求人原稿は生成AIで内製か外注か|外注しても残る照合の手間を含めて比べる
読者として想定しているのは、外注している求人原稿を生成AIで社内に戻すかどうか検討している、人材紹介・派遣会社の求人部門の責任者と求人担当です。
外注先との契約を続けるか、求人原稿を生成AIで社内に戻すかを決める場面で、手元の数字は1本ごとの委託料と生成AIサービスの月額料金くらいです。この2つだけを比べると、戻ってきた原稿を採用要件シートと照合する担当の手間が、どちらの側にも入りません。照合の手間を含めた比べ方と取引の形ごとの向き不向きを、職業安定法と厚生労働省のQ&Aをもとにまとめました。

先に結論
内製か外注かは、委託料と月額料金の差ではなく、取引の形で決めます。RAが商談で要件を聞き取る取引が中心なら内製に、企業が完成した求人票を渡す取引が中心なら外注に寄せ、本数が繁忙月だけ増える部門は繁忙月の書く欄だけを外注に出します。要件シートの行が空いたまま、原稿を書いていない照合の担当も置けない部門は、生成AIを入れる前に要件シートの行を足します。
こう決めるのは、採用要件シートの値をそのまま写す欄の照合が、外注しても人材会社に残るからです。写す欄を1欄ずつ要件シートと照合するのは原稿を書いていない担当で、外注で減らせるのは書く欄の手間と外注先とのやりとりだけです。生成AIに任せるのは、写す欄への値の転記と、見出しや一日の様子など書く欄の案出しまでです。
表示の義務は、原稿を書いた制作会社にかからない
求人原稿の表示の義務は、原稿を書いた制作会社や生成AIではなく、条文が挙げる事業者の側にかかります。そのため外注に出しても、採用要件シートとの照合は人材会社の中に残ります。
職業安定法第5条の4第1項は、求人や労働者の募集の情報を広告などで出すとき、虚偽の表示と誤解を生じさせる表示を禁じています。この条文が義務を課している相手は、職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集情報等提供事業を行う者などです。外注先から戻った原稿も、原稿を書いていない求人部門の担当が採用要件シートと並べて確かめます。
外から戻った原稿は、どの値をどの資料から取ったかが見えません。そのぶん1欄ずつ突き合わせる手間が、社内で書いた原稿よりかえって増えることもあります。
内製に切り替えて減るのは、書く欄の手間と外注先とのやりとりです。生成AIサービスの月額料金は、GoogleのWorkspaceのBusiness Standardで1人1,600円(税別)です。ChatGPTのBusinessの標準シートは、月額課金で3,850円です。
この月額料金と比べる相手は1本ごとの委託料です。照合の手間は外注の側の費用にも必ず入れ、社内で書く原稿より重くなる分も見込んで比べます。
求人原稿は写す欄と書く欄に分かれる
原稿の欄は、採用要件シートの値をそのまま写す欄と、書き手で出来が変わる欄に分かれます。同じ賃金の話でも、固定残業代の時間数は写す欄、「しっかり稼げる」のような言い回しは書く欄に入ります。
図の要点:求人原稿の欄を2つに分けた比較。写す欄は業務と就業場所とそれぞれの変更の範囲、賃金と固定残業代の時間数、契約期間と更新の基準で、生成AIは値を置くだけにし、原稿を書いていない担当が要件シートと1欄ずつ照合する。書く欄は一日の仕事、配属先の様子、募集の背景、見出しと冒頭で、生成AIが訴求の軸ごとに案を出して求人担当が選び、金額・地名・雇用形態の語は写す欄と並べる。
写す欄は要件シートと同じ値か、書く欄は写す欄と矛盾しないかを見る
写す欄(誰が書いても同じ値)
- 業務・就業場所と、それぞれの変更の範囲
- 賃金と固定残業代の時間数、契約期間と更新の基準
- 生成AIは値を置くだけ。無い値は空欄で返す
- 書いていない担当が要件シートと1欄ずつ照合
書く欄(書き手で出来が変わる)
- 一日の仕事、配属先の様子、募集の背景
- 見出しと冒頭の数行
- 生成AIが訴求の軸ごとに案を出し、求人担当が選ぶ
- 金額・地名・雇用形態の語は写す欄と並べる
自社の原稿で先に数えるなら、写す欄の行数です。この行数ぶんの照合は内製でも外注でも社内に残るので、委託料と比べる側に載るのは、書く欄の手間と外注先とのやりとりです。
写す欄が崩れやすいのは、媒体ごとに字数を詰める作業です。たとえば、固定残業代の時間数と金額を添えた月給の行から括弧の中だけが落ち、月給の額だけが残っても、文としては自然なので気づきにくくなります。生成AIに字数を詰めさせるなら、写す欄は縮めない欄として外しておきます。
令和6年4月1日から、業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準も、募集のときに明示する事項に加わりました。それより前の様式の要件シートには、この行そのものが無いことがあります。
行が無いまま生成AIに書かせると、空欄がもっともらしい文で埋まって戻ってきます。値を知っているのは企業だけなので、RAが聞き取るまで原稿を止めます。
賃金の幅と固定残業代は書く欄で崩れる
写す欄を正しく写していても、書く欄の見出しや冒頭の文で条件が変わることがあります。照合の範囲を欄の区切りだけで決めると、この誤りは通ってしまいます。
要件シートに「月給22万円〜28万円」とある求人で、生成AIが見出しを「月給28万円」と縮めた場合です。幅の下限が消えても、写す欄の照合は通ります。面接で求職者から「28万円と書いてあった」と言われて初めて気づきます。
厚生労働省のQ&A(問2-3)は、賃金に幅を持たせる書き方そのものは許容しています。一方で、上限の額を、払う見込みのある額より高く見せる書き方は誤解を生じさせる表示です。固定残業代の基礎となる時間数などを示さずに基本給に含める表示も、誤解表示の例に挙がっています(問2-2)。
就業場所の変更の範囲が「会社の定める事業所」なのに、冒頭の文に「転勤なしで地元で働ける」と出るのも同じ形です。書く欄に出てくる金額・時間・地名・雇用形態の語を生成AIに抜き出させ、写す欄の値と並べて、書いていない担当が確かめます。
見つかったら媒体の原稿をいったん止め、書く欄を直し、差し替えた日と理由を求人管理システムに残します。明示事項を1項目ずつ確かめる点検は、求人情報チェックで拾う3系統と充足後の停止と同じ手順が使えます。
内製と外注はどちらに寄せるか?
どちらに寄せるかは、取引の形で逆になります。写す欄の値を誰が持っているかで、照合の重さが変わるからです。
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企業が完成した求人票を渡す取引が中心
外注に残しても照合は軽い
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RAが商談で要件を聞き取る取引が中心
内製に寄せる
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本数が繁忙月だけ跳ねる
平常月は内製、繁忙月は書く欄だけ外注
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要件シートの行が空き、書いていない担当も置けない
行を足すのが先
要件をRAが聞き取る取引なら、写す欄の値を知っているのは社内の人間だけです。外注先への説明が1本ごとに要るぶん、内製のほうが照合までの日数が短く済むので、この取引が中心の部門から内製に寄せます。
最後の条件の会社で生成AIを入れると、原稿が速く出るほど、照合されない写す欄が増えます。書く担当と確かめる担当を分けられる人数になるまでは、原稿の速さより要件シートの行を埋めるほうを優先します。
求人原稿の作成に特化したツールも、入力の手間は短くなりますが、照合する担当の人数が上限になる点は汎用の生成AIサービスと同じです。汎用サービスのアカウントの料金と、求職者の情報を入れてよい欄は、4製品の月額と、履歴書を入れる前に確かめる8項目の料金表と同じものを見れば足ります。
要件シートには、企業が社外に出していない年収の幅や退職の事情が書かれていることがあります。外注先に渡す前にも、生成AIサービスに入力する前にも、企業との秘密保持の取り決めで社外に出してよい範囲かを確かめます。
派遣会社と紹介会社で表示の義務が違う
同じ第5条の4でも、第2項と第3項で主語と求めることが違います。労働者の募集を行う者と募集受託者には、募集の情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めています(第2項)。職業紹介事業者などには、厚生労働省令に沿って、正確かつ最新の内容に保つための措置を求めています(第3項)。
派遣会社が自社で雇う派遣スタッフを募る原稿は、自ら労働者の募集を行う側の原稿です。労働条件を決めて持っているのは派遣会社自身なので、写す欄の値は社内の就業条件の資料にあります。生成AIに写させて社内で確かめる内製と組み合わせやすく、明示する事項には派遣で雇う旨の1行も加わります。
紹介会社が企業の求人を載せる原稿は、写す欄の値が企業の側にあります。企業が条件を変えたら、RAが聞いて求人票と媒体の原稿を直す作業が要ります。書き手が内製でも外注でも、条件変更の連絡を誰が受けて原稿に戻すかが決まっていなければ、正確で最新の状態は保てません。
紹介と派遣を兼ねる会社なら、原稿の置き場所を部門で分けます。写す欄の値の出どころを取り違えにくくなるからです。
外注先への依頼書を写す欄と書く欄で分ける
依頼書を写す欄と書く欄に分けておけば、同じ紙を社内の生成AIにも外注先にも渡せます。内製か外注かを一度で決め切らず、本数の波に合わせて行き来できるのは、この形の依頼書を持つ会社です。
写す欄には要件シートの該当行をそのまま貼り、言い換えない・縮めない・足さないと書きます。固定残業代は時間数と金額まで、就業場所は変更の範囲まで、要件シートの表記で渡します。
【説明用の架空の記入例】外注先と生成AIに渡す依頼書
写す欄
「月給22万円〜28万円(固定残業代を含む・時間数と金額は要件シートの行をそのまま貼る)」「就業場所(変更の範囲を含む)は要件シートの行をそのまま貼る」。注記は「言い換えない・縮めない・足さない」書く欄
募集の背景のメモ「増員。配属先の上長に聞いた内容」、一日の仕事のメモ「午前は受注の入力、午後は出荷の確認」、参考の過去原稿1本。注記は「要件シートに無い手当や社員の声を足さない」戻す形
写す欄と書く欄を分けたまま
書く欄には、募集の背景のメモ、配属先の上長に聞いた一日の段取り、応募が集まった過去原稿を付けます。要件シートに無い手当や社員の声を足さないことも書き添えます。戻す原稿も2つの欄を分けたままにしてもらえば、確かめる担当の手順は内製の原稿と同じです。
差し替えた原稿が偏った側から手順を直す
見る数字は、写す欄の誤りで差し替えた原稿の本数です。求人管理システムに残した差し替えの理由を内製分と外注分に分けると、どちらの手順が崩れたかが別々に見えます。
外注分に偏った月は、依頼書の写す欄が要件シートの表記のまま貼れているかへ戻ります。内製分に偏った月は、原稿を書いていない担当が1欄ずつ照合しているかへ戻ります。
内製分か外注分かの区分は、原稿を書いていない担当が照合のたびに記録します。翌月の本数をどちらに寄せるかは、求人部門の責任者が2列を数か月並べてから決めます。並べる期間は、繁忙月を1回は挟めるようにたとえば3か月とし、本数の波が小さい部門なら短くして構いません。外注分の差し替えが内製分を上回る月が続けば翌月の外注本数を減らし、下回る月が続けば今の配分を保ちます。
差し替えを内製分と外注分で数えられない月は外部と組む
差し替えの記録に内製分か外注分かの区分が付かないまま月末を迎える部門では、どちらに寄せても手順の崩れが見えません。原稿を書いていない担当を置けず、照合と区分の記録が書いた本人に戻っている形で、比べる本数がいつまでもたまらないからです。
この状態で外部と組むなら、写す欄と書く欄に分けた依頼書の型を作り、照合の担当と区分の記録の仕方を決めるところから始めます。生成AIの使い方と依頼書の見直しを毎月続ける相手としては、AI顧問が合います。外注先を替えるのは、照合の担当を置けるかが決まってからです。
区分の付いた2列が月ごとに並び始めれば、どちらに寄せるかは求人部門の責任者が自社の本数で決められます。外部の手は、その2列がそろうまでの組み立てに限って借りれば足ります。
明日から始める3ステップ
担当 求人部門の責任者
繁忙月に外注へ出す予定の求人を1本選び、要件シートの行をそのまま貼る写す欄と、背景のメモを付ける書く欄に分けた依頼書を作る
次へ進む目安写す欄に、要件シートに無い言い回しが1つも入っていない依頼書が1枚できた
担当 求人担当
戻ってきた原稿の見出しと冒頭から金額・地名・雇用形態の語を抜き出させ、原稿を書いていない担当が要件シートの値と並べる
次へ進む目安差し替えが要った原稿の本数と理由が、外注分として求人管理システムに残った
担当 求人部門の責任者
同じ依頼書の写す欄を生成AIにも渡して平常月の内製分を作り、写す欄の誤りによる差し替えを内製分と外注分に分けて月ごとに数える
次へ進む目安差し替えの本数が内製分と外注分の2列で月ごとに並び、翌月の本数をどちらへ寄せるかを責任者が決めた
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出典
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)(第5条の4第1項・第5条の4第2項・第5条の4第3項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)(第4条の2第3項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」厚生労働省 確認日 2026.09.28
- 厚生労働省「令和4年 改正職業安定法Q&A」(問2-2・問2-3) 厚生労働省 確認日 2026.09.28
- Google「Google Workspace 料金プラン」(Business Standard) Google 確認日 2026.09.28
- OpenAI「ChatGPT 料金」(Business 標準シート) OpenAI 確認日 2026.09.28
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり









