塾の集客原稿、AIにどこまで書かせる?合格者数とNo.1の掲載前の確認表
冬期講習や新学期の告知文をチラシ・Instagram・LINE向けに1人で書き、生成AIの下書きを使い始めた学習塾の教室長・集客担当(1人が兼ねる教室では教室長)と、その原稿を見る塾の経営者
たとえば冬期講習の告知を生成AIに頼むと、Instagram版に「地域No.1の合格実績」、チラシ版に去年の合格者数が入った下書きが数分で返ってくることがあります。その下書きのどこまでを使い、どの数字を数え直し、どの言い回しを消すかを、全国学習塾協会の合格実績の数え方と景品表示法・特定商取引法の条文に沿って確かめられます。

先に結論
講習や新学期の告知でAIに任せてよいのは、教室長が決めた訴求と対象・日程・定員・料金・締切から、チラシ・Instagram・LINEそれぞれの下書きを作るところまでです。合格者数は集客担当が協会の基準で数えた集計表から書き入れ、No.1や効果を言い切る表現を消して掲載を決めるのは教室長です。
料金・締切・定員・合格者数は、チャネルごとに書き直させず1つの元原稿から写させます。チャネルで変わるのは長さと語り口とハッシュタグで、数字がずれた下書きは元原稿から作り直させます。
その年の合格者数の集計が基準どおりに済むまでは、実績入りの原稿を掲載しません。調査の資料が手元に無い「No.1」は使わず、合格体験記と生徒の写真は本人と保護者の了承を取ったものに限ります。
AIの広報下書きは、自塾の合格者の数え方を知らない
生成AIは去年のチラシと一般的な広告文の書き方から下書きを作るので、今年の合格者の数え方も、「No.1」を裏付ける調査の有無も知りません。告知を出すまでの作業を担当ごとに並べると、次の流れになります。
図の要点:告知を出すまでの5つの工程の流れ図。教室長が訴求と対象・日程・料金・締切を元原稿に書き、AIがチラシ・Instagram・LINEの下書きを作る。集客担当が合格者数を集計表から書き入れて料金と締切を見比べ、教室長がNo.1や断定の表現を消して、集計前は実績入りの原稿を出さずに掲載を決める。
AIが受け持つのは下書きの1工程で、数字・表現・掲載は人が決める
-
訴求と対象を決める
教室長が講座・日程・定員・料金・締切を元原稿に書く
人
-
チャネル別に下書きする
チラシ・Instagram・LINEの長さと語り口を変える
AI
-
数字を集計表と照合する
集客担当が合格者数を書き入れ、料金と締切を見比べる
人
-
比較と断定の表現を消す
教室長が「No.1」「必ず」などを外す
人
-
掲載を決める
教室長が判断し、集計前は実績入りの原稿を出さない
人
教室長が集客担当を兼ねる教室では、照合と表現の削除を同じ人が続けて行うので、集計表との照合を済ませてから表現を消す順を守ります。元原稿と合わない数字が見つかった下書きは、手直しせずに元原稿から作り直させます。照合と表現の確認を飛ばすと、AIが去年の原稿から持ち込んだ数や言い回しが、そのまま紙面と投稿に出ます。
仮の場面です。10月の夕方、冬期講習の告知を作ろうと、教室長は授業の合間に、去年のチラシと今年の定員・日程・料金を生成AIに渡しました。数分でチラシ・Instagram・LINEの3つの下書きが返ってきます。
ところがInstagram版には「地域No.1の合格実績」の一文が入り、チラシ版には去年の合格者数が残っていました。LINE版では申込の締切日が1日ずれています。AIは去年の数を今年の数と区別できず、No.1も塾の広告に見かける言い回しとして書き足しています。
冬期講習の告知で、AIに渡す材料と渡さない材料
AIに渡すのは対象学年・講座・日程・定員・料金・締切と、過去に反応のあった投稿の文面です。生徒の氏名・成績・顔写真・合格者の個人名は渡しません。
訴求は教室長が先に1文で決めておきます。たとえば「中3の冬期講習は入試直前の演習に絞る」と決めて渡せば、AIはその訴求に沿って、チャネルごとに長さと語り口を変えた文を作ります。訴求を決めないまま頼むと、実績や安心感を前に出した、他の塾の告知と見分けのつかない文が返ってくることがあります。
依頼文には、使う材料と書かせない事柄をはっきり書きます。次の依頼文は、説明のために作った仮のものです。
元原稿にある講座・日程・定員・料金・締切だけを使い、冬期講習の告知をチラシ用・Instagram用・LINE用に1本ずつ書いてください。数字と日付は元原稿から書き写し、言い換えないこと。合格者数・順位・「No.1」・「必ず」のような比較や効果の言い切りは書かないこと。元原稿に無い情報が必要な箇所には「未確認」と書くこと。
