製造業の設備保全AIは故障履歴の検索から|そろえる5欄と止める人
朝の申し送りで製造課長が読み上げる停止時間には、夜勤の保全担当が故障履歴のExcelと紙の取扱説明書を探していた時間も入っています。直していた時間と分けて書かれていないので、探す時間がどれだけ復旧を遅らせたかは、保全責任者にも見えていません。読み終えるころには、故障履歴を探す作業をAIに任せる準備として、どの設備の記録から書き直すかを選べるようになります。

先に結論
突発停止でAIに任せるのは、同じ設備・同じ機種の過去の記録と対処を記録番号つきで並べ、取扱説明書のページと部品番号を添えるところまでです。一覧を開くのは、保全担当が運転を止めて錠と表示板を付けた後です。
並んだ候補は保全担当が全件、設備台帳の機種と製造年と照合して機種違いを外し、対処とメーカーを呼ぶかは保全責任者が決めます。運転したまま直した記録が候補に並んでも、今回の手順には採りません。
候補に役立つ記録が出るかを左右するのは、故障履歴の書き方です。設備番号は設備台帳の番号、症状は保全責任者が決めた語の一覧から選ぶ形にそろえてから渡します。
探している時間は、停止時間に紛れて見えない
復旧を遅らせている時間のうち、AIで縮められるのは故障履歴と取扱説明書を探す分です。深夜の停止では、保全担当が事務所へ戻って共有フォルダの故障履歴を開き、キャビネットから取扱説明書の紙のファイルを引き出します。探している間も、ラインは止まったままです。
朝の申し送りで製造課長が伝える停止時間には、探した分と直した分が混ざっています。探した分を保全担当が復旧のあとに別の欄へ書き分けておけば、故障履歴を書き換える前と後の分数をそのまま並べられます。
突発停止の復旧でAIに渡すのは、故障履歴を探して並べる工程
停止の一報から記録までの8工程のうち、AIに渡すのは過去の記録と取扱説明書を探して並べる2工程で、その一覧を開くのは運転を止めて錠を掛けた後です。
図の要点:停止の一報から記録までの8工程の流れ。夜勤リーダーが設備番号と症状を伝え、エラーコードを写真に残し、保全担当が運転を止めて錠と表示板を付ける。AIが同じ設備・同じ機種の過去の記録と対処を記録番号つきで並べ、取扱説明書のページと部品番号を添える。保全担当が全候補の機種と製造年を設備台帳と照合して機種違いを外し、保全責任者が対処とメーカーの手配を決め、AIの下書きを保全担当が直して故障履歴に記録する。
機種と製造年が合わない候補は、保全責任者に渡る前に外す
-
停止の一報を受ける
夜勤リーダーが設備番号と症状を伝える
人
-
エラーコードを控える
復電で消える前に写真に残す
人
-
運転を止めて錠を掛ける
保全担当が表示板を付け、製造課長に知らせる
人
-
過去の記録と対処を並べる
同じ設備・同じ機種の記録を記録番号つきで
AI
-
取扱説明書のページを添える
部品番号も候補に付ける
AI
-
候補を設備台帳と照合する
保全担当が全件の機種と製造年を確かめる
増える確認
-
対処と手配を決める
保全責任者がメーカーを呼ぶかも決める
人
-
故障履歴に記録する
AIの下書きを保全担当が直して確定する
人
図の8工程のうち、AIを入れる前には無かった仕事は6番目の照合だけです。照合で外した候補の件数を保全担当が停止ごとに日誌へ書けば、その手間が夜勤の保全担当にどれだけ乗ったかが数で見えます。ここを省いて候補をそのまま保全責任者に渡すと、機種違いの対処が判断の材料に混ざります。
深夜に保全責任者がいない工場では、対処とメーカーの手配を電話で仰ぐ相手と順番を、夜勤リーダーの連絡表に書き込みます。候補の一覧が早く出ても、判断を仰ぐ相手に電話がつながらなければ、復旧は進みません。
機種違いの対処が候補に混ざったら、保全担当が外す
候補に機種違いが混ざったら、保全担当が設備台帳で外してから保全責任者に渡します。いちばん重い失敗は、製造年の違う機種の対処をそのまま当てることです。同じ「成形機」でも製造年が違えば制御の仕組みが変わっていることがあり、旧機種の手順で操作すると別の部位を傷めるおそれがあります。
候補を並べさせるときは、同じ機種の記録と違う機種の記録を別の区画に分けさせます。ただ、区分けはAIの見立てにすぎません。同じ機種の区画に入った候補も、保全担当が記録番号から元の記録を開き、設備台帳の機種・製造年と照合します。外した候補の件数は保全日誌に残し、多い設備は症状の語か機種の欄の書き方を見直します。
故障履歴の欄は設備番号・機種・症状の語でそろえる
故障履歴は、設備番号・機種・症状の語をそろえてから渡します。同じ設備が年度によって「No.3成形機」「成形3号」「M-03」と書かれていれば、同じ設備の記録としてまとめて検索できません。
| 欄 | そろえ方 | そろっていないと |
|---|---|---|
| 設備番号 | 設備台帳の番号に統一する | 同じ設備の過去の記録が検索で出てこない |
| 機種と製造年 | 台帳の正式名と、製造年を別の欄に | 製造年の違う機種の対処が混ざる |
| 症状の語 | 異音・振動・漏れ・停止などの一覧から選ぶ | 「ガタ」と「振動」が別の症状になる |
| 対処 | どこを、何で、どれだけ | 「調整」だけでは次に使えない |
| 交換部品 | 部品台帳の部品番号で書く | 予備品の手配に結び付かない |
【説明用の架空の記入例】
設備番号
M-03(設備台帳の番号)機種と製造年
射出成形機 ○○型・2015年製症状の語
漏れ(自由記述: 型締め側のホース継手から油がにじむ)対処
継手のOリングを交換し、締め付けを確かめて再開交換部品
部品台帳の部品番号で記入
5つの欄のうち、役に立つ候補が出るかを最も左右するのは症状の語です。症状は語の一覧から1つ選び、詳しい様子は自由記述の欄に書き分けます。
一覧を決めるのは保全責任者です。保全担当が増やしたい語は、たとえば月に1回まとめて足すというように、足す時期も保全責任者が決めておきます。語が勝手に増えると、「ガタ」と「振動」のような同じ症状の別名がまた生まれます。
故障履歴が保全担当の個人のノートと記憶にしか無い工場では、検索の仕組みより先に、過去の記録(たとえば1年分)をExcelの1枚に集める作業が来ます。1枚に集めて設備番号をそろえるだけでも、保全担当が症状の欄を順に読んでいく手間は軽くなります。保全システムで故障履歴を設備番号つきで持っている工場なら、集め直しは要りません。
同じ機種が何台あるかで、役に立つ候補の出やすさが変わる
同じ機種の成形機が10台並ぶ職場なら、1台の故障履歴が残りの9台の候補にもなり、記録が少ないうちから役に立つ候補が出やすくなります。専用機が1機種1台ずつの工場では、同じ機種の記録がそもそも少なく、候補に似た別機種が混ざります。
1機種1台の工場では、検索の範囲を同じ設備番号の記録に絞ります。主な用途は、取扱説明書の該当ページと部品番号を探すことです。過去の対処が少ない分、メーカーの手順書に早く行き着くほうが復旧は早いからです。
突発停止が年に数回しか起きない工場は、候補を並べる仕組みは向きません。故障履歴の欄をそろえるだけで、探す手間は足ります。
運転の停止と施錠は候補にかかわらず人が決める
労働安全衛生規則第107条第1項は、機械の掃除・給油・検査・修理・調整の作業で労働者に危険を及ぼすおそれがあれば、機械の運転を止めるよう事業者に求めます。運転中に作業しなければならない場合で、危険な箇所に覆いを設けるなどの措置を講じたときは除かれます。
第2項は、運転を止めた機械の起動装置に錠を掛け、表示板を取り付けるなど、作業する人以外が運転できないようにする措置を講じるよう、同じく事業者に求めています。どの設備で誰が錠を掛け、表示板に何を書くかは、社内の保全規程に書いておきます。
止めずに近づいたときの重さは、統計に表れています。令和7年に製造業の労働災害で亡くなった115人のうち、47人は事故の型が「はさまれ・巻き込まれ」でした。休業4日以上の死傷者でも、製造業の26,371人のうち5,992人が同じ型です。
保全作業に限った数ではありませんが、止めて錠を掛ける工程を省けない理由は読み取れます。AIが並べた過去の対処に、運転したまま覗いて直した記録が混ざっていても、今回の手順には採りません。
定期自主検査の記録と並べて保全計画に戻す
