この記事の要点
- 求人原稿は、初稿づくりと媒体別の書き分けを生成AIに渡せます。
- 掲載条件の確定と表示の適法性は、求人担当と部門の責任者に残ります。
- 本メディアでは、内製と外注の分かれ目は原稿の本数ではなく採用要件シートの状態だと判断します。
定義求人原稿の作成とは、企業から預かった採用要件を、媒体ごとの規定に合わせた掲載用の文章に仕上げる業務です。
この業務を先に割る理由は、時間と金とリスクが1本の原稿に重なっているからです。時間は原稿1本あたりの作成時間と媒体数の掛け算で測ります。金は、掲載しても応募が来なかった求人の掲載費で見ます。入稿が遅れて他社に決まった依頼の数も、同じ側に置きます(どちらも水準は置かず、自社で測る前提として置きます)。リスクは表示で、賃金や就業時間の書き方が職業安定法の的確な表示に反すれば、行政の指導の対象になり得ます。総務省「令和8年版 情報通信白書」では、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は日本で86.4%と示されています。使うかどうかではなく、どの工程に当てるかで差が出る段階に入りました。
金曜の夕方に届いた求人依頼が、月曜の夜まで原稿にならない。求人担当が1人か2人の会社では、この滞留が常態です。書く力の問題ではなく、受け取る・探す・決める・書き分けるという別々の仕事が1本の原稿の中で連なっているからです。
割らないまま「求人原稿をAIで内製する」と決めると、外注との比較が本数の話に流れます。本数が同じでも、要件シートが埋まっている会社と埋まっていない会社では、社内で回せる範囲がまったく違います。

求人原稿の作成はどこからどこまでを指すのか?
言葉の幅が広いので、先に範囲を決めます。求人原稿の作成とは、企業から預かった採用要件を、媒体ごとの規定に合わせた掲載用の文章に仕上げる業務です。要件そのものを聞き出す商談は前工程、掲載後の応募集めと経路別の集計は後工程として、ここでは扱いません。
この記事の要点は三つです。
- 受け取りから入稿までは7工程に割れ、AIが担えるのは集める・並べる・整形する・指摘するの4種類に収まります。
- 掲載条件の確定と表示の適法性の判断は求人担当と責任者に残り、ここを渡すと誤った条件がそのまま公開されます。
- 内製と外注の線は、採用要件シートが項目で埋まっているかどうかで引きます。
棚卸しの単位で言えば、起点は商談後に採用要件シートが埋まった時点か、企業から求人依頼のメールが届いた時点です。担当は求人担当で、法人営業が兼務する会社も珍しくありません。成果物は媒体別の求人原稿と、求人管理システムへの登録データです。使うのは採用要件シート、求人管理システム、求人媒体の管理画面、求人票テンプレート、Excel、メールです。
本数と所要時間は会社と職種で違うため、この記事では数値を置きません。以降の表では、自社で測るときの単位だけを示します。業務委託や紹介予定派遣のように記載項目が変わる依頼、複数職種をまとめた依頼は、最初から例外として分けておきます。
要件シートの受け取りから媒体入稿まで、7つの工程に割る
求人原稿づくりは「文章を書く仕事」ではありません。着手から完了までを時系列に並べると、担当も帳票も違う7つの工程が並びます。量と時間の欄は公的統計に無いため、自社で測る単位だけを入れています。
- 1採用要件シートを受け取るAIと人
- 2過去の類似求人を集めるAIと人
- 3訴求の骨子を決めるAIと人
- 4媒体別に書き分けるAIと人
- 5記載と要件を照合するAIと人
- 6企業に確認して直すAIと人
- 7登録して媒体へ入稿するAIと人
AIが担える人が決める
1
採用要件シートを受け取る
担当: 求人担当・法人営業 / 使うもの: 採用要件シート、商談メモ、メール / 量・時間: 依頼1件ごとの受領から着手までの時間
- AIが解決すること
- 商談メモとメール本文から必須条件・歓迎条件・募集背景を項目に振り分け、空欄を一覧にする
- 人が決めること
- 空欄を企業に聞くか、過去の契約から補うか
- 詰まるところ
- 項目が空欄のまま回ってくる
- 失敗したときの損失
- 推測で埋めた条件が原稿に残る
2
過去の類似求人を集める
担当: 求人担当 / 使うもの: 求人管理システム、過去原稿のフォルダ / 量・時間: 1本あたりの探す時間
- AIが解決すること
- 職種・雇用形態・勤務地の近い過去原稿を並べ、保管場所を示す
- 人が決めること
- どの原稿を下敷きにするか
- 詰まるところ
- 保管場所が担当ごとに散る
- 失敗したときの損失
- 似ていない原稿を流用し訴求がぶれる
3
訴求の骨子を決める
担当: 求人担当・法人営業 / 使うもの: 採用要件シート、募集背景のメモ / 量・時間: 骨子が決まるまでの時間
- AIが解決すること
- 見出しと本文の案を訴求の軸ごとに複数出す
- 人が決めること
- 何を前面に出すか
- 詰まるところ
- 担当の経験で差が出る
- 失敗したときの損失
- 候補者像とずれた原稿で応募が来ない
4
媒体別に書き分ける
担当: 求人担当 / 使うもの: 求人媒体の管理画面、媒体ごとの原稿規定 / 量・時間: 媒体数×1本あたりの時間
- AIが解決すること
- 採用した案を媒体ごとの文字数と必須項目に合わせて整形する
- 人が決めること
- 媒体ごとの掲載枠と出す順番
- 詰まるところ
- 同じ内容を媒体の数だけ打ち直す
- 失敗したときの損失
- 文字数超過や必須項目の欠落で入稿が戻る
5
記載と要件を照合する
担当: 求人担当・コンプライアンス担当 / 使うもの: 表示ルールのチェックリスト、求人票テンプレート / 量・時間: 1本あたりの確認時間
- AIが解決すること
- 賃金・就業時間・業務内容・就業場所の記載漏れと、誇張になり得る表現を指摘する(公開はしない)
- 人が決めること
- 表示の適法性と公開の可否
- 詰まるところ
- 人数が少ないと自己チェックになる
- 失敗したときの損失
- 的確な表示に反する求人が世に出る
6
企業に確認して直す
担当: 法人営業・求人担当 / 使うもの: メール、赤入れの入った原稿 / 量・時間: 確定までの往復回数
- AIが解決すること
- 赤入れの前後で変わった箇所と、影響する媒体を一覧にする
- 人が決めること
- 要望をどこまで反映するか
- 詰まるところ
- どこが変わったか追えない
- 失敗したときの損失
- 条件そのものが変わった修正を見落とす
7
登録して媒体へ入稿する
担当: 求人担当 / 使うもの: 求人管理システム、媒体の管理画面 / 量・時間: 媒体数に比例
- AIが解決すること
- 確定原稿を媒体ごとの入稿形式に整え、登録内容との差分を示す
- 人が決めること
- 公開のタイミングと停止の判断
- 詰まるところ
- 転記の取り違えが起きる
- 失敗したときの損失
- 充足済みの求人が公開され続ける
AIで消える工程:第2工程です。過去原稿を探して回る時間が無くなり、下敷きの候補が第3工程の入力として先に手元に届きます。
短くなる工程:第1・第3・第4工程です。項目への振り分け、訴求案の複数出し、媒体別の整形が先に用意され、求人担当は書く側から選ぶ側に回ります。
新しく増える確認工程:第5工程です。賃金・就業時間・業務内容・就業場所の4項目を要件シートの原本と突き合わせる照合が、入稿の前に必ず入ります。本メディアでは、この照合をする人と入稿ボタンを押す人を分けるべきだと判断します。理由は、自分が整えた原稿は自分では粗が見えないからです。前提は、確認できる責任者が社内にいることで、責任者が1人しかいない会社ではこの分離は成り立ちません。
図の見方は、色枠がAIの担う工程、灰色が求人担当や責任者が確定する工程、二重枠がその両方です。右上の小さな三角は、失敗が起きやすい工程を指しています。
AIへ渡す工程と、求人担当へ戻す工程の境目はどこか?
工程に割ると、渡してよい仕事の性質が見えます。集める・並べる・整形する・指摘するは作業なのでAIへ、確定する・公開を決めるは判断なので人に残ります。この線を先に引くと、AIが出した原稿をどこまで信じるかで迷わなくなります。
境目で効くのは第5工程です。生成された原稿は体裁が整っているぶん、賃金や就業時間の数字が違っていても目が滑ります。AIにできるのは、記載漏れと誇張になり得る表現を挙げるところまでです。その表現が実態と合っているかは、企業に当てて確かめた事実でしか決まりません。
第1工程にも同じ構造があります。空欄を推測で埋める設定にすると、原稿は埋まりますが、第6工程で条件が丸ごと書き換わります。空欄は空欄のまま残し、企業に聞く項目として一覧に出す形にします。
商談メモには担当者名や未公開の社内事情が入ります。個人情報の保護に関する法律の扱いと取引先との守秘義務の両面から、外部のAIサービスへ送ってよい項目の範囲は、使い始める前に入力可否表へ落とします。
最初に着手するのは媒体別の書き分けです
着手する1工程は、三つの問いで選びます。判断か作業か、材料が電子で揃っているか、失敗したときの損失がどれくらいか。これを当てると第4工程が残ります。
第4工程は作業です。採用した案という電子の入力があり、媒体ごとの文字数と必須項目という明文の条件があり、誤っても入稿前に気づけます。反対に第3工程は訴求の判断を含むため、案を複数出させるところで止めます。第5工程は失敗が公開後に見つかる位置にあるので、後から手を入れます。
商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」は、導入後の課題として「活用場面が不明」35.6%、「推進する人材がいない」32.0%を挙げています。この二つは、工程に割らないまま会社全体に配ったときに出る詰まり方です。第4工程という着手先を先に決めておけば、社内で「どこに使うのか」を議論し直さずに回せます。
2週間の試行では3つの数字だけを追う
試行は五つの段で足ります。長い手順書は要りません。
- 職種を1つ、求人担当を1人選び、導入前のひと月分を測ります。原稿1本あたりの作成時間、企業からの修正回数、公開後の差し替え件数の3つです。
- 採用要件シートの項目を確定します。既存のシートから実際に使っている項目を抜けば、1日で形になります。
- 過去原稿の保管場所を1か所に寄せます。担当のパソコンに残ったままだと、第2工程は消えません。
- 第4工程の整形をAIに任せ、第5工程で求人担当が4項目を原本と照合してから入稿します。初稿と確定稿は必ず並べて残します。
- 2週間後に同じ3つの数字を並べ、部門の責任者が続けるか止めるかを決めます。合否の線は開始前に決めておきます。
測る3つは、時間・誤り・発見時期に対応します。作成時間が時間、企業からの修正回数が誤り、公開後の差し替え件数が発見の遅さです。媒体数の多い求人と少ない求人を分けて数えると、どの工程が効いたのかが読めます。
本番にするとき、承認と記録と例外を先に決める
承認は、第5工程で責任者が公開の可否を決め、求人担当が入稿する形から動かしません。入稿まで通しで自動化するのは、照合で修正が出ない状態がひと月続いてからです。広げる範囲は職種か媒体で区切り、全件を一度に開放しません。
記録は、要件シート・初稿・採用した案・赤入れの差分・確定稿・確認者の6つを残します。確定稿だけを残すと、修正の理由も差し替えの原因も後から追えません。責任者が月次で求人を締めるとき、この6つが揃っていれば工程ごとの詰まりが読めます。
例外は先に文字にします。企業が文面を指定する案件、複数職種をまとめた依頼、記載項目が変わる紹介予定派遣は、生成を止めて従来どおり手で書きます。該当する条件を一覧にしておかないと、判断の要る依頼が型に流れます。
内製と外注の線はどこで引くか?
費用は本数ではなく、費目で比べます。金額は媒体数と職種数で動くため、ここでは置きません。
- ライセンス:文書生成と社内の文書検索の利用料
- 設計:要件シートの項目定義、媒体別の整形ルール、照合画面の4項目
- 連携:求人管理システムへの登録と媒体への入稿。最初は手作業の貼り付けで足ります
- 検証:導入前後の計測と、修正が多い項目の見直し
- 運用:媒体の規定変更への追随、担当交代時の引き継ぎ
外注が向くのは、媒体の規定変更が多く追随する担当が社内にいない場合、職種が特殊で書ける人がいない場合、繁忙期だけ本数が跳ねる場合です。内製が向くのは、要件シートが項目で埋まり、過去原稿が1か所にあり、公開の可否を決める責任者が社内にいる場合です。
本メディアでは、要件シートが自由記述のままの会社は、生成AIより先に項目の統一を済ませるべきだと判断します。理由は、書く人が推測で埋める構造は内製でも外注でも変わらず、速くなるほど誤った条件が増えるからです。前提は、企業から要件を聞き出す商談の型があることです。企業側が自社の求人票を完成形で渡してくる取引が中心なら、この前提は外れ、シートの整備より照合の設計を先に置きます。
本メディアでは、初稿づくりを丸ごと外に出す分け方は勧めません。理由は、訴求の当て方が社内に残らず、応募が来なかったときに何を変えればよいか分からなくなるからです。前提は、自社に求人担当が1人以上いることです。担当が不在で法人営業が片手間に書いている会社なら、初稿ごと外に出し、照合だけを社内に残す方が現実的です。
原稿づくりにAIを入れない方がよい会社の条件
採用要件シートが存在せず、商談メモだけで原稿を書いているなら、AIより先にシートの整備です。過去原稿がどこにあるか誰も答えられないなら、保管場所の一本化が先になります。公開の可否を決める責任者が決まっていないなら、その決定から先に置きます。
この三つが欠けた状態で初稿づくりだけを速くすると、誰にも照合されない原稿が増えます。順番を間違えた会社ほど「AIは使えない」という結論に早く着きます。
出典
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」生成AIの業務利用状況 総務省 確認日 2026.09.22
- 商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」 商工中金 確認日 2026.09.22
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22