在籍生の氏名や点数をAIに入れない決まりは、保護者への連絡文をAIで下書きするときの決まりと同じ考え方です。合格体験記と生徒の写真は、本人と保護者の了承を取ったものだけを載せ、AIで作った人物の画像を在籍生の声として使うことはしません。
了承を取った体験記を下書きの材料に入れたい場合は、本部か契約を結んだ担当に契約を確かめてもらってからにします。確かめるのは、サービス事業者が入力の中身を取り扱わない定めとアクセスの制限が両方あるか、無いときに委託と言えるか、第三者への提供として本人の同意が要るかの3点です。
チラシ・SNS・LINEで変えるのは長さ、変えないのは数字
チャネルで変えてよいのは長さ・語り口・ハッシュタグで、料金・日程・締切・定員・合格者数は1つの元原稿から写します。チャネルごとに別の依頼で書き直させると、AIは日付や金額を言い換え、冒頭の場面のように締切が1日ずれることがあります。
3つの下書きは同じ依頼で一度に作らせ、数字は元原稿から書き写すよう指示します。それでも書き写しの誤りは起きるので、集客担当が元原稿と3つの下書きを並べ、数字と日付を1つずつ見比べます。
チラシは刷った後に直せないため、印刷に回す前に照合を終えます。InstagramとLINEは投稿後でも直せますが、直す前に見た家庭には古い締切が届くので、投稿の前に同じ照合をします。
料金や締切を変えたときは、元原稿を直してから3つの下書きを作り直させます。投稿済みのSNSだけを手で直すと、チラシとWebの告知が古い数字のまま残ります。集客・広報のほかの作業は集客・広報の業務の記事一覧にまとめています。
合格者数は在籍と受講の基準で数えてから載せる
優良誤認表示とは、役務の内容を実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示で、景品表示法第5条第1号が事業者に禁じています。対象は、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示です。
合格者数は、誰を数えるかを広げるほど実際より大きく見えます。全国学習塾協会は2024年7月1日から、合格実績に数える生徒を、受験直前の6か月間のいずれかに在籍がある生徒に限りました。そのうえで、同じ期間に受講契約に基づく30時間以上の受講か、継続して3か月以上の受講があることを条件にしています。
同じ基準では、体験授業や模試を受けただけの生徒は数えず、グループ全体の合格者数を出すときに同じ生徒を重複して数えることもできません。実績が今年度だけの数か、過年度からの累積かも明示するとしています。法律の義務ではない協会の自主基準ですが、数え方を説明するときの拠り所になります。
集客担当は、生徒ごとに在籍の有無と直前6か月の受講時間・受講月数を集計表で確かめ、条件を満たす生徒だけを合格者として数えます。冬期講習だけ受けた生徒も、有料の受講契約と受講時間の条件を満たすかを1人ずつ見ます。集計表はAIに渡さず、数えた結果は集客担当が下書きに書き入れます。
去年のチラシにあった「○○高校 合格者12名」(説明用の仮の数)は、今年の集計と照合するまで下書きに残しません。入試の結果がそろう前に告知を出す時期は、合格者数の行を外した版を掲載します。
「No.1」と効果の言い切りはAIの下書きから消す
「No.1」「地域一番」は、調査の対象・方法・時点を示せる資料が手元に無ければ、AIの下書きから文ごと消します。消費者庁は2024年9月26日にNo.1表示の実態調査の報告書を公表し、長官は会見で、迅速な指導による是正を含めて厳正に対処していくと述べています。
景品表示法第7条第2項では、内閣総理大臣は、表示が第5条第1号に当たるかを判断するために必要があれば、期間を定めて資料の提出を事業者に求めることができます。求めるのは、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料です。事業者が資料を提出しないときは、その表示は優良誤認表示とみなされます。
2023年1月12日には、オンライン個別学習指導の5つの役務で「利用者満足度No.1」などと表示した事業者に、消費者庁が措置命令を出しました。調査は、回答者にその役務や同種の役務の利用の有無を確認せずに行われていました。
効果の言い切りは別の法律にもかかわります。期間と金額の条件を満たす学習塾の役務は、特定商取引法でいう特定継続的役務提供です。その期間と金額の条件は学習塾の入会手続きと契約書面の記事で確かめられます。
第43条は、役務提供事業者又は販売業者が提供条件の広告をするときの決まりです。役務の内容又は効果などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示をしてはならないと定めています。
