商社の新規開拓リストの名寄せは法人番号から、送る前に外す行は誰が決めるか
集めた名簿で新規開拓リストを作り始め、重複した会社や既存の得意先の混入に手を焼いている商社の営業責任者と営業事務に向けた記事です。
展示会の出展者一覧や業界団体の名簿を重ねると、同じ会社が表記違いで何行も並び、既存の得意先や仕入先の直販先まで混ざります。どの行を同じ会社として1行にまとめ、どの行に初回の営業メールを送ってよいかを、誰がどの記録で決めるか。AIに任せる範囲、法人番号公表サイトで取れる情報、名刺と営業メールにかかわる法律の確かめ方と合わせて説明します。

先に結論
1行にまとめてよいのは法人番号が一致した行だけで、ドメイン・代表電話・所在地で一致した行は候補にとどめて営業事務が見ます。初回の営業メールを送ってよいのは、営業責任者が商流の重なりを外し、営業担当が特定電子メール法のどの号に当たるかと根拠を書けた行です。
表記の統一、照合キーの順の重複候補、得意先マスタ・休眠先・取引停止との突き合わせは、AIで回せます。直販先と競合を外す行と、停止の理由が残っていない行の扱いは、与信担当と確かめたうえで営業責任者が決めます。
根拠の欄が空の行は、件数に関わらず送りません。名寄せをAIに任せるときは、担当者名の列も、名刺の行とひも付く番号も外した、会社の行だけの表を使います。
法人番号から名寄せするのは、得意先に誤送信しないため
展示会の出展者一覧や業界団体の名簿で新規開拓リストを組むと、名寄せの前は「株式会社」と「(株)」の違いだけで同じ会社が何行も並び、既存の得意先や仕入先の直販先も混ざったままです。得意先マスタに法人番号が無いまま名寄せを回せば、既存の得意先が突き合わせで新規として残り、担当営業の知らない営業メールがその得意先に届きます。
| 照合キー | 一致した行の扱い | 確かめること |
|---|---|---|
| 法人番号 | 同じ会社として1行にまとめる | 支店・営業所は番号を持たない |
| Webサイトのドメイン | 同じ会社の候補 | グループ会社が同じドメインを使う場合がある |
| 代表電話番号 | 同じ会社の候補 | 支店や営業所は別の番号を持つ |
| 本店所在地と社名の近さ | 候補にとどめる | 営業事務が1行ずつ見る |
照合キーは法人番号が最も強く、ドメイン、代表電話、所在地と社名の近さの順に弱くなります。照合の前に、「株式会社」と「(株)」、全角と半角、住所の「三丁目」と「3-」、ビル名の有無といった表記を揃えるのは、AIの仕事です。ドメイン以下のキーで一致した行は、営業事務が確かめてから1行にするかを決めます。
法人番号は法人ごとに1つで、支店には付きません。支店や営業所ごとに別の窓口へ提案する商社なら、法人番号の行を親にして、その下に拠点の行を持たせます。拠点を同じ行にまとめると、支店の購買担当に送った提案が、本社の購買への提案と重なってしまいます。
まとめるときに残す行は、得意先マスタや案件管理表に取引や商談がひも付いている行です。ひも付きの無い新しい行を残すと、過去の商談の記録が別の行に取り残されます。法人番号を入れる手間は得意先マスタに一度かければ済み、以後は営業事務が差分データで社名の変更と閉鎖を直していけます。
新規開拓リストを営業事務とAIで作り、送る行は人が絞る
送ってよい行は、AIの照合でなく、営業責任者の商流の確認と営業担当の根拠の記入を通った行です。
図の要点:営業責任者・営業事務・AI・営業担当の4つの担当で、新規開拓リストを作って初回の連絡を送るまでの7つの工程。営業責任者が狙う業種と地域を決め、営業事務が法人番号のCSVと名簿を集めて利用条件を確かめる。AIは表記を揃えて照合キーの順に重複候補を並べ、得意先マスタ・休眠先・取引停止と突き合わせて印を付ける。営業事務が候補止まりの行を見て、営業責任者が停止の行と仕入先の直販先・得意先の競合を外し、営業担当が特定電子メール法の根拠を書いて送る。根拠の欄が空の行は送らない。
送ってよい行になるのは、商流の確認と送信の根拠の記入を通った後
営業責任者
営業事務
AI
営業担当
- 営業責任者
狙う業種・地域・規模を決める
粗利の高い得意先から逆算する
- 営業事務
法人番号のCSVと名簿を集める
名簿の利用条件を主催者の規約で確かめる
- AI
表記を揃え、照合キーの順に重複候補を並べる
担当者名の列は渡さない
- 営業事務
候補止まりの行を1行ずつ見る
戻す決めきれない行は法人番号で検索し直す
- AI
得意先マスタ・休眠先・取引停止と突き合わせる
既存・休眠・停止の印を付ける
- 営業責任者
停止の行を与信担当と確かめ、直販先と競合を外す
戻す停止の理由が残っていない行は連絡しない
- 営業担当
特定電子メール法のどの号に当たるかと根拠を書いて送る
