他社に決まる派遣の依頼を減らすマッチングAIの照合と打診の分担
登録型派遣の支店で、急ぎの依頼への回答が遅れて他社に決まる依頼が出ている支店長・コーディネーター責任者・営業に向けて書いています。
「別の会社で決まりました」と派遣先に返されるたびに、その依頼で得られたはずの粗利がなくなります。急ぎの依頼が届くと、コーディネーターは名簿から候補を探し、ほかの現場に入っていないかをExcelや電話で確かめますが、その間に同じ依頼を受けた他社が先に回答するからです。名簿の照合を速くする作業と、打診の順や派遣先に出す書式を決める作業は、分けて考えられます。

先に結論
派遣マッチングでAIに回すのは、依頼票の必須条件で名簿を絞り、稼働・契約終了の予定日・同じ組織単位の通算期間を突き合わせ、当てはまる理由と外れた項目つきで並べる照合です。
事業所単位の抵触日の通知が無い依頼は、営業が照合に回しません。打診の順はコーディネーターが登録データの原本を開いてから決め、派遣先に出すのは支店長が承認した書式だけで、候補一覧は社内用にとどめます。
どの派遣先から試すかは、他社に決まった依頼1件で失う額の上限を自社の料金表と賃金表で出し、額の大きい順に選びます。打診が同じ登録者に集まったら、点数での並べ替えを止めます。
照合が遅れるのは、登録者が派遣中の人の3倍を超えるから
他社に決まる依頼は、名簿から候補を探し、空いているかを確かめている間に回答が遅れたときに出ます。照合に時間がかかる理由は、名簿の人数の多さと、契約の終了日が変わる回数の多さです。派遣元が出した令和6年度の事業報告を厚生労働省がまとめた速報で、派遣の実績がある事業所1か所あたりに直すと、次の数字になります。
図の要点:依頼の受信から派遣先への回答までの前後比較。いまは営業が依頼票と抵触日の通知を確かめ、コーディネーターが名簿を検索し、稼働をExcelと電話で確かめ、返答がSMS・電話・メールに散る。照合を生成AIに回した後は、営業が通知の無い依頼を照合に回さず、AIが必須条件で絞って稼働と通算期間を突き合わせ、当てはまる理由と外れた項目つきで並べる。コーディネーターが原本を見て打診の順を決め、支店長が派遣先に出す書式を承認し、古い登録データは次の面談で直す。
派遣の実績がある事業所ごとの規模と契約の長さ(令和6年度・速報)
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226.7人
事業所ごとの登録者
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27.4人
事業所ごとの無期雇用の派遣労働者
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38.9人
事業所ごとの有期雇用の派遣労働者
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28.4%
派遣契約のうち期間が2か月超3か月以下の割合
登録者は、無期と有期を合わせた派遣中の人の3倍を超えるので、名簿から探す作業が照合の中で一番時間を取ります。候補の中に、ほかの現場に入っている人や、しばらく連絡を取っていない人が混ざり、そのたびに「いま空いているか」を確かめる相手が増えます。
派遣契約は2か月超3か月以下が28.4%で最も多く、1年を超える契約は合わせて1%に届きません。3か月単位の契約なら1人の終了予定日が1年に何度も更新されるため、照合のたびに最新の稼働一覧を生成AIに渡します。
ただし、稼働の情報が担当ごとのExcelに分かれ、空いているかを電話で確かめている支店では、生成AIに照合させても古い材料のまま一覧が出ます。その支店は、稼働一覧の置き場所を1つに決めるほうが先です。
依頼の受信から回答までを担当ごとに分ける
派遣マッチングの工程は、営業が依頼を受けてから派遣先へ回答するまで、営業・コーディネーター・生成AI・支店長の間を行き来します。照合を生成AIに任せて変わるのは、名簿から候補を探す作業と、打診への返答をまとめる作業です。
照合をAIに回しても、打診の順と派遣先に出す書式は人が持つ
いま(名簿を人が探す)
- 営業が依頼票を書き、抵触日の通知を確かめる
- コーディネーターが名簿を検索する
- 稼働中かをExcelと電話で確かめる
- 返答がSMS・電話・メールに散る
照合を生成AIに回した後
- 営業: 通知の無い依頼は照合に回さない
- AI: 必須条件で絞り、稼働と通算期間を突き合わせる
- AI: 当てはまる理由と外れた項目つきで並べる
- コーディネーター: 原本を見て打診の順を決める
- 支店長: 派遣先に出す書式を承認する
- 戻す: 古い登録データは次の面談で直す
抵触日の通知の確認は、急ぐかどうかではなく契約へ進めるかどうかの条件なので、照合をAIに任せた後も営業の作業として照合の前に残します。通知の無い依頼を照合に回すと、候補を並べても契約へ進めない一覧ができるだけです。
派遣先から事業所単位の抵触日の通知が無いとき、派遣元はその事業所の業務について労働者派遣契約を結んではなりません(労働者派遣法第26条第5項)。そのため依頼票を確定する前に、営業が前回の労働者派遣契約書と通知の有無を見ます。
突き合わせる通算期間は、派遣先の同じ組織単位で、同じ派遣労働者を3年を超えて続けて派遣しない決まり(第35条の3)に沿って数えます。無期雇用の派遣労働者など、期間制限の対象から外れる派遣もある(第40条の2第1項)ので、雇用の形も生成AIに渡す材料に入れます。
照合は必須条件で絞り、外れた項目も返させる
生成AIに渡すのは、依頼票の必須条件・歓迎条件・勤務地・就業期間と、派遣管理システムの登録データ、稼働中の契約と終了予定日、同じ組織単位での就業の記録です。必須条件で絞った後に稼働と終了予定日を突き合わせ、3年を超える人を外し、残りを通勤時間と歓迎条件で並べます。
返させるのは、当てはまる登録者、当てはまる理由、外れた項目の3つです。適合度の点数だけでは外れた理由が見えず、コーディネーターが打診の順を決める材料になりません。
【説明用の架空の記入例】
– 当てはまる登録者: 登録番号 A-0123
– 当てはまる理由: 必須条件のフォークリフト運転技能講習を修了。通勤40分。今の契約は就業開始日の前週に終了予定。この派遣先の同じ組織単位での通算は1年2か月
– 外れた項目: 歓迎条件の夜勤経験なし
– 今週の打診回数: 1回
資格の有効期限、前の就業先との相性、扶養の範囲で働きたいといったスタッフの希望は、登録データが古ければ一覧に正しく出ません。コーディネーターは候補ごとに登録データの原本を開いてから順を決めます。
資格名の書き方がそろっていない支店は、案件の語を正にしたスキルシートの言い換え表で語をそろえておくと、絞った時点の漏れが減ります。語がそろうまでは、一覧から外れた登録者もコーディネーターが名簿で確かめます。
登録データを外部の生成AIに渡す前に確かめる契約
登録データには氏名や住所、健康状態のメモが入っていることがあります。外部の生成AIに渡すなら、その事業者が中身を取り扱わない旨が契約で定められ、アクセスが適切に制限されていれば、提供には当たりません。
取り扱うなら、利用目的の範囲で取扱いを任せる委託と言えるかを契約で確かめます。言えれば委託先として監督し(第25条)、言えなければ第三者提供として本人の同意が要ります(第27条)。
事業者が国外にあるなら委託でも第28条の同意が要るかを確かめ、契約で見るところは履歴書を生成AIに入れる前に確かめる8項目と同じです。照合に要らない健康状態のメモは、渡す前に外します。
はっきりした返答が多い支店だけ、返答の分類をAIに任せる
返答の分類は、返答の書き方で任せ方が逆になります。「行けます」「辞退します」と言い切る返答が多い支店なら、分類を生成AIに任せ、前向きな返答から先に対応するほうが早く回答できます。「検討します」「日程次第です」のような含みのある返答が多いなら、分類の誤りが回答の遅れに直結するので、生成AIには経路をまとめさせるだけにします。
打診が同じ登録者に集まるときの並べ方の直し方
適合度の点数は、登録データの項目が多く埋まっている人ほど高く出やすくなります。点数の高い順に打診を回すと、上位に同じ登録者が繰り返し並び、支店の複数の依頼から同じ人へ連絡が集まります。
本人には同じ週にSMSと電話で何本も打診が届いて返答が鈍り、派遣先への回答が遅れます。照合で縮めた時間を、打診のところで取り返されてしまいます。
見つけ方は、候補一覧の横に「今週の打診回数」の列を出させることです。回数の多い人が上位に固まっていたら、点数での並べ替えをいったん止め、外れた項目と当てはまる理由で並べる形に戻します。
偏りは、登録データの埋まり方の差から来ていることがあります。外れた項目の記録から空欄の多い登録者を洗い出し、次の登録更新の面談で埋めていけば、名簿の奥にいる人も一覧に上がってきます。
候補一覧を派遣先に見せてよいか?
見せません。候補一覧は、コーディネーターが打診の順を決めるための社内資料です。
紹介予定派遣を除き、派遣を受けようとする会社には、受け入れる人を前もって選び出す目的の行為をしない努力義務があります(労働者派遣法の第26条第6項)。派遣先が守る措置を定めた指針(派遣先指針)の第2の3は、その例に、派遣に先立つ面接、履歴書の送付、若年者に限ることなどを挙げています。
派遣元の側も、派遣元向けの指針(派遣元指針)の第2の13で、派遣先による特定の行為に協力することを禁じられています。派遣先指針の第2の4は、労働者派遣契約に派遣労働者の性別を書かないことも求めているので、依頼票の条件欄からも性別の欄を外します。
派遣先に送るのは、支店長が承認した書式です。派遣元指針の第2の11のとおり、派遣先に通知する決まりのある事項のほかは、業務遂行能力に関する情報に絞ります。派遣先から「若い方で」「女性で」と言われても、その語は依頼票の条件に入れません。
一覧ができると、候補者リストとして派遣先に見せ、選んでもらう近道が現場で生まれやすくなります。書式は、照合を組むのと同じ月に決めておきます。
逃した依頼1件で失う額の上限から、試す派遣先を選ぶ
どの派遣先の依頼から試し始めるかは、「別の会社で決まりました」と返されたときに失う額の上限が大きい派遣先から選びます。同じ依頼を複数の派遣会社に出す派遣先ほど、回答の早さで決まりやすいからです。支店の数字では、次の式で出せます。
他社に決まった依頼1件で失う額の上限 =(自社の同じ職種の派遣料金の日額 − 賃金の日額)× 予定の就業日数 × 人数
令和6年度の同じ事業報告では、派遣料金の8時間換算の平均が26,257円、派遣労働者の賃金の平均が16,735円でした。ただし料金は消費税を含み、賃金は含まないので、平均どうしの差をそのまま粗利とは読めません。社会保険料の事業主負担や有給休暇の分も引いていないため、式で出るのは上限の目安で、使うのは自社の同じ職種の料金表と賃金表です。
初回の打診までの時間が縮まないときに見直す所
比べる数字は、受信から初回の打診までの時間と、「別の会社で決まりました」と返された件数です。依頼票に照合を回す前の時刻が残っていないと、どちらが動いたかを支店長が派遣先ごとに読めません。
稼働が担当ごとのExcelに残っている支店では、照合の一覧が速く出ても、初回の打診までの時間はあまり動きません。コーディネーター責任者は、その日の稼働を1か所から読めるかを先に確かめます。
他社に決まる件数を動かすのは、打診から回答までの工程です。含みのある返答が多い派遣先なら、分類はコーディネーターが持ち、AIには返答の経路をまとめさせるだけにします。
月末に照合前の月と並べ、初回の打診が早まって他社に決まった件数も増えていなければ、支店長は試す派遣先を1社足します。早まらない月は派遣先を足さず、稼働一覧の置き場所か、返答の分類を誰が持つかを見直します。
稼働一覧を1か所に集めた支店から、照合の仕組みづくりを外部に頼む
稼働の情報が担当ごとのExcelに分かれている間は、照合の仕組みを外部に作ってもらっても、古い材料のまま一覧が出ます。外部に頼む前に、その日の稼働を1か所から読める置き場所をコーディネーター責任者が決めます。
置き場所が1つになり、依頼票に3つの時刻がそろい始めた支店なら、派遣管理システムの登録データと稼働一覧を照合へつなぐ作り込みに進めます。依頼の受信から候補一覧までを毎回同じ形で出す作り込みには、AIエージェント開発が向きます。支店長が承認する書式と、打診の順を決める作業は、仕組みの外に置いたまま設計してもらいます。
頼む支店の順番は、逃した依頼1件で失う額の上限が大きい派遣先を抱える支店から並べます。失う額の上限の表が支店ごとにそろっていれば、外部に払う額と比べる相手もその表の中にあります。
明日から始める3ステップ
担当 支店長
この3か月で「別の会社で決まりました」と返された依頼を派遣先ごとに書き出し、1件で失う額の上限を自社の料金表と賃金表で出す
次へ進む目安失う額の上限が大きい順に派遣先が並び、照合を試す1社が決まった
担当 コーディネーター責任者
試す派遣先の依頼票に、受信・初回の打診・回答の3つの時刻の欄を足し、照合をAIに回す前の依頼から書き込む
次へ進む目安照合を始める前の1か月分の依頼票に、3つの時刻がそろって残った
担当 担当コーディネーター
候補一覧に外れた項目と今週の打診回数の列を出させて打診の順を決め、月末に初回の打診までの時間と他社に決まった件数を書き出す
次へ進む目安照合前の月より初回の打診が早まり、他社に決まった件数が増えていなければ、支店長が試す派遣先を1社足す
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出典
- 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」集計結果概要(派遣料金)・集計結果概要(賃金)・集計結果概要(注2)・表2 労働者派遣された派遣労働者数等・表10 派遣契約の期間の割合 厚生労働省 確認日 2026.09.28
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)(第26条第6項・第26条第5項・第35条の3・第40条の2第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号)(第2の3・第2の4) 厚生労働省 確認日 2026.09.28
- 派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第137号)(第2の13・第2の11) 厚生労働省 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-1(外国にある第三者への委託) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条・第27条第1項・第28条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
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