本文へ移動
自動車AIジャーナル AUTOMOTIVE AI JOURNAL

集客・整備受付・顧客維持のAI活用が学べる、自動車販売・整備会社のための専門メディア

Produced by 株式会社BoostX 無料相談

工場管理

整備工場の部品発注と在庫確認はAIで何が変わるか

整備工場の部品担当が入庫のたびに回す部品手配を、着手から入荷検品まで7工程に割ります。

編集 BoostX編集部2026.08.268分で読めます

工場管理の記事一覧

この記事の要点

  • 整備工場の部品担当が入庫のたびに回す部品手配を、着手から入荷検品まで7工程に割ります。
  • 拾う・引き当てる・突き合わせるはAIに渡せますが、適合の確定と発注の承認、納期の回答は部品担当に残ります。
  • 本メディアでは、在庫台帳の列が揃っていない工場は、AIより先に台帳の整備から入るべきだと判断します。

定義部品手配とは、作業指示書を受けてから必要部品を拾い、部品番号を当て、在庫と引き当て、部品商へ発注し、入荷を検品して作業指示書の部品欄を締めるまでの一続きの仕事です。

部品が1点欠けるだけで、リフトも代車も翌週の入庫枠も一緒に止まります。日本自動車整備振興会連合会「令和7年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について」によると、1事業場あたりの整備要員は4.36人です。部品だけを見る専任者を置ける人数ではありません。リフトに入っている整備士が、手を止めてカタログを引くことになります。

止まるのは時間だけではありません。二重発注した部品は在庫棚で寝たまま代金が戻らず、品番違いのまま組み付ければ手戻りと再入庫になります。欠品が入庫日の前日に分かれば、代車も翌週の入庫枠も一緒に動きます。この人数と損失の出方が、部品手配のどの工程を先に仕組みへ移すかを決めます。

この人数と損失の出方が、部品手配のどの工程を先に仕組みへ移すかを決めます

部品手配はどこで工場の時間を食っているのか?

対象は、認証工場・指定工場が車検・定期点検・一般整備の入庫に対して行う部品の手配です。読むのは工場の経営者、工場長、サービスフロント、部品担当を兼ねる整備士を想定しています。板金塗装の工程割り当てと入庫予約の受付は前後の別業務として扱い、ここでは部品が揃うまでだけを見ます。

会社のどこにこの業務がぶら下がっているかを、起点と帳票で先に置きます。同じ「部品手配」でも、通常入庫と分解後の追加部品と保険修理では起点も判断者も違います。

業務 起点 担当 入力と成果物 使うシステム・帳票
通常入庫の部品手配 見積の確定、作業指示書の発行 部品担当 作業指示書・見積明細→注文と入荷予定 整備システム、部品商のWeb発注、在庫台帳
分解後の追加部品 診断で追加作業が判明 整備士、フロント 診断記録・追加見積→追加の注文 整備システム、電話とFAX
保険修理の部品 損害保険会社との協定の前後 フロント、工場長 協定内容・作業指示書→手配の可否 協定の書類、整備システム

例外はこの3行の外側に出ます。メーカー欠品のバックオーダー、リビルト品や中古部品に替える判断、年式途中で仕様が変わった車両の部品です。例外を最初から一覧に混ぜると、確認の手間だけが増えます。

言葉の範囲をそろえます。部品手配とは、作業指示書を受けてから必要部品を拾い、部品番号を当て、在庫と引き当て、部品商へ発注し、入荷を検品して作業指示書の部品欄を締めるまでの一続きの仕事です。要点は3つです。

  • 拾う、引き当てる、納期を突き合わせる工程はAIに渡せます
  • 適合の確定と発注の承認、顧客への納期の回答は部品担当に残ります
  • 在庫台帳の列が揃っていない工場は、AIより先に台帳を整えるほうが早く進みます

作業指示書から入荷検品までを7工程に割る

ここからは通常入庫の部品手配だけを、着手から入荷検品までの時系列で7工程に割ります。担当と帳票を先に固定し、次にAIが解決することと人が決めることを分けます。

工程 担当 使う帳票・システム 量か時間 詰まるところ
1 作業指示書を受ける 工場長、フロント 予約表、見積、作業指示書 入庫1台につき1回 手配に着手する日が人によって違う
2 必要部品を拾う 部品担当 作業指示書、見積明細、点検票 点検票の「要交換」が拾い漏れる
3 部品番号を当てる 部品担当 車検証、パーツカタログ、整備履歴 同じ型式でも毎回カタログを引き直す
4 在庫台帳と引き当てる 部品担当 在庫台帳(Excel・紙)、在庫棚 台帳と棚が合わず棚まで往復する
5 部品商へ発注する 部品担当 部品商のWeb発注、電話、FAX 部品商ごとに注文の経路が違う
6 納期と入庫日を照合する 部品担当、フロント 納期回答、予約表 回答が散らばり、集めるだけで時間が要る
7 入荷を検品し部品欄を締める 部品担当、整備士 納品書、現物、作業指示書 未入荷の追いかけが記憶頼みになる

「量か時間」が「—」なのは、工程ごとの所要時間を示す公的統計が無いためです。導入前に自社で2週間測り、この欄を自社の数字で埋めます。

工程 AIが解決すること 人が決めること 失敗したときの損失
1 手配が未着手の入庫予定を車両ごとに並べる どの車両から手配するか 着手が遅れ、入庫日の前日に欠品が分かる
2 作業指示書と点検票から交換部品と数量を書き出す 候補の過不足、点検票の指摘を拾うか 拾い漏れた部品が分解後に出て、作業が止まる
3 同じ型式で過去に発注した部品番号と作業内容を並べる 適合の確定、社外品へ替えるか 品番違いが在庫棚に残り、代金が戻らない
4 在庫台帳と発注履歴を照らし、発注の要否と重複を出す 台帳と棚が食い違う部品をどちらで通すか 二重発注で在庫が膨らみ、逆の欠品も起きる
5 部品商ごとの注文内容と依頼文を下書きする 純正・優良部品・リビルト品の選択と送信 納期の遅い経路に流れ、入庫日が動く
6 納期回答を予約表に当て、間に合わない車両を出す 入庫日をずらすか、部品を替えるか 代車が戻らず、翌週の入庫枠まで後ろへずれる
7 回答納期を過ぎた未入荷を毎朝一覧にする 現物の検品、作業指示書の記入の確定 品番違いのまま組み付け、手戻りと再入庫になる

色枠がAIの担う工程、灰色が部品担当と整備士が確定する工程、右上の三角が失敗の起きやすい工程です。

部品手配の7工程の図。色枠はAIが担う工程。灰色は人が確定する工程。三角は失敗が起きやすい工程。作業指示書を受け必要部品を拾う部品番号を当てる在庫台帳と引き当部品商へ発注する納期と入庫日の照入荷検品と欄の記AIが担う人が確定する両方失敗が起きやすい工程
部品手配の7工程。色枠がAIの担う工程、灰色が部品担当の確定する工程です
  • AIで消える工程:工程4の棚までの往復と、工程7で未入荷を記憶から掘り起こす動きが消えます。
  • 短くなる工程:工程2の洗い出しと、工程3でカタログを引き直す回数が短くなります。
  • 新しく増える確認工程:AIが出した部品番号の適合を部品担当が確定する検証が入ります。台帳と現物のずれを月に一度突き合わせる工程も足します。

AIに渡す範囲と、部品担当が確定する範囲

左の色枠がAIの下書きする仕事、右の灰色が部品担当と整備士が確定する仕事です。矢印の位置が止めどころで、ここを越える前に人が一度見ます。

AIと人の境界図。左はAIが下書きする仕事。右は部品担当が確定する仕事。中央が止めどころ。AIが担う(写す・比べる・下書き)人が確定する作業指示書から部品を拾う過去の発注履歴を当てる在庫台帳と棚の差を出す納期回答を予約表と照合未入荷を毎朝一覧にする部品の適合を確定する純正か優良部品かを選ぶ発注の送信を承認する納期と金額を顧客へ回答現物の検品と記録の確定確定止めどころ発注の送信前に適合を確認
部品手配でAIが下書きする範囲と、部品担当が確定する範囲の切れ目

適合の確定は人に残します。年式の途中で仕様が変わった車両や輸入車では、車台番号だけで部品が決まりません。AIが並べるのは過去の発注履歴とカタログの記載までで、その車に付くかどうかは部品担当と整備士が決めます。誤った部品を組めば、そのまま安全に響きます。

部品の種類の選択も人が持ちます。純正、優良部品、リビルト品、中古部品のどれで通すかは、金額と納期と車両の状態を見た判断で、顧客の負担額が変わります。納期の遅れで入庫日を動かすときの説明と、代車の延長や追加費用の扱いを決めるのはサービスフロントです。

記録の側にも線があります。道路運送車両法は点検整備記録簿の作成と保存を定めており、記録の責任は事業者にあります。交換した部品を記録簿に下書きするところまでAIが担っても、内容の確定は整備士と検査員が行います。車台番号や顧客名を含む作業指示書を外部のAIサービスへ送ってよいかも先に決めます。個人情報の保護に関する法律の扱いとして、社内で範囲を文にします。

本メディアでは、部品の適合そのものをAIに判定させる設計は勧めません。理由は、誤りが在庫の滞留ではなく車両の安全に出るためです。前提は、整備履歴に品番が残っている工場を想定していることです。ディーラー系で適合の照会先が別にあり、そこが品番まで回答する体制なら、この判断は外れます。

最初の1工程に在庫照合を選ぶのはなぜか?

着手先は、判断を含むか、データがあるか、失敗の損失がどこに出るか、の3つで決めます。工程4の在庫照合は、判断をほとんど含まず、台帳と発注履歴という材料があり、失敗しても在庫の重複で止まります。工程3の部品番号は逆で、判断を含み、失敗が車両に出ます。

発注の控えが整備システムに1年分残っている工場なら、工程4からそのまま着手できます。在庫台帳が紙で最終の入出庫日が入っていない工場なら、着手を工程2に変えます。車検の比率が高く扱う車種が数メーカーに偏っている工場なら、工程3の履歴の当てが早く効きます。

輸入車と低年式の一般整備が中心の工場では、工程3は候補の提示までに留めます。部品商が1社で品番も数量も先方が決めている工場なら、AIは入れない方がよい工場です。照合する相手が無く、確認の手間だけが残ります。

本メディアでは、着手は工程4の在庫照合が先で、工程3の部品番号はその後だと判断します。理由は、在庫照合の誤りが当日中に棚で分かるのに対し、品番の誤りは組み付けの段まで分からないためです。棚卸しを年に一度も行っていない工場では、この順番でも早すぎます。

2週間の試行は1台単位で回す

  1. 対象を絞ります。車検と定期点検の入庫に限り、工程2から4までを試します。追加部品と保険修理は外します。
  2. 導入前を測ります。同じ部品担当で2週間、1台あたりの手配時間と重複発注の数を紙で記録します。
  3. 元データを出します。整備システムから直近1年の発注履歴、在庫台帳、作業指示書を書き出します。最初は書き出したファイルで足ります。
  4. 毎朝の一覧を回します。手配が未着手の車両と、手持ちで足りる部品・発注が要る部品を分けて出します。
  5. 確認の型を決めます。部品担当は「品番」「数量」「適合」「発注先」の4点だけを見て、採ったか外したかを一覧に記録します。
  6. 合格の線を先に置きます。工場長が「重複発注の数が導入前を下回る」を開始前に決め、途中で動かしません。
  7. 2週間後に並べます。導入前と導入後を同じ表に置き、続けるか、着手する工程を替えるかを工場長が決めます。
測る指標 測り方 合否の見方
1台あたりの部品手配の時間 工程2の開始と工程4の終了を担当が控える 導入前の平均を下回る
重複発注の数 同じ品番の注文が2週間で重なった回数 導入前を下回る
部品待ちで入庫日を動かした数 予約表の変更履歴から数える 導入前と同じか下回る

本番にするときに決めるのは承認と記録と例外

承認は、注文の送信を部品担当が押す形にします。注文1件あたりの金額が一定の水準を超えるものは工場長が確認する、という線を自社の規模で決めます。記録は、候補・確定・承認者・納期回答・入荷日をひと続きで残します。確定した結果だけを残すと、欠品が起きたときに原因の工程まで戻れません。

例外の経路も先に文にします。分解後の追加部品、メーカー欠品のバックオーダー、協定前の保険修理は一覧から外し、人が個別に回します。AIが止まった日に発注まで止まらないよう、従来の発注経路は残し、戻し方を1枚の手順にして受付に置きます。

拡張は、同じ発注履歴を使う隣の業務へ広げます。次は見積の部品明細の下書き、その次は点検整備記録簿への交換部品の転記です。指標が導入前を下回る状態が2か月続いてから、次の業務へ移します。

失敗が起きる工程と、入れない方がよい条件

起きやすいのは工程4と工程6です。台帳が古いまま照合を始めると、AIの出す「足りている」が外れ、欠品に気づくのが入庫日の前日になります。防ぎ方は、試行の前に棚卸しを一度行い、台帳と現物の差の数を先に出しておくことです。差が多い品目だけを台帳の対象から外す判断もできます。

工程6は、納期回答がメールと電話とFAXに分かれている工場で外れます。AIが読めるのは入力された回答だけなので、電話で受けた回答を誰がどこに書くかを決めていないと、一覧に穴が空きます。回答の入り口を1つに寄せてから照合を任せます。

入れない方がよい工場の条件は3つです。在庫台帳が無く発注の控えも残していない工場です。作業指示書が口頭で回って文字にならない工場と、部品商が1社で品番まで先方が決める工場も同じです。この状態では照合する相手が無く、AIを入れても確認の工程だけが増えます。先に台帳の列と作業指示書の様式を決めるほうが、戻りが早くなります。

国土交通省「自動車整備士の確保・育成に係る課題とこれまでの取組」では、自動車整備士の有効求人倍率は令和5年度で4.99倍、全職種は1.17倍とされています。同じ資料で、約6割の事業者が整備士の不足を感じているとされています。人を増やして部品担当を専任に置く道が取りにくいなら、判断を含まない工程から順に移す形が現実的です。

出典

  1. 日本自動車整備振興会連合会「令和7年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について」(令和8年1月30日) 日本自動車整備振興会連合会 確認日 2026.09.22
  2. 国土交通省「自動車整備士の確保・育成に係る課題とこれまでの取組」(人材確保WG 資料5) 国土交通省 確認日 2026.09.22
  3. 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22
  4. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22

工場管理の記事一覧 自動車AIジャーナルのトップ

工場管理の記事

記事をすべて見る

この媒体を出している BoostX は、工場管理のAI化を支援しています

記事に書いた業務の分け方と工程ごとの線引きは、株式会社BoostXがAI導入支援で用いる、業務整理と実装設計の考え方です。読んで終わりにせず自社で動かしたい場合は、次の3つの進め方があります。自動車販売・整備を含め、業種を問わずお受けしています。

  1. 毎月ひとつずつAI化する

    AI顧問

    今の業務を工程に分けて、任せられるところから毎月ひとつずつAIに置き換えていく進め方です。設計と実装、運用の見直しまでを月額で続けます。

    この進め方を見る

  2. 部署をまたいで一気に動かす

    FDE型AI伴走支援

    BoostXも当事者として社内に入り、複数の部署にまたがる業務を一緒に組み替えます。月2日の訪問を含む伴走型です。

    この進め方を見る

  3. 仕組みとして作り切る

    AIエージェント開発

    試して効果が出た工程を、人が起動しなくても動き続ける仕組みにします。小さく試す段階から本番運用まで。

    この進め方を見る

工場管理の課題を解決したい会社の方へ

オンライン30分・無料の相談です。ツールの紹介はしません。いまの工程を伺い、AIに任せる工程と人が決める工程を分けて、最初に着手する1工程まで決めて終わります。その場で契約をお願いすることはありません。

対象 自社の業務でAIを使いたい会社の方(経営者・部門責任者・情報システム/DX担当) / 営業・提携のご提案、個人の学習相談はお受けしていません。