派遣法対応の派遣元管理台帳、AIで突き合わせる月次点検と人が見る抵触日
派遣元管理台帳の月次点検にAIを使うか検討している、派遣会社の点検担当(管理部門)と派遣元責任者のための記事です。
AIに通知を読み取らせれば、派遣元管理台帳の月次点検もまとめて任せられそうに見えます。ただ、記載漏れかどうかの判定や抵触日の扱いまでAIに預けてよいかは、労働者派遣法の条文を見ないと決められません。本文では、記載事項を照合する書類ごとに分ける表、点検の工程ごとの分担、通知の期日に合わせた点検日の組み方を扱います。

先に結論
派遣元管理台帳の月次点検でAIに回すのは、就業実績の通知から行を起こし、台帳・契約書・就業条件明示書との空欄と食い違いを書類名つきで並べる所までです。一覧に「適合」「不適合」の字は書かせません。
点検担当(管理部門)は、AIの行の就業日数と時刻の合計を通知の原本と合わせてから一覧を回します。記載漏れか該当なしか通知の誤りかを判定欄に書き、直す書類を決めるのは派遣元責任者で、抵触日は計算せず派遣先からの通知の日付を写します。
点検日は自社の締めでなく、派遣先ごとの通知の期日の翌営業日です。合計が原本と合わない月が続く派遣先は、AIの読み取りを止めて原本から手で写します。
判定欄と抵触日を、派遣元責任者が原本で持つ根拠
判定欄にAIが書いた判定が入ると、監査の場で「なぜ記載漏れでないとしたか」を派遣元責任者が自分の根拠で説明できなくなります。抵触日も、契約書の日付から計算した値では、派遣先が期間を延ばしたときの通知に追いつきません。
法第36条は、派遣元責任者に行わせる事項を並べています。就業条件の明示と派遣元管理台帳に関すること(第1号)も、派遣労働者等の個人情報の管理に関すること(第4号)も、その中の事項です。1つの事業所に派遣元責任者が複数いるなら、判定を誰の名前で残すかを先に決めておきます。
台帳の記載事項は、労働者派遣法第37条第1項が13号、施行規則第31条がさらに12号を定めています。点検の一覧も号の単位で欄を切っておけば、どの行がどの号の記載漏れかを派遣元責任者が確かめやすくなります。
作成は派遣元の事業所ごとで(施行規則第30条第1項)、記載は派遣をするに際して行います(同条第2項)。保存は派遣が終わった日から3年間です(法第37条第2項・施行規則第32条)。点検の一覧と点検記録も事業所ごとに分け、台帳と同じ期間は消さずに残します。
台帳は一度書けば終わる書類ではありません。派遣先からの通知の内容が記載と違えば、通知のたびにその内容を書き足します(施行規則第30条第3項)。月次の点検が要るのは、この書き足しがあるからです。
第37条のほか、就業条件の明示(第34条)や期間制限(第35条の3)などの規定に違反した者も、第61条第3号により30万円以下の罰金の対象です。台帳の点検は、明示書と期間の確認と同じ月に組むのが合っています。
月次点検の7工程と、人が原本や派遣先で確かめ直す2か所
月次点検は、今月点検する契約を選ぶ工程から、直す書類を点検記録に残す工程まで7つに分かれ、途中で原本や派遣先に戻って確かめ直す所が2か所あります。どちらの戻りも、AIの出力を直して済ませず、人が原本か派遣先の答えで埋め直します。
図の要点:点検担当・AI・派遣元責任者の3つの担当で7工程に分けた月次点検の流れ。点検担当が今月点検する契約を選び、AIが派遣先ごとの通知から就業日・時刻・業務の行を作る。点検担当が行の合計を通知の原本と合わせ、合わない派遣先は原本から手で写す。AIが台帳と通知・契約書・明示書の空欄と食い違いを並べ、点検担当が空いていてよい欄の行を外す。派遣元責任者が記載漏れ・該当なし・通知の誤りを判定欄に書き、通知の誤りは派遣先に確かめ、直す書類を決めて点検記録に残す。
合計が合わない通知と通知の誤りは、AIを通さず人が原本か派遣先で確かめ直す
点検担当(管理部門)
AI
