卸売のFAX注文入力をAIで減らすなら、保留を出す4つの欄から決める
FAX注文の手入力をAI-OCRで減らそうと、見積を取り始めた卸売の業務課長と営業事務の責任者を想定しています。
AI-OCRで注文書の文字を正しく読めても、得意先の「ABC-100」を自社のどの品番に置き換えるかを誤れば、違う品が出荷され、得意先からの電話で初めて分かります。読み取りの精度を比べる前に決めておきたいのは、下書きのどの欄が合わなければ営業事務の確認に回すかと、得意先品番の対応表をどの得意先から作るかの2つです。

先に結論
受注明細の下書きは、自社品番の候補・数量と単位・単価の差・希望納期と在庫のどれかの欄が合わなければ保留にします。対応表は、FAXの注文の行数が多い得意先から作り、保留で確定した組を毎日足していきます。
読み取り、得意先品番から自社品番への置き換えの候補、価格表や在庫と合わない行への印付けは、AIの受け持ちです。単価の食い違いは担当営業が得意先に確かめ、品番・数量・納期は営業事務が注文書の原本と照合して確定します。
保留の理由欄が空いた行も、AIが対応表と一致したと示した行も、取り込む前に営業事務が原本と照合します。保留が多いときは条件を緩めず、対応表に足りない組を足します。
保留の基準を、読み取りでなく品番の置き換えに置く理由
複合機から出てきた注文書の「ABC-100」が自社のどの品番かを決める置き換えは、AI-OCRで読み取った後にも営業事務の手元に残ります。読み取りの誤りは原本と見比べればその場で分かりますが、置き換えの誤りは、出荷して得意先から「頼んだ品と違う」と電話が来るまで表に出てきません。
得意先は、自社のカタログ番号や旧品番、社内の略称で発注してきます。そのため、迷う行は保留に回る側に条件を決めておきます。保留が多すぎて一覧が負担になったら、条件を緩めるより、対応表に足りない組を足して保留を減らします。条件を緩めて自動で通す行を増やすと、一覧は短くなっても、誤った品番の出荷が後から電話で返ってくるでしょう。
受注明細の下書きは、4つの欄のどれかで保留にする
保留の理由は、自社品番の候補・数量と単位・単価の差・希望納期と在庫の4つの欄から出ます。次の図は、受注明細の下書き1行を説明用の架空の記入例で埋めたものです。
図の要点:受注明細の下書き1行の帳票。得意先コードと受信日時、注文書の品番、自社品番の候補、数量と単位、単価の差、希望納期と在庫、保留の理由の7欄をAIが埋める。単価は担当営業が得意先に確かめて書き入れ、品番・数量・納期は営業事務が原本と照合して確定し、確定した組をその日のうちに対応表へ足す。保留の理由欄に何か入った行は、得意先への確認が済んでから取り込む。
保留の理由欄に何か入った行は、得意先への確認が済んでから取り込む
- 得意先コードと受信日時
- T0452・朝8時台にFAXで受信AI が下書き
- 注文書の品番(得意先の表記)
- ABC-100AI が下書き
- 自社品番の候補
- 4501-220(対応表に同じ組あり)AI が下書き
- 数量と単位
- 10c/s → 10ケース(入数12)AI が下書き
- 単価の差
- 注文書の単価が価格表より低い(差額を表示)AI が下書き
- 希望納期と在庫
- 明後日着の希望・有効在庫80個・入荷は来週AI が下書き
- 保留の理由
- 単価の差、在庫不足AI が下書き
- 単価の確定
- 得意先に確かめた単価を書き入れる(担当営業)人が確定
- 品番・数量・納期の確定
- 原本と照合し、分納の可否を聞く(営業事務)人が確定
- 対応表への追記
- 確定した組をその日のうちに足す(営業事務)人が確定
帳票の図に無い例外が、印字を線で消してその上に手書きで数量を書き足した行で、読み取りが正しくても保留に回します。単位の欄では、この得意先の「c/s」がケースを指すと対応表に登録済みかどうかで、保留が出るかが変わります。
単価の欄だけは担当営業に回します。得意先が古い価格表のまま発注しているのか、特値の期限が切れているのか、担当営業が口頭で値引を約束していたのか。どれに当たるかは、得意先とのやり取りを知る担当営業にしか判断できません。
保留の理由欄が空いた行も、取り込む前に営業事務が品番・数量・希望納期を注文書の原本と照合します。AIが対応表と一致したと示した行でも照合は省きません。対応表に誤った組が1つあれば、その組は毎朝一致と出るからです。
得意先品番の対応表は注文の行数が多い得意先から作る
対応表の初版は、直近の受注実績から得意先ごとに組を抜き出し、営業事務が確かめて作ります。月に数十行しか注文の無い得意先まで最初から埋めようとすると、準備が終わりません。注文の行数が多い得意先から作り、残りの得意先の組は、保留で確定したものを毎日足していきます。
旧品番から新品番への切り替えや入数の変更があった品番は、対応表の側も同じ日に直します。入数の違う商品をどう持つかは、商品マスタで入数違いのJANを別の品番に分ける基準に合わせます。
得意先が数百社あり、注文書の様式がばらばらな卸ほど、対応表で減らせる手入力は多くなります。反対に、FAXの注文が1日に数件で、残りがEDIやWebの受注画面から入る卸には、対応表と保留の条件づくりが向きません。複合機・代表アドレス・電話メモに割れた受信を1つの一覧にまとめるところで止めてかまいません。
対応表に組が足りてきたかは、前日と同じ得意先の同じ品番が翌朝の保留一覧に何行並んだかで分かります。数週分(たとえば4週)並べても減らないなら、手を入れる先は保留の条件ではなく、夕方の出荷作業に押されて止まりがちな営業事務の追記の当番です。受注の前後の業務は、見積・受注の記事一覧と、卸の業務を工程順に並べた媒体トップにまとめています。
出荷締めの前に保留行を片づける時間を先に取る
この運用が続くかどうかは、保留行を得意先に聞く時間を、出荷締めの前に取れるかどうかにかかっています。朝は複合機のFAX、代表アドレスの注文メール、担当営業の電話メモが別々の入口です。AIがこれを1つの一覧にし、得意先コードと希望納期で並べれば、当日便に載せる注文を先に抜き出せます。
下書きの在庫欄に使う入荷予定は、得意先に納期を答えるときの表と同じものです。表が古いと在庫欄も古くなるため、在庫・納期の照会で入荷予定の更新日を見て答えを止める条件と日数をそろえておきます。
仮に出荷締めが15時なら、得意先の返事を待つ時間を見込み、昼までに保留の問い合わせを出し終える段取りになります。返事で確定した品番はその日のうちに対応表へ足し、最後に注文請書と出荷指示を出して、注文書の原本を保存します。
PDF受信と外部の読み取りの前に、保存と契約を確かめる
FAXをPDFで受ける設定に変える前には経理と保存の方法を、注文書の画像を外部の読み取りサービスへ送る前には契約の扱いを確かめます。
FAXをPDFで受けると電子取引として保存が要る
紙に印刷して綴じれば足りた注文書が、PDFで受けると決められた方法で残す対象になります。電子帳簿保存法第2条第5号は、注文書や見積書などに通常記載される事項を取引情報とし、その授受を電磁的方式で行う取引を電子取引としています。ペーパーレス化したFAX機能つきの複合機を使った取引も、その例の一つです。
同法第7条が法人などに求めるのは、電子取引の取引情報のデータを、財務省令の定めるところで保存することです。メールで受け取ったデータも検索できる状態で残す必要があり、メールソフト上で見られるだけでは十分とは言えないとされています。日付・得意先・金額で探せる形でどう残すかは、経理が税理士と相談して詰めるので、PDF受信に変える月のうちに経理にも声をかけておきます。
注文書の画像を外部の読み取りサービスへ送ってよいか
注文書には得意先の発注担当者の名前や直通の電話番号が載っているため、送る前に契約がどの扱いに当たるかを確かめます。読み取りの事業者が画像を取り扱わないことが契約で定められ、画像に触れられる担当も限られていれば、事業者のサーバに画像が残っていても提供には当たりません。
事業者が画像を扱う形なら、委託と言える契約かを確かめ、言えれば委託先として監督します(第25条)。委託と言えない契約なら第三者提供に当たり、本人の同意(第27条)が前提になります。読み取りを国外の事業者が行うなら、第28条の同意が要る場面かも見ます。規約で読む項目はツール選びの記事で挙げた規約の確かめ方と同じで、FAXの画像がどこに何日残るかは総務の担当が確かめておきます。
取り込む機能が無ければ、入力の代行か改修を外部に頼む
基幹システムに受注データをCSVで取り込む機能があれば、下書きの明細をそのまま流し込めます。取り込む機能が無ければ、受注画面への入力を代わりに行う仕組みか基幹システム側の改修が要り、ここで外部に頼む作業と費用が増えます。
見積の金額を次に左右するのは、得意先の注文書が何種類あるかです。自社様式の注文書を配っている得意先が多ければ読み取りの設定は少なく、様式が違えばその数だけ手当てが要ります。手書きの追記が多い得意先や、誤出荷が得意先の生産ラインを止めるような部品を扱う卸ほど、読み取りの精度より保留の条件と対応表に費用をかける意味があります。
入力の代行を外部に組ませるときの境目は、保留の理由欄が空いて原本と照合した行だけを受注画面へ流し、単価の差が出た行は担当営業の書き入れを待ってから入れることです。代行の仕組みが注文書の単価をそのまま画面へ写すと、特値の切れた単価や口頭の値引が確かめられないまま請求まで進みます。
明日から始める3ステップ
担当 営業事務の責任者
直近の受注実績を得意先ごとに書き出し、FAXの注文の行数が多い順に並べて上位の数社を選ぶ
次へ進む目安対応表の初版を作る得意先が決まり、その得意先品番と自社品番の組が書き出せた
担当 営業事務
選んだ得意先の注文で下書きを回し、保留で確定した組を夕方の出荷作業の前に対応表へ足す当番を割り当てる
次へ進む目安自社で決めた期間(たとえば2週間)、保留で確定した組の追記漏れが1件も出ていない
担当 業務課長
毎朝の保留一覧で、前日と同じ得意先・同じ品番が並んだ行を数え、週ごとの合計を書き留める
次へ進む目安週ごとの合計を数週分(たとえば4週)並べた表ができ、営業事務の責任者が次に対応表を作る得意先を決める材料として渡した
無料相談(オンライン)
BoostXは、卸売・商社の受発注・在庫・問い合わせ対応へのAI導入を支援しています
01無料相談
注文の入力・商品マスタ・照会への回答から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)(問5・問5 回答のイ) 国税庁 確認日 2026.09.28
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法・平成10年法律第25号)(第2条第5号・第7条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第25条・第27条第1項・第27条第5項第1号・第28条第1項(外国にある第三者への提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
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