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安全・環境・規制

製造業のリスクアセスメントはAIでどこまで自動化できる?下書きと人の判断

リスクアセスメント記録でAIが担うのは、災害記録の分類、危険源の候補出し、記録の下書きです。

編集 BoostX編集部2026.06.1411分で読めます

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この記事の要点

  • リスクアセスメント記録でAIが担うのは、災害記録の分類、危険源の候補出し、記録の下書きです。
  • 危険性の見積りと評価、低減措置の決定、残留リスクの書き方は人に残ります。
  • 本メディアでは、評価の点数をAIに出させる運用は勧めません。

AIが担うのは分類と候補出し、人に残るのは見積り・評価・低減措置の決定

リスクアセスメント記録は、同じ作業の危険源を様式の上で毎回書き直す仕事です。集める仕事と写す仕事は渡せます。危険性の見積りと低減措置の決定は、法令・社内規程に基づき、会社が定めた確認者が判断します。AIの出力だけで確定しない運用が必要です。

線は「集める・並べる・下書きする」と「決める・承認する」の間に引きます。以下では、調査時期の判定から委員会の見直しまでを8工程に割ります。

対象は、安全衛生担当が製造や品質と兼務で記録を回している工場

この記事では、従業員50〜300人、1工場、職場が3〜6の会社を前提として置きます。規模が違えば、以降の工程と時間の話は当てはまりません。

体制は、安全衛生担当が1名で製造か品質と兼務し、職場ごとに職長が付く形とします。記録を最後に見るのは安全衛生責任者で、低減措置の予算は製造課長と経営者が決めます。

起点は年度初めだけではありません。労働安全衛生規則第24条の11第1項は、調査の時期を四つ挙げています(確認 2026-09-22)。建設物の設置・移転・変更・解体、設備や原材料等の新規採用や変更、作業方法や作業手順の新規採用や変更、危険性又は有害性等に変化が生じるおそれのあるときです。

リスクアセスメント記録は、同じ作業の危険源を様式の上で毎回書き直す仕事です

リスクアセスメントは調査時期の判定から委員会の見直しまで8工程で回る

量の目安は公的統計に無いため、前提を置きます。1職場の対象作業を12件、危険源を1作業5件、記録づくりを1作業60分、委員会を月1回とします。

着手から完了までの流れ。色の付いた工程はAIが担える部分があり、「人」はその工程で人が決めることが残る工程です。
  1. 1調査の時期を判定し対象作業を決める
  2. 2災害とヒヤリハットを作業別に並べ替えるAIと人
  3. 3危険源を洗い出すAIと人
  4. 4危険性・有害性を見積り評価する
  5. 5リスク低減措置を決めるAIと人
  6. 6リスクアセスメント記録にまとめるAIと人
  7. 7記録を関係労働者に周知するAIと人
  8. 8委員会で実施を確認し見直すAIと人

AIが担える人が決める

  1. 1

    調査の時期を判定し対象作業を決める

    担当: 安全衛生担当・委員会 / 使うもの: 作業一覧、設備台帳、設計変更通知 / 量・時間: 変更の都度

    AIが解決すること
    この工程はAIを使わない
    人が決めること
    対象作業の範囲と時期
    詰まるところ
    作業の区切りが決まらない
    失敗したときの損失
    抜けた作業が評価されない
  2. 2

    災害とヒヤリハットを作業別に並べ替える

    担当: 安全衛生担当 / 使うもの: ヒヤリハット報告、災害記録 / 量・時間: 月20件(前提)

    AIが解決すること
    報告を作業別・設備別・要因別に分類する
    人が決めること
    分類の採否
    詰まるところ
    紙とExcelを行き来する
    失敗したときの損失
    同じ型の災害が繰り返される
  3. 3

    危険源を洗い出す

    担当: 安全衛生担当・職長 / 使うもの: 作業標準書、SDS台帳 / 量・時間: 1作業5件(前提)

    AIが解決すること
    作業手順から候補を並べSDSの保護具を拾う
    人が決めること
    候補の採否と抜けの補い
    詰まるところ
    経験の差で抜けが出る
    失敗したときの損失
    見落としが災害になる
  4. 4

    危険性・有害性を見積り評価する

    担当: 安全衛生担当・製造課長 / 使うもの: 評価基準表 / 量・時間: 危険源の数ぶん

    AIが解決すること
    この工程はAIを使わない
    人が決めること
    見積りの値と優先順位
    詰まるところ
    担当者で点数がぶれる
    失敗したときの損失
    措置が後回しになる
  5. 5

    リスク低減措置を決める

    担当: 製造課長・設備担当 / 使うもの: 対策案、設備投資の予算 / 量・時間: 評価の高い危険源ぶん

    AIが解決すること
    同じ危険源で過去に採った措置と結果を並べる
    人が決めること
    措置・暫定措置・実施時期
    詰まるところ
    予算と時期が決まらない
    失敗したときの損失
    措置が形だけで終わる
  6. 6

    リスクアセスメント記録にまとめる

    担当: 安全衛生担当 / 使うもの: リスクアセスメント記録 / 量・時間: 1作業60分(前提)

    AIが解決すること
    決まった内容を様式の欄に起こし漏れを並べる
    人が決めること
    記載の粒度と残留リスク
    詰まるところ
    白紙から書けず数週間止まる
    失敗したときの損失
    実施を示せない
  7. 7

    記録を関係労働者に周知する

    担当: 安全衛生担当・職長 / 使うもの: 記録、掲示、作業標準書 / 量・時間: 記録の確定後

    AIが解決すること
    記録から周知の要点と掲示文の案を作る
    人が決めること
    周知の方法と重点作業
    詰まるところ
    掲示しただけで読まれない
    失敗したときの損失
    周知の要件を満たせない
  8. 8

    委員会で実施を確認し見直す

    担当: 委員会・安全衛生責任者 / 使うもの: 実施状況表、議事録 / 量・時間: 月1回(前提)

    AIが解決すること
    実施状況を作業別に集計する
    人が決めること
    再評価の要否と次の対象
    詰まるところ
    措置が効いたか分からない
    失敗したときの損失
    同じ災害が繰り返される

枠の色が担当の別で、現状はすべて人の枠です。三角は停滞の起きやすい工程です。

業務フロー分解図。調査の時期を判定→災害記録を分類→危険源を洗い出す→見積りと評価→低減措置を決める→記録にまとめる→記録を周知する→委員会で見直す。AI担当はなし、人が確定するのは調査の時期を判定・災害記録を分類・危険源を洗い出す・見積りと評価・低減措置を決める・記録にまとめる・記録を周知する・委員会で見直す調査の時期を判定災害記録を分類危険源を洗い出す見積りと評価低減措置を決める記録にまとめる記録を周知する委員会で見直すAIが担う人が確定する両方失敗が起きやすい工程
リスクアセスメントは調査時期の判定から委員会の見直しまで8工程で回る

AIで消える工程:工程2の、紙のヒヤリハット報告とExcelの災害記録を手で突き合わせる作業。

AIで短くなる工程:工程3の候補出し、工程5の過去措置の呼び出し、工程6の様式への起こし、工程7の掲示文、工程8の集計。

新しく増える確認工程:候補から外した危険源と理由を残す工程9。

詰まるのは工程3の洗い出しと工程6の記録づくりで、その時間は帳簿に残っていない

詰まりは工程3と工程6に集まります。洗い出しは職長と現場を歩く時間が要り、記録づくりは白紙の様式を前に手が止まるためです。設備の入れ替えが重なる年度末には、二つが同じ月に並びます。

問題は、その時間が帳簿に残っていない点です。測っている工場の割合は、公的統計では確認できませんでした(確認 2026-09-22)。

測る項目 試算用の仮定 あなたの会社
記録づくり(分/作業) 公的な統計なし。30日の実測
対象作業(件/職場) 公的な統計なし。作業一覧
着手から確定までの日数 公的な統計なし。着手日と確定日
低減措置の実施率(%) 公的な統計なし。実施状況表

AIの用途には調査があります。文書・音声の要約や校正が82.5%、文書・レポートの作成が80.5%、情報検索・収集・分析が77.0%で、生産・物流の計画支援は6.0%です(IPA「DX動向2026 調査のポイント」p5・調査2026年4〜6月・確認 2026-09-22)。

横棒グラフ。文書・音声の要約や校正は82.5%、文書・レポートの作成は80.5%、情報検索・収集・分析は77%、自社製品の高度化は10.9%、生産・物流の計画支援は6%。最も大きいのは文書・音声の要約や校正の82.5%。出典はIPA「DX動向2026 調査のポイント」2026年7月16日 p5(回収1,799社・調査2026年4月17日〜6月12日)・確認 2026-09-22単位:%文書・音声の要約や校正82.5%文書・レポートの作成80.5%情報検索・収集・分析77%自社製品の高度化10.9%生産・物流の計画支援6%
AIの利用用途は文書づくりと検索に寄り、計画支援は6.0%にとどまる(出典:IPA「DX動向2026 調査のポイント」2026年7月16日 p5(回収1,799社・調査2026年4月17日〜6月12日)・確認 2026-09-22)

記録づくりは、最も使われている二つの用途の真ん中にあります。本メディアでは、時間を測っていない工場は着手より先に30日の実測を置くべきだと判断します。前提は記録づくりを1人が抱えていることで、担当が複数で手順が標準化されているなら、手順の統一が先になります。

工程2・3・5・6・7・8の分類と下書きは、確認だけ残してAIへ渡せる

工程2は番号ごと無くなります。分類した一覧がそのまま工程3の入力になるため、報告を1枚ずつ開き直す必要がありません。

工程3から工程8では、作業標準書とSDSから危険源の候補を並べ、過去の措置を呼び出し、様式の欄に起こし、掲示文の案を作り、実施状況を集計します。並んだ結果は「候補」と呼び、「対策」とは呼びません。候補を外す判断は職長が現場で行います。

人が確定するのは工程4の見積りと評価、工程5の低減措置、工程8の再評価の要否

三つを人に残す理由は、条文が事業者に行為を求めている点にあります。労働安全衛生法第28条の2第1項は、設備や原材料、作業行動などに起因する危険性又は有害性等の調査を定め、措置は講ずるよう努める形です。同項のただし書は、化学物質等以外の対象を「製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者」としています(確認 2026-09-22)。

条文から読めるのはここまでです。誰が最終の確認者になるかは、法令と社内規程に基づいて会社が定めます。AIの出力だけで評価を確定しない運用を先に文書へ書きます。

AIと人の境界図。AIが担うのは災害記録を作業別に分類・危険源の候補を並べる・SDSから保護具を拾う・記録の下書きを作る・措置の実施状況を集計。人が確定するのは危険性の見積りと評価・低減措置の決定・残留リスクの書き方・教育内容と重点作業・再評価の要否。止めどころは候補のまま渡す。AI担当は災害記録を作業別に分類・危険源の候補を並べる・SDSから保護具を拾う・記録の下書きを作る・措置の実施状況を集計、人が確定するのは危険性の見積りと評価・低減措置の決定・残留リスクの書き方・教育内容と重点作業・再評価の要否AIが担う(写す・比べる・下書き)人が確定する災害記録を作業別に分類危険源の候補を並べるSDSから保護具を拾う記録の下書きを作る措置の実施状況を集計危険性の見積りと評価低減措置の決定残留リスクの書き方教育内容と重点作業再評価の要否確定止めどころ候補のまま渡す
リスクアセスメントでAIが下書きする範囲と、安全衛生担当が確定する範囲

確認者は、措置の決定者である安全衛生責任者や製造課長と一致させます。対象は工程3と工程5の出力です。責任と確認の実務が分かれると、自社にない危険源を含んだ記録が委員会へ上がります。

本メディアでは、評価の点数をAIに出させる運用は勧めません。前提は評価基準表が自社の設備と作業に合わせて作られていることで、基準表が無い工場ではAIより先に基準表を作る作業が本題になります。

着手前に要るのは作業標準書・ヒヤリハット報告・SDSの3点

揃える現物は三つです。作業標準書(最新版)、過去1年分のヒヤリハット報告と災害記録、扱う化学物質のSDSです。紙だけの工場は、対象作業の分だけ電子にします。

作業標準書の版が現場と事務所で違うなら、正本の置き場を決めるのが先です。版が分かれたまま候補出しを入れると、旧手順の危険源が記録に残ります。

導入後は工程2が消え、外した危険源の理由を残す工程が増える

同じ8工程をAI活用後の姿で並べ直します。消えるのは工程2で、工程1の対象決めと工程4の見積り・評価は現状のまま残ります。

前後比較図。現状は調査の時期を判定→災害記録を分類→危険源を洗い出す→見積りと評価→低減措置を決める→記録にまとめる→記録を周知する→委員会で見直す。AI活用後は調査の時期を判定→災害記録を分類(消える)→危険源を洗い出す(AI)→見積りと評価→低減措置を決める(AI)→記録にまとめる(AI)→記録を周知する(AI)→委員会で見直す(AI)→外した理由を残す(新)。AI担当は危険源を洗い出す・低減措置を決める・記録にまとめる・記録を周知する・委員会で見直す・外した理由を残す、人が確定するのは調査の時期を判定・見積りと評価現状調査の時期を判定災害記録を分類危険源を洗い出す見積りと評価低減措置を決める記録にまとめる記録を周知する委員会で見直すAI活用後調査の時期を判定災害記録を分類危険源を洗い出す見積りと評価低減措置を決める記録にまとめる記録を周知する委員会で見直す外した理由を残す変わらないAIが担う増える(検証・例外)消える
同じ8工程で見た、リスクアセスメント記録の現状とAI活用後
工程 現状 AI活用後
1. 調査の時期を判定 変更の連絡を受けて判断 変わらない(会社が決める)
2. 災害記録を並べ替える 紙の報告とExcelを手で分類 消える(一覧が工程3の入力になる)
3. 危険源を洗い出す 現場を歩いて書き出す AI: 作業標準書とSDSから候補 → 人: 候補を外す
4. 見積りと評価 評価基準表を見て点数を付ける 変わらない(会社が定めた確認者が確定する)
5. 低減措置を決める 対策案を会議で決める AI: 過去の措置と結果を並べる → 人: 措置と時期
6. 記録にまとめる 白紙の様式に手で書く AI: 内容を欄に起こす → 人: 残留リスクの書き方
7. 記録を周知する 読み直して掲示物を作る AI: 掲示文の案 → 人: 周知の方法
8. 委員会で見直す 実施状況を手で集計 AI: 作業別に集計 → 人: 再評価の要否
9. 増える: 外した危険源と理由を残す なし 増える: 同じ判断を繰り返さないため

工程4を「変わらない」にしている点が要注意です。候補が並ぶと点数も出せそうに見えますが、見積りと評価は会社が定めた確認者が確定します。「工程4も自動」と稟議に書けば、責任の所在が消えた設計に読まれます。

費用は設計・構築・データ整備・運用・外部連携の5費目に分かれる

費用は総額で見ず、費目で割ります。重いのは構築よりデータ整備です。紙のヒヤリハット報告が箱に入ったままなら、分類の対象を作る作業が先に立ちます。

費目 試算用の仮定(期間) あなたの会社
設計(工程の分解と確認者) 前提として1〜2週間
構築(候補出しと記録の下書き) 前提として2〜4週間
データ整備(災害記録とSDS台帳の電子化) 紙の報告の件数で動く
運用(評価欄と外した理由の確認) 毎月続く
外部連携(実施状況表・設備台帳) 連携先の数で動く

社内だけで進めるか外部に設計を頼むかは、二つの軸で決めます。一つは記録の不備が会社に与える影響で、労働基準監督署の調査と客先監査が同時に来るため大きい側に入ります。もう一つは社内の工数です。

IPAの調査では、DX推進人材の「量」が不足と答えた企業の合計は85.5%、従業員101人以下のAI導入は16.6%でした(IPA「DX動向2026 調査のポイント」p7・p4・確認 2026-09-22)。安全衛生担当が兼務1名なら、設計だけを外に出す形が現実的です。

回収は記録づくりに使った時間で数え、作業数と単価は自社の値に置き換える

数え方は時間です。削減した時間から増える確認の時間を引き、立ち上げの時間と並べます。ここでは分類と記録づくりに月18時間、導入後に月6時間、増える確認に月2時間、立ち上げに40時間と前提を置きます。

数える項目 試算用の仮定 あなたの会社
分類と記録づくり(時間/月) 前提として18時間
導入後の同じ作業(時間/月) 前提として6時間
増える確認(時間/月) 前提として2時間
立ち上げに要る時間(時間) 前提として40時間
投入時間と削減時間が並ぶ月 前提どおりなら4か月目
投入時間と削減時間の線。横軸は月、縦軸は累計(単位時間)。仮定した作業時間だけの比較で、4か月目に累計の削減時間48時間と累計の投入時間48時間が並ぶ。システム利用料・外部委託費・開発費は含まない。出典は本記事が前提として置いた値。出典のある統計ではありません(確認 2026-09-22)(単位:時間)144720024681012か月時間だけなら4か月目累計の投入時間累計の削減時間交わった月=並ぶ月
リスクアセスメント記録に投じた時間と、削減できた時間の累計(出典:本記事が前提として置いた値。出典のある統計ではありません(確認 2026-09-22))

仮定した作業時間だけで比較すると、4か月目に投入時間と削減時間が並びます。システム利用料、外部委託費、開発費は含まないため、実際の投資回収期間は別途算定が必要です。対象作業が12件より少なければ並ぶ月は後ろへずれます。

売上での説明は避けます。AI導入の効果を尋ねた調査では「売上や利益が向上した」が3.9%でした(IPA「DX動向2026 調査のポイント」p6・確認 2026-09-22)。安全の記録づくりは、時間と不備の件数で説明する投資です。

起きやすい失敗は評価欄の穴埋め・他社の危険源の混入・記録だけが増えるの3つ

一つ目は評価欄の穴埋めです。下書きが整っているために、評価基準表を開かないまま点数が付きます。原因は下書きに評価欄が含まれていることで、防ぎ方は評価欄を空のまま出すことです。

二つ目は、自社にない危険源が候補として並び、記録に残ることです。他社の設備を前提にした危険源が混ざると、現場は記録を読まなくなります。原因は外した候補と理由を残す運用が無いことで、防ぎ方は工程9を最初から工程表に入れることです。

三つ目は、記録だけが増えて措置が進まないことです。作成件数が成果として報告され、予算と実施時期が後回しになります。原因は委員会の議題が作成件数だけになっていることで、防ぎ方は実施率を毎月の議題に固定することです。

稟議で聞かれるのは義務の重さと、外部のAIへ渡す情報の扱い

義務の重さは条文で違います。労働安全衛生法第28条の2第1項の調査と措置は努力義務で、第57条の3第1項は通知対象物等について「調査しなければならない」と定めています(確認 2026-09-22)。化学物質を扱う工場では、後者が先に立ちます。

記録の残し方も条文にあります。労働安全衛生規則第34条の2の8第1項は、リスクアセスメント対象物について、名称、業務の内容、調査の結果、講ずる措置の内容の4項目を定めています。保存は次の調査までで、3年以内に次を行えば3年間です。周知は、常時掲示か備付け、書面の交付、電子ファイルと機器の設置の三つです(同条第2項)。

外部のAIサービスへ渡す情報は、委託と第三者提供を分けて考えます。ヒヤリハット報告に氏名が入る場合でも、利用目的の範囲内で処理を任せる委託は、原則として第三者提供には該当しません。ただし委託先の監督が必要です。クラウド事業者が入力データを取り扱わない契約・構造のときは、個人情報保護法第25条の扱いが異なる場合があります(個人情報保護委員会「個人情報保護法についてのQ&A」・確認 2026-09-22)。

契約の前に確かめる項目は八つです。入力データを学習に利用するか、保存場所と保存期間、契約終了時の削除、再委託先、海外移転、アクセス権限、操作ログ、漏えい時の連絡体制です。

同じ枠で営業秘密も見ます。作業標準書の加工条件は、秘密として管理され、有用で、公然と知られていなければ、不正競争防止法第2条第6項の営業秘密に当たります(確認 2026-09-22)。送る文書は一覧にし、承認者を置きます。

30日で時間を測り、60日で候補出しを任せ、90日で委員会の承認手順を決める

進め方は1職場に絞ります。棚卸しでこの業務を選び、8工程へ割り、判断か作業かで適性を見て、工程2と工程3から着手します。2週間の試行で測るのは、記録づくりの時間、外した候補の件数、低減措置の実施率です。

期間 やること 測る指標 その時点の判断
1〜30日 対象を1職場3作業に絞り、工程3と工程6の時間を実測する 記録づくりの時間(分/作業)、確定までの日数 実測が取れなければ延ばす
31〜60日 候補出しと下書きを任せ、評価欄は安全衛生担当が埋める 外した候補の件数、確定した作業の件数 外した候補が半数を超えたら対象を見直す
61〜90日 委員会の承認手順と、下書きを使わない4条件を文書にする 実施率(%)、例外の件数 4条件が決まるまで広げない

下書きを使わない4条件は先に決めます。災害が起きた作業、初めて扱う化学物質、外部の工事業者が入る作業、非定常の保全作業です。この4条件は安全衛生担当が現場を見て書きます。90日後に、2職場目へ広げるか作業標準書の版の整理へ戻るかを決めます。

出典

  1. 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号) e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22
  2. 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号) e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22
  3. 個人情報保護委員会「個人情報保護法についてのQ&A」 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.22
  4. 不正競争防止法(平成5年法律第47号) e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22
  5. IPA「DX動向2026 調査のポイント」(2026年7月16日) 独立行政法人情報処理推進機構 確認日 2026.09.22

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