電子カルテの設定担当・院長(承認)

    記載の文がある項目を確認表の5列に起こし、疑義解釈その1〜その13で同じ区分を扱う問いの号を出典の列に書いてから、テンプレートで直す欄を電子カルテの設定担当へ渡す

    次へ進む目安院長が承認した確認表があり、どの行にもテンプレートの欄の名前と最終確認日が入っている

  3. 担当 医事課の担当と医事課長

    直したテンプレートで外来を1か月回し、医事課から医師へ戻した件数と、記載が無く算定を見送った件数を改定項目ごとに数える

    次へ進む目安改定項目ごとの戻した件数と算定を見送った件数が、直す前の数と同じ表に並んでいる

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出典

  1. 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)制定文(制定文) 厚生労働省 確認日 2026.10.07
  2. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号)別添1 医科点数表(1007訂正後)A001 再診料 (11) 地域包括診療加算 オ(ロ)(B001-2-9 地域包括診療料 (5)イも同旨)・A001 再診料 (11) 地域包括診療加算 オ(ロ)・C005-1-3 訪問看護遠隔診療補助料 (5)・I002 通院・在宅精神療法 (24) 心理支援加算・B001-2-9 地域包括診療料 (5)イ/C002 在宅時医学総合管理料 (31) 厚生労働省 確認日 2026.10.08
  3. 令和8年度診療報酬改定 個別改定項目について(令和8年2月13日)Ⅱ-5-1⑨ 残薬対策に係る地域包括診療料等の見直し 3.・Ⅲ-5-4⑬ 心理支援加算の見直し(現行欄)・Ⅱ-5-1⑨ 残薬対策に係る地域包括診療料等の見直し 第2 2. 厚生労働省 確認日 2026.10.08
  4. 令和8年度診療報酬改定について(第3 関係法令・通知等 3.疑義解釈・訂正通知)(第3 関係法令・通知等 3.疑義解釈・訂正通知) 厚生労働省 確認日 2026.10.07
  5. 医師法(昭和23年法律第201号)(第24条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.07
  6. 保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)(第22条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.07

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