塾の授業計画のAI下書き、講師が書く4欄は目標・進度・教える順・宿題の量
授業計画づくりを講師一人ひとりに任せていて、計画の中身と講師ごとのばらつきに責任を持つ学習塾の教室長・教務の責任者・講師の方へ
講師から「授業計画をAIで書いてもよいですか」と聞かれても、使ってよいとも使わないでほしいとも答えにくいものです。授業の前の短い時間に、前回の指導報告書とテキストを見ながら計画を書く負担は減らしたい一方で、生徒に合わない計画のまま授業に入られては困ります。授業計画の欄ごとの分担と、AIの素案を使わない場面を取り上げます。

先に結論
次のコマの授業計画で講師が自分で書くのは、その日の目標、進度、教える順、宿題の量です。単元の順、時間配分、つまずきやすい箇所はAIの素案を使え、確認問題と宿題は候補や案として受け取ります。単元の順はテキストの目次に沿った項目の並びで、教える順はその並びから今日のコマで先に扱う項目を選ぶことです。
教える順を含む4つの欄は、前回の指導報告書と生徒の様子を見た講師でなければ決められません。AIの素案は単元の標準的な進め方で、目の前の生徒に合わせた計画ではないためです。
集団授業では、この4欄を含むクラスの計画を教務の責任者が確定してから講師へ配ります。個別指導では担当講師が決め、教室長は講師が替わった生徒と成績が下がった生徒の計画を点検します。前回の指導報告書が空の生徒、目次を渡せない独自教材、受験直前の志望校別の対策、担当教科でない講師の授業では、素案を使わず一から組みます。
AIの授業計画は目の前の生徒の理解度を知らない
AIが返す授業計画は、その単元を標準的に進めるときの計画です。前回のコマで生徒がどの問題で手を止めたかは、講師が渡さない限り計画に入りません。標準の進め方と目の前の生徒との差を埋める作業は、講師の側に残ります。
個別指導の教室で、夕方の最初のコマの前に、非常勤の講師が次のコマの授業計画を書く場面を仮に置きます。手元の指導報告書には「一次関数・傾きの意味があいまい」と一行あるだけです。AIに単元名だけを入れると、時間配分まで整った計画がすぐに返ってきます。ただし、その計画には、傾きの手前でつまずいているという事情が入っていません。
生徒をどれだけ知っているかは、講師ごとに違います。経済産業省が公表した特定サービス産業動態統計調査の2024年12月分では、調査の対象になった企業の学習塾の講師は136,571人でした。このうち非常勤講師は122,114人で、約89%を占めます。全国の総数ではない点に注意が要ります。
非常勤の講師が授業計画を書く教室には、担当して日が浅い講師もいます。そうした講師が素案と生徒の差に気づくための材料は、指導報告書しかありません。
文部科学省は2024年12月に、学校の教職員向けの生成AIのガイドラインを改訂しました。学習塾を対象にした資料ではなく、塾に義務を課すものでもありません。ただ、生成された内容の適切性を判断できる範囲内で利用し、最後は自分で判断するという考え方は、塾の授業計画づくりでも参考になります。
授業計画の素案でAIに渡す材料と返ってくる中身
素案がどこまで生徒に合うかは、渡す材料のうち前回の指導報告書の要点で決まります。単元名と目次だけでも計画は返ってきますが、生徒ごとの違いはこの要点からしか素案に入りません。
図の要点:授業計画の素案づくりを3つに分けた図。講師が渡す材料は、学年・教科・単元名とコマの長さ、テキストの目次、前回の指導報告書の要点と目標。AIが返す素案は、単元の順と時間配分、つまずきやすい箇所の候補、確認問題の候補と宿題の案。担当講師が決めるのは、その日の目標、どこから始めるか(進度)、教える順、宿題の量。
素案は単元の標準的な進め方。生徒に合わせる欄は担当講師が書く
講師が渡す材料
- 学年・教科・単元名とコマの長さ
- テキストの目次(該当の章)
- 前回の指導報告書の要点と目標
AIが返す素案
- 単元の順と時間配分
- つまずきやすい箇所の候補
- 確認問題の候補と宿題の案
担当講師が決める
- その日の目標
- どこから始めるか(進度)
- 教える順
- 宿題の量
図に書いていない決まりが、生徒の氏名と点数の扱いです。材料を渡す前に、教室長が外部のAIサービスの利用規約と契約書を確かめ、講師が入力してよい項目を書面にします。氏名と点数は入力せず、指導報告書の要点は「傾きの意味があいまい」のように学習の状況を表す言葉で書きます。
氏名を省いた記述でも、塾の生徒台帳や指導報告書と容易に照合でき、それで誰のことか分かるものは個人情報に当たります。生徒台帳のように検索できる形で整理した記録に入っている記述は、個人データにも当たります。契約書で確かめる項目は、未成年の学習記録を外部へ預ける前の契約と権限の確認にまとめています。
AIへの指示には、渡した目次に無い内容を書かないことと、分からない点を「未確認」と答えることを加えます。時間配分は、合計がコマの長さと一致する形で出させます。つまずきやすい箇所は、候補であることが分かる書き方を求めます。
講師が決めるのは進度と宿題の量と教える順
個別指導の授業計画では、目標・進度・教える順・宿題の量の4欄にAIの案が入っていても参考にとどめ、担当講師が生徒を見て自分で書きます。下の表の「講師がすること」は個別指導の担当講師の場合で、集団授業での分け方は次の節に書きます。
進度は、今日どこから始めてどこまで進むかを指します。
| 計画の欄 | AIの素案の扱い | 講師がすること |
|---|---|---|
| 単元の順 | 素案を使う | 目次と合うかを確かめる |
| 時間配分 | 素案を使う | 前回止まった箇所に足す |
| つまずきやすい箇所 | 候補として使う | 生徒に該当する候補を選ぶ |
| 確認問題 | 候補として使う | 解と難易度を確かめて選ぶ |
| その日の目標 | 参考にとどめる | 前回の理解度から決める |
| 進度 | 参考にとどめる | 前の単元へ戻るかを決める |
| 教える順 | 参考にとどめる | 先に扱う項目を決める |
| 宿題の量 | 参考にとどめる | 学校の課題を見て決める |
素案を使う欄でも、講師の確認は省きません。確認問題は、講師が自分で解いて解と難易度を確かめてから計画に入れます。
次は説明用の仮の例です。中学2年の数学、一次関数の60分のコマで、AIの素案は「導入5分・例題20分・演習25分・確認10分」と時間を割りました。前回の指導報告書に「傾きの意味があいまい」とある生徒なので、講師は例題の前に、1つ前の単元の比例へ戻る時間を足します。足した分は演習の時間から引きます。
同じ仮の例で、AIは宿題を「演習ページ2ページ」と出しました。定期テストの前の週で学校の課題が多い生徒には、講師が量を半分の1ページにします。素案から直した欄と理由は、授業の後に指導報告書へ一行で残します。この一行が、次のコマでAIに渡す要点になり、講師が替わったときの引き継ぎにも使えます。
個別指導と集団授業で変わるAIの素案の使い方
個別指導と集団授業では、素案の誤りが影響する授業の数が違います。そのため、計画を確定する人と点検する時点も変わります。
個別指導の計画は、生徒ごとの目標と進度表から組みます。素案に誤りがあっても、影響するのはその生徒の1コマです。計画は担当講師が決め、教室長は全員分を読みません。教室長が授業の前に読むのは、講師が替わった生徒と、成績が下がった生徒の計画です。
集団授業は、年間と月間のカリキュラム表が先にあり、1コマの計画はその表から切り出します。素案をそのままクラスの計画にすると、テキストの版や単元の順が違っていた場合に、その計画を使う全講師の授業がずれます。教務の責任者は、講師へ配る前にテキストの現物と単元の順を照合し、計画を確定します。
集団授業では、表で講師が決めるとした4欄も、クラス共通の計画として教務の責任者が決めます。担当講師はクラスの様子から変えたい欄があれば、授業の前に教務の責任者へ伝えます。講師の判断で変えてよい欄(たとえば宿題の量だけ)は、教務の責任者が先に決めておきます。
定期テストの前、学年の変わり目、講習の前は、学校の進度と範囲表に合わせて計画を組み直す時期です。この時期は、渡す材料に学校の範囲表の内容を加えます。
カリキュラム表に1コマごとの内容まで書いてある塾では、AIの素案は要りません。該当する行を授業計画へ写せば足ります。小テストと宿題の問題づくりは別の作業で、授業・カリキュラム準備の業務の全体に並べています。
AIの素案を使わず講師が一から組む場面
AIの素案を使わない場面は、渡す材料が無い場合、標準的な進め方が当てはまらない場合、返ってきた素案の誤りを確かめられない場合に分かれます。
| 場面 | 理由 | 戻す先 |
|---|---|---|
| 前回の指導報告書が空 | 生徒の状況を渡せない | 前の講師か教室長に聞く |
| 目次を渡せない独自教材 | AIが項目の並びを知らない | 講師が教材を見て組む |
| 受験直前の志望校別の対策 | 標準的な進め方に合わない | 教務の責任者と講師で組む |
| 担当教科でない講師の授業 | 素案の誤りに気づけない | 教科の担当講師か教務へ |
この4つの場面に当たるかどうかは、計画を書く講師が素案を作る前に確かめます。迷ったときは使わない側を選び、教室長に伝えます。
指導報告書が一行しか無い生徒も、空の場合と同じ扱いです。入会前の体験授業の初回は前回の記録が無いので、教室長が面談で聞いた内容をもとに計画を組みます。市販のテキストでも、版が違えば目次が変わります。版が替わったときは、目次を渡し直すまで素案を使いません。
素案を使った授業が生徒の進み具合と合わなかったときは、講師が授業の後に計画を書き直し、その回数を指導報告書に残します。続けるかどうかの判断は教室長の役目です。たとえば4週間の書き直しの回数が、素案を使う前の4週間より増えた講師や単元は、一から組む方法に戻します。
分担表は教室で作れる、記録との連携は外部へ
外部の手が要るのは、指導報告書や学習記録の仕組みから前回の要点を自動で取り出し、素案の材料として渡す場合です。複数の教室で同じ分担表と点検の決まりを運用するときも、外部の手を借ります。どちらも、仕組みどうしの接続と権限の設定が、1つの教室の中では完結しません。
AIに渡す材料の一覧、欄ごとの分担表、教室長と教務の責任者の点検の決まりは、教室で作れます。効果は、計画1コマ分を書く分数と、授業の後に計画を書き直した回数で測ります。どちらも教室長が講師ごとに、素案を使う前と後で記録します。入会や保護者対応など授業準備の外にある業務は、学習塾の業務ごとにAIの使い方をまとめた一覧にあります。
連携を外部に頼んでも、指導報告書に何を書くかは教室が決めることです。報告書が単元名の一行だけなら、自動で取り出しても、素案に渡る材料は一行のままです。手が止まった問題と講師が直した欄を残す書き方が講師の間でそろっているかどうかが、連携へ進むかどうかの分かれ目になります。
明日から始める3ステップ
担当 教室長(集団授業のクラスは教務の責任者と一緒に)
授業計画の用紙の欄を一覧にし、欄ごとに「素案を使う」「候補として使う」「参考にとどめる」を書き込む。外部のAIサービスの利用規約と契約書を確かめて入力を認める項目を決め、素案を使い始める前の4週間は、授業の後に計画を書き直した回数を指導報告書に残すよう講師に伝える
次へ進む目安用紙の全部の欄に区分が付き、AIへ渡す材料の一覧と入力を認める項目が1枚にまとまって講師全員に配られ、素案を使う前の4週間分の書き直しの回数が講師ごと・単元ごとに記録されている
担当 担当講師と教室長
書き直しの回数を4週間分そろえた後、講師2人が担当する生徒の次のコマについて、これまでの書き方の計画と素案を使った計画をそれぞれ3コマ分作り、1コマ分を書いた分数と、素案から講師が直した欄を記録する
次へ進む目安2人分・合計12コマ分について、書いた分数と直した欄が1枚の記録に並び、指示に足す注意が書き出されている
担当 教室長
素案を使う書き方で4週間運用し、授業の後に計画を書き直した回数を指導報告書に残す。教室長は講師が替わった生徒と成績が下がった生徒の計画を授業の前に読む
次へ進む目安素案を使った4週間分の記録がそろい、書き直した回数が使う前の4週間より増えた講師と単元が一覧になり、その講師と単元は一から組む方法に戻っている
無料相談(オンライン)
BoostXは、学習塾・スクールの問い合わせ・教材・保護者連絡へのAI導入を支援しています
01無料相談
問い合わせの返信・教材・保護者連絡から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」Ver.2.0はじめに(ガイドラインの位置付け及び構成)・3(1)教職員が校務で利活用する場面 基本的な考え方・3(1)(2)具体的な利活用場面 文部科学省 初等中等教育局 確認日 2026.10.14
- 経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」19表 学習塾(2024年12月分・確報)19表実数 2024年12月 講師数(合計・専任講師・非常勤講師) 経済産業省(e-Stat) 確認日 2026.10.14
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)e-Gov法令検索第2条第1項第1号(個人情報の定義)・第16条第3項(個人データの定義) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.14
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