所見テンプレートを判定区分の改定で直す、健診の記載とAIの下書き
健診の結果票の所見文を医師が外来後に1件ずつ書いている、診療所・中小病院の院長と健診担当の責任者の方へ。
健診の季節は、外来を終えた医師の机に結果票の束が残り、所見文の言い回しも医師ごとに違います。2026年4月1日に判定区分が改定され、院内の定型文も合わせて直す時期です。改定で直す対応表の欄と承認する人、AIに下書きさせる欄と医師が決める欄、下書きで起きやすい誤りと止め方を説明します。

先に結論
所見文の下書きは、検査値をAIに渡して自由に書かせるのではなく、院内で決めた判定区分と定型文の対応表を基準にして選ばせます。AIが足してよいのは、前年値との差を数値で書いた1文だけです。
判定を変えるのは医師です。精密検査の結果や既往による判定の変更、治療中の項目の扱い、受診先と再検査の時期、署名はAIの下書きでは確定させません。
対応表は先に2026年4月1日改定の判定区分へ合わせます。区分に当てはまらない値や食後に採血した受診者は下書きせずに医師へ回し、委託元が判定と様式を決めている健診には入れません。
検査値ではなく院内の定型文の表から、所見文を選ばせる
院内で「この項目のこの区分にはこの文」と決めた対応表を基準にすれば、AIの仕事は、判定区分に合う行を見つけてその行の文を選ぶことに絞れます。受診者に届く文はどれも院長が承認した文面になり、医師は読み直しで言い回しまで直さずに済みます。
図の要点:健診の所見文ができるまでの4つの工程。材料は今回の検査値と判定区分、問診票の服薬欄、前年の検査値。AIは判定区分に合う対応表の行から定型文を選び、前年値との差を数値で1文添え、服薬欄と判定が食い違う項目に印を付ける。医師は判定の変更、治療中の扱い、受診先と再検査の時期を決めて署名する。受診者に渡るのは医師が確定した所見文で、医師が直した箇所は対応表の見直しに回す。
所見欄の文は対応表から選ばれ、判定を変えられるのは医師だけ
結果票から集める材料
- 今回の検査値と、システムが付けた判定区分
- 問診票の服薬欄(治療中の病気と薬)
- 同じ受診者の前年の検査値
AIが組む下書き
- 判定区分に合う対応表の行から定型文を選ぶ
- 前年値との差を、数値のまま1文で添える
- 服薬欄と判定が食い違う項目に印を付ける
医師が決めること
- 判定の変更と、治療中の項目の扱い
- 受診先と再検査の時期を決めて署名
受診者に渡る所見欄
- 医師が確定した所見文と判定
- 医師が直した箇所の控え(対応表の見直しに回す)
医師が読み始めるのは、服薬欄との食い違いに印が付いた項目です。印の無い項目も判定と所見文の組を全件見てから署名し、印は読む順番を決める材料にとどめます。
健診の所見名には、学会が用語集をまとめるほど揺れがあります。2020年の用語集は作成の経緯として、各健診施設の所見名や診断名に類義用語や不適切用語が多く、受診者や保険者に混乱が生じていることを挙げました。結果票は受診者だけでなく保険者や事業者の手にも渡るので、文の揺れは院外からも見えます。
医師が定型文の一覧から1つずつ選ぶ方式でも揺れは減りますが、選ぶ作業は1件ごとに残ります。対応表からAIが選ぶ方式なら、医師に残るのは確かめて直す作業です。前年値との比較の文は、前年の結果を健診システムで引ける受診者に限って足させます。
結果票の束が外来後に残る、健診の所見記載の工程
医師の手がかかっているのは、所見文を書く工程と、その文を結果票に載せる前に読み直す工程の2か所です。検査結果の取り込みと判定区分の付与は健診システムが済ませていても、所見欄だけは医師が1件ずつ埋めています。
仮の業務例として、午前の外来を終えた内科の医師の机に、前日分の結果票の束が残っている場面を置きます。同じHbA1cの値に、ある医師は「経過観察」、別の医師は「半年後に再検」と書き、どちらも院内の定型文の一覧には無い言い回しです。医師が2人いれば、同じ判定に2通りの指示が受診者へ届きます。
