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AI活用の基礎・選び方

生成AIツールの選び方|工場の帳票3区分と4製品の料金で比べる

全社で使う生成AIツールを1つに決め、稟議書の比較欄を埋めようとしている段階に合わせて書きました。

4製品の料金表を付けた稟議書を回したところで、「客先の図面を入れても大丈夫か」「日報に載っている名前はどうなるのか」と聞かれ、判が止まることがあります。料金と機能を並べた比較表には、その問いに答える欄がありません。工場のどの帳票なら生成AIに渡してよいと、稟議書に書けるのでしょうか。

AI活用の基礎・選び方 更新 8分 運営 株式会社BoostX

生成AIツールを1本に決める前に、工場のどの帳票を渡すかを決める

先に結論

工場で標準にする生成AIは、料金ではなく帳票の出どころで決めます。AIへ最初に渡すのは作業標準書や社内規程など自社で作った帳票で、顧客から預かった支給図面は営業責任者が秘密保持契約を、人の名前が載る日報や修了証は管理部長が規約と設定を読み終えるまで渡しません。

AIに任せられるのは、自社の帳票の要約と、利用規約から学習・保存・削除・再委託の条項を条番号つきで抜き出す作業までです。「この規約なら図面を入れてよい」という結論は書かせず、情報システム担当が原文と1条ずつ照合します。

有料のアカウントは、作業標準書を改訂する技術課と規程を扱う管理部門から配ります。試用中に区分表と食い違った帳票が出た部門にはアカウントを足さず、担当者が迷った区分の書き方を直してから広げます。

料金の差は1人月千円台、選ぶ軸は帳票の出どころ

公式の料金表で並べると、円建ての製品どうしの差は年払いで1人月千円台、月払いどうしでも2千円前後にとどまります。製品の決め手は料金ではなく、図面や日報をどこまで外へ出せるかの区分のほうです。

工場で候補になる法人向けプランの月額は、年払いで1,600円から3,148円、ドル建てで20ドルです。円とドル、年払いと月払い、税別と表記なしが混ざるので、稟議に載せる前にそろえ直します。

製品(プラン) 1人あたりの月額 工場で見る点
Google Workspace Business Standard 1,600円(年間プラン・税別) 割引期間の価格も並んで表示される
Microsoft 365 Copilot Business 3,148円(年払い・税別)、割引期間は2,698円 今の Microsoft 365 に足す分の料金
ChatGPT Business 標準シート 3,050円(年額課金)、月額課金は3,850円 税込か税別かの表記が無い
Claude Team スタンダードシート 20ドル(年払い)、月払いは25ドル 2〜150名のチーム向け

差が千円台なら料金で製品を選ぶ理由は弱く、次の節の区分を先に固めたほうが稟議の話は早く進みます。Copilot Business の3,148円は、工場ですでに払っている Microsoft 365 本体の料金に上乗せする額です。

ChatGPT Business と Claude Team は、料金表の上で業務の入力を既定で学習に使わないと書いています。月払いにすると、ChatGPT Business は3,850円、Claude Team は25ドルに上がります。

Google Workspace の料金ページにも「1年契約なら16%お得」とあり、1,600円から逆算した月払いは約1,900円です。月払いどうしで並べても、Google Workspace と ChatGPT Business の差は約1,950円です。稟議書では年払いの総額を円に直し、税の扱いを1つの列にそろえてから並べます。

生成AIに渡せる工場の帳票は出どころで分かれる

渡せる範囲は、帳票を誰が作ったかで3つに分かれます。技術課は支給図面を貼って加工条件を相談したい、管理部門は作業日報を要約させたいと、部門ごとにAIへ渡したい帳票は違うので、先にこの3つへ振り分けます。

図の要点:工場の帳票を出どころで3つに分ける分岐図。顧客から預かった支給図面・BOM・注文書と客先様式の検査成績書は、営業責任者が秘密保持契約の開示の条項を読み、渡すなら顧客名・品番・単価を消し、検査成績書はロット番号と納入先も外す。自社で作った作業標準書と社内規程は、技術課長が正本の版を決めてそのまま渡し、有料のアカウントはこれを毎日直す部門へ先に配る。人の名前が載る作業日報・技能講習修了証と、検査成績書の検査員の氏名は、管理部長が扱いを決めるまで渡さず、渡すときも氏名の欄を消して渡る項目を減らす。

預かった帳票は契約、名前の載る帳票は規約を読むまで渡さない

  • 顧客から預かった帳票(支給図面・BOM・注文書)
    • 営業責任者が秘密保持契約の開示の条項を読む
    • 渡すときは顧客名・品番・単価を消す
    • 客先様式の検査成績書は、ロット番号と納入先も外す
  • 自社で作った帳票(作業標準書・社内規程)
    • 技術課長が正本の版を決め、そのまま渡す
    • 有料のアカウントは、この帳票を毎日直す部門へ先に配る
  • 人の名前が載る帳票(作業日報・技能講習修了証)
    • 管理部長が扱いを決めるまで渡さない
    • 渡すときも氏名の欄を消し、渡る項目を減らす
    • 検査成績書に載る検査員の氏名もこの区分に入る

自社の区分表を作るとき迷いやすいのは、客先指定の様式で書いて提出する検査成績書で、これは1つ目の「顧客から預かった帳票」に置きます。受託加工が売上の中心の工場ほど、この区分に入る帳票が増え、区分を決め終えるまでの日数も延びます。営業責任者は、読み終えた契約の名前を区分表に書き足し、どの顧客の図面なら渡せるかを一覧で見られるようにします。

【説明用の架空の記入例】

  • 帳票

    客先様式の検査成績書(A社向け)。区分は「顧客から預かった帳票」
  • 読む契約

    A社との秘密保持契約(読み終えたら営業責任者が日付を書く)
  • 渡す形

    顧客名・品番・単価・ロット番号・納入先を消す
  • 検査員の氏名

    人の名前が載る帳票として、管理部長が扱いを決めるまで渡さない

自社ブランド品だけを作る工場なら、読む相手は顧客の契約書ではなく、自社の設計部門の取り決めです。検査成績書に載る検査員の氏名も3つ目の「人の名前が載る帳票」に入るので、管理部長が消す欄を決めてから渡します。

作業標準書を検索に入れる前には、どれが正本の版かを決めておきます。旧版が混ざると、旧仕様の答えが返ってくるからです。版の決め方は、作業標準書を検索に入れる前の正本の決め方で順に確かめられます。

化学物質のリスクアセスメント記録票も自社で作る帳票です。ただしSDSから写せる欄と化学物質管理者が書く欄が1枚に同居するので、記録票の8欄をAIの下書きと管理者の記入に分ける方法を確かめてから渡します。

顧客の図面は秘密保持契約を読んでから渡す

顧客から預かった図面を縛るのは、法律より先に個別の秘密保持契約です。第三者への開示を禁じる条項があるとき、AIサービスへの入力が開示に当たるかは契約書の文言で変わります。

条項の書き方は顧客ごとに違うので、読み合わせは契約の本数だけ要ります。読むのは、顧客との契約の窓口になる営業責任者です。法務を置く会社なら、法務と分けて読みます。迷う契約の図面は、読み終えるまで渡さない側に置きます。

自社の技術情報を守る側の要件も確かめます。不正競争防止法第2条第6項は、営業秘密を、秘密として管理されている生産方法や販売方法などの有用な情報で、公然と知られていないものと定めています。

工場で先に崩れやすいのは、秘密として管理している状態のほうです。図面が共有フォルダの誰でも開ける階層に置かれていれば、AIに渡すより前に、この要件を満たさない状態になりかねません。

利用規約を読む作業は、AIに手伝わせられる部分です。学習への利用、保存する場所と期間、契約終了時の削除、再委託の条項を、条番号つきで抜き出させます。抜き出した条項は、情報システム担当が規約の原文を横に開いて、1条ずつ照合します。「この規約なら図面を入れてよい」という結論は、AIに書かせません。

作業日報と修了証は個人データとして扱う

作業日報や技能講習修了証には、従業員の氏名が載ります。外部の生成AIへ入力してよいかは、契約と設定を読み、次の3つのどれに当たるかで判断します。

1つ目は、契約と設定で、サービス側が個人データを取り扱わない場合です。取り扱わない旨が契約で定められ、アクセス制御も適切にされていれば、サーバに保存されていても個人データの提供に当たりません。

個人情報保護委員会のQ&Aは、提供に当たるかを、提供事業者が個人データを取り扱うこととなっているかで判断するとしています。この場合も、自社の安全管理措置は必要です。

2つ目は、サービス側が取り扱うものの、会社の利用目的の範囲で取扱いを任せる契約になっている場合です。これは委託に当たり、個人情報保護法第27条第5項第1号により、委託先は第三者に当たらないものとされます。会社には、第25条の委託先を監督する義務が残ります。3つ目は、どちらにも当たらない場合で、第三者提供として第27条第1項により原則として本人の同意が要ります。

サービス側が国外の事業者なら、委託に当たる場合でも、第28条第1項の外国にある第三者への提供として本人の同意が要るかを確かめます。我が国と同等の水準と認められた国の事業者や、委員会規則の基準を満たす体制を持つ事業者であれば、この同意は要りません。日報の氏名をどの扱いで入力するかは、管理部長が規約と管理画面の設定を読んで決めます。

契約する前に、管理部長が確かめる項目は次の8つです。

  • 入力した内容を学習に使うか、使わない設定があるか
  • 入力したデータを保存する場所と、保存する期間
  • 契約を終えたとき、入力したデータが消されるか
  • 再委託先がどこか
  • データが国外へ移るか
  • 社内の誰が履歴を見られるか(アクセス権限)
  • 操作ログが残り、管理者が見られるか
  • 漏えいが起きたとき、いつ誰に連絡が来るか

日報の要約を試すのは、管理部長が8つを確かめ、3つのどれに当たるかを決めてからです。そのうえで氏名の欄を消して作業名と職場名で書けば、相手に渡る項目は減ります。ただ、日付と職場の欄から勤務表をたどれば書いた人に行き着くので、氏名を消した日報も社内の基準では個人データです。消したことを理由に確認を省くことはできません。

契約の形は、帳票をどのシステムで保管しているかで決める

メールと共有フォルダが Microsoft 365 か Google Workspace にそろっている工場は、その基盤に付くAIから試します。資料を別のサービスへ貼り直さずに済み、フォルダの権限も今の設定を引き継げるからです。

ただし、設計と品質保証が別の仕組みで図面や検査記録を持つ工場では、基盤のAIからそれが見えません。その場合は、部門ごとにアカウントの数を増減しやすい単体の生成AIサービスを、もう1本契約することになります。

アカウントは帳票を自社で作る部門から配る

どちらの形でも、最初にアカウントを配るのは作業標準書を改訂する技術課と、規程を扱う管理部門です。渡す帳票が自社で作ったものだけなので、顧客の契約を読み終えるのを待たずに試せます。設計と購買への配布は、営業責任者による秘密保持契約の読み合わせが済んでからです。

補助事業の経費で生成AIの月額を賄えるかは、制度ごとに条件が違います。全社で共有して使う月額の扱いは、ものづくり補助金の新制度で見るAIの経費で確かめられます。ツールを決めた後にどの業務から広げるかは、AI活用の基礎・選び方と製造業AI活用ジャーナルの各記事で工程ごとに比べられます。

社内で選び切れるかは、契約の本数と規程の条で分かれる

区分表と契約の読み合わせを社内で回せる工場なら、製品選びもアカウントの配布も社内で決め切れます。料金表と利用規約は公開されていて、比べる材料は手元にそろうからです。

社内で回らなくなるのは、受託加工の顧客が多く秘密保持契約の本数が営業責任者の手に余るときと、情報管理規程に外部サービスへの入力を扱う条が無いときです。原本が紙の束のままで一覧が無い工場なら、ツールを選ぶより先に契約の一覧を作るほうが先決です。

条の起案と区分表の組み方を外の目で確かめたいなら、外部の顧問(AI顧問)と一緒に決める形が候補になります。現場の異常報告まで広げ、社内で組むか外に頼むかを決めるときは、異常報告で見極める内製と外部の分かれ目が判断の材料になります。

試用を続けるかは、情報システム担当が試用記録を区分表と照合して数える、部門ごとの食い違いの件数で決めます。たとえば3週続けて0件の部門はアカウントを増やします。何週で判断するかは情報システム担当が決めます。1件でも出た部門は、区分表のどの区分で迷ったかを聞き取って、その区分の書き方を直します。手始めの作業は、その件数を数える元になる区分表づくりです。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 情報システム担当

    工場で使う帳票を出どころの3つの区分に振り分けた区分表を作り、支給図面の行には顧客名を並べる

    次へ進む目安図面・検査成績書・作業日報・作業標準書のすべてが、区分表のどれかの区分に入った

  2. 担当 情報システム担当

    技術課と管理部門に有料のアカウントを配り、試用記録に残った渡した帳票を区分表と照合して、食い違いの件数を部門ごとに数える(数える間隔はたとえば週1回)

    次へ進む目安決めた週数(たとえば3週)続けて食い違いが0件の部門は、アカウントの数を増やしてよい。週数は情報システム担当が決める

  3. 担当 営業責任者

    区分表に並んだ顧客の秘密保持契約を開き、開示と目的外使用の条項を読んで、図面を渡せるかを行ごとに書き込む

    次へ進む目安区分表の顧客の行がすべて埋まったら、設計と購買へアカウントを広げる

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出典

  1. Google「Google Workspace 料金プラン」(Business Standard・年間プランの表記) Google 確認日 2026.09.29
  2. Microsoft「Microsoft 365 Copilot Business」(料金) Microsoft 確認日 2026.09.27
  3. OpenAI「ChatGPT 料金」(Business 標準シート・Business のデータの扱い) OpenAI 確認日 2026.09.27
  4. Anthropic「プランと料金」(Team プランのスタンダードシート・Team プランのデータの扱い) Anthropic 確認日 2026.09.29
  5. 不正競争防止法(平成5年法律第47号) e-Gov法令検索(第2条第6項) デジタル庁 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.28
  6. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号) e-Gov法令検索第25条・第27条第5項第1号・第25条(委託先の監督)・第27条第1項(第三者提供の制限)・第28条第1項(外国にある第三者への提供の制限) デジタル庁 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.28
  7. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」(Q7-53・Q7-54・Q12-1) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.28

編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり

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