求人担当の欠員と引き継ぎ表|企業ごとの約束を残してAIへ
求人担当が1人抜けた後、下書きをAIに任せれば公開待ちは片づくと考えて導入を急ぐ会社があります。けれども、企業ごとの書き方の約束や前回直された箇所を抜けた担当しか覚えておらず、どこにも書き残されていなければ、下書きが速くなっても同じ赤字が戻ってきます。要件シートの受け取りから公開までのうち、どこをAIに回し、回す前に何を表と書式に書き出すかを取り上げます。

先に結論
AIに回すのは、採用要件シートから求人票の下書きを起こす作業と、その下書きを媒体ごとの文字数と項目に詰め直す作業の2つです。ただし回す前に、企業ごとの書き方の約束と過去の修正指摘を1社1行にまとめた引き継ぎ表と、業務の内容・賃金・労働時間と休日・就業場所を必須欄にした支店からの依頼書式を作ります。この2つが無いまま回すと、AIの下書きは企業からの赤字になって戻ってきます。
要件シートに無い値をAIが埋めた求人は公開待ちの一覧から外し、RAが企業に確かめるまで止めます。掲載する条件を確定するのは求人担当、企業に何を確かめるかを決めるのはRAで、AIを入れた後もこの2人の仕事です。欠員の補充が近いうちに決まりそうなら、AIを入れるより採用を待つほうが早く片づきます。
公開待ちは担当1人の手作業の量で決まっている
公開できる求人の件数は、残った担当が1日に書ける本数で頭打ちになっています。依頼の受付から公開まで、作成・整形・確認の3つが同じ人の手作業で、どれも他の人やAIに渡す形になっていないからです。
仮の場面で見てみます。求人担当2人のうち1人が抜けて数か月がたち、残った担当は日中に支店と企業の電話を受け、夕方から求人票を書いています。支店から届く依頼メールには「給与は応相談」「休日は企業に確認中」とあり、そのたびに給与の幅を聞き返します。
「この会社は前回どこを直された?」は、抜けた担当しか知りません。この状態で下書きだけをAIに任せると、AIは前回この企業に削られた表現も、賃金の書き方の決まりも知らないまま文を作ります。担当が頭の中で補っていた分が、企業からの赤字(修正の指示)になって戻ってきます。
市場の側は細っていません。令和7年6月1日現在の派遣労働者数は速報で約201万人(前年より5.0%増)、令和6年度の有料職業紹介事業の常用就職件数は速報で888,993件でした。担当の人数が戻らないまま求人票の本数は減らない、という前提で作業の分け方を変えることになります。
人を増やす手が無いわけではありません。欠員の補充が近いうちに決まりそうで、公開待ちが一時的に膨らんでいるだけなら、採用を待つほうが公開待ちは早く減ります。補充の見込みが立たず、夕方からの作成が続いているなら、下書きと整形をAIに回し、その前に材料をそろえる時期です。
要件シートから公開まで、どの工程で止まるか?
手が止まるのは、依頼の受付で空欄を聞き直すときと、企業への確認で同じ赤字を受けるときです。AIが入るのは、その間にある下書きと整形の2つの工程です。
詰まりの元は、AIが入る下書きと整形の前後にある
-
依頼の受付
求人担当が依頼メールと要件シートを読む。空欄は聞き直し
人
-
求人票の下書き
要件シートと引き継ぎ表の値を欄へ写し、仕事内容を文にする
AI
-
媒体別の整形
媒体の管理画面ごとの文字数と項目に詰め直す
AI
-
企業への確認
RAが下書きを送り、返ってきた赤字を反映する
人
-
公開
求人担当が表示を見て掲載する
人
失敗したときに起きることは工程ごとに違います。受付で空欄の聞き直しが出れば、求人管理システムへの登録が止まり、公開が数日遅れます。下書きで企業ごとの約束が抜ければ、誤った条件のまま掲載されるおそれがあります。
整形では、字数を詰めるときに固定残業代の記載が落ちることがあります。確認で同じ赤字を何度も受ければ企業の信頼を損ね、夕方に集中する公開では表示の誤りが残りやすくなります。
AIに下書きを任せても、受付の聞き直しと確認の繰り返しが変わらなければ、公開までの待ちはほとんど縮みません。この2つの工程の手戻りを減らすのが、後で取り上げる依頼書式と引き継ぎ表です。求人を聞き取ってから掲載を止めるまでの前後の業務は求人獲得・整理の記事一覧で、候補者対応や派遣管理を含めた全体は人材・派遣の業務別の記事一覧で読めます。
AIに任せるのは、値を写して詰める作業まで
AIに任せるのは、要件シートと引き継ぎ表にある値を求人票の欄へ写し、文にし、媒体の字数に詰めるところまでです。値そのものを新しく作らせることはしません。照合する相手は、受付が依頼書式、下書きが要件シート、整形が媒体の管理画面、確認が引き継ぎ表です。
| 工程 | AIが出す物 | 担当が決める物 |
|---|---|---|
| 依頼の受付 | 必須欄の空欄の一覧 | 差し戻すか受けるか(求人担当) |
| 下書き | 欄を埋めた求人票の案 | 掲載する条件(求人担当) |
| 媒体別の整形 | 媒体ごとの原稿の案 | 削ってよい語(求人担当) |
| 企業への確認 | 過去の修正指摘に当たる表現の一覧 | 企業に聞く事項(RA) |
整形で危ないのは、字数を詰めるときに写した値が縮むことです。「月給25万円〜30万円(固定残業代20時間分を含む)」が「月給25万円〜」だけになることがあり、読む側は違和感を持たないので見落としやすくなります。整形後の原稿は、下書きに関わっていない担当が、賃金・労働時間・就業場所の3欄を要件シートの値と1つずつ見比べます。
要件シートに無い値をAIが埋めた場合は、その求人を公開待ちの一覧から外し、RAに企業への確認を頼みます。どの欄をどの資料と照合するか、充足した求人をいつ止めるかは、公開前の表示チェックと充足した求人の止め方の手順がそのまま使えます。同じ求人の重複を見つけた場合も、統合するか分けて残すかは担当が決めます。
AIに回した後で担当の手から消えるのは、聞き直しと一からの書き起こしです。代わりに、原本と突き合わせる確認が増えます。この確認は慣れるまで1件ごとに時間がかかるので、後で測る作成時間にはこの時間も含めます。
入れない方がよい条件もあります。履歴書や面談記録と同じアカウントで求人票の下書きを回すことになる場合で、外部に送ってよい欄を決めていない間は、AIに回すのを待ちます。どの欄なら送ってよいかは、生成AIのアカウントと入れてよい欄の選び方の欄ごとの表で先に決めます。
支店からの依頼書式で必須欄にする4つの明示事項
支店からの依頼書式では、明示しなければならない労働条件のうち、業務の内容・賃金・労働時間と休日・就業場所の4つを必須欄にし、空いたままの依頼は受け取らずに返します。4欄は明示事項のすべてではないので、先に法律と施行規則の定めを確かめておきます。
職業紹介事業者と労働者の募集を行う者は、求職者などに労働条件を明示しなければなりません(職業安定法第5条の3第1項)。明示するのは、従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件です。求人者も、求人の申込みに当たって職業紹介事業者に同じく明示しなければなりません(同条第2項)。
賃金と労働時間などの事項は、厚生労働省令で定める方法(書面の交付など)で明示します(同条第4項)。省令が定める事項の一覧は施行規則第4条の2第3項で、業務の内容と就業の場所(どちらも変更の範囲を含む)、労働契約の期間、試みの使用期間、有期労働契約の更新の基準が挙がっています。
続けて、始業と終業の時刻・所定労働時間を超える労働の有無・休憩時間と休日、賃金の額、健康保険などの適用、雇用しようとする者の名称、派遣労働者として雇用する場合はその旨、受動喫煙を防止する措置があります。このうち支店に書いてもらう欄と要件シートから写す欄を分けておくと、受付で差し戻すかどうかの基準がぶれません。
広告などで求人の情報を出すときは、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはなりません(第5条の4第1項)。労働者を募集する者と、その募集を受託した者は、広告などで出す募集の情報を正確で最新の内容に保たなければなりません(同条第2項)。職業紹介事業者には、求人の情報を正確で最新に保つための措置を取る義務があります(同条第3項)。
依頼書式で必須欄にするのは、法が名指しする業務の内容・賃金・労働時間に、施行規則にある就業の場所と休日を足した次の4つです。
業務の内容
配属先で実際にする作業と、変更の範囲賃金
賃金の額の下限と上限。固定残業代があれば、その時間と額も同じ欄に書いてもらう労働時間・休日
始業と終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日就業場所
所在地と変更の範囲
契約期間・試みの使用期間・更新の基準・社会保険の適用などの残りの明示事項は、要件シートから写し、要件シートに無ければRAが企業に確かめます。
4欄のどれかが空いた依頼は、求人担当が受け取らず、AIが出した空欄の一覧を付けて支店に返します。空欄をAIに推測で埋めさせると、それがそのまま誤解を生じさせる表示につながります。支店の営業が「企業に確認中」と書いてきた欄も空欄として扱い、受け取るのは値が入ってからです。
任意欄には、募集の背景、配属先の一日の流れ、企業が強調してほしい点を置きます。ここは空でも受け付け、下書きの工程で担当が補います。派遣会社が自社で雇用する派遣スタッフを募集する依頼では、就業条件の資料が社内にあるので、必須欄の値は支店ではなく派遣管理システムから写すほうが早く済みます。
媒体ごとの原稿の作り分けと外注先への依頼書は、求人原稿の内製と外注の比べ方に、原稿の欄を二つに割った形でまとめてあります。賃金の幅や固定残業代が見出しで崩れる例も、そちらで取り上げています。
企業ごとの約束を1社1行に書き出す引き継ぎ表
引き継ぎ表は、抜けた担当の頭の中にあった企業ごとの約束を、1社1行で書き出した表です。AIに下書きさせるときは、要件シートと一緒にこの行を渡します。1社分の行を縦に並べると、次のようになります。
【説明用の架空の記入例】
| 欄 | 記入例 | 書く人 |
|---|---|---|
| 企業名 | A社 | 求人担当 |
| 書き方の約束 | 社名は正式名称で書く。賃金は月給の幅で書く | 求人担当 |
| 確認先と経路 | 人事課長にメール。返事が無ければRA経由で電話 | RA |
| 過去の修正指摘 | 「アットホームな職場」を削除。残業時間は月平均で書く | 赤字を受けた求人担当 |
| 最終更新者と更新日 | 更新した担当の名前と日付 | 更新した担当 |
書き方の約束は、企業が一度でも指定した表記を、指定された言葉のまま残します。確認先は、誰に・どの経路で送れば返事が早いかまで書きます。人事担当が替わった企業でこの欄が古いままだと、下書きを送っても確認の返事が戻ってきません。
企業からの修正回数を減らす中心は、過去の修正指摘の欄です。赤字が返ってきたら、公開の前に担当がこの欄へ1行足します。AIに赤字を要約させて入れる場合も、入れる前に担当が読みます。次の下書きでは、AIがこの欄と下書きを突き合わせ、同じ指摘に当たる表現を一覧で返します。
置き場所は、求人管理システムの企業情報に項目があればそこに、項目が無ければ全社で開ける1枚のExcelにまとめます。求人ごとのファイルに分けると、同じ企業の2本目の求人で前の指摘が引き継がれません。退職や異動のときは、この表の行を読み合わせる時間を取れば引き継ぎになります。
導入前と導入後で比べる3つの数
表とAIが効果を出しているかは、AIを入れる前に同じ測り方で取った値と比べないと分かりません。入れる前の期間(たとえば2週間。何週分を取るかは、依頼の件数を見て求人担当が決めます)に、次の3つを求人管理システムの備考欄か共有の表に残します。
1件の作成時間は、依頼を受け付けてから企業へ確認に出すまでの時間で取ります。書いている時間だけを測ると、聞き直しで待った時間が抜けてしまいます。企業からの修正回数は1件ごとに赤字が返ってきた回数で、公開待ちは件数と、一覧で最も古い依頼の受付からの日数を週に1回見ます。
削れた時間は、導入前の1件の作成時間から導入後の1件の作成時間を引き、月の件数を掛けて出します。導入後に増えた、要件シートと並べて見る確認の時間は、導入後の作成時間の側に含めます。
導入後も同じ期間で取り直し、修正回数と最も古い依頼の日数がどちらも導入前より減っていれば、表に載せる企業を広げて続けます。作成時間だけが縮んで修正回数が減らないなら、下書きは速くなったのに引き継ぎ表が使われていないので、先に表の側を直します。最も古い日数だけが減らないなら、受付で空欄の差し戻しが守られているかを見直します。
引き継ぎ表は社内で書き、媒体への貼り直しは外に頼める
使う求人媒体が多い会社では、整形をAIに回した後も、できた原稿を媒体の管理画面ごとに貼り付け、項目を選び直す作業が求人担当に残ります。公開待ちの件数が減っても、公開を決めてから各媒体に載るまでの時間が縮まないなら、残りの詰まりはこの貼り直しです。
求人管理システムに登録した求人から媒体ごとの原稿を作り、変更や停止を各媒体へ反映させる仕組みは、システムどうしをつなぐ作業になります。残った担当が日中の電話の合間に組むより、外部の開発に頼むほうが早く済みます。
一方で、引き継ぎ表の行は外部に頼んでも書いてもらえません。企業が指定した表記や、どの赤字が何回返ってきたかを知っているのは、求人担当とRAだけだからです。
企業から完成した求人票が届く取引が中心の会社は、下書きの工程がもともと軽く、AIに回して縮むのは整形だけです。この場合は整形から入れるほうが担当の手が早く空き、外に頼むかどうかも、媒体への貼り直しにかかる時間だけを見て決められます。
明日から始める3ステップ
担当 求人担当
公開待ちの依頼を並べ、業務の内容・賃金・労働時間と休日・就業場所の4欄のどれが空いているかを数え、4欄を必須にした依頼書式を支店に配る
次へ進む目安空欄のある依頼が差し戻しの一覧に残り、次の依頼から4欄のそろった書式で届き始めた
担当 求人担当とRA
公開待ちにある求人の企業を1社1行に並べ、書き方の約束・確認先と経路・過去の修正指摘・最終更新者と更新日を、残った担当とRAで読み合わせて埋める
次へ進む目安公開待ちの求人の企業がすべて、引き継ぎ表に1行ずつ載った
担当 事業部長
要件シートと引き継ぎ表の行をAIに渡して下書きと媒体別の原稿を作らせ、1件の作成時間・企業からの修正回数・公開待ちの件数と最も古い日数を、導入前と同じ測り方で取る
次へ進む目安導入前と導入後の3つの数が1つの表に並び、続けるか表を直すかを事業部長が決めた
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出典
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)(第5条の3第1項・第2項・第4項・第5条の4第1項・第5条の4第3項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.27
- 厚生労働省「労働者派遣事業の令和7年6月1日現在の状況(速報)」厚生労働省 確認日 2026.09.27
- 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」厚生労働省 確認日 2026.09.27
- 職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)(第4条の2第3項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.08
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