AIの下書きに出やすい4つの表現を、掲載前に次の表で確かめます。
| 下書きの表現 | 確かめる根拠 | 直し方 |
|---|---|---|
| 地域No.1・満足度No.1 | 調査の対象・方法・時点の資料 | 資料が無ければ文ごと消す |
| ○○高校 合格者○名 | 今年の集計表と数えた基準 | 集計表の数と年度を書き入れる |
| 必ず成績が上がる | 誰にでも当てはまるという根拠 | 消すか、実際の値と対象を書く |
| 前年比○倍 | 2年分を同じ基準で数えたか | 両年の人数と年度を並べて書く |
根拠の欄がそろわない行の表現は、教室長が掲載の判断に進む前に下書きから外します。「必ず」「全員」「〇点アップ保証」を外した後に成績の変化を書くなら、何人の生徒の、どの期間の、どのテストの値かを添えます。
原稿の型は教室で回せる、実績の集計は本部とそろえる
グループや本部の名前で合格実績を出す告知は、教室の集計表だけでは数が決まりません。系列の2つの塾で条件を満たした生徒も、グループ全体では1人と数えるので、教室長は本部の集計に合わせた数を使います。
元原稿の型と依頼文、表現の確認表は、教室長と集客担当が教室で作って回せます。本部か外部の手が要るのは、複数の教室の集計表を同じ基準でまとめる仕組みや、告知の配信と問い合わせ・入会の記録を突き合わせる仕組みを作る所です。問い合わせや入会など、告知の前後の業務でのAIの使い方は学習塾の業務ごとのAI活用の記事から選べます。
次の冬期講習の告知から、集客担当が照合で直した数字と、教室長が消した表現の件数を書き残し、AIの下書きを続けるかを見ます。直す数字が告知のたびに出るなら、AIに数字まで書き写させる形をやめます。教室長が数字の箇所を空けた下書きを作らせ、集客担当が元原稿から書き入れる形に戻します。
本部の集計と教室の集計表で合格者数が食い違ったまま、どちらが正しいかを教室長が説明できない時期は、実績の数字を告知に使いません。その食い違いが講習生や系列の塾をまたいだ生徒の扱いから来ているなら、集計の基準を本部とそろえる作業が、告知文より先に片づける仕事になります。
明日から始める3ステップ
担当 教室長
冬期講習の告知の元原稿を1枚作り、対象学年・講座・日程・定員・料金・締切と、教室長が決めた訴求の1文を書き込む
次へ進む目安元原稿に訴求と6つの項目がそろい、合格者数の行は集計の年度を書く欄だけが空いている
担当 集客担当
在籍と直前6か月の受講時間・受講月数で今年の合格者を数え、AIが作った3つの下書きに数を書き入れて、料金・締切と一緒に元原稿と見比べる
次へ進む目安チラシ・Instagram・LINEの下書きの数字と日付がすべて元原稿と一致し、合格者数の横に集計の年度が入っている
担当 教室長(記録は集客担当)
確認表の4つの表現を下書きから消すか直してから掲載を決め、照合で直した数字と消した表現の件数を告知ごとに書き残す
次へ進む目安冬期講習の告知の件数が確認表の横に記録され、消した表現が新学期の元原稿に書かせない表現として追記されている
無料相談(オンライン)
BoostXは、学習塾・スクールの問い合わせ・教材・保護者連絡へのAI導入を支援しています
01無料相談
問い合わせの返信・教材・保護者連絡から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)e-Gov法令検索第5条第1号(不当な表示の禁止)・第7条第2項(合理的な根拠を示す資料の提出) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.25
- 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)e-Gov法令検索第43条(誇大広告等の禁止) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.25
- 合格実績自主基準の変更について(令和6年7月1日)2.合格実績基準の変更内容・3.その他(体験授業・模試のみ)・3.その他(グループ内の重複)・合格実績に関する自己評価シート(単年度か累積か) 公益社団法人全国学習塾協会 確認日 2026.10.25
- 株式会社バンザンに対する景品表示法に基づく措置命令について本文PDF 2(1)イ 消費者庁 確認日 2026.10.25
- 新井長官記者会見要旨(2024年9月26日)(No.1表示に関する実態調査報告書) 消費者庁 確認日 2026.10.25
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり








