塾のコマ割り・シフトはAIにどこまで?1日のコマ数と休憩は教室長が確認
講習や新学期の編成を任されている個別指導塾の教室長と、その編成を見る経営者・教務責任者が読む想定です。
講習期のコマ割りでは、空きの多い大学生講師ほどコマが集まりやすく、授業前の準備や授業後の報告書の時間まで足すと、1日の労働時間が見込みより長くなります。原案づくりをAIに頼むなら、どんな表を条件として渡せば二重予約と休憩の抜けを防げるのか。原案のどこに教室長が手を入れるのかを、労働基準法の条文と労働局が公表した学習塾の事例を手がかりに整理しました。

先に結論
コマ割り・講師シフトの原案は、締め日でそろえた講師の空き・担当科目・生徒の希望コマ・ブース数を条件にしてAIに組ませ、埋まらないコマと重複の一覧も同時に出させるところまでを任せられます。講師と生徒の組み合わせの入れ替え、授業前後の時間を足した講師ごとの1日の労働時間と休憩の確認、割り当ての確定は教室長が行います。
希望と空きの締め日がそろっていないとき、講習期でコマが増えた日に1日8時間を超える講師がいるとき、時間外・休日労働の協定の範囲が分からないときは、AIの原案を確定に使いません。教室長が表を直して作り直させるか、本部か社会保険労務士に確かめてから決めます。
AIのシフト原案に、相性と授業外の時間は入っていない
AIが組むコマ割りの原案は、渡した表にある空き・科目・希望だけから作られ、講師と生徒の組み合わせや講師ごとの1日の労働時間は原案の外に残ります。講習の編成を教室長とAIの担当で分けたのが次の図です。
図の要点:講習の編成を教室長とAIの担当で分けた図。教室長が締め日の空き一覧と希望コマ一覧をそろえ、AIがブース数と1日の上限コマ数の中で原案を作り、埋まらないコマ・重複・講師の過不足を一覧にする。教室長が避ける組み合わせと担当の経緯で入れ替え、授業外の時間を足した1日の労働時間と休憩を確かめてから、割り当てを確定して講師と生徒に伝える。
原案を組むのはAI、組み合わせと1日の労働時間を確かめて確定するのは教室長
教室長
AI
- 教室長
締め日の空き一覧と希望コマ一覧をそろえる
生徒は記号・学年・科目で書く
- AI
ブース数と1日の上限コマ数の中で原案を作る
休憩の枠を入れた案にする
- AI
埋まらないコマ・重複・講師の過不足を一覧にする
判断できない所は「未確認」で返す
- 教室長
避ける組み合わせと担当の経緯で入れ替える
戻す締め日後の変更は表を直して組み直す
- 教室長
授業外の時間を足し、1日の労働時間と休憩を見る
戻す8時間を超える日は協定を確かめるまで保留
- 教室長
割り当てを確定し、講師と生徒に伝える
欠席の振替は別の手順で扱う
AIが受け持つのは原案と一覧の2つだけです。図の中で「戻す」とした2か所が、AIの原案をそのまま使えない確認で、ここを通っていない原案は講師にも生徒にも配りません。
コマ割りは、授業の時間枠(コマ)に生徒と講師を割り当てる編成の作業で、個別指導塾では講習期や新学期のたびに組み直します。講師と生徒の相性、保護者から頼まれた担当替えの経緯、授業の前後に講師が使う準備や報告書の時間は、表に書かない限りAIの原案に入りません。
仮の場面を一つ置きます。冬期講習の編成で、教室長が講師の希望表と生徒のコマ希望をAIに渡しました。すると空きの多い大学生講師1人に朝から夜まで連続でコマが並び、休憩の枠はどこにもありませんでした。AIは空いている講師にコマを入れるという条件どおりに組んだだけで、その講師のその日の労働時間が何時間になるかは見ていません。
講師の空きと生徒の希望は、同じ締め日の表でAIに渡す
AIは渡された空きを正しいものとして原案を組むため、二重予約を防ぐには、希望の締め日を決めてその日の表だけを渡します。個別指導塾の講師には大学生などの非常勤が多く、試験期間や就職活動で空きが週ごとに変わるからです。
仮に2週間前の希望表で原案を作ると、その間に振替の授業が入った講師に、同じ時間のコマがもう1つ割り当てられることがあります。古い表と新しい表を混ぜて渡しても、AIはどちらが正しいかを判断できません。
生徒は氏名ではなく、記号・学年・科目・希望コマで表に書きます。ただ、記号にしても教室の名簿で本人に結び付く情報は、個人データのままと考えられます。その表を入れてよいサービスか、委託として扱える契約かを、本部で確かめてから使います。
【説明用の架空の記入例】講師の空き一覧(12月20日締め)
| 講師 | 12月26日の空き | 担当科目と1日の上限 |
|---|---|---|
| T01 | 13:00〜21:30 | 中学数学・理科/○コマまで |
| T02 | 17:00〜21:30 | 中学英語・国語/○コマまで |
| T03 | 試験のため不可 | 高校数学/○コマまで |
生徒の希望コマ一覧も同じ締め日の分を使い、「S01/中2/数学/26日の夕方」のように1行に1コマずつ書きます。AIへの依頼文は、次のように条件と出させる形を具体的に書きます(説明用に作った仮の依頼文です)。
講師の空き一覧と生徒の希望コマ一覧(どちらも12月20日締め)から、12月26日〜28日の冬期講習のコマ割りの原案を作ってください。ブースは1コマにつき8つまで。講師は担当科目の欄の科目だけを受け持ち、1日のコマ数は上限の欄を超えないこと。授業時間に授業前後の時間の欄を足して6時間を超える日は45分、8時間を超える日は1時間の休憩の枠を授業の間に入れること。避ける組み合わせの一覧にある講師と生徒は組まないこと。
割り当てられなかった希望コマ、講師が足りない時間帯、同じ講師が同じ時間に2つ入っている所は別の一覧にすること。一覧にない情報で判断が要る所は「未確認」と書くこと。
返ってきた原案は、教室長が締め日の後に届いた変更の連絡と照合します。空きが変わった講師がいれば、その講師の行を直した表で原案を作り直させます。
講習期の1日のコマ数は、労働時間と休憩から上限を決める
労働基準法は、使用者は休憩時間を除き1週40時間・1日8時間を超えて労働させてはならないと定めています(第32条)。労働時間が6時間を超えるときは少なくとも45分、8時間を超えるときは少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中に与えなければなりません(第34条第1項)。
数える労働時間は授業の時間だけではありません。厚生労働省のガイドラインは、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たるとしています。
神奈川労働局の学習塾向けの資料(平成30年2月)は、指示による授業前の準備、授業後の報告書等の作成、質問対応の時間も労働時間として把握するよう求めています。休憩も、土日祝日を含め、授業と授業以外の労働時間の合計で6時間・8時間を数えるとしています。
そのため、授業時間だけで数えた1日の時間と、授業前後の準備や報告書の時間を足した1日の労働時間は違い、休憩が要るかどうかは後者で決まります。たとえば授業だけでは5時間半の日でも、授業前の準備と授業後の報告書に30分ずつかかれば6時間を超え、45分の休憩が要る日に変わります。原案ができたら、教室長が講師ごとに次の4つを確かめます。
| 確認すること | AIに出させる形 | 教室長が決めること |
|---|---|---|
| 1日の労働時間 | 講師ごと・日ごとの授業時間の合計 | 準備と報告書の時間を足して数える |
| 休憩の枠 | 6時間・8時間を超える日に枠を入れた案 | 休憩を置くコマの間を決める |
| 授業外の時間 | 講師の欄の値を合計に足した数 | 講師ごとの欄の値を決める |
| 連続コマ | 休憩なしで続くコマの一覧 | 続けてよいコマ数を決める |
表の4行を埋めると、講師ごとの1日の上限コマ数と、休憩をどのコマの間に置くかが決まります。上限の値は講習の時間割と授業外の業務の量から塾が決めるもので、どの塾にも当てはまる数はありません。
同じ資料には、当時の神奈川県の監督指導の例も載っています。時間外・休日労働協定の締結・届出なく、夏休みなどの期間にアルバイト講師へ1コマ90分の授業を1日に最多7コマ(合計10時間30分)行わせていた事例です。この塾は労働基準法第32条違反として是正勧告を受けました。講習期の原案では、8時間を超える日がないかを講師ごとに見ます。
原案に1日8時間を超える日がある講師は、時間外・休日労働の協定があるか、その範囲に収まるかを本部か社会保険労務士に確かめるまで、その日の割り当てを確定しません。協定の範囲が分からないときも同じです。
講師と生徒の組み合わせは、AIの原案の上で入れ替える
AIに渡すのは「この講師とこの生徒は組まない」という避ける組み合わせだけで、どの組み合わせが合うかは教室長が原案の上で入れ替えて決めます。前の担当を続けたい・替えたいという保護者の希望や学力の差は、AIに渡す表からは分からないからです。
保護者から頼まれて外した組み合わせも、記録に残っていなければ、AIは空きと科目が合うという理由で元に戻してしまいます。担当替えの依頼を口頭で受け、教室長しか経緯を知らない場合もあります。
避ける組み合わせの一覧は教室長が持ち、更新した日を書きます。AIに渡すのは講師と生徒の記号の組だけで、担当替えの理由や家庭の事情は渡しません。受験学年のように担当を動かしたくない組み合わせは、先に固定して残りのコマだけをAIに組ませる方法もあります。
埋まらないコマと講師の過不足は、AIに一覧で出させる
原案と同時に、割り当てられなかった希望コマ、講師が足りない時間帯、同じ講師の重複をAIに一覧で出させると、次に連絡する相手が分かります。講師へ追加のコマを打診するか、生徒に時間の変更を相談するか、本部へ報告するかは、この一覧を見て教室長が決めます。
経済産業省の特定サービス産業動態統計調査(2024年12月)で見ると、調査対象企業の学習塾の講師136,571人に対し、非常勤講師は122,114人です。全国の総数ではありませんが、講師の多くが非常勤で、学業や本業の予定の合間に入っている人が中心です。追加のコマを打診するのは、講習期の確認表で労働時間と休憩に余裕があると分かった講師に限ります。
講師の不足が講習のたびに同じ時間帯で続くなら、本部へ採用や応援を相談する材料になります。本部での数字のそろえ方は教室別・コース別の業績集計にまとめています。欠席の後の振替はシフト・教室運営の業務の中の別の作業で、振替日は教室で人が確定します。
協定の確認と勤怠との突き合わせを、誰に頼むか
講習期に1日8時間を超える日が出る講師の協定の確認と、原案に組んだコマ数を勤怠の記録と突き合わせる作業は、教室長の手元だけでは終わりません。協定があるか、その範囲で何時間まで延ばせるか、就業規則で休憩をどう定めているかは、本部の労務担当か社会保険労務士に確かめます。
外部の手を借りるのは、勤怠の記録から出した労働時間と原案を比べる仕組み、複数教室の希望表を同じ型にそろえる仕組み、講師管理のシステムと原案をつなぐ作業です。締め日つきの希望表の型、上限コマ数と授業外の時間の欄、避ける組み合わせの一覧、4行の確認表は、教室長が教室で作れます。
授業外の業務の時間を賃金でどう扱うかは講師求人の原稿で時給と授業外の業務を書く方法で、問い合わせから成績報告までのほかの業務は教育業界の業務別の記事で扱っています。
最初に試すのは、次の講習1回分の編成です。教室長が希望表を締め日つきの型にそろえてAIに原案を作らせ、編成にかかった時間(時間)と、原案から確定までに組み替えた回数(回)を記録します。手で組んだ前回の講習より時間も回数も減らなければ、次の講習は手で組む方法に戻します。
講習期に、原案に組んだ授業の時間と勤怠の記録の時間が講師ごとに合わない日が出たら、その差の理由を確かめる作業が外部の仕組みへ移す候補になります。理由が授業外の業務の記録漏れなのか、原案の外で足したコマなのかを、教室長が勤怠の記録を見て言えるうちは、教室の表で続けられます。
明日から始める3ステップ
担当 教室長
次の講習1回分について、講師の空き一覧と生徒の希望コマ一覧を同じ締め日の型にそろえ、講師ごとに担当科目・1日の上限コマ数・授業前後の時間の欄を足す
次へ進む目安締め日の日付が入った2つの一覧と避ける組み合わせの一覧が、AIに渡す前にそろっている
担当 教室長
3つの一覧からAIに原案と未割当・重複の一覧を出させ、講師ごとの1日の労働時間と休憩の位置を確認表で確かめてから、組み合わせを入れ替えて確定する
次へ進む目安講習の全日程で講師ごとの労働時間と休憩の位置が記入され、8時間を超える日には本部か社会保険労務士の回答が付いている
担当 教室長(報告先は経営者)
編成にかかった時間と、原案から確定までに組み替えた回数を、手で組んだ前回の講習と並べて記録する
次へ進む目安前回と今回の2回分の数字が1枚の表に並び、次の講習もAIで原案を作るかを経営者と決めている
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01無料相談
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02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)e-Gov法令検索第32条(労働時間)・第34条第1項(休憩) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.24
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(3 労働時間の考え方) 厚生労働省 確認日 2026.10.24
- 神奈川労働局「学習塾における講師等の労働条件確保・改善のポイント」(p.2 2 労働時間について・p.3 4 休憩時間について・p.4 6 学習塾の講師等に係る監督指導例【事例4】) 厚生労働省 神奈川労働局 確認日 2026.10.24
- 経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」19表 学習塾(2024年12月分・確報)19表実数 2024年12月 講師数(合計・専任講師・非常勤講師) 経済産業省(e-Stat) 確認日 2026.10.24
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