対応表の下書きが変えるのは所見文を書く工程だけで、読み直しと署名は医師の仕事として残ります。医師法第24条は、診療録の記載を診療をした医師に課しています。院内では結果票の所見も、医師が確定する文として同じ重さで扱う形です。導入の前に、結果票1件あたりの医師の記載時間を数日分だけ測っておけば、後で比べる土台になります。
他院の健診結果を患者が持ってくる外来なら、受け取った結果を診察前に並べる作業が別に要ります。受け取る側の照合の分け方は、診察前に健診結果とお薬手帳を並べる1枚の記事が受け持ちます。所見の下書きは診療記録の業務のうち、健診期に偏って重くなる部分です。ほかの業務は医療のAI活用の入口から辿れます。
判定区分の改定で所見テンプレートを直す欄
日本人間ドック・予防医療学会の判定区分は2026年4月1日に改定され、空腹時血糖54〜69mg/dLがC、53mg/dL以下がDとして加わりました。院内の対応表に低血糖の行が無ければ、まずこの2行を足します。
直す前に、院内の判定がどこの基準に従っているかを健診の種類ごとに確かめます。特定健診を厚生労働省のプログラムの判定値で返している健診や、委託元の企業が判定と様式を決めている健診には、学会の改定がそのまま及ぶとは限りません。
| 判定区分表で変わった・定めた所 | 直す対応表の欄 | 確かめる人 |
|---|---|---|
| 血糖54〜69はC、53以下はD | 血糖の行に低値のC・D | 健診担当の責任者 |
| C判定は再検査時期を明記 | Cの定型文の末尾 | 院長(承認) |
| 治療中はE判定 | 服薬欄と照合する行 | 所見を書く医師 |
| eGFRの低下は脚注で紹介を考慮 | 前年値の一文を書く条件 | 所見を書く医師 |
欄ごとに直す人と承認する人は、表の「確かめる人」の欄で先に決めておきます。血糖の境の値は健診システムの判定の設定と同じ数字にそろえ、定型文の文面は院長が承認してから使います。
C判定の脚注は、Xか月後など再検査の時期を明記し、「経過観察」「定期的検査」「症状あれば受診」のような不明瞭な記載をしない、という定めです。画像検査や生理検査は1年後の再検査としてよいとされます。血圧は、健診機関での再検査より家庭血圧の測定が勧められています。対応表のCの行は、項目ごとに月数の入った文へ書き換えましょう。
【説明用の架空の記入例】血糖の行(低値・C)の定型文は「空腹時血糖が低めの値です。○か月後に再検査を受けてください。」です。○には院長が承認した月数を入れます。前年値の一文は「空腹時血糖 前年62mg/dL、今回58mg/dL」のように、数値だけを並べます。
eGFRの経年の低下は、判定区分の表の中ではなく脚注に置かれています。1〜3年でeGFRが40%もしくは30%以上下がった場合は腎臓専門医への紹介も考慮するとされ、区分の照合だけでは見つけられません。前年値との差を数値で書く一文が、医師がこの脚注に気づく入口になります。
AIが書く所見文と、医師が決める判定の境目
学会は判定区分を初回受診時の拠り所と位置づけ、精密検査の結果や年齢・既往・検査歴から判定を変えることを適切としています。AIが区分を照合して選んだ文は、医師が判定を変える前の下書きでしかありません。
AIに任せるのは、判定区分に合う対応表の行を見つけること、行に書かれた定型文を選ぶこと、前年値との差を数値と向きで1文にすることまでです。差が良い方か悪い方かの意味づけは、文に書かせません。服薬欄と判定の食い違いには印を付けさせますが、印の有無で医師が読む範囲を減らしません。
医師に残すのは、判定を変えるかどうか、治療中の項目の扱い、受診先と時期、そして署名です。初回にDと出た項目が精密検査で原因のはっきりしない所見だったときにCへ変える判断も、医師が下します。がんが濃厚な場合は、その旨を書いて受診を強く勧めるとされており、定型文の選択で済ませる項目ではありません。
学会のQ&Aは、結果報告書に総合判定を書くことを推奨していません。対応表には項目ごとの行だけを置き、AIに全体をまとめる一文を書かせない作りにします。定型文の改訂は健診担当の責任者が案を作り、院長が承認してから対応表に反映します。
経過観察で終わる文や治療中の誤りは、どこで止める?
下書きで起きやすいのは、改定前の定型文が対応表に残る誤りと、治療中の項目に数値だけで判定を付ける誤りです。どちらもAIの指示ではなく、対応表の行を直して防ぎます。
降圧薬を飲んでいる受診者の血圧が基準内に収まると、数値だけで照合した下書きはAの「異常なし」の文を選びます。医師は服薬欄と照合してEへ戻し、主治医のもとで治療を続ける文に替えます。よいデータという理由でAにすると受診者が薬を勝手に止めてしまうおそれがあると、学会のQ&Aも注意しています。
この型を繰り返さないために、服薬欄に該当する薬がある項目ではAの行を選べない形に対応表を直します。数値が悪い治療中の項目は、指導欄に主治医へ相談を促す注意書きを添えるかを医師が決めます。
判定の前提が崩れている受診者も、下書きから外す対象です。血糖・脂質の判定は空腹時採血が前提で、血糖や中性脂肪は直前の食事や前日の飲酒の影響を大きく受けると厚生労働省のプログラムも注意しています。問診で食後の採血と分かった受診者や、区分に当てはまらない値の項目は、下書きを作らず医師へ回します。
前年値が引けない受診者には、比較の一文を作らせず空欄のまま渡します。初めての受診者や、前年の結果が別の健診機関にある受診者では、AIが比較の相手を取り違えるおそれがあるからです。
2週間分の結果票で、医師の直しを「判定の変更」と「定型文の選び違い」に分けて数えます。選び違いが週を追って減らないなら、AIへの指示を足すより先に対応表の行へ戻って直し、減っていれば次の健診の種類へ広げます。
院外の生成AIに検査値を送るかは、事業者が送られた中身を取り扱う契約か、学習に使うかを書面で確かめてからの判断です。健康診断の結果は個人情報保護法の政令で要配慮個人情報の一つに挙がり、氏名を外しても受診番号で院内の名簿と結び付くなら個人データのままです。契約の条文をどの順で読むかは、診察の音声入力で院外送信を決める記事が詳しく扱います。
健診期の前に事業者と詰める判定の設定と前年値
健診システムの事業者と詰めるのは、改定後の判定の設定が保守の範囲で直るかと、前年の結果を受診者ごとに引き出せるかの2点です。どちらも対応表の外にある仕組みで、院長や健診担当の責任者が書き換えられる部分ではありません。前年値が引けないまま比較の一文をAIに書かせると、相手の取り違えが下書きに入ります。
院外のAIの契約を複数読み比べる場合や、健診の季節までに医師が対応表を決める時間を取れない場合も、外部の支援を考える場面です。対応表の文面そのものは、学会の判定区分表と院内の定型文を並べれば健診担当の責任者が案を作れ、院長の承認で確定します。手を付ける順は、学会の判定区分で動かしている健診の血糖の行とC判定の行からです。
続けるかどうかは、健診担当の責任者が結果票1件あたりの医師の記載時間を分単位で導入前と並べ、医師の直しの件数とあわせて見て決めます。記載時間が縮まらず判定の変更ばかりが残るなら、下書きの範囲を広げるより、対応表の行の分け方へ戻ります。
件数が少なく医師が当日中に書き終えている時期は、AIの下書きには向きません。委託元の企業が判定と様式を決めている健診も、院内の対応表の外に置き、学会の改定を当てる前に委託元の様式の改訂を確かめます。
明日から始める3ステップ
担当 健診担当の責任者
人間ドック・企業健診・特定健診ごとに、判定に使っている基準(学会の判定区分、厚生労働省のプログラムの判定値、委託元の様式)と版を書き出す
次へ進む目安院内で扱う健診の種類すべてに、基準の出どころと版が1行ずつ並んだ一覧がある
担当 健診担当の責任者(案)と院長(承認)
学会の判定区分で動かしている健診について、対応表に血糖低値のC・Dの行を足し、C判定の定型文の末尾を再検査の月数に書き換えて院長に回す
次へ進む目安C判定の定型文すべてに再検査の時期が入り、経過観察で終わる文が対応表に1つも無い版を院長が承認した
担当 健診担当の責任者と所見を書く医師
直した対応表で1日分の結果票の下書きを作り、医師が直した箇所を判定の変更と定型文の選び違いに分けて記録する
次へ進む目安2週間分の記録で、結果票1件あたりの医師の記載時間と直した件数が導入前の値と並んでいる
無料相談(オンライン)
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01無料相談
カルテの入力・予約受付・レセプト点検から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」空腹時血糖(FPG)の行・脚注*6 日本人間ドック・予防医療学会 確認日 2026.10.07
- 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2025年4月1日改定)」脚注*2(2026年度表の*1と同文)・脚注*11(2026年度表の*3と同文)・尿沈渣判定区分表の下の注記(2026年度表と同文)・脚注*6(2026年度表の*8と同文) 日本人間ドック・予防医療学会 確認日 2026.10.07
- 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分表に関するQ&A」質問①(2013年8月9日回答) 日本人間ドック・予防医療学会 確認日 2026.10.07
- 日本総合健診医学会・日本人間ドック学会「人間ドック・健診用語集について」(作成の経緯) 日本人間ドック・予防医療学会 確認日 2026.10.07
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」第2編第2章2-2(2)具体的なフィードバックの内容・2-2(3)情報提供の際の留意事項 厚生労働省 確認日 2026.10.07
- 医師法(昭和23年法律第201号)(第24条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.07
- 個人情報の保護に関する法律施行令(平成15年政令第507号)(第2条第2号) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.07
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