整備工場の部品発注はAIに在庫照合から渡す、品番の誤りが組付まで残る理由
部品の専任を置けず、作業指示書からの部品手配をフロントや整備士が兼務で回している整備工場の、部品担当・工場長・整備主任者が対象です。
部品手配にAIを使うというと品番を探させる場面が思い浮かびますが、兼務の部品担当の手を取っているのはそれだけではありません。在庫台帳と棚の突き合わせや、純正・優良・リビルトで経路の違う注文の打ち直しも、車検が重なる週ほど積み重なります。どの作業からAIに任せ、品番の確定と注文を誰が持つかを、前方センサーの付いた車の扱いや地域による消耗品の揃え方まで含めて取り上げます。

先に結論
AIに最初に任せるのは、作業指示書の部品を在庫台帳と照合して引き当て、二重発注に印を付けた朝の一覧です。品番の候補出しはこれが回った後に足し、候補には車台番号の履歴と型式の履歴のどちらから出たかを添えさせます。
品番の確定と部品商への注文は部品担当が、前方センサーの有無の確認は整備主任者が持ちます。型式の履歴から出た品番は、部品担当がカタログで確かめるまで注文に回しません。
発注履歴の無い輸入車や低年式の車、類別区分番号の違う車では候補を使わず、部品商へ車台番号で照会します。前方センサーの欄が空いた作業指示書は、注文を出さずに整備主任者へ返します。
在庫照合からAIに任せるのは、数の食い違いがその日の棚で分かるから
照合で見つかる数の食い違いには、部品担当がその日のうちに棚の前で気づけます。台帳に在庫2とあって棚に1個しか無ければ、追加の注文はその日に出せます。品番の候補が外れたときは違い、部品が届いて整備士がキャリパーやベルトに当てた時点で合わないと分かり、リフトはそこで止まります。
令和7年度の自動車特定整備業の実態調査で、1事業場の整備要員は平均4.36人でした。この人数の認証工場では部品だけを見る担当を置けず、部品担当はフロントか整備士の兼務になります。照合をAIに渡すと、作業指示書を受け取ってパーツカタログを引き、棚へ歩く往復が、一覧を見る手間に変わります。
材料は、品番・数量・最終入出庫日・棚番の入った在庫台帳と、直近1年の発注履歴です。最終入出庫日があれば、1年動いていない部品の一覧も同じ台帳から出せます。棚で眠っている部品を月末の棚卸し表を作る前に知れるので、二重に頼んだ分の返品の相談が早くなります。
前提は、出庫を書く人がそろっていることです。整備士が棚から持ち出した部品を書かずに使う工場では、照合の結果が棚と合わず、部品担当は一覧を見ないまま棚へ歩くようになります。照合をAIに渡すのは、工場長が出庫の書き方を整備士全員とそろえた後です。
部品商1社が品番から数量まで決めて毎日届けている工場は、照合をAIに任せるのに向きません。照合する相手の記録が工場の中に無いからです。AIより先に、発注履歴を自社の側へ残す作業が要ります。
部品手配は、注文の打ち直しと組付の直前の2か所で止まる
経路ごとの注文の打ち直しと、組付の直前に見つかる品番の誤りで、手配は2度止まります。前者は注文を出す前に、後者は部品が届いた後に起きます。
図の要点:部品担当・AI・整備主任者・整備士の4者の持ち場を11の工程で示した図。部品担当が作業指示書と見積書を受け取り、AIが部品と数量を並べ、整備主任者が車検証で前方センサーの有無を見る。AIが在庫台帳と引き当てて二重発注に印を付け、部品担当が合わない部品を棚で数え直す。AIが品番の候補を車台番号と型式の履歴に分け、部品担当がカタログで確かめて部品商へ送る。AIが納期と予約表を並べ、部品担当が入荷を検品し、整備士が分解した車に当てて、合わなければ品番を決める工程へ戻す。
品番の誤りは組付の直前に見つかり、品番を決める工程まで戻る
部品担当
AI
整備主任者
整備士
- 部品担当
作業指示書と見積書を受け取る
- AI
作業名と要交換の印から部品と数量を並べる
- 整備主任者
前方センサーの有無を車検証で見る
有りならエーミングの段取り
- AI
在庫台帳と引き当て、二重発注に印を付ける
- 部品担当
台帳と棚が合わない部品を棚で数え直す
- AI
品番の候補を車台番号と型式の履歴に分ける
- 部品担当
型式の履歴の候補をカタログで確かめる
- 部品担当
純正・優良・リビルトを選び部品商へ送る
- AI
納期と予約表を並べ、間に合わない車を出す
- 部品担当
入荷を検品し、作業指示書の部品欄を書く
- 整備士
分解した車に部品を当てる
戻す合わなければ品番を決める工程へ
【説明用の架空の記入例】AIが朝に出す一覧の1行です。
作業指示書
No.0521(ブレーキパッド(前)1セット)在庫台帳との照合
台帳の在庫1・棚番B-3。前日に整備士が同じ品番を持ち出した記録が台帳に無いため、部品担当が棚で数え直す対象二重発注の印
なし品番の候補
2件。1件目は同じ車台番号の発注履歴から、2件目は同じ型式の別の車の発注履歴から前方センサーの欄
空欄(部品担当が注文を出さずに整備主任者へ返す)
経路ごとの打ち直しも手間のかかる作業です。純正はWeb発注、優良部品は電話、リビルト品はFAXと経路が分かれていると、同じ作業指示書の部品を経路ごとに書き直すことになります。部品商ごとの下書きをAIに分けさせると、部品担当の手元には、作業指示書と見比べて送る手間が残ります。
納期に間に合わない車の一覧を見て、入庫日をずらすか部品を替えるかは、部品担当とフロントが決めます。診断で追加整備が決まり、部品が後から足された車も同じ一覧で見ます。代車管理表の戻りの日がずれると、翌週の予約の枠までずれるためです。ずらした先の日は、整備工場の入庫予約管理で使う予約表で、代車とリフトが両方空く日から選びます。
品番の候補は車台番号の履歴を先頭に置く
品番の候補で役に立つのは、根拠の書き分けです。同じ車台番号で過去に頼んだ品番は、整備履歴に残るその車に一度付いた部品なので、カタログで確かめる時間は短く済みます。同じ型式の別の車で使った品番は、年式の途中で仕様が変わっていれば合いません。
候補に「どちらの履歴か」が出ていないと、部品担当は全部の候補を同じ重さで疑い、カタログを引き直す手間は減りません。類別区分番号が違う車や、発注履歴の無い輸入車・低年式の車は、候補を使わずに部品商へ車台番号で照会します。
仮に、型式の履歴から出たブレーキパッドの品番を、車検が重なった週にカタログを開かずに頼んだとします。翌朝、整備士がキャリパーに当てた時点で合わなければ、リフトは半日止まり、代車も1日延びます。組付の工程から品番を決める工程へ戻すのは、この形の誤りです。
品番を自社で調べ続けるか、部品商に照会で任せるかは、部品商との付き合い方で変わります。車台番号から品番まで返してくれる部品商がいるなら、候補出しは照会の記録を残すだけで足ります。部品商を納期と価格で使い分けている工場は、品番を自社で持たないと比べる土台がありません。見積の部品欄の品番を注文に流す工場なら、見積の欄をAIと整備士で分ける記事の候補にも同じ書き分けを付けます。
車検の予約表から消耗品を先に揃えるのは、配達の便が少ない地域
配達の便が少ない地域なら、車検の予約表を見て消耗品を先に揃えます。翌週に入る車検の車の型式と走行距離が予約表に並べば、オイルエレメント、ワイパーゴム、エアクリーナー、ブレーキフルードの要る量は週の頭に見当が付きます。
AIには、予約表と過去の車検で替えた部品の記録を突き合わせさせ、型式ごとに交換の多い部品を並べさせます。午前に頼んだ部品がその日のうちに届かない地域の工場なら、この先読みで待ちが減ります。
頼めば数時間で届く地域では、先に揃えた分だけ棚に在庫が眠ります。こちらは先読みより、当日の照合を速くするほうが効果があります。部品待ちで止まる車を工程の側から見る話は、板金塗装の工程管理にあります。
カメラ付きのガラスとバンパーは特定整備の段取りへ回す
前方カメラやレーダーの付いたガラス・バンパーを頼んだ時点で、その車の作業はエーミングまで含んだ段取りになります。道路運送車両法の施行規則は、第3条第8号で前方の状況を検知するセンサーと、それが付いた車体前部・窓ガラスの取り外しなどを電子制御装置整備に入れています。注文を受けた部品担当が、その車を特定整備の段取りへ回す根拠がこの号です。
国土交通省の特定整備制度の問答は、センサーの付いていないガラスやバンパーの脱着は当たらないと答えています。付いている車では、バンパー・グリル・窓ガラスを脱着した後にエーミングが要ります。施行規則第62条の2の2第1項第6号も、電子制御装置整備を行う工場に、エーミングを適切に行うための措置を求めています。
対象の車かどうかは、装置が保安基準の適用を受けているかで判断されます。車検証の型式などから見分けるための自動車メーカーのリストを、国土交通省が公表しています。対象の車なら、エーミングに使うスキャンツールと作業する場所も、注文と同じ日に押さえます。
電子制御装置整備の認証を持たない工場は、注文の前に作業を任せる先を決めます。認証の無い指定工場は、対象の車の保安基準適合証を交付できません。認証を受けた工場の構内で、その工場の管理の下で作業する取り決めを書面で交わしていれば、認証を持たないガラス業者も作業できるとされています。
組付の時点でエーミングの要否に気づいた車は、スキャンツールと作業の場所の予約が間に合わず、リフトに載ったまま待つことになります。作業指示書に前方センサーの欄があれば、この抜けは発注の前で止まります。
前方センサーの欄が空いた指示書は、部品担当が注文を出さずに、まず整備主任者へ返します。返した枚数を週ごとに控えておけば、どの整備士の書き方から直すかを、整備主任者が名前で追えます。
部品台帳の記録は工場で続け、注文経路をまとめる仕組みは外部と比べる
在庫台帳と発注履歴を工場の中で書き続けられるなら、照合と品番の候補出しは社内だけで始められます。台帳と作業指示書を生成AIのサービスに渡せば、引き当ての一覧と二重発注の印は作らせられるからです。
ただし作業指示書に残る車台番号や登録番号は、自社の顧客台帳と照合すれば持ち主までたどれます。渡す前に、事業者が中身を取り扱わない旨の契約の定めとアクセスの制限が両方そろっているか、そろわなければ委託と言える契約かを確かめます。契約で読む箇所は、契約と渡す欄を決めるツール選定の記事で扱っています。
様子を見る数は、部品担当が控える分解の後に欠品が分かった台数と、その車がリフトを押さえていた時間です。照合を入れる前の2週間分と並べて下回らない月は、AIを替える前に出庫の書き方へ戻ります。
出庫の書き方は、工場長が整備士とそろえるしかない部分です。持ち出した部品を書かない工場では、外部の手を借りても照合の結果は棚と合いません。
外部の手が要るのは、純正・優良・リビルトで注文の経路が割れ、部品商ごとに下書きを分ける手間が部品担当に積もる工場です。注文経路をまとめる仕組みまで作るならAIエージェント開発、照合の一覧の見方と持ち場の分け方を相談しながら決めるならAI顧問と、頼む中身で比べる先が変わります。
明日から始める3ステップ
担当 工場長
棚から部品を持ち出した整備士が、その場で在庫台帳に出庫を書く決まりを全員とそろえる
次へ進む目安2週続けて、週末に棚で数え直した部品と台帳の数が食い違った品番が、工場長の決めた件数(たとえば週2件)以下
担当 整備主任者
作業指示書の様式に前方センサーの有無の欄を足し、車検証で確かめて書き入れるまで部品担当に注文を出させない
次へ進む目安2週続けて、センサーの欄が空のまま部品商へ送った注文が0件
担当 部品担当
在庫台帳と直近1年の発注履歴をAIに渡し、作業指示書との引き当てと二重発注の印を朝の一覧で受け取る
次へ進む目安分解の後に欠品が分かった台数が、渡す前の2週間の控えより少ない状態が次の月末の棚卸しまで続いたら、品番の候補出しも任せる
無料相談(オンライン)
BoostXは、整備工場と中古車販売店の受付・見積・反響対応へのAI導入を支援しています
01無料相談
入庫予約・見積・反響の返信から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 日本自動車整備振興会連合会「令和7年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について」(令和8年1月30日)(1事業場あたり整備要員数) 日本自動車整備振興会連合会 確認日 2026.09.28
- 道路運送車両法施行規則(昭和26年運輸省令第74号)(第3条第8号・第62条の2の2第1項第6号) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 国土交通省「特定整備制度に関するよくある質問・問答」(問2・問13・問3・問5・問14) 国土交通省 確認日 2026.09.29
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり








