再診の経過・お薬手帳・健診結果を突き合わせる1枚、AIが下書きする6欄
AIは経過・処方・健診の行を書き出し、紙から来た行は看護師が照合し、方針は医師が決める
9欄のうち看護師の照合を通すのは、院外の紙から来た2欄だけ。どの欄をAIに下書きさせ、どの欄から試すかを外来で決められる。

30秒でわかること
何が問題か
手帳の規格や健診の年度の読み違いは、筋の通った1行に見えるまま医師の手元へ届きやすい。
何を見れば判断できるか
決め手は、欄の元が電子カルテか院外の紙か。紙から来た手帳と結果票の2欄に照合の手を置く。
誰が何をすれば解決するか
看護師が紙の行を原本と照らして印を付け、医師が確認欄を書く。AIの下書きはその材料にとどまる。
再診の経過を追う診察室で、医師が電子カルテの前回記録と、持参のお薬手帳や健診結果票を行き来するあいだ、患者は待っています。この往復を呼び込みの前に済ませるのが、診察前の1枚です。
9欄は医師が前回記録から読める順に並べる
9欄は、医師が前回の自分の記録から読み始められる順に並べます。
図の要点:診察前の1枚の9欄。前回からの処方の変化、前回の宿題と他院の話、検査値の推移の3欄は電子カルテの記録からAIが書き出す。他院の処方は資格確認端末の画面を看護師が写す。お薬手帳との差分と健診の要精密検査項目はAIが画像から下書きし、看護師が原本と照合する。健診項目の隣に置く問診の答えはAIが院内の対応表に従って並べ、問診で聞き足した答えは看護師が書く。最後の医師の確認欄は空けて渡す。
院外の紙から来た行は、看護師の照合印が付いて初めて医師の判断材料になる
- 前回からの処方の変化
- 増えた薬・減った薬・用量が変わった薬AI が下書き
- 前回の宿題と他院の話
- P欄の「次回」「再検」、S欄の「他院」を原文でAI が下書き
- 検査値の推移
- 項目ごとに直近3回の日付と値(評価の言葉なし)AI が下書き
- 他院の処方(資格確認端末)
- 処方元と処方月。看護師が画面を見て転記人が確定
- お薬手帳との差分
- 端末に無い処方・市販薬・メモ。看護師が原本と照合AI が下書き
- 健診の要精密検査項目
- 判定・数値と基準範囲・受診日。組で照合AI が下書き
- 健診項目の隣に置く問診の答え
- 院内の対応表で決めた設問の答えAI が下書き
- 問診で聞き足した答え
- 空欄を看護師が患者に確かめた答え人が確定
- 医師の確認欄
- 空欄で渡し、医師が確かめたことを書く人が確定
上の3欄は元が電子カルテにあるので、照合の印は付けず、医師が診察の中で前回記録と見比べます。院外の紙は、原本と見比べる人がいないと読み取りの誤りが医師まで届きます。
医師の確認欄を空けて渡すのは、そこが「医師が見た」という記録になるからです。AIが下書きした欄も、医師がこの欄に書き込むまでは今日の判断の材料にとどまります。
1枚は問診を確かめてから呼び込むまでに仕上げる
1枚を作る作業は、問診の確認を終えてから呼び込むまでの間に収めます。受付の時点では問診の答えがそろわず、診察が始まってからでは今と同じく医師の時間を使うからです。
- 受付の医療事務が、マイナ保険証での受付で情報提供の同意があったかを確かめ、問診票の余白に印を付けます。
- 看護師が問診票・Web問診の回答を確かめ、服薬欄などの空欄を患者に聞き足します。
- 同意のある患者は、看護師が資格確認端末で薬剤情報を開き、他院の処方を1枚へ写します。
- 看護師がお薬手帳と健診結果票の必要なページを撮り、前回記録とあわせてAIに下書きさせます。
- 看護師が院外の紙から来た行を原本と見比べ、照合済みの印を付けて診察室へ回します。
- 医師が1枚を読んで確認欄を書き、診療録に何を残すかを診察の中で決めます。
診療録に遅れずに記載する義務は、医師法第24条が医師に課しています。1枚はその材料になる下書きなので、内容を診療録に写すかどうかも医師が決めます。
救急で来た患者や、前回の受診から何年も空いた患者には、この1枚を入れない方がよいでしょう。過去記録が今日の判断にあまり役立たず、医師が直接カルテを開くほうが確実だからです。健診で要精密検査と言われた初診の患者は経過の欄が空になるだけで、同じ様式のまま使えます。1枚を用意する患者は、前日の受付リストで予約受付の初診・再診の区分を見て拾います。
「突き合わせ」で調べると、医科と調剤のレセプトを照らす突合点検も出てきます。こちらは請求の業務で、月初の点検で出た指摘の振り分け方は医事課のレセプト点検とAIの指摘の記事にあります。
前回からの経過は処方・検査値・宿題に絞る
経過の欄に載せるのは、処方の変化と検査値の推移、前回の宿題です。経過をまるごと要約させると1枚が長くなり、医師は要約が正しいかをカルテと見比べる羽目になります。書き出す範囲を狭くするのは、確かめる時間を短くするためです。
AIに渡すのは、前回と前々回の処方欄、直近3回分の検査結果、前回の診療録のP欄(方針)です。検査値には「改善」「悪化」といった評価の言葉を付けさせません。値の意味を読むのは医師の仕事だからです。
見落としやすいのは、処方欄にも検査欄にも出てこない文です。「めまいは消失」のような否定の文や、「循環器で降圧薬を調整中と本人談」のような他院の話がそれに当たります。S欄(患者の訴え)からも「他院」「〜科で」を含む文を抜き出させると、紹介先で起きた変化が1枚に載ります。
医師によって宿題を書く場所がばらばらなら、AIへの指示より先に院内の書き方を統一します。「次回確認はP欄の最後に1行」と決めれば、抜き出す場所が1か所に定まります。
電子カルテの有無で変わる経過の欄の作り方
経過と処方の履歴が電子カルテにそろっているなら、経過の欄は電子カルテの中で作れるかを確かめておきます。院外の仕組みを足すかどうかは、紙の手帳と結果票の読み取りが要る分だけで決めます。
電子カルテを入れている一般診療所は、令和5年で55.0%です。残りの診療所では経過の元が紙なので、経過の欄は医師が前回の紙を開き、処方の増減と宿題を1〜2行で書きます。それでも持参薬と健診の欄を診察前に仕上げておけば、手帳の打ち直しと結果票の読み取りは診察室の外へ移ります。
電子カルテの入れ替えを控えているなら、今のシステムに別の仕組みをつながず、欄の並びを紙で回してから選定に臨みます。「この欄を過去記録から出せるか」「手帳の画像をこの欄へ分けられるか」と、欄ごとに製品へ確かめられるからです。
お薬手帳と資格確認の薬剤情報は何が違う?
資格確認端末の薬剤情報は、レセプトから抽出された処方実績です。他院の処方までまとめて見られる一方で、市販薬や患者の手書きメモは載りません。紙のお薬手帳は写す手間がかかる代わりに、そうした情報が残っています。
| 情報の出どころ | 分かること | 載らないもの・条件 |
|---|---|---|
| 資格確認端末の薬剤情報 | 他院を含む、レセプト由来の処方実績 | 市販薬と手帳のメモ。本人の同意が前提 |
| 電子処方箋の情報 | 複数の医療機関・薬局で直近に処方・調剤された分 | 電子処方箋管理サービスに登録された分だけ。利用設定が要る |
| 紙・アプリのお薬手帳 | 薬局で記録された直近の処方、市販薬、患者のメモ | 持参がなければ空。写す手間がかかる |
持参薬の欄は、端末の情報を先に写し、紙の手帳からは差分だけを足す順にします。手帳は全ページを撮らず、直近の2〜3ページと、市販薬・サプリメント・メモのあるページに限ります。
AIには、撮った画像から薬剤名・規格・用量・用法・処方日・処方元を読み取らせ、端末から写した行と重なるものに印を付けさせます。看護師は印の付かなかった行を原本と見比べ、印の付いた行も薬剤名・規格・用量が端末の行と同じかを確かめます。
マイナポータルと連携した電子版お薬手帳のアプリなら、本人の承諾の上で、各医療機関・薬局で交付された薬剤の記録を呼び出せます。扱いは紙の手帳と同じで、患者に画面を見せてもらい直近分を確かめる形です。同意が得られなかった患者は端末の行が空になるので、手帳から直近の処方を全部写す今の段取りに戻ります。
照合で厄介なのは、筋が通って見える誤りです。
規格と用量
「5mg 2錠」と「10mg 1錠」が混ざります。1日量に直させず、手帳の表記のまま写させます処方日
