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整備工場の記録簿はAIで下書きできる?写せる5欄と整備士・検査員が書く欄

完成検査の後に点検整備記録簿を書いている整備工場で、フロント・整備士・整備主任者として記録簿に関わる方に読んでいただく記事です。

車検が重なる月ほど、作業指示書・点検票・部品伝票・車検証にある同じ値を記録簿へ書き写す作業が、完成検査の後の整備主任者の机にたまっていきます。その転記のうちAIの下書きに回してよい欄と、点検の良否・検査・確定の欄を書く人をどう分けるかに、3冊の記録簿の義務と保存期間を踏まえて答えます。

工場管理 更新 7分 運営 株式会社BoostX

点検整備記録簿のAI下書き、確定と保存は誰の名前で残るか

先に結論

AIに下書きさせるのは、登録番号、点検時の総走行距離、交換部品と数量、点検と整備完了の年月日、整備の概要の作業名までで、各行に写した元の伝票番号を添えた形で受け取ります。点検の良否と検査の欄は、空けたまま渡させます。

点検の良否は測った整備士が、指定工場の検査の欄は自動車検査員が書きます。整備主任者は、AIが空欄なしとした行も含めて伝票番号と品番を一行ずつ見比べて確定し、依頼者の氏名・住所は確定するときに顧客台帳から入れます。

作業名が紙にも画面にも残らない工場は、下書きより先に作業指示書へ作業名を書く習慣から始めます。所有者の列を外した表も登録番号から持ち主をたどれるので、外部のAIへ渡す前に契約を確かめます。

AIに写させる欄を5つに絞るのは、良否が測った整備士の判断だから

記録簿の欄のうち、登録番号や交換部品の値は原票にありますが、ブレーキパッドの残量が良か否かは、測った整備士の判断の中にしかありません。原票と並べて書き違いが見つかる欄だけが、AIに写させてよい欄です。

図の要点:点検整備記録簿1枚の欄ごとの受け持ちを示した図。登録番号は車検証から、総走行距離は完成検査の後のメーター写真から、交換部品と数量は部品伝票から、点検と整備完了の年月日と作業名は作業指示書から、AIが写す。整備の理由と点検の良否は整備士、指定工場の検査の概要は自動車検査員、依頼者の氏名・住所と記載の確定は整備主任者が書く。

点検整備記録簿(車検の入庫1台分)

登録番号
車検証の値をそのまま写すAI が下書き
点検時の総走行距離
完成検査の後のメーター写真から読むAI が下書き
交換部品と数量
ブレーキパッド(前)1セット・伝票番号つきAI が下書き
点検の年月日・整備完了の年月日
作業指示書の日付から写すAI が下書き
整備の概要(作業名)
作業指示書の作業名を並べるAI が下書き
整備の概要(追加の理由)
残量不足で交換、のように整備士が足す人が確定
点検の結果(良否)
点検票の測定値を見て整備士が書く人が確定
検査の概要(指定工場)
検査機器の記録を見て自動車検査員が書く人が確定
依頼者の氏名・住所(特定・指定整備記録簿)
確定するときに整備主任者が顧客台帳から入れる人が確定
記載の確定
整備主任者が伝票番号と品番を一行ずつ見比べる人が確定

【説明用の架空の記入例】AIの下書きを受け取った時点の1台分です。括弧の中は、AIが添えた写した元の原票です。

  • 登録番号: 車検証の値(車検証)
  • 点検時の総走行距離: 48,210km(完成検査後のメーター写真)
  • 交換部品と数量: ブレーキパッド(前)1セット(部品伝票 No.0412)
  • 点検の年月日・整備完了の年月日: 作業指示書の日付(作業指示書 No.0388)
  • 整備の概要(作業名): 継続検査整備、ブレーキパッド交換(作業指示書 No.0388)
  • 整備の概要(追加の理由): 空欄のまま(整備士が「残量不足のため交換」のように記入)
  • 検査の概要(指定工場): 空欄のまま(自動車検査員が検査機器の記録を見て記入)
  • 点検の結果(良否)と依頼者の氏名・住所: 空欄のまま(良否は整備士、氏名・住所は整備主任者が記入)

下書きに回せるかは写す元の原票が登録番号ごとの束にそろっているかで決まり、無い車ではAIの5欄も空欄のまま返ってきます。口頭の指示で済ませた作業は整備の概要に載らず、メーターの写真が入庫時の1枚しか無い車は、総走行距離を整備士が読み直します。

良否の欄は、ブレーキパッドの残量やタイヤの溝を測った整備士が決めた値なので、下書きに含めません。原票の数字から推して埋めると、見ていない人の判断が記録に載ります。

総走行距離は、スマートフォンで撮ったメーターの写真から読ませれば打ち込みが要りません。読む写真は、完成検査の後のものに決めておきます。入庫時の写真と取り違えると、試運転の分だけずれた値が記録簿に載るからです。

整備の概要を二つに割ったのは、理由まで書くと判断が入るためです。作業名だけで足りるか、理由まで残すかは、次の入庫で前回の処置を読む人が理由を要るかで選びます。

記録簿は3冊あり、書く義務を負う者が違う

道路運送車両法第49条は、点検整備記録簿を車に備え置き、点検や整備をしたら記載することを使用者に求めています。工場が書くのは、使用者から点検を頼まれたときの通常の形です。国土交通省の電子化の取扱いも、特定整備事業者と指定整備事業者は点検整備記録簿の保存の義務を負わない、と注記しています。

記録簿 記載する者 保存の期間
点検整備記録簿 自動車の使用者 記載の日から1年か2年
特定整備記録簿 特定整備をした事業者 記載の日から2年
指定整備記録簿 適合証を交付した指定工場 記載の日から2年

工場が保存の義務を負うのは下の2冊だけなので、下書きの型もこの2冊の欄の順に合わせます。点検整備記録簿の1年は事業用の車や総重量8トン以上の自家用車などで、自家用乗用車などは2年です(自動車点検基準第4条第2項)。

特定整備記録簿は工場自身の義務です(法第91条)。施行規則第62条の2により、特定整備時の総走行距離、整備主任者の氏名、事業場の所在地と認証番号も載ります。写しは使用者に交付します。指定整備記録簿には、車名と型式、検査の年月日、自動車検査員の氏名が並びます(法第94条の6)。指定工場の下書きの型に検査の年月日と検査員の欄を置くのは、この条があるためです。

令和7年6月末の時点で、認証を受けた92,251事業場のうち、指定工場は29,810事業場です。指定工場は3冊すべてに関わるので、検査の記録を指定整備記録簿の欄の順に並べる下書きが役に立ちます。車検を運輸支局へ持ち込む認証工場では2冊が中心で、写す欄は部品伝票から来るものが中心です。

控えは何年残すかを次に読む人で決める

点検整備記録簿の控えは工場に保存の義務がないので、年数は、次の入庫で前回の処置を読む人に合わせて工場が決めます。車検の間隔が2年の車なら、2年で捨てた控えは次の車検の頃に手元から消えます。

特定整備記録簿と指定整備記録簿は、記載の日から2年です。数え始めは入庫日でも引渡し日でもなく記載の日なので、月末に入庫して翌月に書いた記録簿を入庫月で綴ると、捨てる日が1か月ずれます。綴りは記載の日の月で分け、表紙に捨ててよい月を書いておきます。部品伝票に出庫を書く決まりを部品発注を在庫照合から組む記事と同じにすると、棚と伝票が同じ番号で追えます。

前々回の処置まで見て交換時期を判断する整備士がいるなら、車検2回分の4年を棚に残し、表紙の捨ててよい月もその年数で書き入れます。前回の控えしか無いと、2回前の交換を読めないからです。

下書きの誤りは伝票番号で一行ずつ見つける

下書きの出来が良くなるほど、埋まっている欄の誤りは見落とされます。車検が重なる月は、整備主任者が空欄だけを見て確定することがあります。隣の車の部品伝票が束に混ざれば、交換していないブレーキホースが整備の概要に載ったまま確定され、次の入庫の問診で前回交換済みと読まれます。

防ぐ手は、下書きの各行に伝票番号を添えさせることです。整備主任者は、AIが空欄なしと示した行も含めて、伝票番号と品番を一行ずつ見比べて確定します。空欄の指摘だけでは、埋まっている欄の誤りは出てきません。

差し戻した欄は、整備主任者が週ごとに欄の名前別に数えます。交換部品の欄が多ければ伝票の束ね方を、走行距離の欄が多ければ写真の撮り方を見直します。

整備士の口頭の指示で作業が回り、作業名が紙にも画面にも残らない工場は、下書きを始めるには向かない状態です。写す元の原票が無いので、下書きより先に、作業指示書へ作業名を書く習慣が要ります。

所有者の氏名を外しても、登録番号の表は個人データのまま

整備システムから書き出すときに所有者の氏名・住所・電話番号の列は外せますが、残る登録番号を顧客台帳と照合すれば持ち主をたどれます。外した後の表も、個人データとして扱います。

AIの下書きに要るのは登録番号までです。特定整備記録簿と指定整備記録簿の依頼者の氏名・住所の欄は、確定するときに整備主任者が顧客台帳から入れます。

登録番号だけの表でも、外部のAIサービスに入れるなら、扱いは三つに分かれます。一つ目は、預かったデータの中身をサービス事業者が取り扱わないと契約で定め、アクセスも適切に制限している場合です。このときは相手のサーバにデータが置かれても、第三者への提供に当たりません。

二つ目は、事業者が中身を取り扱う場合です。記録簿を作る目的に限って扱わせる契約であれば委託に当たり、委託先を監督する義務(第25条)が工場に残ります。三つ目は、委託とも言えない場合で、第三者への提供として、あらかじめ本人の同意が要ります(第27条)。

AIサービスの事業者が国外にあるなら、第28条も関わります。委託の形であっても外国の相手へ渡すことになるので、本人の同意が要るかを、契約と相手の体制で確かめます。

記録簿を電子で残すなら、整備システムで履歴と権限を確かめる

整備記録システムで記録簿を作るなら、変更の履歴と権限の分け方が国土交通省の取扱いに合うかを先に見ます。求められているのは、作成・保存・更新・消去の日時と、更新した箇所と作業者が自動で残ること。自動車検査員・整備主任者・起票と入力の権限が、IDとパスワードで分かれていること。IDを複数人で使い回さず、記載項目と権限に入力漏れを知らせる機能があることです。

AIの下書きを流し込むと、取り込みと整備士の修正が同じIDで残ることがあります。そうなると、総走行距離を誰が直したかが後から読めません。取り込み用のIDは、整備士のIDと分けておきます。

紙をすべてなくす設計は、二つの点で止まります。運輸支局や軽自動車検査協会で検査を受けるときは、書面の点検整備記録簿を示します。特定整備記録簿の写しを電子で渡すには、使用者から書面か電磁的方法で承諾を得ておき、承諾が無い使用者や撤回した使用者には紙で渡します。

整備システムの機能で足りるか、外部に開発を頼むかの見分け方

外部に開発を頼むかは、いまの整備システムが、取り込みと整備士の修正を別のIDで残せるかで見分けます。残せるなら、写す5欄の下書きは書き出した表をAIに渡す形で始められます。工場の中で決めるのは、原票の束ね方と確定の手順です。

続けるかを見る数は、整備主任者が1台ごとに控える、下書きの受け取りから確定までの分数です。完成検査の直後にフロントが登録番号ごとに原票を束ねておけば、探し直す手間はこの分数に乗りません。分数の長い車で束に欠けていた原票や作業名の無い作業指示書が見つかったら、書いた人に返し、下書きより先に原票の側を直します。

変更の履歴やIDの分け方が国土交通省の取扱いに届かない整備システムもあります。そこで部品伝票やメーター写真から欄を埋める流れまで組むなら、システムの入れ替えと追加の開発のどちらにするかを、外部の見積と比べて決めることになります。開発を頼む先の一つが、AIエージェント開発です。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 フロント

    完成検査の後、作業指示書・点検票・部品伝票を登録番号ごとに束ね、整備主任者の机へ回す

    次へ進む目安1週間、下書きに着手する前に原票を探し直した車が0台

  2. 担当 整備士

    口頭で受けた作業も、手を付ける前に作業指示書へ作業名を書く

    次へ進む目安2週続けて、作業名の無い作業指示書が0枚

  3. 担当 整備主任者

    車検の入庫から、写す5欄だけの下書きを伝票番号つきで受け取り、一行ずつ見比べて確定し、受け取りから確定までの分数を1台ごとに控える

    次へ進む目安差し戻しを欄の名前別に数え、交換部品と走行距離の欄の差し戻しが工場で決めた件数(たとえば週2件)以下に下がった月から、定期点検の入庫でも下書きを使う

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出典

  1. 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)(第49条・第91条・第94条の6) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  2. 自動車点検基準(昭和26年運輸省令第70号)(第4条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  3. 道路運送車両法施行規則(昭和26年運輸省令第74号)(第62条の2) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  4. 国土交通省「点検整備記録簿、特定整備記録簿及び指定整備記録簿の電磁的方法による作成、保存又は交付に関する取扱い」国土交通省 確認日 2026.09.28
  5. 日本自動車整備振興会連合会「令和7年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について」(令和8年1月30日)(事業場数・指定工場数) 日本自動車整備振興会連合会 確認日 2026.09.28
  6. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第25条・第27条第1項・第27条第5項第1号・第28条第1項(外国にある第三者への提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  7. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-1(外国にある第三者への委託) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29

編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり

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