塾の教室別業績集計はどこまでAIに?退塾の数え方5項目を先に揃える
この記事は、複数の教室とコースを持ち月初に業績の表を表計算でまとめ直している状況にある、学習塾の経営者・管理担当・教室長向けです。
教室別・コース別の業績表は、管理担当には毎月の手間の問題で、経営者には数字が下がった教室にどう手を打つかの問題です。AIに表をまとめさせれば手間は減りますが、AIが「下がった」と示した教室をそのまま信じてよいかは別に考える必要があります。集計のどこまでをAIに渡し、何を先に決めておくかを、作業ごとの分担表と会議の前に確かめる表にしてあります。

先に結論
教室別・コース別の業績集計は、表の転記、前月比・前年同月比の計算、差の大きい教室とコースの抽出、会議資料の下書きまでならAIに任せて構いません。その前に、生徒数と退塾の数え方を経営者と教室長で一つに揃えておきます。差の理由の読み取りは教室長、講師の配置・料金・閉校などの対策は経営者の仕事として残ります。
開校1年目の教室、講師が交代した月、講習期間、在籍の少ないコースは、AIの要約や率だけで低調と判断しません。AIに渡すのは教室×コース×月の人数と金額の表だけで、生徒名・保護者名の入った一覧は入れません。
教室別の数字は、生徒数の数え方が揃うまで比べられない
教室ごとに生徒数の数え方が違うままAIに集計させると、出てきた差が教室の調子なのか数え方の違いなのか、見分けられなくなります。AIは渡された数字を正しく計算しますが、講習のみの生徒を在籍に入れたか、休会中の生徒を残したかは、教室ごとの表に書かれていないからです。
【仮の場面】3教室で小中高のコースを持つ個別指導塾の、冬期講習が明けた月です。管理担当が教室ごとの在籍一覧と請求データを貼り合わせ、AIに教室別・コース別の前月比と下がった所を出させたとします。AIは「B教室の中学コースが前月比で大きく減少」とまとめました。実際には、B教室だけが冬期講習のみの生徒を12月の在籍に数えていたため、講習が終わった1月に減ったように見えていました。
数え方を先に決めてから数えるのは、公的な統計でも同じです。令和3年経済センサス‐活動調査は、学習塾の受講生数を2020年12月31日時点で在籍(入会)している人数としています。そのうえで、冬期特別コースのみの受講生も含めると定めています。講習のみの生徒を入れるかどうかに唯一の正解は無いため、塾の中で一つに決めて全教室で揃えることが、比べられる表の前提になります。
AIに任せるのは集計と差の抽出まで
教室ごとの表を1つにまとめる転記、前月比・前年同月比の計算、差の大きい教室とコースの抽出、会議資料の下書きは、AIに任せられます。差がなぜ出たかを読むのは教室長で、講師の配置やコースの見直しなどの対策は経営者の判断です。
図の要点:教室別・コース別の業績集計を、管理担当が渡す人数と金額の表、AIが出す前月比と差の候補、教室長が元データで確かめる理由、経営者が決める対策の4つに分けた図。数え方の違いが原因なら教室長が管理担当へ戻す。
AIが出すのは差の候補まで。理由は教室長、対策は経営者の判断
管理担当が渡す表
- 教室×コース×月の在籍数・入会数・退塾数・休会数(人数だけ)
- 同じ区分の月謝売上(請求データから)
- 表の1行目に、全教室で揃えた数え方の決まり
AIが出すもの
- 教室・コースごとの前月比と前年同月比
- 差の大きい順の一覧と、表から言える事実だけの会議資料の下書き
- 渡した表から言えないことは「未確認」とする
教室長が確かめること
- 差の候補ごとに、講習の時期・講師の交代・開校からの月数・在籍の少なさを元データで確かめる
- 数え方の違いが原因なら、管理担当へ戻して表を作り直す
経営者が決めること
- 講師の配置換え、コースの見直し、料金、閉校や統合
- AIの要約の文は判断の根拠に使わない
教室長が数え方の違いとして戻した行は、その月の会議資料から外します。管理担当が決まりどおりに数え直した表で、次の会議に出し直します。
| 作業 | AIに任せること | 人が決めること・確かめること |
|---|---|---|
| 数え方を決める | 前月の表で、教室ごとに数え方が違いそうな行を示す | 分母・講習のみの生徒・休会・転籍・数える月の扱い(経営者が教室長と決める) |
| 表をまとめる | 教室ごとの人数と月謝売上を1つの表に転記する | 転記した表の合計を、表計算の合計と照合する(管理担当) |
| 比べる | 前月比・前年同月比と、差の大きい順の一覧 | どの差を会議の議題にするか(経営者) |
| 理由を読む | 表から言える事実だけを文にする | 講習・講師交代・面談の記録から理由を書く(教室長) |
| 対策を決める | 会議資料と議事録の下書き | 講師の配置・コース・料金・閉校や統合(経営者) |
生徒一人ずつの在籍一覧を教室×コース×月の人数にまとめる作業は、表計算のピボットテーブルか生徒管理システムの集計機能で済み、AIを使う必要はありません。AIに渡すのは、その人数と金額の表からです。
AIが出した前月比は、会議の前に管理担当が表計算で出した合計と照合します。合わない行が1つでもあれば、その月はAIの数字を使わず、表計算の数字で資料を作ります。
退塾率は分母と数える月を決めてからAIに集計させる
退塾率をAIに出させる前に、分母、講習のみの生徒・休会・教室間の転籍の扱い、数える月を決め、1枚の決まりにして全教室に配ります。退塾率の計算式は法令や公的な統計で一つに定められていないため、塾の中で決めて揃えるしかありません。決まりに書く項目は次の5つです。
分母
月初の在籍数にするか、月末の在籍数にするか講習のみの生徒
在籍に入れるか、講習生として別の行で数えるか休会
在籍に残すか、休会が何か月続いたら退塾に数えるか教室間の転籍
元の教室の退塾に入れるか、転籍として別に数えるか数える月
退会届を受けた月か、最後の授業の月か、月謝の請求が止まった月か
受験学年の卒業を途中の退塾と同じ数に入れると、受験学年の多い教室ほど3月の退塾率が高く見えます。卒業を別の数にしておけば、対策が要る途中の退塾だけを教室どうしで比べられます。卒業の扱いも、5項目と同じ1枚の決まりに書き添えます。
決まりは表の1行目に書き、AIへの依頼文にも同じ文を添えます。決まりを変えた月は、前の月を新しい決まりで数え直すまで前月比を出さず、会議資料に「数え方を変えた月」と書いておきます。
生徒名を外した教室別・コース別の表をAIに渡す
AIに渡すのは教室×コース×月の人数と金額だけの表で、生徒名・保護者名・生徒番号の入った在籍一覧や請求明細は渡しません。経営会議で教室とコースを比べるのに、生徒一人ずつの行は要らないからです。
生成AIへの個人情報の入力について、個人情報保護委員会は事業者向けの注意喚起を出しています。そこでは、個人情報を含む指示文を入れる前に、それが特定した利用目的に要る範囲に収まっているかの確認を求めています。本人の同意なく入力した個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、法律に違反する可能性があるとも示しています。名前の代わりに生徒番号を書いた行も、在籍台帳と突き合わせれば誰か分かるので、個人データとして扱います。
生徒一人ずつの記録をAIで扱いたくなったら、入力した内容がサービス側で学習に使われないかを、利用規約と契約書で最初に見ておきます。確かめる項目は学習記録のAI下書きの記事で扱っています。
在籍が数人のコースは、教室とコースと月の組み合わせから、教室の中では誰のことか分かる場合があります。退塾の理由のような家庭の事情は表に書き込まず、教室長の面談の記録に残します。依頼文は、たとえば次のように書きます。
【説明用の依頼文の例】添付は教室×コース×月の在籍数・退塾数・月謝売上の表です。数え方は表の1行目の決まりに従っています。教室・コースごとに前月比と前年同月比を出し、差の大きい順に5行を挙げてください。差の理由は推測せず、表に無いことは「未確認」と書いてください。
開校1年目や講師交代の教室は、AIの要約で低調としない
開校1年目の教室、講師が交代した月、講習期間、在籍の少ないコースに当たる行は、低調と決める前に元データと教室長の話で確かめます。率が大きく動いても、教室の力とは別の理由であることが多いからです。
【仮の場面】講師が交代した月から退塾が続くコースについて、AIの要約が「料金の見直しが必要」と書いたとします。料金は表にある数字なので、理由の推測を禁じない依頼文では、AIがそこに理由を寄せることがあります。教室長が面談の記録を読み直すと、退塾の相談で講師の交代が話題になっていた、という場合があります。
在籍5人の高校コースで1人が退塾すると、退塾率は20%(1÷5)です。説明のための計算で実測の値ではありませんが、在籍の多いコースと同じ表に並べると、会議でいちばん悪い数字に見えます。在籍の少ないコースは率ではなく人数で見て、数か月の動きで判断します。
| 確かめること | 見る元データ | 元データを出す人 |
|---|---|---|
| 開校から何か月目の教室か | 開校日と月ごとの在籍数 | 管理担当 |
| 講師が交代した月か | 講師の担当表とシフト表 | 教室長 |
| 講習の月か、講習のみの生徒を含むか | 講習の申込一覧と数え方の決まり | 管理担当 |
| 在籍の少ないコースか | コース別の在籍人数 | 管理担当 |
| 退塾の理由は何か | 面談の記録と退会届の理由欄 | 教室長 |
管理担当が出した元データで5つを確かめ、差の理由を会議資料に書くのは教室長です。
この表とAIの下書きで会議を3回開いたら、管理担当がAIの数字を直した件数と、教室長が数え方の違いとして戻した件数を並べます。3回目でも直した件数が減らなければ、AIへの依頼をやめて表計算の集計だけで資料を作るかを、経営者が決めます。
表を毎月作り直す手間が、仕組みに変える分かれ目
生徒管理システム、請求、会計、講師の勤務記録が別々の場所にある塾では、毎月の貼り合わせのたびに教室名やコース名の表記を手で直すことになります。その状態が続くなら、データをつなぐ作業は外部に頼む候補です。依頼文を工夫しても、元データの表記が揃わない限り、転記の誤りは毎月同じ所で起きます。
反対に、生徒管理システムから教室別・コース別の人数を書き出せ、請求も同じシステムから出せる塾なら、表計算の集計とAIの下書きで社内のまま続けられます。どちらにするかは、管理担当が毎月の貼り合わせにかけた時間と、手で直した表記の数を記録して決めます。
記録の置き場所を1つにまとめる考え方は、学習記録の一元化の記事が近い話です。
経営会議の表と数字の扱いは、経営・数値管理の業務にまとめています。ほかの業務は教育AI活用ジャーナルの業務別の入口から読めます。
新しい教室を出す年は、管理担当がつなぐ仕組みにも表計算にも、開校日と開校からの月数の欄を最初から入れておきます。開校1年目の教室を既存の教室と同じ基準で並べてしまう誤りを、会議の前に防げます。
明日から始める3ステップ
担当 経営者(決まりの案は管理担当)
在籍数と退塾率の数え方(分母、講習のみの生徒、休会、教室間の転籍、数える月)を1枚の決まりに書き、全教室長に配って先月の自分の教室の数字を数え直してもらう
次へ進む目安5項目すべてに扱いが書かれた決まりが全教室長に配られ、全教室の先月の在籍数と退塾数が同じ決まりで数え直されている
担当 管理担当
先月分の在籍・退塾・月謝売上を、生徒名と生徒番号の無い教室×コース×月の人数と金額の表にしてAIに渡し、前月比と差の大きい順の一覧を出させる。出てきた数字を表計算の合計と照合する
次へ進む目安AIの前月比が表計算の合計と全行で一致し、差の大きい順の一覧が教室長に渡っている
担当 教室長(確認と理由)・経営者(続けるかの判断)
差の候補ごとに会議前の確認表の5項目を元データで確かめ、理由を書き添えて会議に出す。会議3回分、AIの数字を直した件数と数え方の違いで戻した件数を月ごとに記録する
次へ進む目安3回分の会議資料すべてで差の候補に理由が書かれ、直した件数と戻した件数が月ごとに1つの表に並んでいる
無料相談(オンライン)
BoostXは、学習塾・スクールの問い合わせ・教材・保護者連絡へのAI導入を支援しています
01無料相談
問い合わせの返信・教材・保護者連絡から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)別添1(1)個人情報取扱事業者における注意点 ①・別添1(1)個人情報取扱事業者における注意点 ② 個人情報保護委員会 確認日 2026.10.22
- 総務省統計局「令和3年経済センサス‐活動調査 用語の解説(サービス関連産業)」11.オ 「学習塾」の受講生数(在籍者数) 総務省統計局 確認日 2026.10.22
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