派遣元責任者
- 点検担当(管理部門)
契約一覧から今月点検する契約を選ぶ
外した契約は理由を記録
- AI
派遣先ごとの通知から就業日・時刻・業務の行を作る
- 点検担当(管理部門)
作った行を合計で通知の原本と合わせる
戻す合わない派遣先は原本から手で写す
- AI
台帳と通知・契約書・明示書の空欄と食い違いを並べる
「適合」「不適合」は書かせない
- 点検担当(管理部門)
空いていてよい欄の行を外し、責任者へ回す
- 派遣元責任者
記載漏れ・該当なし・通知の誤りを判定欄に書く
戻す通知の誤りは派遣先に確かめる
- 派遣元責任者
直す書類を決め、日付と共に点検記録へ
該当なしを欄別に数える
点検担当が今月の対象に選ぶのは、更新月の契約、前月から持ち越した契約、新しい契約です。前月から持ち越した契約が何件あるかは、自社の点検記録で数えられます。持ち越しが毎月出ている会社は、点検日の組み方の節から読むほうが早く片づきます。
AIが作った行を通知の合計で合わせるのは、読み取りの写し違いがあると、食い違いが一覧に出てこないからです。食い違いが挙がらなかった契約も、就業日数と時刻の合計が合うまでは点検済みにしません。
同じ事項が台帳・契約書・明示書の3つに書かれているので、1つだけ直して残りを忘れる失敗は最後の工程で起きます。直す書類を1行で決めるのが、派遣元責任者の受け持ちです。
通知は派遣先ごとに書式が違い、PDFで届く先、メール本文で届く先、紙で届く先が混ざります。台帳そのものを拠点ごとに紙で持っている会社は、このままではAIの突き合わせに向きません。突き合わせる相手が文字として読めないため、AIより先に事業所ごとの台帳の出力の形をそろえます。
通知には派遣労働者の氏名と就業時刻が載るので、どのツールに入れてよいかは人材会社が生成AIのアカウントを選ぶ前に確かめる契約の中身と同じ考え方で決めます。派遣管理のほかの帳票は法令・個人情報の記事に、業務ごとの着手の順は業界トップの業務一覧にあります。
記載事項はどの書類と照合するか?
記載事項は、照合する書類で3つの群に分けます。群ごとにAIへ渡す書類を変えておくと、食い違いがどの書類から来たかが書類の名前で分かります。
| 群 | 主な記載事項 | 照合する書類 |
|---|---|---|
| 契約で決まる | 派遣先・場所・期間・時刻・業務 | 労働者派遣契約書、就業条件明示書 |
| 派遣先の実績で動く | 就業した日・時刻・業務 | 就業実績の通知 |
| 社内の記録から写す | 雇用の形・教育訓練・苦情・聴取 | 雇用契約書、研修と苦情の記録 |
食い違いが出たら、契約で決まる群は契約書へ、実績で動く群は派遣先へ、記録から写す群は社内の記録へ戻ると、この表で決めておきます。どの書類に戻って確かめるかが決まっていれば、派遣元責任者は判定欄に直す書類の名前まで書けます。
契約で決まる群
派遣先の名称、就業の場所と組織単位、派遣の期間と就業する日、始業と終業の時刻、業務の種類、業務に伴う責任の程度派遣先の実績で動く群
実際に就業した日、始業と終業の時刻、従事した業務の種類社内の記録から写す群
協定対象か否か、無期か有期か(有期なら契約期間)、教育訓練の日時と内容、苦情の処理、雇用安定措置の希望を聴取した内容
【説明用の架空の記入例】
– 契約: 派遣先 X社 倉庫課・登録番号 B-0456 の派遣労働者
– 食い違い: 台帳の終業時刻 17:30/就業実績の通知では 18:30(3日分)
– 出どころの書類: 就業実績の通知(派遣先の実績で動く群)
– 判定欄(派遣元責任者): 記載漏れ。通知の時刻を台帳に書き足す。契約書と明示書は直さない
食い違いが出やすい場面は、群ごとに別なので、AIに渡すときも群ごとに分けて頼みます。契約で決まる群は、契約を変えた後に台帳だけ前の条件のまま残るとずれます。実績で動く群では、残業や休日の出勤があると、契約の時刻と実績が一致しません。社内の記録から写す群は、研修と苦情の記録が別の部署の帳票にあるため、写し忘れが起きます。
苦情の処理は、派遣スタッフのフォロー面談の記録に元があることもあります。フォロー面談の記録を台帳に書き写す欄と派遣先へ渡さない欄と同じ分け方にしておくと、写し忘れが減ります。
空欄が正しい欄もあります。紹介予定派遣でない契約の「紹介予定派遣に関する事項」や、無期雇用の派遣労働者の「労働契約の期間」です。空いていてよい条件をチェックリストに書いてからAIに突き合わせさせないと、空欄の一覧が該当なしの欄で埋まり、派遣元責任者が読まなくなります。
抵触日はAIに計算させず通知の原本で見る
抵触日は2種類あり、どちらも契約書の日付からAIに計算させた値を台帳や明示書に書き込みません。どちらの日付も、決まり方が契約書の外にあるからです。
個人単位では、派遣元は同じ派遣労働者を、派遣先の同じ組織単位の業務へ3年を超えて続けて派遣してはなりません(法第35条の3)。事業所単位では、派遣先は事業所ごとの業務について、派遣可能期間の3年を超えて受け入れてはなりません(第40条の2第1項・第2項)。個人単位の期限は派遣元の手元の記録で追えますが、事業所単位の期限は派遣先の受け入れの経緯で決まります。
事業所単位の抵触日は、派遣先が新しい契約を結ぶに当たって、あらかじめ派遣元へ通知します(第26条第4項)。通知が無いまま、派遣元がその派遣先と契約を締結することは禁じられているため(同条第5項)、通知の有無は契約の前に確かめる項目です。
派遣先が期間を延ばしたときも、新しい抵触日を派遣元へ通知します(第40条の2第7項)。2つの抵触日は、派遣労働者に明示する就業条件にも入る事項なので(第34条第1項第3号・第4号)、明示書も同じ日付で直す必要があります。
計算した日付を正しい日付として扱うと、延長後の日付とずれたまま更新を進めることになります。AIに作らせるのは、期限が近い契約を日付の順に並べた一覧と、通知が届いていない契約の一覧です。日付そのものは通知から写し、通知が届いていない契約は計算値で埋めず「通知待ち」の行に置きます。派遣先の担当者に通知を求めるのは派遣元責任者です。
期間制限の外にある派遣もあります。第40条の2第1項の各号に当たる派遣で、抵触日の一覧から外してよいのは次のものです。
- 無期雇用の派遣労働者の派遣
- 厚生労働省令で定める、雇用の機会の確保が特に難しい者の派遣
- 一定の期間で終わる、事業の開始や廃止などのための業務
- 業務が1か月に行われる日数が、派遣先の通常の労働者の1か月の所定労働日数より相当程度少なく、厚生労働大臣の定める日数以下の業務
- 産前産後休業・育児休業・介護休業などで休む人の業務
台帳の「無期か有期か」と「第40条の2第1項第2号の者か」の欄が埋まっていれば、その契約を抵触日の一覧から外す作業をAIに任せられます。欄が空いたままだと期間制限の外の契約まで一覧に並び、本当に近い期限が埋もれます。
点検日は派遣先ごとの通知の期日で組む
点検日は自社の月次の締めではなく、派遣先ごとの通知の期日に合わせ、その翌営業日に突き合わせます。派遣先の通知が、派遣先ごとに決めた期日で届くからです。
通知には、派遣労働者ごとの就業した日、始業と終業の時刻と休憩、従事した業務の種類などが載ります。届くのは1か月ごとに1回以上で、書面の交付などによります(法第42条第3項・施行規則第38条第1項)。期日より前に点検日を置いても、突き合わせる相手がそろいません。
期日を過ぎても届かない派遣先には、派遣元が請求すれば、派遣先は遅滞なく通知することになっています(施行規則第38条第2項)。請求は派遣元責任者の名前で出すと決めておき、それでも翌月へ持ち越した契約は、点検担当が派遣先の名前と持ち越した理由を点検記録に1行で残します。
