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レセプト点検のAI指摘は、医事課で直すか医師に返すかで確定する

レセプト点検のAI指摘は、医事課で直すか医師に返すかで確定する

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レセプト・請求の記事一覧公開 2026.09.27最終確認 2026.09.27

この記事の要点

レセプト点検のAI指摘は、医事課で直すか医師に返すかで確定する

AIのレセプト点検が出す指摘は「確かめる候補」で、そのまま直す対象ではありません。医事課は指摘を1件ずつ、入力や記載事項の誤りとして医事課で直すもの、病名・症状詳記・診療録の記載に関わるため医師に返すもの、診療録に根拠があって直さずに通すものへ振り分け、送信する請求の中身は医事課長が確定します。採らなかった指摘も理由と一緒に残しておけば、審査の結果が戻ったとき、AIの過検出だったのか医事課の見落としだったのかを切り分けられます。

  • AIの指摘は候補で、算定できるかどうかの結論はAIの出力からは決めない
  • 保険情報の誤りや入力漏れは、医事課がレセコンの入力と診療録で照らして直す
  • 病名・症状詳記・診療録の記載に関わる指摘は医師に返し、医師が決める
  • 適応病名の推薦は、診療録に同じ病名が無ければレセプトに入れない
  • 採った指摘も採らなかった指摘も、理由と確定した人を点検記録に残す
  • 紙カルテの診療所では、AIの上乗せより先に指摘の絞り込みと医師への依頼票を整える
レセプト点検のAI指摘は、医事課で直すか医師に返すかで確定する(業務の現場のイメージ写真)

AIのレセプト点検の指摘は、そのまま直してよいか?

点検ソフトには、算定のルールや病名と医薬品の組み合わせを条件として登録し、レセプトをその条件に照らす型があります。AIを載せた型は、それに加えて過去の請求や査定の傾向から疑わしい行を挙げ、病名の候補や症状詳記の案まで示すものもある。どちらの型でも、画面に出るのは「この行を確かめてほしい」という指摘です。

指摘が正しいかどうかは、診療録を開かないと分かりません。点検ソフトが見ているのはレセコンに入った算定と病名で、医師が診療録に書いた所見や経過は、たいていその外にあります。要件を満たす記載が診療録にあれば、指摘は外れている。逆に、診療録にも記載が無ければ、指摘は当たっています。

指摘の数が多い月ほど、全部を「直す」に振りたくなります。ところが、要件を満たしていた算定まで外すと、今度は請求すべき点数を自分で削ることになる。AIが添える説明文を根拠に算定を決めるのも同じ危うさを持ちます。根拠になるのは算定のルールと診療録の記載で、AIの文章ではありません。

レセプト点検の指摘ごとに確定する人

指摘の行き先は、何を照らせば答えが出るかで決まります。レセコンの入力と受付の記録で答えが出るものは医事課、診療録に医師が書き足さないと答えが出ないものは医師です。

指摘の種類 医事課が照らす先 確定する人 点検記録に残すこと
保険者番号・公費・負担割合の誤り 資格確認の結果と受付の記録 医事課 直した項目と照らした記録
同じ日の算定の重複・入力漏れ レセコンの入力と診療録の実施記録 医事課 直した行と診療録の日付
回数や算定間隔の上限を超える 算定の要件と前月までの算定履歴 医事課(解釈が割れたら医事課長) 採否と根拠にした要件
病名が無い・医薬品や検査と合わない 診療録の病名と所見 医師 依頼した内容と医師の返答
症状詳記が要る・足りない 診療録の経過と検査結果 医師 依頼した日と書かれた詳記
根拠があり直さない 診療録の該当する記載 医事課(送信前に医事課長) 通した理由と記載の日付

医師に返す行が医師の側の仕事になるのは、診療録の書き手が医師だからです。保険医療機関及び保険医療養担当規則の第22条は、保険医が診療を行ったときに様式第一号またはこれに準ずる様式の診療録へ必要な事項を記載するよう定め、医師法第24条第1項も診療録への記載を医師に求めています。同じ規則の第23条の2は、保険医に、保険医療機関の費用の請求が適正なものとなるよう努めることを求めている。医事課から医師への確認依頼は、この努めの受け皿として院内の手順に書いておけます。

回数や算定間隔の指摘は、医事課の中で解釈が割れやすい行です。解釈が割れたときに医事課長が決め、その決め方を院内の算定メモへ1行足しておくと、翌月の同じ指摘は担当が代わっても同じ行き先に振れます。

月初のレセプト点検で医事課の手が止まる工程

レセプト・請求の仕事のうち、月初の点検で手が止まるのは、指摘の仕分けと医師への確認の2か所です。どちらも、請求の期限から逆算した数日に重なります。療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令は、第2条第1項で各月分の請求を翌月十日までに行うよう定めています。

  1. 前月分の締め(医事課・レセコン)。入院や外来の入力が遅れた分があると締めが後ろへずれ、点検に使える日がその分だけ減る。
  2. 一括点検(点検ソフトとAI)。全件を夜のうちに回しておけば、翌朝に指摘の一覧を開ける。量は指摘の行数で数える。
  3. 指摘の仕分け(医事課)。ここを急いで全部「直す」に振ると、算定できた項目まで削る。
  4. 医事課での修正(レセコン)。保険情報・重複・入力漏れを直し、照らした記録と一緒に点検記録へ残す。
  5. 医師への確認依頼(確認依頼票・電子カルテ)。病名・症状詳記・記載の不足を返す。返事は外来の合間にしか来ないので、返答待ちが締め間際に積み上がる。
  6. 再点検(点検ソフト)。医師が書き足した病名や詳記をレセコンに反映して回し直し、未反映の指摘が残っていないかを見る。
  7. 請求の送信(オンライン請求・医事課長)。期限までに送る。返事の無い依頼を抱えたままなら、その患者分を今月送るか次の請求に回すかを医事課長が決める。
業務フロー分解図。1 前月分の締め→2 点検ソフトとAIの一括点検→3 指摘の仕分け→4 医事課が入力を直す→5 医師へ確認を依頼→6 再点検→7 医事課長が送信。AI担当は2 点検ソフトとAIの一括点検・3 指摘の仕分け・5 医師へ確認を依頼・6 再点検、人が確定するのは1 前月分の締め・3 指摘の仕分け・4 医事課が入力を直す・5 医師へ確認を依頼・6 再点検・7 医事課長が送信1 前月分の締め2 点検ソフトとAIの一括点検3 指摘の仕分け4 医事課が入力を直す5 医師へ確認を依頼6 再点検7 医事課長が送信AIが担う人が確定する両方失敗が起きやすい工程
月初のレセプト点検7工程と、指摘が詰まりやすい工程

工程3の仕分けを入れる場所は、点検ソフトが指摘を外へ書き出せるかどうかで変わります。書き出せるなら、指摘の一覧を種類ごとに束ねる作業からAIに渡せる。画面の中でしか指摘を見られない仕組みなら、先に点検ソフトの側で指摘の種類を絞る設定を見直すほうが早く効きます。

病名を足す指摘を医事課で直さない理由

AIを載せた点検には、医薬品や検査に合う病名の候補を示すものがあります。候補が役に立つのは、診療録には病名が書かれているのに、レセコンへの登録が漏れていた場合です。このときは医事課が診療録の病名をそのまま登録すれば済み、確定の根拠は診療録に残っています。

診療録にその病名が無いなら、話が変わります。診療録に無い病名をレセプトにだけ足して送ると、審査を通っても、診療録とレセプトの病名は食い違ったまま残ります。湿布の処方に合う病名としてAIが示した候補を、医事課がそのまま入れた場合も同じです。医師が診断していない病名で請求した形になり、その一行を後から説明できる人は院内にいません。

医師への依頼は、答えを誘導しない書き方にします。「病名を付けてください」ではなく、「○月○日の処方に対応する病名の記載が診療録に見当たりません。記載するか、算定を外すかをご判断ください」。依頼票には、院内の患者ID、受診日、指摘された医薬品や検査、AIが示した候補を並べ、候補はあくまで参考として添えます。

症状詳記の案を出すAIも同じ扱いです。案を採るかどうかと中身は、診療録の経過を知っている医師が決めます。

採らなかった指摘も点検記録に残す

点検記録に残すのは、指摘の番号、院内の患者IDと診療月、行き先(直す・返す・通す)、その理由、確定した人の役職、日付です。点検ソフトの画面でチェックを付けるだけだと、翌月には何を通したのかを一覧で引けません。表計算の1枚でもよいので、月ごとに後から並べ替えられる形にしておきます。

一番残し忘れやすいのは「通す」の行です。直した行はレセプトに跡が残りますが、通した行は何も変わらないので、記録が無ければ判断したこと自体が消える。査定が来たときに見返したいのは、まさにこの行です。

保存の期間は院内の規程で決めます。同じ規則の第9条は、療養の給付の担当に関する帳簿や書類その他の記録を完結の日から三年間、患者の診療録は五年間保存するよう保険医療機関に求めています。点検記録をどちらの枠で扱うかを先に決めておけば、担当が代わっても捨てる時期で迷いません。

紙カルテの診療所と病院の医事課で違うAI点検の入れ方

令和5年の電子カルテシステムの導入率は、一般病院のうち400床以上で93.7%、200床未満で59.0%、一般診療所で55.0%です。裏を返すと、一般診療所の4割を超える施設は電子カルテシステムを入れていません。

紙カルテのまま点検している診療所では、AIが診療録の該当する記載を指摘の横に並べる下ごしらえが成り立ちません。突合は、紙のカルテをめくる手に残ります。AIの効き目は指摘を種類ごとに束ねるところまでで、それも指摘の行数が少なければ手で束ねても変わらない。ただし、受付・会計・請求を一人で兼ねている紙カルテの診療所では、AI点検を上乗せするより、点検ソフトの表示を誤りの確実な指摘に絞る設定と、医師に返す確認依頼票の様式を先に整えるほうが、月初の手は空きます。

電子カルテのある病院では、指摘の行数が多く、医事課の中で入院と外来、診療科ごとに担当が分かれます。ここでAIの下ごしらえが効くのは、診療録の記載を並べる工程3です。代わりに、担当ごとに行き先の振り方がずれやすくなるので、上の表を院内の手順書に載せ、解釈が割れた行を医事課長に集める道を決めておきます。医師への依頼は、診療科ごとにまとめて返すと、外来の合間に一度で読んでもらえます。

診療科ごとに摘要欄の書き方が違う病院なら、AIに並べさせる前に、摘要の書き方をそろえる話が先に出てきます。書き方がばらばらなままだと、並んだ記載がどの要件に当たるのかを担当ごとに読み替えることになり、仕分けの手間が戻ってきます。

クラウドのAI点検に渡すレセプトデータ

レセプトにも診療録にも病歴が入ります。病歴は個人情報の保護に関する法律第2条第3項の要配慮個人情報です。点検の処理を院外のサービスに任せるなら、個人データの取扱いの委託にあたるかどうかを契約と取扱いの実態で確かめ、委託にあたる場合は同法第25条のとおり、委託先に対する必要かつ適切な監督を行います。

契約の前に確かめるのは、データを置く場所、AIの学習に使うかどうか、再委託の有無、契約が終わったときの削除です。照らす物差しには、厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第7.0版)と、経済産業省のページにある「医療情報システムの契約における当事者間の役割分担に関する確認表」が使えます。確認表の項目を事業者と一緒に埋めておくと、漏えいや停止が起きたときに誰が何をするかが契約の中に残ります。

院内のサーバーで動く点検と、レセプトを院外へ送るクラウド型とでは、確かめる相手が変わります。前者は院内の運用管理規程、後者は事業者との契約と確認表です。どちらの場合も、医師への依頼票に氏名や保険者番号を書かず、院内の患者IDで突き合わせる運用にしておけば、外へ出る情報を減らせます。

査定と返戻が戻った月に点検記録と照らす

審査の結果は、増減点連絡書や返戻として戻ってきます。査定や返戻になった行を点検記録と照らすと、どこを直せばよいかが行ごとに見えてきます。

AIが指摘したのに医事課が「通す」にした行なら、通した理由を読み直します。理由が診療録の記載に基づいていれば、算定の解釈の問題として医事課長が院内の算定メモを直す。AIが指摘していなかった行は見落としで、同じ条件を点検ソフトの院内ルールに足す候補になります。医師に返して返答が無いまま送った行は、依頼の締めを前に倒す話です。

点検記録が残っていれば、査定の1行から、直すべきが点検ソフトの条件なのか、医師への依頼の締めなのか、医事課の判断なのかまで遡れます。記録が無ければ、同じ査定を翌月も同じ行で受けることになります。

出典

  1. 療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令(昭和51年厚生省令第36号)第2条第1項 e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.27
  2. 保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)第9条・第22条・第23条の2 e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.27
  3. 医師法(昭和23年法律第201号)第24条第1項 e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.27
  4. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第3項・第25条 e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.27
  5. 厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」(出典は医療施設調査) 厚生労働省 確認日 2026.09.27
  6. 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」案内ページ 厚生労働省 確認日 2026.09.27

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