AI仕訳はどこまで入力担当が確定するか、会計事務所の7項目と回す条件
顧問先の証憑から記帳する会計事務所で、AIの仕訳候補の採否を入力担当にどこまで任せるかを決める所長税理士と記帳の監査担当
AIの仕訳候補を入れても、入力担当が全件を証憑と1件ずつ見比べるなら、記帳にかかる時間はほとんど縮みません。反対に、確かめずに確定すると、消費税区分や登録番号の誤りが監査担当の確認まで残ります。候補のどの項目なら入力担当が自分で確定してよく、どの候補で手を止めて監査担当や税理士に渡すのかを、項目ごとの分担と回す条件で示します。

先に結論
入力担当が確定してよいのは、日付・金額・相手先・登録番号が証憑と合い、勘定科目・補助科目・消費税区分が同じ取引先の確定済みの仕訳と同じ候補です。日付の年や金額の桁など読み取りのずれは、証憑どおりに直したうえで確定して構いません。
科目が前月と違う候補と、中身が証憑だけでは分からない候補は監査担当へ回し、監査担当が科目と税区分を確定します。初めての取引先は監査担当を通して税理士へ回し、登録番号が公表サイトで見つからない相手と、利用期間が2026年10月1日をまたぐ請求書は税理士へ直接回します。どちらも税理士が科目と税区分を確定します。AIに任せるのは、読み取りと過去の仕訳からの候補づくりまでです。
AI仕訳をどこまで任せるかは、証憑の項目で分かれる
AIの仕訳候補の7項目のうち、日付・金額・相手先・登録番号の4つは証憑に書いてあるので、入力担当が証憑と照合して確定できます。勘定科目・補助科目・消費税区分は証憑に書いていない取引の中身で決まるため、確定済みの仕訳と違うときは監査担当か税理士が決めます。
図の要点:仕訳候補1件の状態ごとの行き先を示した図。4項目が証憑と合い科目と税区分も前月の確定仕訳と同じなら入力担当が確定し、読み取りのずれは証憑どおりに直して確定する。科目が前月と違う候補と中身が分からない候補は監査担当が確定し、初めての取引先は監査担当を通して税理士が、登録番号が見つからない相手と2026年10月をまたぐ請求書は税理士が直接確定する。
証憑と照合できる項目は入力担当が確定し、照合できない違いは回す
-
4項目が証憑と合い、科目と税区分も前月と同じ
入力担当が確定する
-
日付の年や金額の桁が読み取りでずれている
証憑どおりに直して確定する
-
科目か補助科目が前月の確定仕訳と違う
監査担当が確定する
-
取引の中身が証憑だけでは分からない
監査担当が顧問先に聞いて確定
-
初めての取引先
監査担当を通して税理士が確定
-
登録番号が見つからない、2026年10月をまたぐ請求
税理士が確定する
この図で決めるのは、入力担当が自分の判断で確定する候補と、手を止めて渡す候補の境目です。どの行に当たるかは、次の節の表で項目ごとに確かめます。
国税庁が示す適格請求書の記載事項は6つです。交付を受ける相手の氏名又は名称、売手の氏名又は名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の総額と適用税率、税率ごとの消費税額等です。勘定科目と補助科目は、この中にありません。消費税区分も、税率は書いてあっても、どの区分で処理するかまでは書いてありません。
ここからは説明用の仮の場面です。月次の記帳で、AI-OCRが読み取った領収書と請求書の候補が50件並んでいます。確定してよい候補の条件が決まっていないので、入力担当は50件すべてを証憑と見比べ、打ち直すのと変わらない時間がかかっています。
仕訳候補の7項目を、AIと入力担当と税理士で分ける
仕訳候補とは、AI-OCRや会計ソフトの自動仕訳が、証憑の読み取り結果と過去の仕訳から作る登録前の仕訳の案です。7項目のうち上の4つは証憑との照合で確定でき、下の3つは確定済みの仕訳との比較で判断します。
| 項目 | AIと入力担当がすること | 監査担当・税理士へ回す条件 |
|---|---|---|
| 日付 | AIが読み、入力担当が証憑と照合 | 証憑に日付が無い |
| 金額 | AIが読み、税率ごとに照合 | 税率ごとの内訳が無い |
| 相手先 | AIが読み、取引先名をそろえる | 初めて出てきた取引先 |
| 登録番号 | AIが読み、公表サイトで照合 | 公表サイトで見つからない |
| 勘定科目 | AIが過去の仕訳から出す | 確定済みの仕訳と違う |
| 補助科目 | AIが過去の仕訳から出す | 確定済みの仕訳と違う |
| 消費税区分 | AIが過去の仕訳から出す | 違う、または10月をまたぐ |
上の4行で入力担当が見るのは、証憑に書いてある文字と候補の値が同じかどうかです。下の3行では、入力担当は正しい科目を自分で考えません。同じ取引先の確定済みの仕訳と同じかどうかだけを比べます。科目を考える作業を入力担当に渡さなければ、担当者ごとに科目がばらつく原因を作らずに済みます。
全件の見直しが止まらない事務所では、確定してよい条件が文書になっておらず、誤りが見つかったときに誰が確定したのかも残っていません。この表を顧問先の科目ルール表の横に置き、入力担当が候補ごとにどの行で止めたかを書けるようにすると、監査担当は止まった候補から読めます。
入力担当がそのまま確定してよいAI仕訳の候補
確定に進めるかは、証憑との照合と前月の仕訳との比較の2回で決まります。確かめる順番は次のとおりです。
- 候補と証憑の画像を並べ、日付・金額・相手先・登録番号を照合する
- 読み取りのずれ(日付の年、金額の桁、取引先名の表記ゆれ)を証憑どおりに直す
- 同じ取引先の前月の確定済みの仕訳を開き、勘定科目・補助科目・消費税区分を比べる
- 3つとも同じなら確定し、1つでも違えば確定せずに監査担当へ回す
読み取りのずれは、証憑と並べればその場で正しい値が分かるので、入力担当が直して構いません。手書きの領収書で日付の年が1年ずれた候補や、金額の桁が1つ少ない候補がこれに当たります。直した項目を摘要とは別のメモ欄に残しておくと、読み取りの誤りが多い顧問先を後から数えられます。
比べる相手の確定済みの仕訳が、前任者の誤った科目のまま残っていることもあります。そのまま比べると誤りを確定するだけなので、候補の元にする過去仕訳の範囲と外す条件を決めた記事の整理を先に済ませます。
AIの候補で縮むのは入力の時間で確認の時間は残る、という前提は記帳代行の採算と顧問先の選び方の記事で扱っています。
監査担当・税理士へ回す仕訳候補と、添える一言
科目が前月と違う候補、中身が証憑で分からない候補、登録番号や控除割合の判断が要る候補は、入力担当が直さずに回します。回すときに「何が前月と違うか」を一言書くと、受け取った側は証憑を開く前に判断の見当がつきます。
【説明用の架空の記入例】
| 候補の条件 | 回す先 | 添える一言の例 |
|---|---|---|
| 科目が前月の確定仕訳と違う | 監査担当 | 前月は通信費、今回は消耗品費 |
| 証憑だけでは中身が分からない | 監査担当(顧問先に聞く) | 飲食代、人数と相手の記載なし |
| 初めて出てきた取引先 | 監査担当を通して税理士 | 新規、過去の仕訳なし |
| 登録番号が公表サイトに無い | 税理士 | 照合で該当なし |
| 9月と10月の利用が1枚の請求書 | 税理士 | 利用期間9/15〜10/14 |
同じ携帯電話会社への支払いでも、端末の購入が含まれた月は科目が変わることがあります。科目が違う候補は、AIの誤りのことも、取引の中身が変わったこともあるので、入力担当はどちらかを決めません。交際費か会議費か分からない飲食代は、監査担当が顧問先に参加者と目的を聞いてから科目を決めます。
回された候補のうち、科目が前月と違う候補と中身を顧問先に聞いた候補は、監査担当が確定します。初めての取引先・登録番号が無い相手・10月をまたぐ請求書は、税理士が確定します。監査担当は、確定した科目と税区分を科目ルール表に書き足します。書き足さないと、翌月も同じ候補が同じ理由で回ってきます。
確定後に監査担当が直した件数が翌月も減らない行は、回す条件が緩すぎるので、所長税理士と条件を書き直します。
登録番号の照合と10月からの控除割合は税理士が決める
登録番号は「T」と13桁の数字で、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで照合できます。公表サイトは一度に10件まで検索でき、Web-API機能も用意されています。番号が見つかれば入力担当が確定に進み、見つからない相手は税理士へ回します。
番号が見つからない相手からの仕入れは、仕入税額控除の割合が経過措置で決まります。令和8年度税制改正で、この割合は2026年10月から2年間70%、2028年10月から2年間50%となりました。その後は2030年10月から1年間30%、2031年10月以降は0%です。
2026年9月までの仕入れは80%だったので、利用期間が10月1日をまたぐ請求書は、どちらの割合で処理するかを税理士が決めます。
AI-OCRが登録番号の欄を空で返した候補も、同じ扱いにします。請求書に番号が書いていないのか、読み取れなかっただけなのかは、入力担当が証憑で確かめます。書いてあれば番号を入れて照合し、書いていなければ税理士へ回します。
消費税区分を取引日で決め直す考え方は、承継した顧問先の過去仕訳で科目の違いを洗い出す記事にあります。
採否の表を所内で決める範囲と、外に頼める範囲
採否の線をどこに引くかと、回された候補の科目・消費税区分の確定は、所長税理士と監査担当が所内で決めます。回す条件は、監査担当が確定した結果を科目ルール表に書き足すたびに変わります。外の人が書いた表は、翌月には事務所の判断と合わなくなります。
外の手を借りるか決める前に、監査担当の責任者がまず1か月分、照合した登録番号の件数と回ってきた候補の件数を数えます。判断の目安になるのは、登録番号の件数です。
公表サイトの画面で検索できるのは一度に10件までなので、入力担当が候補を確かめながら検索できる量のうちは、仕組みを作るより手で照合したほうが早く済みます。検索の手間で記帳が遅れる月が続くなら、Web-API機能で番号をまとめて照合する仕組みを外で作る意味が出ます。
監査担当へ回ってくる候補の件数も、同じように見ます。科目が前月と違う候補が多い月が続くなら、前月の確定仕訳と比べて違う候補に印を付ける一覧づくりを仕組みにすると、監査担当は印の付いた候補から読めます。科目ルール表の作り方を含む記帳の作業全体は記帳の業務ページで、ほかの業務のAI活用は会計事務所AI活用ジャーナルのトップで扱っています。
仕組みが作るのは照合の結果と印までで、どの候補を確定するかは外に出しません。証憑や仕訳を外へ渡す前には、所内の情報の区分で渡してよい資料かを確かめます。
明日から始める3ステップ
担当 監査担当の責任者(回す条件の確定は所長税理士)
入力担当が候補を全件見直している顧問先を1社選び、7項目の分担表と回す条件を、その顧問先の科目ルール表の横に書き込む
次へ進む目安7項目のすべてに、確定する人と回す条件が1つずつ書かれた
担当 入力担当
翌月の記帳で、入力担当が候補1件ごとに確定か回すかを決め、回した候補には前月の確定仕訳と違う点を一言書く
次へ進む目安その月の候補の全件に、確定か回すかと、回した理由が記録された
担当 監査担当(新しい取引先・登録番号なし・10月またぎの候補は税理士)
回された候補を確定し、決めた科目と消費税区分を科目ルール表に書き足したうえで、確定後に直した件数を数える
次へ進む目安回された候補の全件が確定し、科目ルール表への書き足しと、確定後に直した件数の集計が終わった
無料相談(オンライン)
BoostXは、会計事務所の記帳・月次・申告準備へのAI導入を支援しています
01無料相談
証憑の回収・記帳・申告の準備から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 国税庁「インボイス制度の概要」国税庁 確認日 2026.10.18
- 国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」国税庁 確認日 2026.10.18
- 国税庁「令和8年度税制改正特集(消費税・インボイス制度の見直し)」国税庁 確認日 2026.10.18
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり







