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顧客維持

中古車の買い替え提案はAIで誰を抽出し誰が決めるか

中古車販売店の営業と顧客管理担当が月初に回す買い替え提案の対象選定を、条件の決定から反応の記録まで7工程に割ります。

編集 BoostX編集部2026.09.097分で読めます

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この記事の要点

  • 中古車販売店の営業と顧客管理担当が月初に回す買い替え提案の対象選定を、条件の決定から反応の記録まで7工程に割ります。
  • 名簿を結ぶ・条件で洗い出す・根拠を並べるはAIに渡せますが、薦める在庫と伝え方、送信の可否は営業に残ります。
  • 本メディアでは、車検満了日と連絡の同意が名簿に入っていない店は、抽出より先に名簿の整備が要ると判断します。

定義買い替え提案の対象選定とは、顧客名簿と整備履歴と在庫を突き合わせ、節目の近い保有者を条件で洗い出し、薦める在庫と伝え方を決めて案内し、反応を名簿に戻すまでの仕事です。

思い出せた顧客にだけ声がかかる、という状態が月末ごとに繰り返されます。日本自動車工業会「2025年度 乗用車市場動向調査」では、買い替え予定の時期を「未定」と答えた保有者が57%、「今後5年以内」が25%でした。時期を決めている人は4人に1人で、残りは車の側に節目が来たときに動きます。だから提案の中身は、案内の量ではなく節目に当てられるかで決まります。

金とリスクの出方も分けて見ます。節目を外した案内は印刷代と通信費がそのまま消え、同意の無い相手に送れば苦情と行政の問い合わせにつながります。売れた在庫を載せたまま案内すれば、来店してから説明が食い違い、次の紹介まで失います。

買い替え提案は店のどこで止まっているのか?

対象は、中古車販売店が既存の顧客へ行う買い替え提案の対象選定と案内です。読むのは販売店の経営者、店長、営業責任者、顧客管理担当を想定しています。車検・点検の入庫案内と、商談の場で使う提案資料の作成は別の業務として扱います。

同じ「買い替えの声かけ」でも、起点が違う3つが店の中に並んでいます。どれを分解するのかを先に決めないと、条件の設計がぶれます。

業務 起点 担当 入力と成果物 使うシステム・帳票
車検前の買い替え提案 車検満了日の数か月前 営業、顧客管理担当 名簿・車検満了日→提案リストと提案文 顧客管理、整備システム、在庫管理
入庫時の声かけ 整備の入庫と引渡し フロント、営業 診断記録・見積→口頭の提案と記録 整備システム、作業指示書
決算期の台数づくり 決算月と月末の見通し 店長、営業 在庫一覧・商談記録→提案リスト 在庫管理、顧客管理

例外はこの表の外に出します。連絡の同意が取れていない顧客、事故や転居で状況が変わった顧客、法人の社用車、残債が残っているローン中の車両です。例外を一覧に混ぜると、送れない相手が並んで確認の手が止まります。

言葉の範囲をそろえます。買い替え提案の対象選定とは、顧客名簿と整備履歴と在庫を突き合わせ、節目の近い保有者を条件で洗い出し、薦める在庫と伝え方を決めて案内し、反応を名簿に戻すまでの仕事です。要点は3つです。

  • 名簿を結ぶ、条件で洗い出す、提案の根拠を並べる工程はAIに渡せます
  • 薦める在庫と伝え方、送信してよいかどうかは営業が決めます
  • 車検満了日と連絡の同意が名簿に入っていない店は、抽出より名簿の整備が先です

対象の洗い出しから反応の記録までを時系列で割る

ここからは車検前の買い替え提案だけを、条件の決定から反応の記録までの時系列で7工程に割ります。担当と帳票を先に固定し、そのうえでAIが解決することと人が決めることを分けます。

工程 担当 使う帳票・システム 量か時間 詰まるところ
1 抽出の条件を決める 店長 顧客管理、過去の商談記録 月に1回の見直し 何を節目とするかが人によって違う
2 名簿と整備の車両を結ぶ 顧客管理担当 顧客管理、整備システム 同じ車両として結べず1件ずつ突き合わせる
3 条件に当たる顧客を洗い出す 営業、顧客管理担当 名簿、車検満了日、走行距離 記憶から始まり、名簿の大半が毎月残る
4 整備履歴から根拠を並べる 営業 整備システムの履歴、見積の控え 履歴が紙のままで、探す時間がそのまま乗る
5 薦める在庫を選ぶ 営業 在庫管理、査定票 在庫の入れ替わりが速く、選び直しが出る
6 提案文を作って連絡する 営業 メール、メッセージ、はがき 1件ずつ書くと遅く、一斉配信だと薄い
7 反応と断りの理由を記録する 営業 顧客管理、商談記録 後回しになり、次の担当が同じ話を繰り返す

「量か時間」が「—」なのは、工程ごとの所要時間を示す公的統計が無いためです。導入前に自社で1か月測り、この欄を自社の数字で埋めます。

工程 AIが解決すること 人が決めること 失敗したときの損失
1 過去の提案と商談の結果を条件ごとに並べ直す 何を節目とみなすか、条件をいくつ持つか 条件が粗く、対象が増えすぎて一斉配信に戻る
2 車両を鍵に名簿と整備履歴を結び、食い違いを出す 重複した名簿と転居をどう直すか 別人として残り、同じ顧客へ二重に連絡が飛ぶ
3 車検満了日・走行距離・整備費の動きで対象を出す 抽出から外す顧客と、送る順番 節目の顧客が抜け、他店で乗り換えられる
4 直近の交換部品と金額、次の車検で見込む項目を並べる 根拠として使ってよい範囲 履歴に無い話を根拠にして、来店時に食い違う
5 同じ車格・同じ用途の在庫を候補として並べる 薦める車両と下取り額の見立て 売れた在庫を薦め、来店時に説明が崩れる
6 顧客ごとに内容の違う提案文を下書きする 表示の確認、伝え方、送信の可否 表示の基準に反した文面が出て、指摘対応に回る
7 返信と来店の有無を商談記録へ反映する 断りの理由と、次に声をかける時期 断りの理由が消え、同じ提案を繰り返す

色枠がAIの担う工程、灰色が営業と店長が確定する工程、右上の三角が失敗の起きやすい工程です。

買い替え提案の7工程の図。色枠はAIが担う工程。灰色は人が確定する工程。三角は失敗が起きやすい工程。抽出の条件を決め名簿と車両を結ぶ対象の顧客を出す整備履歴で根拠作薦める在庫を選ぶ提案文を作り連絡反応と断りを記録AIが担う人が確定する両方失敗が起きやすい工程
買い替え提案の対象選定を着手順に7工程へ割った図
  • AIで消える工程:工程3のうち、記憶をたどって相手を思い出す動きが消えます。名簿の側から先に対象が並びます。
  • 短くなる工程:工程2の突き合わせと工程4の履歴探し、工程6の文面づくりが短くなります。
  • 新しく増える確認工程:送信の前に表示と在庫を照らす確認が入ります。条件ごとの結果を月に一度見直す工程も足します。

AIが並べる根拠と、営業が決める薦め方

左の色枠がAIの下書きする仕事、右の灰色が営業と店長が確定する仕事です。矢印の位置が止めどころで、送信の前に人が一度通します。

AIと人の境界図。左はAIが下書きする仕事。右は営業が確定する仕事。中央が止めどころ。AIが担う(写す・比べる・下書き)人が確定する車検満了日で対象を出す名簿の食い違いを並べる整備履歴から根拠を作る1件ずつ提案文を下書き断りの理由を記録に残す何を節目とするか決める薦める在庫を決める表示と修復歴を照合する連絡してよい相手か判断送信と次に声をかける時期確定止めどころ送信の前に表示を照合する
買い替え提案でAIが並べる材料と、営業が決める薦め方の切れ目

薦める車両と下取り額は人に残します。用途や家族構成の変化は名簿に載りません。査定の見立ても現車を見て決めるもので、AIができるのは在庫との組み合わせを並べるところまでです。支払い条件の説明も同じで、ローンと保険が絡む話は担当者が行います。

表示の確認にも線があります。自動車公正競争規約は価格、支払総額、走行距離、修復歴などの表示に基準を定めており、表示の責任は販売店にあります。生成した提案文でも、修復歴と走行距離は査定票と照合してから送ります。下取りと買取には古物営業法の本人確認と取引記録の義務があり、確認は担当者が行います。

連絡してよい相手かどうかも人が決めます。同意が取れていない顧客と、断りの意思を示した顧客には送りません。氏名と車両情報を外部のAIサービスへ送ってよいかは、個人情報の保護に関する法律の扱いとして社内で範囲を文にします。

本メディアでは、AIが直接顧客へ送信する運用は勧めません。理由は、在庫が売れた直後の文面と、表示の基準に反する表現が止まらなくなるためです。前提は、在庫の反映が日次で、査定票との照合を人が行う店を想定していることです。在庫の更新が自動で即時に反映される店なら、この判断は緩められます。

着手する1工程になぜ条件抽出を選ぶのか?

着手先は、判断を含むか、データがあるか、失敗の損失がどこに出るか、の3つで決めます。工程3の条件抽出は、条件さえ決まれば判断を含みません。材料は名簿と車検満了日にあり、失敗しても対象が増減するだけで顧客には届きません。工程6は逆で、表示の責任が店にあり、失敗が外に出ます。

名簿に初度登録年月と車検満了日が入っている店なら、工程3からそのまま着手できます。整備履歴が別のシステムにあって同じ車両として結べない店なら、着手を工程2に変えます。車台番号や登録番号を鍵にして結ぶところから始めます。整備も自社で受けている店では、工程4の根拠が濃く出ます。

販売だけで整備を他社に出している店では、工程4は薄くなるので、条件は車検満了日と車齢に寄せます。名簿に車検満了日も同意の管理も無い店なら、AIは入れない方がよい店です。送れない相手が並び、確認の手間だけが残ります。

判断の材料として、車の側の節目の相場観も置いておきます。自動車検査登録情報協会の「平均車齢」では乗用車(軽を除く)の平均車齢は9.44年、「平均使用年数」は13.35年です。本メディアでは、抽出の条件は車齢の年数だけで切らず、車検満了日と直近の整備費の動きを組み合わせるべきだと判断します。年数だけで切ると、同じ顧客が毎年同じ理由で並び続けます。整備を他社に出している店では、この組み合わせは作れません。

2週間の試行は条件を3つに絞って回す

  1. 対象を絞ります。車検前の買い替え提案だけを対象にし、工程2から工程4を試します。決算期の台数づくりは外します。
  2. 導入前を測ります。同じ店で1か月、提案した数と返信・来店の数、商談に進んだ数を控えます。
  3. 元データを出します。顧客管理から名簿と車検満了日、整備システムから履歴と金額、在庫管理から在庫一覧を書き出します。
  4. 条件を3つ決めます。車検満了日が近い、走行距離が一定を超えた、直近の整備費が増えている、の3本から始めます。
  5. 確認の型を決めます。営業は「送ってよい相手か」「根拠が履歴と合うか」「在庫にあるか」「表示の表現」の4点だけを見ます。
  6. 合格の線を先に置きます。店長が「商談に進んだ数が導入前を下回らない」を開始前に決め、途中で動かしません。
  7. 2週間後に並べます。条件ごとの結果を同じ表に置き、どの条件を残すかを店長が決めます。
測る指標 測り方 合否の見方
提案した数 送信の記録を条件ごとに数える 導入前を上回る
返信と来店の数 顧客管理の反応の記録から数える 導入前の比率を下回らない
商談に進んだ数 商談記録の起票数を条件ごとに数える 導入前を下回らない

本番で決めるのは同意の管理と記録の残し方

承認は、送信を営業が押す形にします。同意の管理は名簿の側に持たせ、同意が無い顧客と断りの意思を示した顧客は抽出の時点で外します。外す条件は先に文にして、店長が月に一度見直します。

記録は、抽出の条件、提案した数、反応、断りの理由をひと続きで残します。商談になった分だけを残すと、条件の良し悪しが後から分かりません。断りの理由だけは営業が自分の言葉で書き、AIの要約で置き換えないようにします。

拡張は、同じ名簿を使う隣の業務へ広げます。次は車検・点検の案内、その次は休眠顧客への連絡です。指標が導入前を下回らない状態が2か月続いてから移します。

失敗は条件の粗さと売れた在庫で起きる

条件が粗いと、対象が名簿の半分を超えます。そうなると1件ずつ違う提案文という利点が消え、一斉配信と同じ結果に戻ります。乗用車市場動向調査では、購入のきっかけで最も多い回答は「一定の基準に達した」で27%、「広告」は6%です。複数回答のため割合どうしは足せませんが、節目に当てる設計のほうが当たりやすい構造は読み取れます。

もう一つは在庫のずれです。提案文を作っている間に車両が売れると、来店した時点で説明が崩れます。在庫の反映を日次にして、送信の直前に在庫の有無だけをもう一度当てる型にします。

工程7の記録が薄いと、断られた理由も次の時期も消えます。担当が変わったときに同じ提案が繰り返され、名簿の反応がさらに落ちます。反応の記録は、返信が無かった分も「無し」と残します。

出典

  1. 日本自動車工業会「2025年度 乗用車市場動向調査」(2026年4月14日公表) 日本自動車工業会 確認日 2026.09.22
  2. 自動車検査登録情報協会「平均車齢」(令和7年3月末) 自動車検査登録情報協会 確認日 2026.09.22
  3. 自動車検査登録情報協会「平均使用年数」(令和7年3月末) 自動車検査登録情報協会 確認日 2026.09.22
  4. 古物営業法(昭和24年法律第108号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22
  5. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22

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