同じ薬が複数のページに出ると、古いページの用量が残ります。処方元が同じなら最も新しい行だけを載せ、処方元が違えば両方を残します処方元
他院の処方が自院の処方のように並びます。処方元の医療機関名は欄から外しません
誤りを見つけたら、看護師が該当の行を手で直し、規格・用量・処方日・処方元のどれを直したかを一語添えて医師に渡します。AIに作り直させると別の行まで変わり、照合をやり直すことになるからです。飲み合わせや重複への対応は、照合を終えた1枚を見て医師が決めます。
健診結果は判定と受診日を組にして写す
健診結果の欄に写すのは、要精密検査・要再検査と判定された項目です。判定の記号、数値と基準範囲、受診日、健診機関名を一つの組にして並べます。異常なしの項目まで並べると、医師が探す手間が1枚の上に移るだけです。
健診結果票の様式は健診機関ごとにばらばらで、判定もA〜Eの記号だったり言葉だったりします。AIには判定を院内の言葉へ置き換えさせず、結果票のまま写させます。置き換えると読み違いが起きやすく、原本と照らしたときにも見つけにくいからです。
隣に置く問診の答えは、AIに推測させず、院内で決めた対応表に従わせます。便潜血陽性なら排便の変化と体重の変化、血圧の高値なら家庭血圧の記録、という組み合わせです。対応表は、問診票の設問を見直すときの材料にもなります。
年度の入れ替わりは、照合をすり抜けやすい誤りです。仮に今年と昨年の結果票が重ねて持参され、昨年の値が今年の受診日と並んで下書きに入ったとき、数値だけを見比べる照合では印が付いたまま医師に届きます。照合の対象を「数値と受診日の組」にしておけば、看護師の段階で止まります。
特定健診の結果は、マイナ保険証で受け付けて同意を得た患者なら、資格確認端末でも見られます。資格確認書での受付では特定健診等の情報を閲覧できず、頼りは紙の結果票です。端末の値を写したときは、1枚に「端末の値」と年度を書き添えます。
院外のAIに送るのは委託か、第三者提供か、どちらでもないか
どれに当たるかは、事業者が画像の中身を取り扱うか、扱うなら何の目的かで決まります。手帳や結果票の画像を院外の生成AIサービスで読み取らせるなら、送る前にこの点を契約で確かめます。健診の結果や、診療・調剤が行われたことを示す記録は、病歴と同じく個人情報保護法の要配慮個人情報に含まれます。
事業者が画像を取り扱わないと契約に書かれ、アクセスも絞られていれば、サーバに残っても提供にはなりません。
画像の中身を扱う事業者なら、読み取りがクリニックの頼んだ目的の中に収まる委託かどうかを、契約の条文で確かめます。収まれば第25条による委託先の監督がクリニックに生じ、事業者が自社の学習などにも回すなら収まらないので、第三者提供として原則、第27条の本人同意が要ります。
国外の事業者なら第28条も確認の対象です。条文を順にたどる説明は、音声を院外で文字にする前に決めることにまとまっています。
書面で答えを得ておくのは、学習利用の有無、画像の置き場所と何日残すか、解約時に消すか、再委託、国外で処理するかです。事業者の側で中身を見られる人、院内の誰がいつ送ったかの記録、漏えいが起きたときに何日以内に誰へ知らせるかも、同じ書面で尋ねます。
院内の側で決めておくのは、送るものの範囲です。資格確認端末の画面は「撮らない・送らない」と決め、看護師が見ながら手で写します。お薬手帳は氏名と住所の載った表紙を撮らず、健診結果票は氏名と受診券番号を付箋で覆ってから撮ります。
撮影には処置室に置いた院内の1台だけを使い、照合を終えた画像はその日の外来が終わる前に消します。学習利用と削除の答えが書面で得られないうちは、画像を院外へ送らず、紙の転記を看護師の手で続けます。その間にAIへ任せるのは、電子カルテに備わった機能を契約の範囲で使い、経過の欄を作る部分までです。
持参薬の欄から始め、電子カルテ内で作る欄は後に
1枚はお薬手帳との差分の欄から試します。この欄は電子カルテが無い外来でも同じ形で作れ、照合にかかる手間が看護師の手元でそのまま見えます。健診と経過の欄は、この欄の照合が呼び込みに間に合うようになってから足します。
照合で直した行は、外来の看護主任が内訳ごとに数えます。規格・用量の直しが多ければ読み取りの指示を、処方日の直しが多ければ撮るページの選び方を見直す、というように、内訳ごとに見直す先が違ってきます。
医師が1枚を置いてカルテへ戻る場面が続く日は、欄の並びか照合の印の付け方が、医師の読む順と合っていません。看護主任が院長と一緒に、最初の章の9欄の並びへ戻って順番を組み直します。
明日から始める3ステップ
次の外来日に、お薬手帳を持参した再診の患者を5人選び、直近の2〜3ページと市販薬のページだけを院内の1台で撮る
- 担当
- 外来の看護師
- 次へ進む目安
- 選んだ患者全員の差分の欄が、照合の印付きで呼び込みまでに診察室へ届いた
撮るページ、付箋で覆う欄、撮影に使う院内の1台、画像を消す時刻を1枚の決まりに書き、外来の看護師に配る
- 担当
- 院長
- 次へ進む目安
- 手帳の表紙や健診結果票の氏名欄が写った画像が、1週間で1枚も出なかった
照合で直した行を規格・用量・処方日・処方元に分けて診察日ごとに数え、医師が1枚を置いてカルテへ戻った回数と並べる
- 担当
- 外来の看護主任
- 次へ進む目安
- 直した行が1日2行以下の日が週に3日あれば、健診の欄を足す
医療機関のAI活用診断
朝の電話から診療録の記載まで、最初にAIへ任せる1工程を決める。
結果の例
いまの段階Lv.3 チーム活用期
最初にAIに任せる1工程予約と受診の問い合わせへの回答の用意
2週間で試すこと
- 1週間、受付の電話の用件を正の字で数え、多い問い合わせの上位を出す
- 上位の問い合わせの答えを院の案内として1枚にまとめ、Webの案内に載せる
- Webでの受け付けに切り替えた用件の、電話の件数の変化を数える
人が確かめて決める所も、結果に出ます。
出典・参考資料10件
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)について」厚生労働省 確認日 2026.09.29
- 厚生労働省「オンライン資格確認について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)」厚生労働省 確認日 2026.09.29
- 厚生労働省 政策統括官(情報政策担当)「オンライン資格確認における手術情報を含む診療情報の提供」第1.2版(薬剤情報で閲覧できる情報・電子処方箋の利用設定で閲覧できる情報・特定健診等の閲覧)厚生労働省 確認日 2026.09.29
- 厚生労働省「電子版お薬手帳」厚生労働省 確認日 2026.09.29
- 厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」(医療施設調査)厚生労働省 確認日 2026.09.29
- 医師法(昭和23年法律第201号)(第24条第1項)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第3項(要配慮個人情報)・第25条(委託先の監督)・第27条第1項(第三者提供の制限)・第27条第5項第1号(委託に伴う提供)・第28条第1項(外国にある第三者への提供の制限)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律施行令(平成15年政令第507号)(第2条第2号・第3号)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(令和8年4月一部改正)個人情報保護委員会・厚生労働省 確認日 2026.09.29
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-1(外国にある第三者への委託)個人情報保護委員会 確認日 2026.09.28
編集・監修体制BoostX編集部
BoostX編集部(株式会社BoostX)が、官公庁・業界団体などの一次情報を原典で確かめて書いています。下書きにはAIを使い、編集担当者が内容と出典を確認してから公開しています。