製造業の品質検査AI|見逃しと過検出を数える品と止める人を先に決める
読んでほしいのは、外観検査を目視で回しながら、画像検査AIの装置の見積を取ろうとしている品質保証課長と工場長です。
目視の外観検査に人が足りず、画像検査AIの装置の見積を取ろうとしているところかもしれません。ただ、AIが候補に挙げなかった品に不良が混じっていても、数える仕組みが無ければ誰も気づけません。見積を取る前に品質保証課の中で決めておくことを、見逃しと過検出の数え方から、製造物責任法の期間、客先への届け出まで順に取り上げます。

先に結論
画像検査AIに渡すのは、限度見本から外れた箇所に枠を付ける候補出しと、検査成績書・不良記録の下書きまでです。候補に挙がった品は検査員が全数を限度見本と見比べて合否を決め、良品だった品を過検出として数えます。
見逃しを数えられるのは、候補に挙がらなかった品から検査員がロットごとに抜き取ったときだけです。抜き取りで不良が1件でも出たら、品質保証課長がその品番の候補出しを止め、特別採用も品質保証課長が判断します。
寸法や欠品のように数値や有無で言える項目は、従来の画像処理で足ります。AIを比べる意味があるのは、形と濃さが1個ずつ違う傷・打痕・汚れです。
候補外の品を抜き取らない限り、見逃しは記録に出ない
画像検査AIの見逃しは、候補に挙がらなかった品を検査員が抜き取って見ない限り、不良記録に一度も出てきません。そのため数える場所を分け、見逃しは候補外の品から、過検出は候補に挙がった品から検査員が数えます。
図の要点:候補に挙がった品と挙がらなかった品を左右に並べた比較。挙がった品は、AIが限度見本から外れた箇所に枠を付け、検査員が全数を限度見本と見比べて合否を決め、良品だった品を過検出として件数に残す。挙がらなかった品は、検査員がロットごとに決めた数を抜き取って見て、出た不良を不良記録に「候補外」と書き、1件出たら品質保証課長が候補出しを止める。
候補外の品を抜き取らない運用では、見逃しは数に出てこない
画像検査AIが候補に挙げた品
- AIが限度見本から外れた箇所に枠を付ける
- 検査員が全数を限度見本と見比べて合否を決める
- 良品だった品を過検出として件数に残す
候補に挙がらなかった品
- 検査員がロットごとに決めた数を抜き取って見る
- 出た不良は不良記録に「候補外」と書く
- 1件出たら品質保証課長が候補出しを止める
「候補に挙がらなかった品」の列で見逃しを数える元になるのは、1ロットから抜き取る個数です。検査基準書にこの個数の定めが無い品番は見逃しを数える手段が無いので、品質保証課長が個数を置くまで候補出しに載せません。
検査ロットが検査場に届くと、検査員は現品票と検査指示書で品番を確かめ、限度見本を作業台に置いて1個ずつ見比べます。時間が長くかかるのは、この見比べと、測定値や不良の中身を検査成績書・不良記録・ロット台帳へ写す作業で、画像の候補出しと記録の下書きもこの2か所に当たります。
候補に挙がった品を検査員が全数見るのは、枠が付いたことが不良の判定ではないからです。成績書と不良記録の下書きも同じで、写した桁と不良の分類を検査員が現品票と突き合わせてから締めます。
抜き取りの数と止める人を先に決める
抜き取りの数は、品番ごとに検査基準書にある抜き取りの定めをそのまま使います。人が見ていた頃の不良の件数と、候補出しを始めてからの件数を同じ基準で比べられるからです。定めが無い品番は、客先のラインに直接入る部品ほど多く、社内の次工程で全数を組み付けて確かめる部品ほど少なく置きます。
見逃しと過検出は、同じ不良記録に残しても役目が違います。見逃しは客先への流出につながるので、1件でその品番の候補出しを止めます。再開は、その傷の画像を学習に足した後です。過検出は検査員の手間に響くだけなので、止める理由にはなりにくい数字です。
それでも過検出を放っておくと、候補の多いロットが続いた日に、検査員は一覧を開かずに全数を目で見始めます。そこで、ロットあたりの候補の上限を先に置きます。上限を超える日が続く品番は、撮影の照明か治具の置き方を見直す目安です。
品質保証課長が毎ロット見るのは、不良記録の「候補外」の件数です。候補外の不良が出ないロットが何回続いても抜き取りをやめないのは、見逃しが出ていないことを示せる記録がそれしか無いからです。
良品で学ばせるか、不良画像で学ばせるかは品種で決める