戻す根拠の欄が空の行は送らない
取引停止の一覧のうち停止の理由が書かれていない社は、候補表に出ても、図の6つ目の工程(営業責任者が停止の行を与信担当と確かめる工程)で連絡を見送る行になります。そこで、図の流れを始める前に、営業事務がその社数を数えておきます。印が付かなかった行でも、仕入先の直販先や得意先の競合は公開データにも得意先マスタにも出ないため、営業責任者が行ごとに外します。
材料集めの手間は、材料の形によって大きく違います。法人番号のCSVは形式が決まっていて扱いやすい一方、展示会の一覧や団体の名簿は、形式も利用の条件も主催者ごとに違います。材料を増やすほど重くなるのは、規約を確かめる営業事務の手間です。別の会社だった行が回を重ねても減らない材料は、次の回から法人番号を先に引いてから名寄せに回します。
法人番号公表サイトで取れる情報と取れない情報
候補表の会社の実在と正式名称を確かめる元は、法人番号公表サイトの基本3情報で、中身は法人番号・商号又は名称・本店又は主たる事務所の所在地です。国税庁は、法人番号を株式会社などの法人等が持つ13桁の番号とし、利用範囲の制約がなく誰でも自由に使えるとしています。
このため、候補表の照合に法人番号の列を使うこと自体に、手続きは要りません。全件データは前月末時点の最新情報で、全国分か都道府県・国外の単位で取れます。形式はCSVかXMLで、営業事務が表計算で開くならCSVのほうです。差分データは日次で作られ、新しく番号が指定された法人のほか、名称・所在地の変更や登記記録の閉鎖も入ります。
取れないのは、業種・規模・代表電話・担当者です。狙う業種や規模で絞るには、展示会の出展者一覧、業界団体の会員名簿、自社の販売実績といった別の材料が要ります。
展示会の一覧に無い会社を、生成AIに業種と地域を指定して挙げさせる手もあります。ただ、その一覧には実在しない会社や、商号変更の前の古い社名が混ざりかねません。営業事務はそのまま連絡先にはせず、法人番号で実在と正式名称を確かめてから候補表に入れます。
仕入先の直販先へ連絡する前に取引基本契約を見る
機械的に連絡してよい相手ではなく、先に見るのは契約です。仕入先との取引基本契約に販売地域や販売先の取り決め(「九州の量販店へは仕入先が直接納める」のような条項)があれば、その条項が先に来ます。取り決めが無くても、仕入先が直接納めている会社へ同じ商品を売り込めば、仕入先との関係に響きます。
得意先と同じ業種の会社は、提案する商品で答えが変わります。得意先と同じ商品を納めるなら、得意先から見れば競合への供給です。別の商品なら問題にならない場合もあるため、営業責任者が得意先との取引の深さを見て判断します。
休眠先が得意先マスタに多く残っている会社には、新規のリストづくりは向きません。取引の記録があり、商流の確認も済んでいる休眠先に連絡するほうが先で、休眠先の掘り起こしや訪問報告の下書きは営業ハブに並ぶ記事と媒体トップの業務別の入口で探せます。前任の営業が持っていた取引条件は、担当交代で消える取引条件の引継ぎ書の欄で確かめ直せます。
名刺の行と初回メールは、2つの法律で送り先を確かめる
名刺を載せた行は個人情報保護法で利用目的を、初回の営業メールは特定電子メール法で送ってよい相手かを、送る前に確かめます。
名刺を載せた候補表は個人情報として扱う
会社だけの行と、担当者名の入った行は分けて持つのが基本です。個人情報保護法第2条第1項は、生存する個人に関する情報で、氏名などにより特定の個人を識別できるものを個人情報としています。展示会で交換した名刺や、Webで見つけた担当者名を候補表に載せれば、その行は個人情報として扱う必要が出てきます。
同法第17条は、利用目的をできる限り特定することを求めています。第21条第1項が求めるのは、個人情報を取得したら、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに本人に通知するか公表することです。名刺を候補表に入れる前に、自社のプライバシーポリシーに、取引先の担当者の情報を営業の案内に使う旨があるかを確かめます。
名寄せをAIに任せるときは、担当者名の列を外した会社の行だけの表を渡します。会社の行に名刺の行とひも付ける番号を残すと、自社の表を引けば担当者に行き着くため、その番号も渡す表には入れません。
初回の営業メールは特定電子メール法で送り先を確かめる
営利を目的とする団体が、自社の営業の広告や宣伝の手段として送る電子メールは、特定電子メール法の「特定電子メール」に当たります。新規開拓の初回メールも、送る前に相手が送ってよい範囲に入るかを行ごとに確かめる対象です。
同法第3条第1項が送ってよい相手として挙げるのは、あらかじめ同意を通知した者と、省令の定めによりアドレスを通知した者です。取引関係にある者と、省令の定めによりアドレスを公表している団体や営業を営む個人も含まれます。候補表の行はこの4つのどれに当たるかで分け、どれにも当たらない行には初回のメールを送りません。
公表の方法は施行規則第3条が定めていて、インターネットで公衆が閲覧できる状態に置く方法です。アドレスと併せて送信をしないよう求める文言を置いたときは、この方法から除かれます。問い合わせページにアドレスと営業メールお断りの一文が並んでいる会社は、公表を根拠に送る行には入れません。
アドレスの通知について、施行規則第2条は方法を書面としています。展示会で受け取った名刺がこの書面での通知に当たるかは、受け取った経緯を残したうえで営業責任者が判断する事柄です。同意を得た相手は、第3条第2項が同意の記録の保存を求め、第3項は送信をしないよう求められた後の送信を禁じています。
第4条は、送信者の氏名又は名称と送信を断る通知の宛先に加え、省令で定める送信者の住所や苦情の受付先も正しく表示するよう求めています。候補表の行ごとに、第3条第1項のどの号に当たるか、その根拠、断りの連絡を受けた日を残し、送る前に営業責任者が目を通します。根拠を書けない行は、送信の列に入れずに候補表へ残します。
【説明用の架空の記入例】架空産業株式会社の行です。法人番号の欄には公表サイトで確かめた13桁、既存・休眠・停止の印は「なし」と入ります。商流の欄は「直販先・競合に当たらない」と営業責任者が確認日付きで書きます。該当する号は「第3条第1項第4号(アドレスの公表)」です。根拠は「問い合わせページにアドレスがあり、お断りの一文は無い(閲覧日)」、断りを受けた日は空欄です。
名簿の種類が増えたら、規約の読み比べから外部と分担する
直販先と競合を外す判断、名刺が書面での通知に当たるかの判断、送信の根拠の記入は、名簿がどれだけ増えても営業責任者と営業担当の仕事です。外部に任せると、仕入先や得意先との約束を知らない人が送る行を決めることになります。
分担を考える値打ちがあるのは、主催者ごとに形式も利用の条件も違う名簿を何種類も重ね、規約を読む作業と表記をそろえる作業が営業事務の受注処理に食い込むときです。差分データで社名の変更と閉鎖を毎日反映させたい場合も、取り込みの仕組みづくりを外部に頼む候補になります。
材料が法人番号のCSVと自社の販売実績、それに展示会の一覧が1つか2つなら、仕組みを足さなくても営業事務の手で回ります。名簿を1種類足すたびに、規約の確認にかかった時間を記録簿に添えておけば、分担を始める時期を見誤りません。
明日から始める3ステップ
担当 営業事務
得意先マスタと休眠先一覧に法人番号の列を足し、公表サイトの全件データと社名・所在地で照合して番号を入れる
次へ進む目安取引のある得意先と休眠先のすべてに、法人番号か「該当なし」の印が入った
担当 営業責任者
候補表の送信の列の手前に、該当する号・根拠・断りを受けた日を書く欄を設ける
次へ進む目安根拠の欄が空の行は送信の列に入らない形で、最初の候補表を回せる
担当 営業事務
1回まわすたびに、候補表の材料ごとの候補止まりの行数と、そのうち別の会社だった行数を記録簿に書く
次へ進む目安3回分の記録がたまり、材料ごとに別の会社だった行の割合を比べられる
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04定着まで伴走
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作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 国税庁 法人番号公表サイト「法人番号とは」国税庁 確認日 2026.09.29
- 国税庁 法人番号公表サイト「全件データのダウンロード」国税庁 確認日 2026.09.29
- 国税庁 法人番号公表サイト「差分データのダウンロード」国税庁 確認日 2026.09.29
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)第2条・第3条・第4条e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律施行規則(平成14年総務省令第66号)(第9条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.07
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第1項・第17条・第21条第1項e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
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