派遣のスタッフフォローで面談メモをAIに振り分けさせる行き先と決める人
配属や契約更新が重なる月は、フォロー面談のメモの打ち込みが翌週にずれ込みます。聞いた話のどれを派遣元管理台帳に書き、どれを社内の記録にとどめ、どれなら派遣先に伝えてよいかが担当ごとに違うと、AIに整理させても置き場所は決まりません。AIに任せる作業と、苦情の扱いや派遣先へ伝える範囲を誰が決めるかを、労働者派遣法と派遣元指針の条文に沿ってまとめました。

先に結論
フォロー面談でAIに任せるのは、前回の懸念と勤怠から聞くことを並べる準備と、面談メモを面談記録の欄へ振り分けて苦情に当たりそうな文に印を付ける作業です。振り分け先の欄は、台帳・社内の面談記録・派遣先への連絡の3行で面談の前に決めておきます。
記録はコーディネーターが面談の当日中にメモの原本と並べて確定し、印の付いた文を苦情として扱うかは派遣元責任者がその週のうちに決めます。派遣先へ伝える範囲を決めるのも派遣元責任者で、連絡文の下書きには体調と家庭の欄を渡しません。
後で苦情と分かった文に印が付いていなかった月は、印を付ける基準の文を書き直してAIに渡し直します。
振り分けをAIに回せるのは、話の行き先が決まってから
面談メモの振り分けをAIに回せるのは、聞いた話をどこへ書くかの欄が面談の前に決まっているときです。面談で聞いた話は、派遣元管理台帳に書く話、社内の面談記録にとどめる話、派遣先に伝えてよい話に分かれ、欄が無ければAIに振り分けさせても置き場所が定まりません。
| 行き先 | 書く話 | 確定する人 |
|---|---|---|
| 派遣元管理台帳 | 苦情の処理・就業の希望・相談の日と内容 | 派遣元責任者(写すのはコーディネーター) |
| 社内の面談記録 | 体調・家庭の事情、伝えないでと言われた話 | コーディネーター(伝える範囲は派遣元責任者) |
| 派遣先への連絡 | 通知の決まりがある事項と、業務をこなす力に関わる話 | 派遣元責任者 |
表の3行は面談の前に決めておき、AIには振り分け先の欄の名前として渡します。どの行にも収まらない話は、AIに振り分けさせずコーディネーターが読み、派遣元責任者に回します。
台帳に書く事項は、労働者派遣法の第37条第1項に並んでいます。フォローの面談と重なるのは、講じた雇用安定措置(第9号)、教育訓練の日時と内容(第10号)、派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理(第11号)です。施行規則第31条は、雇用安定措置について本人から聴取した内容と、職業生活の設計の相談などの援助を行った日と内容を加えています。
派遣先へ伝えてよい情報の範囲は、派遣元が守る措置を定めた厚生労働省の指針(派遣元指針)の第2の11が絞っています。派遣元が派遣先に渡せる本人の情報は、法第35条第1項で派遣先に通知する事項を除けば、業務遂行能力に関する情報までです。本人の同意がある場合などを除き、派遣先への行にはこの範囲の話だけを残します。
通院の話が病歴に触れれば、個人情報保護法でいう要配慮個人情報です。要配慮個人情報は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないと取得できません(第2条第3項・第20条第2項)。社内の面談記録に書く前に、同意を確かめます。台帳を月ごとにどう点検するかは、派遣元管理台帳の月次点検で記載漏れを判定する担当につながります。
スタッフフォローの面談は時期ごとに材料が違う
フォローの面談は、配属前から契約更新の前まで、時期によって聞くことと手元に置く材料が変わります。契約更新の前だけは、材料を並べる順が勤怠ではなく契約終了日になります。
図の要点:配属前から契約更新の前までのフォロー面談の時間の流れ。配属前は明示書を本人と読み合わせ、AIが始業・休憩・持ち物を案内文にする。就業初日は始業の前後に様子を聞き、AIが連絡文を下書きして未返信を知らせる。1週目は仕事が明示書どおりかを聞き、AIが遅刻・早退の続く人を打刻の記録から抜き出す。毎月は面談シートで定期の面談をし、AIが前回の懸念と未回答の事項を並べる。面談の当日はコーディネーターが原本と並べて確定し、苦情の印は派遣元責任者へ回す。契約更新の前は更新の意向と派遣後の希望を聞き、AIが終了日の近い順に並べる。
時期ごとにAIが並べる材料が変わり、面談で聞くのはコーディネーター
-
配属前
明示書を本人と読み合わせる。AIは始業・休憩・持ち物を案内文に -
就業初日
始業の前後に様子を聞く。AIは連絡文を下書きし、未返信を知らせる -
1週目
仕事が明示書どおりかを聞く。AIは遅刻・早退の続く人を打刻の記録から抜き出す -
毎月
面談シートで定期の面談。AIは前回の懸念と未回答の事項を並べる -
面談の当日
コーディネーターが原本と並べて確定し、苦情の印は派遣元責任者へ -
契約更新の前
更新の意向と派遣後の希望を聞く。AIは終了日の近い順に並べる
図に並べた準備を先にAIに回すのは、面談の日から記録の確定までに日が空いた記録の多い月です。たとえば確定まで1週間を超えた記録の数で見ます(何日を区切りにするかは、コーディネーター責任者が決めます)。面談の後の打ち込みが翌週に押し出されると、派遣管理システムの懸念の欄が「特になし」で埋まり、次の面談で聞くことが減っていきます。
令和6年度の労働者派遣事業報告の集計では、派遣の実績があった事業所1か所あたりの派遣労働者は、無期雇用27.4人、有期雇用38.9人です。1人に月1回会うなら、1事業所で月に60件を超える面談記録ができる計算になるので、打ち込みの遅れで記録が薄くなっている支店から回します。
配属や更新が重なる月は、ここに初日と1週目の連絡が上乗せされます。面談の件数が少ない支店でも、面談の翌週まで記録が打ち込まれていないなら、準備より先に、面談の当日中に記録を確定する作業を整えます。
面談メモを記録の欄に振り分ける作業をAIに渡す
AIに渡すのは、面談当日の手書きメモか通話のメモ、面談記録の欄名の一覧、前回の確定済みの記録です。発言を欄へ振り分け、発言に無い欄は空のまま返させます。苦情や就業の希望に当たりそうな文には印を付け、原文をそのまま添えさせます。
本人の気持ちを推し量る語を足すことと、印を付けた文を短くまとめることはさせません。録音を文字に起こして使うなら、録音してよいかを面談の最初に本人に聞き、断られたらメモだけで進めます。
戻ってきた記録は、コーディネーターが面談の当日中に、派遣管理システムの面談記録の画面でメモの原本と並べて確定します。印の付いた文は、派遣元責任者がその週のうちに読み、苦情として扱うかを決めます。
面談メモを外部のサービスに入れる前に契約で見ること
面談メモを外部の生成AIサービスに入れるなら、事業者が記録を取り扱うかどうかを先に契約で見ます。契約に取り扱わない旨の定めがあり、記録へのアクセスも適切に絞られていれば、そもそも第三者への提供になりません(個人情報保護委員会のQ&A 7-53)。
事業者が記録を取り扱う契約なら、派遣元の利用目的の範囲で任せる委託と言えるかを確かめます。言えれば委託先の監督(第25条)が派遣元に残り、言えなければ第三者提供に当たるので、本人の同意(第27条)を得てから入れます。
国外の事業者なら委託の形でも第28条を確かめ、契約で読む項目は履歴書や面談記録を入れる前に確かめる8項目に沿って見ます。面談記録に固有の点として、記録を開ける担当の範囲も設定で絞っておきます。外部のサービスに入れる場合は、メモのうち通院や家庭の事情の部分をコーディネーターが先に消し、その欄は自分で書きます。
ただし、面談の記録が担当ごとの手帳やExcelに散っている支店では、AIに振り分けさせても行き先の欄がありません。記録の置き場所を派遣管理システムの面談欄に寄せ、欄が多すぎて担当が開かないなら、行き先ごとに欄を削るところから直します。
雇用安定措置の希望はメールで先に集める
更新の打診が年度末に集中する支店なら、就業の希望を聞くメールをAIに下書きさせ、面談の前に返事を集めておきます。派遣元指針の第2の8が、希望を把握する機会として、更新の際の面談などと並べて電子メールの活用を挙げているからです。
同じ組織単位の業務に続けて1年以上働く見込みのある有期雇用の派遣労働者などには、派遣元に雇用安定措置を講じる努力義務がかかります。3年間働く見込みなら義務になる(法第30条第1項・第2項)ので、メールで聞く相手は契約終了日と通算の見込みで決めます。
措置を講じるときは本人が希望する措置の内容を聴取し(施行規則第25条の2第3項)、聴取した内容は台帳に残す事項です。メールで聞くのは、派遣が終わった後も働き続けたいかと、派遣先での直接雇用、別の派遣先の紹介、派遣元で派遣以外の無期雇用のどれを望むかです。
返事の来ない人と、答えが欄に収まらない人には、コーディネーターが電話をかけ、聴取した日と内容を台帳の欄に写します。メールの返事も電話の答えも、写すのは本人の言葉のままです。
派遣労働者の求めに応じた職業生活の設計の相談も、派遣元の義務です(法第30条の2第2項)。相談の求めは面談の中でも出てくるので、希望の欄とは別に記録します。毎月の面談で「資格を取りたい」という話が出たら、相談の求めに当たるかは派遣元責任者が決め、当たるなら援助の日と内容をコーディネーターが台帳に写します。
残業の不満は、苦情として台帳に載せるほうで扱う
就業条件明示書と違う業務や時間外の指示を示す発言は、本人が強く求めていなくても、苦情として処理を始めるほうで扱います。職場の人間関係の愚痴は、中身次第で相談にとどまります。
派遣元指針の第2の3は、苦情の申し出を受けた年月日、苦情の内容、処理の状況を、申し出を受けたときと処理に当たったときの都度、台帳に書くよう求めています。申し出を理由とする不利益な取扱いも禁じているので、苦情として扱うと決めた話は、本人の評価の欄とは分けて残します。
派遣先が派遣労働者から苦情を受けたときも、その内容を派遣元に通知することになっています(法第40条第1項)。派遣先から届いた苦情と面談で聞いた苦情は、同じ台帳の欄に集まります。
たとえば配属3週目の電話で「残業の頼まれ方が、最初に聞いた話と少し違って」と言われたら、苦情として処理を始めるほうに入ります。どの発言から載せるかの細部は、労働者派遣契約で定めた苦情処理の方法と支店の基準に従います。
AIの印は、この基準で読む文を拾い出すためのものです。基準に合わない言い方をした人の申し出は、印が付かないまま残ることがあります。印の付かなかった文も、コーディネーターが当日中の確定でメモの原本と並べて読みます。
「派遣先には言わないで」と添えられたとき
本人が苦情を話したうえで「派遣先には言わないでほしい」と添えたときは、派遣元責任者が本人と話し、派遣先に伝える範囲を本人の了解のとおりに決めます。決めた扱いと理由は、社内の面談記録に残します。
処理を始めれば派遣先との調整が要って本人の望みとぶつかり、台帳に載せずにおけば処理の経緯が残りません。どちらを選ぶかは申し出の中身と本人の意向で逆になるので、AIの印にも条文にも決められません。
本人が派遣先に知られたくない話が伝わってしまう失敗は、AIが下書きする派遣先への連絡文で起きやすくなります。更新面談で本人が「通院があるので、残業は週2日までにしたい」と話し、AIが連絡文に「通院のため」と理由を添えて下書きし、そのまま送られる形です。
連絡文の下書きには、面談記録のうち業務と就業条件の欄だけを渡します。体調と家庭の欄を外しておけば、派遣先に伝わるのは「残業は週2日まで」という条件だけになります。
本人の了解が名前を出さない範囲にとどまっても、打てる手は残ります。明示書と違う残業の指示が続いているなら、派遣元指針の第2の5がいう派遣先の巡回などで、就業の状況が契約どおりかを確かめられます。特定の人の申し出としてではなく、職場の時間外の指示のしかたとして、派遣先の指揮命令者と確かめます。
本人には、派遣先にどこまで伝えたかと、この先も申し出てよいことを、面談の最後に伝えます。了解の範囲が変わったら、そのつど面談記録の同じ行に日付を足します。
後で苦情と分かった文を、月末に面談記録から数える
振り分けがうまくいっているかは、印の付かなかった文から後で苦情と分かった件数で確かめます。1件でも出た月は、その発言が基準の文のどこから外れていたかを派遣元責任者が読み、印を付ける基準の文を書き直してAIに渡し直します。拾い漏れが出ない月が続く間は、今の基準の文のまま振り分けを続けます。
行き先の表の社内の面談記録の行にある「伝えないでと言われた話」は、面談の場でコーディネーターが扱いに迷いやすい話です。この話を誰が本人と確かめるかが派遣元責任者の言葉で書き足してあれば、ほかの話の振り分けも同じ表で回せます。
面談から記録確定までの日数で、外部に任せる作業の範囲が決まる
外部に任せる作業の範囲は、支店の面談記録で面談の日と確定の日を並べると見えてきます。確定がおおむね面談の当日に収まっている支店なら、頼むのは印の基準の文の見直しくらいで、派遣元責任者とコーディネーター責任者だけで振り分けを回せます。
確定が翌週にずれる記録が増え続けている支店では、メモを書く手が追いついていません。面談メモを派遣管理システムの面談記録へ振り分けて戻す仕組みづくりは、AIエージェント開発に頼めます。行き先の表と基準の文を毎月見直す相手には、AI顧問が合います。
外部を入れた後も、効果は同じ2つの日付の差で確かめます。差が縮まらない月は、仕組みより先に、当日中に記録を確定する作業がコーディネーターの1日の予定に入っているかへ戻ります。
明日から始める3ステップ
担当 派遣元責任者
行き先の表の社内の面談記録の行に、「本人が派遣先に伝えないでと言った話」は誰が本人と話して伝える範囲を決めるかを1行で書き足す
次へ進む目安面談の場で迷ったコーディネーターが、表のその1行を見て次に誰へ回すかが分かる
担当 担当コーディネーター
毎月の面談の前日に、前回の懸念と未回答の事項、遅刻・早退の記録をAIに並べさせ、面談の当日中に記録をメモの原本と並べて確定する
次へ進む目安その月の面談記録が、どれも面談の当日の日付で確定している
担当 派遣元責任者
月末に、後で苦情と分かった件のうち印の付かなかった件を面談記録から探し出し、件数を支店の月次の記録に控える
次へ進む目安拾い漏れの件数が月ごとに記録へ載り、1件でも出た月は、書き直した印の基準の文をAIに渡し直してある
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出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)(第37条第1項・第30条第1項・第2項・第30条の2第2項・第40条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第20号)(第31条第10号・第11号・第25条の2第3項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第137号)(第2の3・第2の8・第2の11・第2の5) 厚生労働省 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第2条第3項・第20条第2項・第25条・第27条第1項・第28条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(表2) 厚生労働省 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-1(外国にある第三者への委託) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.28
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