品種が月単位で入れ替わる工場は良品の画像で、同じ品番を長く流す工場は不良の画像で学ばせるほうが、検査ロットで早く候補が出始めます。良品だけを覚えさせる形は良品から外れたものを候補に挙げ、不良を種類ごとに覚えさせる形は傷か汚れかまで候補に付けます。
| 比べる点 | 良品の画像だけで学ばせる | 不良の画像を種類ごとに学ばせる |
|---|---|---|
| 始められる品番 | 不良がめったに出ない品番でも始められる | 種類ごとに画像がたまった品番から |
| 不良記録の分類 | 分類は出ないので検査員が付ける | 傷・打痕・汚れの候補が付き、下書きが進む |
| 品種の入れ替え | 良品を撮り直せば追いつく | 画像がたまるまで、その不良は候補に出ない |
寸法や穴の有無、部品の欠品のように、基準を数値や有無で言える項目は、決めたルールで判定する従来の画像処理で足ります。AIを検討する意味があるのは、形と濃さが1個ずつ違う傷・打痕・汚れです。
同じ品番が年に数ロットしか流れない多品種少量の工場は、どちらの形でも品番ごとの画像がたまりにくく、画像の候補出しに向きません。その場合の入り口は、測定値の転記と不良記録の下書きです。見比べはいまの目視のままでも、転記にかかっていた時間を見比べに回せます。
立ち上げの長さは限度見本と不良画像の残り方で変わる
画像検査AIが比べる相手は、限度見本の写真です。現物の見本しか無い品種は、照明と角度をそろえて撮る作業が最初に来ます。見本が退色していれば、撮る前に客先と見本を取り直す相談が要ります。品質保証協定で見本の管理方法まで決めている客先なら、その合意も必要です。
次に立ち上げの長さを左右するのが、過去の不良画像です。不良品を写真に残してこなかった工場は、これから出る不良を貯める期間が、そのまま立ち上げの期間になります。撮影の治具や候補を見直す検査員の時間は、その後に積み上がります。
客先から預かった限度見本や図面を撮って社外のサービスへ送るなら、秘密保持契約で送ってよいかを品質保証課長が先に確かめます。撮った画像に検査員の手元や顔が写り込むなら、撮影日と工程から勤務表で本人に行き着くので、個人データとして扱います。送り先の契約は、帳票の出どころで決める生成AIへの渡し方に沿って読みます。
いま流している品目の外観検査を置き換える装置は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の革新的新製品・サービス枠では、工程の改善として対象外です。対象になる計画は新制度で対象になるAIの計画と経費の区分で確かめられます。
検査記録や是正処置の記事は品質管理に、見積から保全までの記事は製造の全業務の記事にあります。
製造物責任法の欠陥と検査基準書の不良は別物
製造物責任法第2条第2項は、欠陥を「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と定めています。消費者庁の製造物責任法の概要Q&Aは、安全性に関わらない単なる品質上の不具合は、この欠陥に当たらないと説明しています。検査基準書で不良と呼ぶ範囲と、法の上の欠陥は同じ範囲ではありません。
第3条は、引き渡した製造物の欠陥で他人の生命・身体・財産を侵害したとき、製造業者等が賠償の責任を負うと定めています。損害がその製造物だけに生じた場合は、この条の外です。候補を出したのがAIか人かは、この条の要件に入っていません。
請求できる期間は、損害と賠償義務者を知った時から3年、製造業者等が引き渡した時から10年です(第5条)。人の生命や身体を侵害した場合は、知った時からの期間が5年になります。10年の数え始めは消費者の手に渡った時ではなく、工場が製品を引き渡して流通させた時です。
同じQ&Aは、この法律が事業者への規制を定めたものではなく、部品の保存期間の規定も無いと説明しています。検査成績書とロット台帳を何年残すかは、客先との品質保証協定と社内の規程で定める事柄です。候補出しを始めた後は、候補の一覧と抜き取りの結果もロット番号で成績書と並べて残します。誰がどの品を見て合格にしたかを、後から示せるようにするためです。
品質保証協定の変更届けには、4つの項目を書いて客先に出す
届け出が要る客先には、候補出しの運用を4つの項目にまとめた書面を出します。品質保証協定には、検査の方法を変えるときに事前の届け出や承認を求める定めが入っている場合があります。目視の全数検査を、候補出しと抜き取りの組み合わせに変えるのも、この変更に当たるかもしれません。協定の条文は品質保証課長が読み、届け出の対象なら書面にして客先へ出します。
書面に書く項目は、候補に挙がらなかった品から目視へ回す数、見逃しが出たときに止める人、限度見本の写真を撮り直した日、記録を残す年数です。どれも候補出しを始める前に社内で決めておくことと重なります。協定に定めが無い客先でも、この4つを書き出しておけば、監査で検査方法を聞かれたときの答えになります。
【説明用の架空の記入例】品番B-3301(樹脂カバー)の届け出の書面です。品番・個数・年数はすべて架空で、推奨する値ではありません。
- 候補に挙がらなかった品から目視へ回す数: 1ロットにつき20個
- 見逃しが出たときに止める人: 品質保証課長
- 限度見本の写真を撮り直した日: 11月5日
- 記録を残す年数: 品質保証協定で定めた年数(この例では7年)
客先から検査方法の指定を受けている品番は、届け出より先に、品質保証課長が指定の変更を客先に相談します。指定のある品番は、社内の判断だけでは候補出しに切り替えられません。
検査装置の見積は、抜き取りの数が埋まってから取る
抜き取りの数、止める人、届け出に書く4項目は品質保証課の中でしか決められません。検査装置の見積を取るのは、それが埋まってからです。数え方が決まらないまま見積を取ると、装置を比べる基準が、装置の会社ごとに違う言い方になります。
候補に挙がらずに人が見つけた不良が見逃しで、候補に挙がって良品だった品が過検出です。最初の品番では目視の全数検査も残し、抜き取りでは見つからない見逃しまで同じロットで突き合わせて数えます。
撮影の照明と治具、学習のやり直しは、装置の会社や開発の支援に頼む部分です。見積の前提に抜き取りの数と止める条件を書いて渡すかを、AI顧問のような社外の相談役と詰める方法もあります。
試すロット数は、品質保証課長が先に決めておきます(たとえば20ロット)。最初の品番で目視と並べ、候補外の不良が0件のままそのロット数に届けば、候補外を抜き取りに替える届け出の書面へ進みます。途中で1件でも出たら、品質保証課長はその品番の候補出しを止め、その傷の画像を学習に足してから、同じロットで目視と並べて試す工程へ戻します。
明日から始める3ステップ
担当 品質保証課長
客先ごとに品質保証協定の条文を開き、検査方法の変更に届け出が要るかと、検査方法の指定がある品番を書き出す
次へ進む目安届け出に書く4項目が社内で埋まり、客先の指定の無い品番から最初に並べる1品番を選び終えた
担当 品質保証課の検査員
選んだ品番で目視の全数検査を残したまま同じロットに候補出しを並べ、ロットを締めるたびに見逃しと過検出の件数を不良記録から書き出す
次へ進む目安並べたロットのすべてで、2つの件数が不良記録の上に残っている
担当 品質保証課長
毎ロット、不良記録の「候補外」の件数とロットあたりの候補の数を見て、候補出しを続けるか止めるかを書き込む
次へ進む目安目視と並べた、先に決めたロット数(たとえば20ロット)で候補外の不良が0件だったことを品質保証課長が記録で確かめ、候補外を抜き取りに替える届け出の書面を書き上げた
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01無料相談
見積・日報・標準書から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 製造物責任法(平成6年法律第85号)(第2条第2項・第3条・第5条) デジタル庁 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.29
- 消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」(Q7・Q22・Q23) 消費者庁 確認日 2026.09.29
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.3版(1-2-1 革新的新製品・サービス枠) 独立行政法人中小企業基盤整備機構 確認日 2026.09.29
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