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安全・環境・規制

リスクアセスメントの記録にAIを使う範囲|記録票8欄と条文の4項目

SDSの受け取りから、リスクアセスメントの記録票と作業場の掲示までを、ほかの仕事の合間に回している化学物質管理者と工場長に。

メーカーからSDSの改訂の案内が届くたびに、記録票を書き直し、作業場の掲示を貼り替える作業が化学物質管理者に回ってきます。生成AIで下書きできれば楽ですが、リスクの区分や措置まで任せてよいかは別の話です。記録票の欄ごとにAIと化学物質管理者の受け持ちを、労働安全衛生規則の条文に沿って分けました。保存期間、やり直す時期、AIに入れない情報も、根拠の条文と一緒に載せています。

安全・環境・規制 更新 7分 運営 株式会社BoostX

化学物質のリスクアセスメント記録で、AIに写させる欄と人が埋める欄

先に結論

AIに下書きさせてよいのは、記録票のうち対象物の名称、業務の内容、掲示の要約の欄です。どれもSDSと作業標準書から写せる欄で、名称の欄もAIが写した後に化学物質管理者がSDSの原本と1行ずつ照合します。

見積りの方法、入れた取扱い条件、結果の区分、委員会などで決めた措置、確認欄の5欄は、化学物質管理者が空欄から書きます。結果の欄には、使った方法の名前と条件と出てきた区分を置き、AIの答えは置きません。

健康診断の個人票、労働者の氏名と結び付いた測定値、配合比率は、使う生成AIの契約や設定にかかわらず下書きの材料にしません。

「リスクは中程度」という答えは、記録の根拠にならない

結果の欄の根拠になるのは、使った見積りの方法と入れた条件で、AIの言葉では置き換えられません。見積りの方法は、規則第34条の2の7第2項が決めています。危険や健康障害が生じるおそれの程度と重さを考える方法、ばく露の程度と有害性の程度を考える方法、それらに準ずる方法です。危険性の見積りは、1つ目か、それに準ずる方法に限られます。

ばく露の程度から見積る道具として、厚生労働省はCREATE-SIMPLEを公開しています。ばく露限界値と、取扱量や換気などの条件から推定したばく露濃度を比べる作りで、濃度を測定しなくても使える点が特徴です。入れる取扱い条件は、作業標準書と現場の確認をもとに化学物質管理者が決めます。

生成AIに作業の様子を説明して「リスクは中程度」と答えさせても、どの方法で見積ったのかを記録に書けません。結果の欄に置くのは、使った方法の名前、入れた条件、出てきた区分の3つです。

条文が記録に求める4項目と、次の実施で変わる保存期間

労働安全衛生規則第34条の2の8が記録に求めるのは、対象物の名称、業務の内容、リスクアセスメントの結果、事業者が講ずる措置の内容の4項目です。下の記録票の8欄は、この4項目に見積りの方法・取扱い条件・掲示の要約・確認欄を足した形です。

図の要点:リスクアセスメントの記録票1枚の8欄の図。対象物の名称はSDSの成分名とCAS番号のまま、業務の内容は作業標準書の作業名と使用場所、掲示の要約は物質名・作業・保護具・換気の決まりで、この3欄はAIが下書きする。見積りの方法、入れた取扱い条件、結果の区分、委員会などで決めた措置、化学物質管理者の確認欄の5欄は人が書く。

SDSから写せない5つの欄は、化学物質管理者が空欄から書く

対象物の名称
SDSの成分名とCAS番号のままAI が下書き
業務の内容
作業標準書の作業名と使用場所(例: 部品洗浄)AI が下書き
見積りの方法
CREATE-SIMPLE など使った方法の名前人が確定
入れた取扱い条件
取扱量・換気・作業時間(現場で確かめた値)人が確定
結果
その方法が出したリスクの区分をそのまま人が確定
措置の内容
委員会などで決めた措置と実施の時期人が確定
掲示の要約
物質名・作業・保護具・換気の決まりAI が下書き
化学物質管理者の確認欄
記録票と掲示の要約を突き合わせて記入人が確定

AIが写した名称の欄も化学物質管理者がSDSの原本と1行ずつ照合する、と記録票の手順に書いておきます。成分名が和名と英名で揺れると、同じ物質が台帳に2行できるからです。

【説明用の架空の記入例】数値はすべて説明のための仮の値で、基準や推奨の値ではありません。

  • 対象物の名称

    トルエン(CAS番号 108-88-3)
  • 業務の内容

    第2職場の部品洗浄(洗浄槽への浸漬と拭き取り)
  • 見積りの方法

    CREATE-SIMPLE ver.3.2.1
  • 入れた取扱い条件

    1日の取扱量 約2リットル、局所排気装置あり、作業時間 1日約1時間
  • 結果

    CREATE-SIMPLE が表示したリスクレベルを、表示のまま転記
  • 措置の内容

    局所排気装置の点検を月1回にする(安全衛生委員会で決定、翌月から実施)
  • 掲示の要約

    トルエン/部品洗浄/有機ガス用防毒マスクと耐溶剤手袋/洗浄中は局所排気装置を止めない
  • 確認欄

    化学物質管理者の氏名と確認日

記録の様式は規則が決めていないので、社内の記録票に4項目の欄を作ります。見積りの方法と取扱い条件の欄を足しておくと、結果の区分がどこから出たかを後から追えます。

記録は次のリスクアセスメントを行うまで保存し、3年以内に同じ対象物で次を行ったときは3年間保存します。その業務に就く労働者への周知も、同じ条が求めています。保存期間が次の実施で変わるので、記録票の番号は対象物と業務の内容の組ごとに振り、前の版を消さずに残します。

やり直すのは、原材料・作業方法・有害性が変わるとき

やり直す時期は、規則第34条の2の7第1項が3つ挙げています。対象物を原材料として新しく採用するか変えるとき、その物を扱う作業の方法や手順を新しくするか変えるとき、危険性や有害性に変化が生じるおそれがあるときです。

洗浄剤を別メーカーの品に替えるときも、塗装を吹付けからはけ塗りに変えるときも、1つ目か2つ目に当たるため、記録票の見直しが要ります。購買会議や工程変更の決裁の場で、記録票に行を足す担当を決めておきます。

見落としやすいのは3つ目です。メーカーからSDSの改訂の案内が届いても、購買担当の受信箱に置かれたままになる場合があります。新旧のSDSを並べ、危険有害性の区分や保護具の記載が変わった箇所に印を付ける作業は、AIに向いています。印の付いていない箇所も含め、やり直しに当たるかを決めるのは化学物質管理者です。

措置はばく露を最小限にする義務から決める

措置の欄は、規則第577条の2第1項の義務から考えます。リスクアセスメントの結果などに基づき、労働者がばく露される程度を最小限度にしなければならないという規定です。手段として、代替物の使用、発散源の密閉、局所排気装置や全体換気装置、作業方法の改善、有効な呼吸用保護具が並んでいます。

法第57条の3第2項は、調査の結果に基づく必要な措置を努力義務としています。ただし、法令が別に定める措置は講じたうえでの話です。ばく露を最小限にする義務は規則が定める措置に当たるので、「措置は努力義務だから書かなくてよい」とはなりません。厚生労働大臣が濃度の基準を定めた物を屋内作業場で扱う業務では、ばく露をその基準以下にすることも求められます(同条第2項)。

講じた措置の状況は、1年を超えない期間ごとに1回記録し、3年間保存します。がん原性物質に係る一部の記録は30年間です(同条第11項)。講じた措置については、衛生委員会の有無にかかわらず、関係労働者の意見を聴く機会を設けます(同条第10項)。

措置の下書きをAIに頼むなら、過去の記録票から同じ作業の措置を、元の記録の番号つきで並べさせます。並べる順は、代替物、密閉と換気、作業方法、保護具の順です。保護具だけを選ぶ記録が積み上がると、措置を決める場で換気の見直しが議題に上がりにくくなります。

周知は掲示・書面・作業場の機器で行う

周知の方法は、規則第34条の2の8第2項が3つに限っています。作業場の見やすい場所への常時掲示か備え付け、書面の交付、記録をファイルにして作業場に常時確認できる機器を置くことです。朝礼で読み上げるだけでは、このどれにも当たりません。

記録票は表の形で細かく、壁に貼っても読まれにくいものです。AIに物質名、扱う作業、着ける保護具、換気の決まりを1枚に収めた要約を下書きさせます。化学物質管理者は記録票と要約を横に並べ、食い違いが無いかを確かめてから貼ります。

同じ物質を複数の職場で使う工場なら、職場ごとに作業が違う場合、記録票も業務の内容ごとに分かれます。掲示の要約も、職場の作業名で書き分けます。

健康診断の個人票と配合比率はAIに入れない

下書きの材料に入れてよいのは、SDSと、作業名と使用場所まで書いた作業標準書です。次の情報は、使う生成AIの契約や設定にかかわらず、記録票の下書きには入れません。

  • リスクアセスメント対象物健康診断の個人票と、特殊健康診断の結果
  • ばく露の測定値や従事した作業の記録を、労働者の氏名と結び付けたもの
  • 自社で配合している製品の配合比率と、客先から開示を受けた配合
  • 労働災害やヒヤリハットの報告に書かれた個人名

業務の内容の欄は、作業名と職場名で足ります。記録票に氏名の欄が無いので、下書きの時点で個人の情報を扱う理由もありません。測定値や従事の記録から氏名を消しても、日付と職場の組み合わせで勤務表から本人が分かる記録は個人データのままなので、上の一覧と同じく下書きには入れません。

SDSや作業標準書を外部のAIへ渡す前に決めることは、工場の帳票ごとにAIへ渡す形を決める選び方と同じ考え方で整理できます。

SDSの台帳づくりや災害報告など隣の業務は安全・環境・規制の記事で、工場の他の工程は製造業AI活用ジャーナルで扱っています。

改訂SDSの反映が遅れる事業場で、外部の相談役に頼める部分

化学物質管理者の選任と、記録票の結果・措置の欄は、外に預けられない仕事です。下書きを確かめる人がいない事業場では、AIより選任が先です。規則第12条の5は、対象物を製造し、または取り扱う事業場ごとの選任を求め、選任すべき事由が生じてから14日以内としています。記録の作成・保存・周知も、化学物質管理者に管理させる事項です。

選任が済んでいる事業場では、改訂SDSの新旧比較から始めます。判断を含まない作業ですが、見落とすと、変わる前の危険有害性の区分のまま作業が続きます。

記録票の欄の組み方や、SDSの台帳とAIの下書きのつなぎ方は、社外の人に相談してよい部分です。案内の届く宛先や反映の手順が事業場ごとにばらばらな会社なら、AI顧問のような外部の相談役と様式をそろえる形もあります。

受け取った日と記録票に反映した日の差の日数は、記録票と掲示が古いSDSのまま残っていた日数そのものです。この差が延びた月は、化学物質管理者が、案内が購買担当の受信箱で止まっていなかったかをたどり、受け取りの宛先を自分へ移します。受領から反映までの日数が、たとえば2か月(月数は化学物質管理者が決める)続けて前の月を上回らなければ、掲示の要約の下書きに進みます。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 工場長

    対象物を扱う事業場ごとに化学物質管理者が選任されているかを確かめ、いなければ選任の手続きに入る

    次へ進む目安記録票の確認欄に名前を書く人が、事業場ごとに決まった

  2. 担当 化学物質管理者

    手元に届いているSDSの改訂の案内を集め、新旧の版をAIに比べさせて、区分や保護具の変わった箇所の印を受け取る

    次へ進む目安印の有無にかかわらず全体を読み、やり直しに当たるかを案内1通ずつ決めた

  3. 担当 化学物質管理者

    改訂の案内1通ごとに、受領日と記録票への反映日を台帳の2列に控える

    次へ進む目安受領から反映までの日数が、たとえば2か月(月数は化学物質管理者が決める)続けて前の月を上回らなかったら、掲示の要約の下書きに取りかかる

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出典

  1. 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号) e-Gov法令検索(第34条の2の8・第34条の2の7・第12条の5・第577条の2第1項・第2項・第577条の2第11項・第12条の5第3項・第577条の2第5項・第577条の2第10項) デジタル庁 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.28
  2. 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号) e-Gov法令検索(第57条の3) デジタル庁 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.28
  3. 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「化学物質のリスクアセスメント実施支援 CREATE-SIMPLE」ver.3.2.1(2026.6 更新) 厚生労働省 確認日 2026.09.29

編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり

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