塾講師の求人原稿をAIで書く、時給と授業外の扱いは教室長が決める
講師の求人原稿を教室長が授業の合間に書いている学習塾で、原稿の条件と表現に責任を持つ教室長・本部の採用担当・経営者が対象です。
講師の卒業と講習前の増員が重なると、教室長は授業の合間に求人原稿を書き直すことになります。AIに頼めば読みやすい原稿はすぐに出ますが、そこに載る時給は求人でよく見かける数字で、自塾の条件とは限りません。法律で明示が求められる労働条件の項目ごとに、AIの下書きに任せる欄と教室長が自分で書く欄の分け目を、分担表で確かめられます。

先に結論
塾講師の求人原稿でAIに書かせてよいのは、授業の様子、研修の流れ、教室の雰囲気、応募から初回勤務までの流れといった紹介文までです。賃金、就業時間、勤務する教室と担当業務の変更の範囲、契約期間と更新の基準など、厚生労働省が最低限の明示を求める12の項目は、教室長が自塾の条件表から写して確定します。
コマ給の塾では、AIが出す「時給○円以上」を残さず、1コマの長さと単価、授業の準備や報告書作成などの業務の時間額を分けて書きます。性別や年齢で応募者を絞る語がAIの下書きに混じったら教室長が消し、例外に当たるかは社労士か労働局に確かめます。
条件表が無いとき、授業外の業務の単価を決めていないときは、AIの原稿を掲載しません。掲載した後に時給や授業の時間帯を改めたら、その日のうちに全ての掲載先の原稿を差し替えます。
AIの求人原稿に自塾の賃金の決め方は載らない
AIが書く求人原稿の時給や勤務条件は、求人でよく見かける言い回しから組み立てた条件です。自塾の就業規則や、授業1コマごとに払うのか時間で払うのかといった賃金の決め方を写したものではありません。
図の要点:求人原稿を2つに分けた比較の図。AIが下書きしてよい紹介文は、授業の様子と担当の例、研修の順番と初めて授業に入るまでの流れ、教室の雰囲気と道順、媒体ごとの文字数に合わせた言い回し。教室長が条件表から写す労働条件は、業務内容と就業場所(それぞれの変更の範囲)、賃金(1コマの長さと単価、授業外の業務の時間額)、就業時間・休憩時間・休日・時間外労働、契約期間と更新の基準・試用期間、加入保険・受動喫煙防止措置・募集者の名称の12項目。
紹介文はAIの下書きでよい。労働条件の欄は教室長が条件表から写す
AIが下書きしてよい紹介文
- 授業の様子と担当する学年・科目の例
- 研修の順番と、初めて授業に入るまでの流れ
- 教室の雰囲気と最寄り駅からの道順
- 媒体ごとの文字数に合わせた言い回しの調整
教室長が条件表から写す労働条件
- 業務内容と就業場所、それぞれの変更の範囲
- 賃金(1コマの長さと単価・授業外の時間額)
- 就業時間・休憩時間・休日・時間外労働
- 契約期間と更新の基準・試用期間
- 加入保険・受動喫煙防止措置・募集者の名称
労働条件の側の12項目は、どれも教室長が条件表から確定します。AIに書かせてよいのは業務内容と就業場所に添える紹介の文までで、条件の中身と数字は書かせません。条件表とは、就業規則と労働条件通知書のひな形から、この12項目を1枚に写した表を指します。
説明用の仮の場面です。春期講習の3週間前、個別指導の教室で大学4年の講師が3人卒業します。教室長が授業の合間にAIへ「塾講師・大学生・週1日から」と打つと、明るい紹介文と「時給1,500円以上」の一行がすぐに出てきます。ただ、この教室は時給を2年前の原稿から改めており、授業の前後に書く報告書の時間をどう払うかは、原稿のどこにも書かれていません。
職業安定法は、労働者の募集を行う者に、業務の内容と賃金、労働時間その他の労働条件を明示する義務を課しています(第5条の3)。広告で募集するときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないとも定めています(第5条の4)。AIが出した相場らしい数字を掲載すれば、それが塾の示した労働条件になります。
明示が要る労働条件と、AIが書いてよい紹介文
原稿の条件の欄のうち、AIが文を書いてよいのは業務内容と就業場所の紹介の部分だけで、ほかの6つの欄は空欄のまま返させます。
2024年4月1日から、募集時に明示する労働条件に、従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準の3つが加わりました。
厚生労働省のリーフレットは、最低限明示する労働条件を表にしています。並ぶのは次の12項目で、業務内容、契約期間、試用期間、就業場所、就業時間、休憩時間、休日、時間外労働、賃金、加入保険、受動喫煙防止措置、募集者の氏名または名称です。
| 原稿の欄 | AIの下書き | 教室長が確定すること |
|---|---|---|
| 業務内容 | 授業の様子と担当の例 | 担当業務と変更の範囲 |
| 就業場所 | 教室の様子と道順 | 勤務する教室と変更の範囲 |
| 賃金 | 空欄で返させる | 1コマの単価と授業外の時間額 |
| 就業時間・休憩・休日 | 空欄で返させる | 授業の時間帯と休憩・休日 |
| 時間外労働 | 空欄で返させる | 有無と月の見込み |
| 契約期間・試用期間 | 空欄で返させる | 更新の基準・上限と試用の有無 |
| 加入保険・受動喫煙 | 空欄で返させる | 加入する保険と措置の内容 |
| 募集者の名称 | 空欄で返させる | 雇う法人の正式な名称 |
「空欄で返させる」の6行は、AIの下書きの時点で「【教室長が記入】」の印が残っているのが正しい形です。印が消えて数字や文が入っていたら、その下書きは条件表と照合する前に作り直させます。
塾の原稿では、業務内容の変更の範囲に担当する科目・学年や事務の業務が、就業場所の変更の範囲に系列のほかの教室が入ります。
AIに渡すのは、前回の原稿の紹介文と、指導の形・対象の学年と科目・研修の順番・応募から初回勤務までの流れといった教室の情報だけです。指示文には3つの注文を入れます。表で「空欄で返させる」とした6つの欄には数字や条件を入れず「【教室長が記入】」と書くこと、渡した情報に無いことは「未確認」と書くこと、性別や年齢に触れないことです。
返ってきた下書きは、教室長が条件表と1欄ずつ照合してから掲載します。
求人広告の字数が足りないときは、「詳細は面談時にお伝えします」と付けて労働条件の一部を後で示せます。その場合でも、原則として面接などで最初に会う時点までに、全ての労働条件を示さなければなりません。AIが字数に合わせて条件の欄を省いた原稿は、そのまま出しません。
コマ給の原稿は授業外の業務と単価まで書く
コマ給の塾の原稿では、1コマの長さと単価に加えて、授業の準備や報告書作成など授業外の業務の時間額を書きます。
神奈川労働局の資料は、授業給と、授業の準備・片付け、生徒からの質問・相談対応、報告書作成、講師研修などの業務に払う業務給を分ける記載例を示しています。記載例は「授業給 1コマ80分 ○○○円(時間額□□□円)」と「業務給 時間額△△△円」の2行です。1コマに授業前の準備10分と片付け10分を含めて100分とする例もあります。
これは採用時に渡す労働条件通知書の記載例で、求人原稿の様式ではありません。ただ、原稿と通知書で賃金の書き方が食い違えば、応募した講師に誤解を生みます。
同じ資料には、授業前10分と授業80分の合計90分を1コマとし、生徒の欠席で授業が中止になった日に事務作業をさせて1コマ1,200円を払っていた事例があります。時間給に換算すると800円で、当時の県の最低賃金を下回り、是正勧告を受けました。1コマの長さを書かずに単価だけを載せた原稿では、応募者がこの換算をできません。
【説明用の架空の記入例】AIの下書き: 週1日・1コマからOK、時給1,500円以上/教室長が直した原稿: 授業給 1コマ80分 ○○○円(時間額□□□円)。授業の準備・片付け、報告書作成、質問対応、研修は業務給 時間額△△△円。金額は伏せ字で、実在の塾の条件ではありません。
授業外の業務にいくら払うかを決めていない塾は、原稿を書く前に、賃金の決め方そのものを社労士と見直します。単価が決まっていない欄を、AIの文で埋めて掲載しません。
「女性講師歓迎」「30歳まで」はAI任せにしない
AIの下書きに混じる性別や年齢で応募者を絞る語は、教室長が消して、仕事の事実で言い換えます。
| AIが書きがちな表現 | 使えない理由 | 言い換え |
|---|---|---|
| 女子大生の先生が活躍中 | 性別で応募者を絞る | 大学生の講師が多く在籍 |
| 20代中心・30歳まで | 年齢で応募者を絞る | 未経験の方は研修から |
| 誰でもすぐ稼げます | 誤解を生む表示になる | 1コマの長さと単価を書く |
言い換えた原稿に、性別や年齢を示す語が残っていないかを教室長が読み直し、残っていなければ掲載します。
男女雇用機会均等法は、事業主に、募集と採用で性別にかかわりなく均等な機会を与えることを求めています(第5条)。労働施策総合推進法も、厚生労働省令で定めるときに年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう事業主に求め、例外は省令で決まっています(第9条)。
例外に当たるかはAIに判断させず、教室長が社労士か労働局に確かめてから原稿の文面を決めます。
掲載中の原稿は時給を改めた日に差し替える
時給や授業の時間帯を改めたら、その日のうちに、求人媒体・自塾サイト・ハローワークの求人票など全ての掲載先の原稿を差し替えます。
職業安定法は、広告で募集する者に、募集の情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めています(第5条の4第2項)。厚生労働省のリーフレットは、その方法の例として、募集広告に掲載した時点を示すことを挙げています。原稿の末尾には、掲載した日付を書き入れます。
古い原稿は、自塾サイトは直したのに求人媒体だけ改定前の時給のまま、という形で残ります。掲載先を一覧にして、掲載先ごとの掲載日と条件表の改定日を並べておけば、どの原稿が古いかが分かります。月初にこの一覧で食い違いを数え、1件でも見つかった月は、次の改定から差し替えの担当を本部の採用担当に移します。
誤った条件のまま掲載していたと分かったときは、まず全ての掲載先の原稿を止めるか差し替えます。すでに応募した人には、面接までに正しい条件を示し、面接の途中で条件が変わる場合は、その変更の内容を伝えます。
原稿づくりでAIに渡すのは募集の条件と教室の情報に限り、応募者の氏名や連絡先は入れません。応募が届いた後にそうした情報をAIで扱う運用を考えるなら、本部が利用規約と契約を先に読みます。確かめるのは、AIの事業者が入力された情報を取り扱わない約束を契約で定め、実際に見られないよう制限しているか、委託に当たるか、第三者への提供に当たるかです。
教室長が書ける原稿と、本部や社労士に回す原稿
複数の教室を持つ塾で、教室ごとに勤務できる教室と担当科目の変更の範囲を書き分ける原稿は、本部の採用担当が条件表を持ちます。コマ給と授業外の業務の時間額を決め直す原稿と、有期契約の更新の上限を初めて決める原稿は、社労士に確かめてから書きます。性別や年齢の例外に当たるかを判断する原稿も、社労士か労働局に回します。
1つの教室で、条件表がそろっていて、掲載先が自塾サイトと求人媒体くらいなら、教室長がAIの下書きと条件表で原稿を回せます。原稿や受付の仕事が教室長に集中して書く時間そのものが取れない教室では、受付の作業を時間帯と種類で分けて手放す作業を決める方法も参考になります。
教室をまたいで原稿の型をそろえ、条件表の改定を全ての掲載先へ流す仕組みを作る段階になると、外部の手を借りる場面が出てきます。応募への連絡や面接、研修の進め方は講師の採用・研修の業務の全体で、塾の業務全体の一覧は学習塾・教育のAI活用の業務別の入口で探せます。
最初の作業は、教室長が条件表の12項目を埋め、埋められない項目を社労士に確かめる事項として書き出すことです。測るのは、原稿1本を書き終えるまでの分数と、月初に数える掲載中の原稿と条件表の食い違いの件数の2つです。分数がAIを使う前より短くならない、または食い違いが続くなら、原稿の型づくりを本部か外部の手に移す時期です。
明日から始める3ステップ
担当 教室長(複数教室の塾は本部の採用担当)
就業規則と労働条件通知書のひな形から、業務内容と変更の範囲、契約期間と更新の基準、試用期間、就業場所と変更の範囲、就業時間、休憩時間、休日、時間外労働、賃金(1コマの長さと単価、授業外の業務の時間額)、加入保険、受動喫煙防止措置、募集者の名称の12項目を1枚の条件表に写し、表の上に改定日を書く
次へ進む目安条件表の12項目が全て埋まり、改定日が入っている。埋められなかった項目は社労士に確かめる事項として一覧になっている
担当 教室長
前回の求人原稿の紹介文と教室の情報だけをAIに渡し、条件の欄は空けたまま紹介文の下書きを作らせる。教室長が条件表から条件の欄を写し、性別・年齢の語と言い切りの表現を言い換え表で確かめ、原稿1本にかかった分数を書き留める
次へ進む目安原稿1本の全ての条件の欄が条件表と1項目ずつ照合済みで、性別・年齢で応募者を絞る語が0語、作成の分数が記録されている
担当 本部の採用担当(単一教室の塾は教室長)
求人媒体・自塾サイト・ハローワーク・大学の掲示など掲載先を一覧にし、掲載先ごとの掲載日と条件表の改定日を並べる。条件を改めた日に全ての掲載先を差し替える担当を決め、月初に原稿と条件表の食い違いを数える
次へ進む目安一覧の全ての掲載先で掲載日が条件表の最新の改定日より後になっており、原稿と条件表の食い違いが0件である
無料相談(オンライン)
BoostXは、学習塾・スクールの問い合わせ・教材・保護者連絡へのAI導入を支援しています
01無料相談
問い合わせの返信・教材・保護者連絡から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)e-Gov法令検索第5条の3第1項(労働条件等の明示)・第5条の4第1項(求人等に関する情報の的確な表示)・第5条の4第2項(正確かつ最新の内容) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.16
- 厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」(職業安定法施行規則が改正されました) 厚生労働省 確認日 2026.10.16
- 厚生労働省リーフレット「求人企業の皆さま 募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」(LL050628 需02)(p.1 最低限明示しなければならない労働条件・p.2【参考】明示するタイミング等について) 厚生労働省 確認日 2026.10.16
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)e-Gov法令検索第5条(性別を理由とする差別の禁止) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.16
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)e-Gov法令検索第9条(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.16
- 神奈川労働局「学習塾における講師等の労働条件確保・改善のポイント」p.2 労働条件通知書への記載例(時間給等の場合)・p.4 事例3 厚生労働省 神奈川労働局 確認日 2026.10.16
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