突発の故障履歴と定期自主検査の記録を同じ設備番号でつなげば、保全計画の見直しで2つを同じ行に並べられます。労働安全衛生法第45条は、政令で定める機械等について、定期に自主検査を行い、その結果を記録しておくよう事業者に義務づけています。自社の設備が対象かどうかは、機械の種類ごとに政令と省令で確かめるのが確実です。
点検では異常なしなのに突発で何度も止まる設備は、点検の項目か周期がその設備の壊れ方に合っていない疑いがあります。停止の多い設備と点検の結果を並べた一覧はAIに作らせても、周期を詰めるか、部品を先に替えるか、更新の投資に回すかは保全責任者と工場長が決めます。
センサーの値から故障の兆しをつかむ予知保全を検討するときも、学ばせる材料になるのは同じ設備番号でそろった故障履歴です。点検や部品交換で止める日は、標準工数を実績で直して負荷表を積む生産計画の側にも、設備の動かない日として渡ります。保全の記事は設備保全で、見積から品質までの業務は製造業AI活用の業務一覧でたどれます。
故障履歴の書き換えは保全が受け持ち、検索の仕組みは別に見積もる
故障履歴を台帳の番号と語の一覧で書き換える仕事は、設備と症状を知る保全担当と保全責任者にしかできません。書き換える最初の1台は、保全責任者が決めた期間(たとえば1か月)で探した分の合計がいちばん長い設備です。探す時間の長い設備ほど、欄をそろえた効果が停止1回あたりの分数に出ます。停止の回数だけで選ぶと、症状の語が決まっていて探す手間の小さい設備が先に来て、保全責任者が書き換えの効果を読み取りにくくなります。
書き換えた記録と取扱説明書のページを停止のたびに検索できる仕組みは、別に見積もる作り込みです。取扱説明書が紙のファイルのままで、設備台帳とも別に持っている工場ほど、つなぐ手間が増えます。そこは保全の外に見積もりを取る部分で、AIエージェント開発のような開発の支援が比べる相手です。
書き換え後の探した分の平均が、書き換え前の同じ長さの期間より縮まなければ、保全担当が機種違いで外した候補の件数を日誌で数え直し、件数の多い設備から症状の語と機種の欄の書き方を直します。故障履歴に書かれていない勘所は、ベテランの段取りを標準書に起こす聞き取りの仕方と同じ手順で聞き取れます。縮んだ設備と同じ機種が残っていれば、保全責任者はその機種の残りの設備も書き換えに回します。
明日から始める3ステップ
担当 保全責任者
保全日誌に「探した分」の欄を足し、夜勤を含むすべての直の保全担当に、復旧のあと探した分数を書き入れてもらう。数える期間(たとえば1か月)は保全責任者が決める
次へ進む目安決めた期間の停止すべてに探した分が入り、合計の長い設備が1台に決まった
担当 保全担当
決まった1台の過去の故障履歴(たとえば1年分)で、設備番号を設備台帳の番号へ、症状を語の一覧の言葉へ書き換える
次へ進む目安その設備の記録が、どれも台帳の番号と一覧の語で検索できる
担当 保全担当
書き換えた記録をAIに渡し、次の停止から、探した分と機種違いで外した候補の件数を停止のたびに日誌へ残す
次へ進む目安書き換え後の探した分の平均を、書き換え前と同じ長さの期間と並べ、同じ機種の残りの設備も書き換えるかを保全責任者が決めた
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一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)(第107条) デジタル庁 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.29
- 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)(第45条) デジタル庁 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.29
- 厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」(令和8年5月)(別表3・別表4) 厚生労働省 確認日 2026.09.29
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