ものづくり補助金の申請、原価データで何を組む?新制度の枠と返還要件
AIを組み込んだ新製品の開発に補助金を使おうと、ものづくり補助金の次の公募を探しても、案内はまだ出ていません。別の制度に出すにも、付加価値額や給与の目標値は決算書から組む数字で、決算書を会計事務所に任せていると出所を社内で説明しにくくなります。ここでは、いま出せる制度と枠、原価データからの数字の組み方、返還につながる目標の置き方、AIの費用の経費区分までを扱います。

先に結論
申請の数字は、決算書3期分の勘定科目を営業利益・人件費・減価償却費へ振り分けるところから組みます。振り分けと年平均成長率の複利計算はAIに任せ、科目ごとに決算書の頁を書き添えるのは経理、品目別の原価差異を工数実績と照合するのは工場長、目標値を置いて確定するのは経営者の判断です。
頁を書き添えられない科目が1つでも残るうちは、計画の文章に進みません。賃金台帳そのものは外部のAIに渡さず、経理が集計した給与支給総額と人数だけを材料にします。
いま出せるのは、10月30日18時に締め切る新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回です。今の検査や段取りを楽にするだけのAIは革新的新製品・サービス枠に当たらず、新製品の一部として作るAIの開発費は機械装置・システム構築費に入ります。
審査で問われるのは、数字が決算書のどの頁にあるか
口頭審査では、付加価値額と給与の目標値がどの数字から来たかを、申請事業者自身が答えます。決算書を会計事務所に作ってもらっている会社では、営業利益・人件費・減価償却費の内訳を、社内で頁を示して説明できる人がいないことがあります。
口頭審査は一定の審査基準を満たした事業者から必要に応じて行われ、オンラインで1事業者15分程度です。対象になって受けなければ不採択なので、出所を問われる場面は申請の前から見込んでおきます。
原価データから付加価値額を組む材料は、決算書にそろう
付加価値額は、公募要領が営業利益・人件費・減価償却費の合計と決めているので、3つとも決算書から取り出せます。取り出した数字が申請の表に載るまでの受け渡しは、次の4つの段階です。
図の要点:申請に使う数字ができるまでの4つの段階。経理が決算書3期分と勘定科目の明細、品目別の原価差異表と工数実績、賃金台帳から集計した給与総額と人数を用意する。AIが科目を営業利益・人件費・減価償却費へ振り分け、年平均成長率を複利で計算し、品目別の赤字を一覧にする。経理が科目ごとに決算書の頁を書き添え、工場長が品目別の差異を工数実績と照合し、経営者が目標値を置く。申請には出所の頁つきの付加価値額と給与の目標値、課題として書く赤字品目の一覧を使う。
帳票から申請の表まで、AIの集計の後に3人が確かめる
経理が用意する帳票
- 決算書3期分と勘定科目の明細
- 品目別の原価差異表と工数実績
- 賃金台帳から集計した給与総額と人数
AIの集計
- 科目を営業利益・人件費・減価償却費へ振り分け
- 年平均成長率の複利計算と、品目別の赤字の一覧
経理・工場長・経営者の確認
- 経理が科目ごとに決算書の頁を書き添える
- 工場長が品目別の差異を工数実績と照合する
- 経営者が目標値を置く
申請に使う表
- 付加価値額と給与の目標値(出所の頁つき)
- 課題として書く赤字品目の一覧
頁を書き添えられない科目が出たら、AIの振り分けをそのまま使わず、経理が勘定科目の明細まで戻って読み替えます。賃金台帳そのものは外部のAIに渡しません。一人ひとりの賃金が載る個人データなので、経理が給与支給総額と人数に集計した数字だけを材料にします。
【説明用の架空の記入例】勘定科目: 給料手当(販売費及び一般管理費)/AIの振り分け: 人件費/決算書の頁: 直近の期の販売費及び一般管理費の明細(経理が頁番号を書く)/確認した人: 経理責任者
事業計画の期間に満たす基準は、付加価値額の年平均成長率4.0%以上と、従業員の一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上です。目標年度の付加価値額は、基準年度の値に(1+年平均成長率)を年数分掛けた値になります。
年平均成長率は複利で計算するよう、公募要領が指定しています。5年の計画を「4.0%を5回足す」で置くと、目標値を低く見積もることになります。
準備の手間は、原価の記録の残り方で変わります。原価差異表が品目別に分かれていれば、赤字の品目はすぐ言える状態です。工場全体で1本しかないなら、どの品目が赤字かを言うための集計し直しから始まります。
いま公募しているのは新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
準備の宛先は、ものづくり補助金の次回ではなく、この新しい補助金の第1回です。ものづくり補助金の事務局サイトで公募に関する最新の案内は、2026年8月7日の23次締切の採択結果の公表で、次の公募の案内はまだありません。新しい補助金の公式サイトは、ものづくり補助金とも中小企業新事業進出補助金とも異なる補助金だと明記しています。
第1回の申請受付は2026年9月30日18時に始まり、応募締切は10月30日18時です。事業者向けの電子申請システムも、同じ9月30日に公開されました。公募要領は9月28日に1.3版へ改訂されたので、要件はこの版で読み直します。
枠は革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つです。工場のAIの計画が当たりやすい革新的新製品・サービス枠の上限は、従業員数で4つの区分に分かれます。
| 従業員数 | 補助上限額 | 賃上げ特例を受けるとき |
|---|---|---|
| 1〜5人 | 750万円 | 850万円 |
| 6〜20人 | 1,000万円 | 1,250万円 |
| 21〜50人 | 1,500万円 | 2,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 | 3,500万円 |
上限は従業員数で決まるので、補助事業の途中で人を増やす計画なら、どの区分で申請するかを経理と先に確かめます。補助率は中小企業者が1/2(最低賃金の特例を受けると2/3)、小規模企業者が2/3で、下限は100万円です。製造業の小規模企業者は、常勤従業員20人以下を指します。
採択の後、補助事業が終わるまでに小規模企業者の定義から外れると、補助率は1/2になり、その分だけ補助金額が減ります。人を増やす計画なら、資金繰りは1/2で組んでおきます。実施期間は交付決定日から10か月以内で、採択発表日から12か月以内です。
申請には、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の公表も要件に入っています。公表の手続きには1~2週間程度かかるので、策定していない会社は原価の集計と並べて進めます。GビズIDプライムの発行にも1週間程度かかり、採択発表は令和9年1月頃の予定です。
検査や段取りを楽にするAIは、新製品の枠の対象にならない
革新的新製品・サービス枠は、既存の製品やサービスの生産プロセスを改善・向上する事業を対象外としています。機械装置やシステムを入れるだけで新製品の開発を伴わないものも、同業の中小企業で相当程度普及しているものも当たりません。
分かれ目は、何を新しく売るかです。今の品目の外観検査をAIに置き換える計画は、検査が速くなっても工程の改善で、この枠には当たりません。AIを組み込んだ検査サービスを外部に売る計画になって初めて、枠の定義に当てはまるかを確かめる作業に進めます。
今の工程を楽にするソフトを入れたいだけの計画は、この枠に向きません。見る先はデジタル化・AI導入補助金の側です。補助事業で取得した財産は、原則として専ら補助事業に使う決まりです。既存の品目の生産にも使うと、目的外の使用として残存簿価相当額などの納付を求められます。
給与と最低賃金の目標は返還につながる
給与と最低賃金の2つは、届かなければ補助金の返還を求められる要件です。事業場内最低賃金は、地域別最低賃金より30円以上高い水準を毎年保つことが求められます。
給与の目標値は、交付申請までに全従業員か従業員代表者に表明します。表明していなければ全額の返還です。届かなかった場合は、交付額に目標値の未達成率を掛けた額を返し、年平均成長率がゼロかマイナスなら全額になります。
この一部返還には例外があり、付加価値額が増えておらず、会社全体で事業計画期間の過半数の年が営業赤字だった場合や、天災など事業者の責めによらない理由がある場合は求められません。事業場内最低賃金の返還にも、同じ趣旨の例外があります。例外に当たるかは報告の時点の決算で決まるので、目標値は例外を当てにせず受注の見通しから置きます。
1.3版では、賃上げ特例の要件で目標に届かなかった場合の扱いが補記されました。基本の賃上げ要件も未達の扱いになり、特例で引き上げた上限額の分は全額を返し、基本の要件の分も未達成率に応じて返します。
特例は、補助額が基本の上限額に届く計画でなければ使えず、この枠で最低賃金の特例を申請する場合も使えません。使えるときも、上限額の差と、給与の年平均成長率6.0%・事業場内最低賃金+50円に届かなかったときの返還の重さを並べて決めます。
補助事業を終えた後も、年度の終了後から5年間で計6回の事業化状況の報告があります。AIが計算した成長率をそのまま使い、受注の見通しと突き合わせずに給与の目標値を置いたとします。事業計画期間の最終年度に目標へ届かなければ、その年の報告をもとに返還を求められるおそれがあります。目標値を置く前に、経営者と経理が受注の見通しと採用の予定を1枚にまとめます。
新製品のAI開発費は機械装置・システム構築費に入る
新製品の一部として作るAIの開発費は、機械装置・システム構築費に入ります。対象経費は9区分で、ほかに運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費が並びます。
機械装置・システム構築費は、申請で必ず含める区分です。機械装置は単価10万円(税抜き)以上が対象で、100万円(税抜き)以上のシステム構築費を計上すると、実績報告で要件定義書などを出します。
クラウドサービス利用費は、専ら補助事業のために使うものだけが対象です。全社で共有して使っている生成AIの月額は、自社の他事業と共有する使い方なので入りません。社内の標準にする生成AIは補助事業とは別に選ぶもので、その比べ方は工場の帳票を生成AIへ渡す区分と4製品の料金にまとめています。
どの経費も、交付決定より前に契約・発注したものは対象になりません。採択の通知を受けた段階で発注すると、その分は自己負担になります。
外の助言は受けても、計画と数字の説明は社内に残る
公募要領は、外部の助言を受けることは差し支えないとしたうえで、事業計画は必ず申請者自身で作るよう求めています。作成そのものを申請者以外が行えば、不採択・採択取消・交付決定取消です。専門家経費は補助対象経費総額の5分の1が上限で、事業計画書の作成を手伝った人への経費は対象外です。
外に頼めるのは、新製品に組み込むAIの開発のように補助事業の中身の側で、計画の文章と数字の出所の説明は社内に残ります。赤字品目の原価を実績で追い直す段取りは、実績で標準工数を直す生産計画の進め方に続きます。原価差異の分析や設備投資の判断を扱う記事は原価・経営に集めてあり、製造業AI活用ジャーナルから工程ごとにたどれます。
第1回に出すか見送るかを決める目安の日は、締切の10月30日から手続きの日数を引いて出します。GビズIDプライムの発行に1週間程度、一般事業主行動計画の公表に1〜2週間程度かかります。どちらも手元に無い会社なら、順に取れば最長で3週間ほど前の10月9日、並べて進めても2週間ほど前の10月16日が目安です。
その日までに頁の無い科目が残っていれば、計画の文章を書く日数が足りないので、経営者は第1回を見送り、振り分け表を仕上げてから次の公募の案内を待ちます。決算書を会計事務所に任せきりの会社でこの数が減らない間の手当ては、会計事務所から勘定科目の明細を取り寄せ、経理が振り分け表を入力し直すことです。
明日から始める3ステップ
担当 経営者
公募要領1.3版で、自社の計画が革新的新製品・サービス枠の対象外に当たらないかを読み、GビズIDプライムと一般事業主行動計画の公表の有無を確かめる
次へ進む目安枠に当てる事業が1つに決まり、足りない手続きの申込日が10月30日の締切から逆算して入った
担当 経理責任者
決算書3期分と勘定科目の明細をAIに振り分けさせ、振り分けた科目ごとに決算書の頁を書き添える
次へ進む目安頁を書き添えられない科目が0になった
担当 工場長と経営者
品目別の原価差異を工数実績と照合した赤字品目の一覧に、受注の見通しと採用の予定を並べ、給与と付加価値額の目標値を置く
次へ進む目安目標値の横に出所の頁と受注の見通しが並び、従業員へ表明する日が交付申請の前に入った
無料相談(オンライン)
BoostXは、工場の見積・作業日報・作業標準書へのAI導入を支援しています
01無料相談
見積・日報・標準書から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公式ホームページ(お知らせ) 全国中小企業団体中央会(ものづくり補助金事務局) 確認日 2026.09.29
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト第1回公募の申請受付と応募締切・最新のお知らせ(2026.09.30)・ほかの補助金との関係・革新的新製品・サービス枠の補助上限額と補助率・革新的新製品・サービス枠の補助対象経費 独立行政法人中小企業基盤整備機構 確認日 2026.10.07
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版改訂履歴(1.3版)・1-2-1 補助率・1-2-1 補助下限額・1-4 小規模企業者の常勤従業員数・1-4 小規模企業者の補助率・1-4-1 小規模企業者・小規模事業者(補助率が1/2となった場合)・1-2-1 補助事業実施期間・一般事業主行動計画の策定・公表準備・GビズIDの準備・2-5 採択発表の予定・1-2-1 革新的新製品・サービス枠・財産処分の制限・1-3-1 付加価値額要件・1-3-1 付加価値額基準値・1-3-1 賃上げ要件・1-3-1 事業場内最賃水準要件・1-3-1 賃上げ要件の返還要件・1-3-1 賃上げ要件・事業場内最賃水準要件の返還要件(ただし書き)・1-3-2 賃上げ特例要件の返還要件・事業化状況報告の義務・1-6-1 機械装置・システム構築費(単価)・1-6-1 機械装置・システム構築費(要件定義書)・1-6-1 クラウドサービス利用費・1-6-1 専門家経費・4-1 事前着手の禁止・外部支援者活用時の注意・3-2 口頭審査・3-2 口頭審査(受験しなかった場合)・1-3-2 賃上げ特例要件(適用できない場合)・1-3-2 賃上げ特例要件(地域別最低賃金引上げ特例との関係)・1-3-2 賃上げ特例要件(給与支給総額)・1-3-2 賃上げ特例要件(事業場内最低賃金) 独立行政法人中小企業基盤整備機構 確認日 2026.10.07
- デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト独立行政法人中小企業基盤整備機構 確認日 2026.09.29
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