派遣先も、派遣先管理台帳を作って3年間保存します(法第42条第1項・第2項)。同じ派遣労働者について台帳が2冊あり、2冊をつなぐのがこの通知です。派遣元の台帳が契約の時点の条件で止まれば、同じ人の同じ日の記録が合わなくなります。
業務の種類が契約と違う実績が続く派遣先なら、台帳に書き足して終わらせず、契約の業務の内容を直すかどうかを派遣先と話すのが先です。派遣先から聞き取る条件は、求人の表示に載る条件でもあります。求人の明示事項を公開前に確かめる手順と派遣先との連絡の窓口を1つにしておくと、契約・台帳・求人が別々の日付で動くことを防げます。
合計の食い違いが続く派遣先は、手で写す形に戻す
AIの読み取りを続けるかは、派遣先ごとに数回分の点検の結果で決めます。たとえば3回分の点検でAIの行の合計が原本と一度も食い違わなければ続け、2回以上食い違った派遣先は点検担当が原本から手で写す形に戻す、といった目安を自社で決めておきます。戻した派遣先は、通知の書式を改めたときにもう一度AIの読み取りを試します。
派遣元責任者が毎月数えるのは、判定欄に「該当なし」と書いた件数を欄ごとに分けた数です。同じ欄が毎月のように出るなら、空いていてよい条件としてAIに渡すチェックリストへ書き足し、翌月の一覧から外します。翌月へ持ち越した契約に同じ派遣先の名前が続けて並ぶなら、その派遣先の期日を一覧で見直します。
紙で届く通知の多さが、台帳点検を社内で続けるかの分かれ目
PDFやメール本文で届く通知が大半を占める会社なら、点検担当と派遣元責任者の2人で7工程を回し続けられます。AIが行に起こせない通知は手で写すしかなく、その量が点検日の翌営業日に収まるかで、社内の手が足りるかが決まるからです。
点検記録の「原本から手で写した派遣先」が月ごとに増えているなら、手で写す量が増えています。点検日の翌営業日のうちに終わらない月が出てきたら、そこが外に頼むかを考える時点です。頼むのは、通知の読み取りから台帳との突き合わせまでをつなぐ作り込みで、AIエージェント開発の仕事です。拠点ごとに台帳の持ち方が違うなら、点検の決まりを月ごとに見直す相手としてAI顧問を置く形もあります。
手で写した派遣先の数は、点検記録から月ごとに数えられます。この数が前の月より減らない月が続いたら、外に頼むかを派遣元責任者が考え始めます。
明日から始める3ステップ
担当 点検担当(管理部門)
派遣先ごとに就業実績の通知が届く期日を一覧にし、期日の翌営業日を点検日として月の予定に入れる
次へ進む目安どの週にどの派遣先の通知を突き合わせるかが、月の予定表で読める
担当 点検担当(管理部門)
点検日に、AIが通知から作った行の就業日数と時刻の合計を通知の原本と合わせ、合わない派遣先は原本から手で写す
次へ進む目安今月の対象の契約すべてで、合計が原本と一致してから一覧が派遣元責任者へ回った
担当 派遣元責任者
判定欄に書いた「該当なし」を欄ごとに数え、毎月出る欄を空いていてよい条件としてチェックリストへ書き足す
次へ進む目安書き足した欄の該当なしが、翌月の一覧に出てこなかった
無料相談(オンライン)
BoostXは、人材紹介・派遣会社の求人票・候補者対応へのAI導入を支援しています
01無料相談
求人票・スカウト・面談記録から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)(第37条・第61条第3号・第26条第4項・第5項、第35条の3、第40条の2第1項・第2項・第7項、第34条第1項・第36条第1号・第4号・第42条第1項〜第3項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第20号)(第30条・第31条・第32条・第38条第1項・第38条第2項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり









