実績入力の未入力が増えた工場、早見表で減らせる欄と減らない欄
生産管理システムを入れ替えた後、実績の未入力と入力ミスの手直しに月末の締めが追われている工場の、生産管理担当・工場長・班長に向けた内容です。
入れ替えたばかりの生産管理システムで月末の締めに入ると、実績入力の未入力が増え、ある班では段取り時間が空欄、別の班では同じ時間が非稼働に入っています。画面の作りは変えられないので、手を打てるのは現場での入れ方の側です。どの欄から手を付け、何を1枚の表にして配り、どこから先は表では直らないのかを、班の記録の数え方から順に追います。

先に結論
抜けと誤りが出る欄を班ごとに2週間数え、言葉で迷っている欄だけを、現場の呼び方・画面の項目・入れる値を並べた早見表にまとめ、端末の横に貼ります。全部の欄を載せた手引きを配り直すより、迷う数個の欄に絞った1枚のほうが現場で見られます。
旧システムの入力表と新しい画面の項目一覧から対応表の下書きを作らせ、毎日の実績データから「段取りなのに非稼働に入っている」ような誤りの候補を一覧にさせるところまでが、AIの受け持ちです。段取りを準備作業と非稼働のどちらに入れるかといった項目の意味は生産管理担当が決め、早見表の言葉が現場に通じるかは班長と確かめます。
早見表を貼って2週間たっても数が減らない欄は、言葉の問題ではありません。作業後にまとめて入れている、端末が持ち場から遠いといった、入力の時刻と場所を見直します。
抜けと誤りは、画面の言葉が現場と違う欄に集まる
入れ替え後に増えた抜けと誤りは、画面の項目名が現場の呼び方と違う欄に偏って出ます。次の図は説明用の仮の業務例で、旧システムと新しい画面の欄の分かれ方を並べたものです。
図の要点:旧システムの入力表と新しい実績入力画面を左右に並べた図。旧システムでは段取り・停止・不良がそれぞれ1つの欄だったが、新しい画面では段取りが準備作業と非稼働に、停止は停止理由コードの選択に、不良は仕損と手直しを分ける不良区分に分かれ、どちらに入れるか迷う欄で抜けと誤りが出る。
旧システムで1つだった欄が、新しい画面では2つ以上に分かれる
旧システムの入力表(現場の呼び方)
- 段取り:型替えも材料待ちも1つの欄
- 停止:理由は備考に手書き
- 不良:数を1つの欄に書く
新しい実績入力画面の項目
- 準備作業と非稼働:どちらに入れるか班で割れる
- 停止理由コード:一覧から選ぶ
- 不良区分:仕損と手直しを分けて入れる
迷った作業者は、その欄を空けておくか、旧システムの感覚で近い欄へ入れます。空ければ未入力に、近い欄へ入れれば入力ミスになるので、言葉がずれた欄では抜けと誤りが同じ場所に重なります。
旧システムで1つだった欄が新しい画面で2つ以上に分かれているところが、手を付ける候補です。段取りの時間がある班では準備作業に、別の班では非稼働に入っていれば、稼働率も工程ごとの原価も班によって中身が変わります。
工程名や作業者コードでも同じことが起きます。作業指示書の工程名が「NC2」のままで、画面の工程コードが「機械加工2」になっていれば、作業者は一覧から探す途中で手を止めます。2直・3直では、迷っても聞き直す相手が帰っていて、翌朝まで直せません。
早見表で減らせるのは、作業者が自分で画面へ入れている工場です。紙の日報を事務員が打ち直している段階の工場なら、早見表より先に日報の転記にかかる人件費の出し方で、入力を現場へ移すかどうかを決めます。
未入力と誤りを欄ごと・班ごとに2週間数える
早見表を作る前に、画面の項目ごとに、抜けと誤りの件数を班別に2週間ほど数えます。感覚で作ると、迷っていない欄まで載せてしまい、表が長くなって現場で見られなくなるからです。
数えるのは生産管理担当で、材料は毎朝の実績一覧です。前日分の実績を作業指示書と並べて、空いていた欄を「抜け」、班長に聞いて直した欄を「誤り」として書きます。
月末の締めでまとめて直すと、どの班のどの欄で起きたかが分からなくなるので、毎朝その日のうちに書き込みます。実績入力や日報のほかの困りごとは、製造現場の業務の記事で扱っています。
【説明用の架空の記入例】2週間のうち稼働日10日分を足した集計表です。
| 画面の項目 | 抜けの件数(班別) | 誤りの件数(班別) |
|---|---|---|
| 準備作業 | 組立1班0・組立2班9 | 組立1班6・組立2班0 |
| 停止理由コード | 加工班4・組立2班3 | 加工班7 |
| 不良区分 | 加工班2 | 加工班5・組立1班4 |
| 作業者コード | 組立2班1 | 0 |
記入例では、準備作業の欄が班によって抜けと誤りに分かれています。組立2班は段取りを入れる場所が分からず空け、組立1班は非稼働に入れている、という読み方になります。作業者コードのように件数が少ない欄は、早見表に載せません。
早見表は現場の呼び方・画面の項目・入れる値の3列
早見表は、現場の呼び方・画面の項目・入れる値の3列で、集計表で件数の多かった欄だけを載せた1枚です。画面の全項目を説明する手引きとは別に作ります。
現場の呼び方の列には、班長から聞いた言葉をそのまま書きます。同じ時間を「段取り」と呼ぶ班と「型替え」と呼ぶ班があれば、両方を書きます。入れる値の列には、どの時間からどの時間までを入れるか、どのコードを選ぶかを、作業者が端末の前で読んで決められる長さで書きます。
【説明用の架空の記入例】
| 現場の呼び方 | 画面の項目 | 入れる値 |
|---|---|---|
| 段取り・型替え | 準備作業 | 前品の終了から初品の合格まで |
| 材料待ち | 非稼働(理由コード12) | 待った時間だけ。段取りに含めない |
| チョコ停 | 停止理由コード31 | 5分未満もその都度入れる |
| 手直し | 不良区分「手直し」 | 直して良品にした数 |
区分の線をどこに引くかは、生産管理担当が決めます。段取りを準備作業と非稼働のどちらに入れるかで、稼働率と工程ごとの原価の集計が変わるからです。班長には、呼び方の列の言葉が自分の班で通じるかと、貼る場所を確かめてもらいます。
画面の使い方を口で教え直す方法は、教え手が足りない工場では続きません。2025年6月公表の調査では、人材育成で困りごとを抱える製造業の事業所の62.8%が、問題として「指導する人材が不足している」を選んでいます(複数回答)。従業員数過不足DIも、中小企業の製造業で2025年がマイナス17.9と、人手は足りない側にあります。班長が持ち場を離れずに済むよう、端末の横に貼る1枚で答えられる形にしておきます。
早見表は画面の言葉と現場の言葉を結ぶところまでを受け持ちます。欄の意味を全班でそろえたうえで音声から日報を下書きさせる進め方は、作業日報をAIが音声から下書きするときの確定者の分け方で扱っています。
AIは対応表の下書きと毎日の誤りの候補出しまで
AIの受け持ちは、早見表のもとになる対応表の下書きと、毎日の実績から抜けと誤りの候補を出す作業です。項目の意味を決めることは任せません。
対応表の下書きでは、旧システムの入力表の項目名と、新しい画面の項目一覧を渡します。指示には、旧の項目ごとに新しい画面で入りうる項目を挙げること、1つに決まらないものは理由を書くこと、資料から分からないものは「未確認」と書くことの3つを入れます。段取りのように行き先が2つある欄が、理由つきで並びます。
返った下書きは、生産管理担当が導入時の設定資料と照合し、班長の聞き取りを足して早見表にします。班長に聞く欄は、下書きで1つに決まらないとされた欄に絞ります。
毎日の候補出しでは、前日の実績データから誤りの候補を挙げさせます。備考に「型替え」「段取り」とあるのに非稼働に入っている行や、停止時間があるのに停止理由コードが空の行です。単純な空欄の一覧なら、システムの未実績一覧の帳票や表計算の絞り込みで足り、AIは要りません。備考の書き方の揺れを読む作業が、AIに向いている部分です。
実績データには作業者コードが入っており、自社の台帳で本人に結び付きます。外部のAIサービスへ実績データを渡すかは、生成AIの利用ルールと契約の扱いを管理部門が確かめてから決めます。確かめるまでは、個人を含まない項目名の一覧だけで対応表の下書きを作ります。
実績データは、入力した後に生産計画や原価の集計で使われます。生産計画や原価など、実績を使う側の業務は製造業の業務別の記事一覧にあります。
早見表で減らない欄は、入力の時刻と場所を見直す
早見表を貼って2週間たっても件数が減らない欄は、言葉で迷っている欄ではありません。意味が分かっていても抜ける欄なので、入力の時刻と端末の場所を見直します。
2週間後の集計表で、欄ごとに次の手を選ぶ
-
件数が減った
早見表のまま続ける
-
減らず、終業前にまとめて入れている
入力する時刻を工程の切れ目に決める
-
減らず、端末が持ち場から遠い
端末を置く場所を見直す
-
早見表どおりに入れても集計が合わない
区分の決め方に戻る
作業後にまとめて入れる欄は、段取りや停止の時刻を思い出して書くことになり、早見表が見えていても抜けます。端末が離れた職場では、手が空くまで入力を後に回します。どちらもAIの下書きを増やしても減りません。
最後の行に当たる欄は、言葉でも時刻でもなく、区分そのものが現場の作業と合っていません。たとえば材料待ちと段取りが同時に起きる工程では、どちらの時間として入れるかを生産管理担当が決め直します。集計表は早見表を貼る前と同じ形のまま続け、件数が同じ欄に出続けるかで判断します。
外の手を借りるのは、旧画面との項目対応を洗い直すとき
導入時の移行資料に、旧システムの項目が新しい画面のどこへ移ったかの対応が残っていない工場では、早見表の「画面の項目」の列が埋まりません。その場合は、導入した会社か外部の支援先と、区分のマスタと過去の実績の移し方を照合し直すことになります。
社内で回るのは、対応が資料で追え、集計表で絞れた欄が数個に収まる場合です。区分のマスタそのものを変える必要が出たら、設定の変更はシステムの保守契約の範囲で頼むことになり、早見表だけでは片づきません。対応表の下書きや毎日の候補出しをAIで組む部分は、外部の支援先と一緒に組む選び方もあります。
区分の意味を変えた月からは、入れ替え前の月と稼働率をそのまま比べられなくなります。どの月から比べ直すかを月次の報告に書いておかないと、区分を変えた分の差が、稼働率が上がった・下がったと読まれてしまいます。外部と区分のマスタを見直すときは、変える前と後の区分の対応を、原価の担当と一緒に残しておきます。
明日から始める3ステップ
担当 生産管理担当
新しい実績入力画面の項目を縦に、班を横に並べた集計表を作り、毎朝前日分の空欄と直した欄を書き込む
次へ進む目安稼働日10日分の件数が埋まり、抜けか誤りが班をまたいで出ている欄が3つ以内に絞れた
担当 生産管理担当と班長
絞れた欄について、班長から現場の呼び方を聞き取り、旧システムの入力表と並べて画面の項目と入れる値を決める
次へ進む目安3列の早見表が1枚にまとまり、すべての班の入力端末の横に貼られた
担当 工場長
早見表を貼ってから2週間、同じ集計表で件数を数え続け、減らない欄を入力の時刻か端末の場所の問題として書き出す
次へ進む目安早見表で残す欄と、入力の時刻か端末の場所を変える欄が分かれ、変える欄の担当が決まった
無料相談(オンライン)
BoostXは、工場の見積・作業日報・作業標準書へのAI導入を支援しています
01無料相談
見積・日報・標準書から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 厚生労働省「2026年版ものづくり白書 概要」(令和8年5月)ものづくり人材の能力開発の現状(図4)・中小企業の産業別従業員数過不足DI 厚生労働省 確認日 2026.10.08
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり









