記帳代行の採算をAIで戻す顧問先の選び方、5つの形と採算の式
AIは科目と区分の候補を出し、入力担当が採否を付け、消費税区分は税理士が確定する
仕訳候補が縮めるのは入力担当の分で、科目と消費税区分の確定は監査担当と税理士に残る。顧問先ごとの採算の式で、候補を試す先と見直す先を分けられる。

30秒でわかること
何が問題か
事務所全体の粗利だけを見ていると、採算を押し下げている顧問先がどこか分からない。
何を見れば判断できるか
判断の物差しは、報酬から入力・確認の時間の金額と候補の費用を引く、顧問先ごとの式。
誰が何をすれば解決するか
戻りやすい顧問先では候補を試し、戻らない顧問先は所長が提出の形・報酬・自計化を見直す。
給与を上げても記帳代行の顧問料が据え置きなら、月の仕訳件数が同じでも、1件の入力と確認の分数に掛かる人件費だけが上がります。
証憑が試算表になるまで、誰の時間が縮むか?
候補を入れても工程の数は変わらず、変わるのは各段で誰の分数が縮み、誰の分数が残るかです。
図の要点:証憑が試算表になるまでの5段。顧問先から通帳・カードのデータ連携の明細、領収書・請求書のPDFや紙のスキャン、科目ルール表と確定済みの直近12か月の仕訳が届く。AIが科目・補助科目・消費税区分の候補、摘要の案、証憑との紐付け案を出し、ルール表に無い取引は科目を空欄にした一覧にする。入力担当が証憑と並べて候補の採否を決め、同じ日・同じ額の振込は1件ずつ確かめる。監査担当と税理士が空欄の一覧とルール外の仕訳を確定し、消費税区分は税理士が確定する。担当ごとに科目が割れた取引はルール表の改訂へ戻す。出力は確定した仕訳と月次の試算表、記録シートの入力分・確認分・直した件数。
空欄で返った取引とルール外の仕訳が、監査担当の読む量を決める
顧問先から届くもの
- 通帳・カードのデータ連携の明細
- 領収書・請求書のPDF、紙のスキャン
- 科目ルール表と、確定済みの直近12か月の仕訳
AIの候補(自動仕訳・読み取り)
- 科目・補助科目・消費税区分の候補
- 記載例に揃えた摘要の案と、証憑との紐付け案
- ルール表に無い取引は、科目を空欄にした一覧
入力担当の採否
- 証憑と並べて、候補を採るか捨てるかを決める
- 同じ日・同じ額の振込は、紐付け案を1件ずつ確かめる
監査担当と税理士の確定
- 空欄の一覧とルール外の仕訳を読み、科目と区分を確定する
- 申告書に直結する消費税区分は税理士が確定する
- 戻す: 担当ごとに科目が割れた取引は、ルール表の改訂へ回す
出力
- 確定した仕訳と月次の試算表
- 記録シートの入力分・確認分・直した件数
監査担当の時間がどれだけ残るかは、空欄の一覧の長さで決まります。ルール表の行が増えるほど空欄は減り、確認は例外を読む仕事に寄っていきます。
消費税区分を税理士の段に置くのは、区分の誤りがそのまま申告書の数字になるからです。申告書の作成は税理士の業務で(税理士法第2条第1項)、職員が関わる部分も税理士が監督します(第41条の2)。候補の区分がどれだけ当たっていても、申告書に流れる区分は入力担当の採否だけで済ませず、税理士が確定します。
賃上げ後に記帳代行の採算が下がる顧問先
採算が下がるのは、同じ件数・同じ時間でも、原価だけが給与に合わせて上がるからです。報酬は月額の固定か仕訳数の帯で決め、原価は入力担当と監査担当の時間にそれぞれの時間単価を掛けた額になります。2つは別の物差しで動きます。
下がり方は顧問先ごとに違います。通帳データを取り込んで科目を確かめれば済む顧問先と、紙の領収書を1枚ずつ読んで打つ顧問先とでは、一件にかかる分数が大きく開くからです。事務所全体の粗利だけを見ていると、どの顧問先が採算を押し下げているのかが分かりません。
申告の出口は電子に寄り、法人税申告のe-Tax利用率は令和6年度に89.1%です。一方で記帳の入口は、顧問先ごとに紙・PDF・データ連携が混ざったままです。採算を顧問先ごとに出すのは、時間の差がこの入口の形で生まれるからです。
顧問先別の採算を出す式とひと月の記録
月の採算は、記帳代行の月額報酬から、記帳にかかった時間を金額に直した額と、候補の月額費用を引いて出します。式は次のとおりです。
月の採算=月額報酬−仕訳件数×一件の入力分÷60×入力担当の時間単価−仕訳件数×一件の確認分÷60×監査担当の時間単価−問い合わせの分÷60×時間単価−候補の月額費用
| 記入する項目 | 自所の数字 |
|---|---|
| 記帳代行の月額報酬 | |
| 月の仕訳件数 | |
| 一件の入力にかかる分 | |
| 一件の確認にかかる分 | |
| 顧問先への問い合わせの分(月) | |
| 入力担当の時間単価 | |
| 監査担当の時間単価 | |
| 候補の月額費用(読み取りサービス・席の料金) |
時間単価は、担当者の年間の給与・賞与・法定福利費を、残業を含めた年間の実労働時間で割って出します。所定時間で割ると、残業の多い担当の単価が実際より高く出るからです。入力担当と監査担当の単価は分けて掛け、問い合わせの分には問い合わせた担当の単価を使います。候補をまだ入れていない月は、候補の月額費用を0として記録します。
分数は、担当者の感覚で書くとずれます。年末調整と確定申告にかからない月を1つ選び、ひと月分を次の手順で取ります。
- 顧問先台帳から記帳代行の顧問先を抜き出し、顧問先ごとの記録シート(Excel)を用意する
- 入力担当は、会計ソフトで顧問先を開いた時刻と閉じた時刻を書く
- 監査担当は、確認にかけた時間と、直した仕訳の件数を別の欄に書く
- 不明な取引を顧問先へ問い合わせた時間は、入力とも確認とも分けて書く
- 月末に仕訳帳から仕訳件数を数え、受領チェック表から紙・PDF・データ連携の内訳を写す
監査担当が直した仕訳の件数を数えておくのは、候補を入れた後に比べる相手になるからです。入力の時間が縮んでも、直す件数が増えて確認が延びていれば、式の上では採算は戻っていません。
AIの仕訳候補で縮む時間と残る時間
縮む分数の大きさを決めるのは、候補の元に渡す仕訳の質と、指示の書き方です。元に渡す仕訳は確定済みのものに絞ります。担当が替わる前の誤った仕訳まで渡すと、その誤りが毎月候補として出てきます。
指示は、ルール表の行をそのまま文にすると外れにくくなります。たとえば「通帳の摘要に電力会社名が入る出金は水道光熱費、課税仕入れ。ルール表に無い相手は科目を空欄にして一覧に出す」と書きます。空欄で返させれば、監査担当が読む先が一覧にまとまります。
電子取引データの保存も、候補を入れて時間が残る工程です。保存の義務を負うのは取引をした顧問先自身で、事務所の品質担当は、顧問先の保存のしかたが要件に沿っているかを見ます。
給与台帳のように従業員の氏名が載る資料は、候補の元に渡す前に扱いを決め、個人番号の入った書類はどの契約でも渡しません。サービス側が取り扱わない旨を定めた契約か、委託として監督できる契約かで線が変わるため、試算表や元帳を入れてよい契約の区分表で先に決めておきます。
採算が戻る顧問先と戻らない顧問先の見分け方
記帳代行の採算が戻るかどうかは、候補で縮む入力の分が、確認で増える分と候補の費用を上回るかで判断します。顧問先の形で振り分けると、次のようになります。
| 顧問先の形 | 候補で縮む時間 | 先に打つ手 |
|---|---|---|
| 通帳とカードがほぼデータ連携(戻りやすい) | 入力の大半 | 口座ごとの取込経路を1つに決める |
| 科目ルール表が文書になっている(戻りやすい) | 入力と確認の一部 | 元の仕訳を確定済みに絞る |
| 同じ日に同じ額の振込が多い(条件つき) | 紐付けの確認が残る | 摘要に請求書番号を入れてもらう |
| 紙の領収書を月末にまとめて郵送(戻りにくい) | 読み取り後の入力だけ | 撮影かPDFでの提出を頼む |
| 担当ごとに同じ取引の科目が違う(戻りにくい) | 確認がかえって延びる | ルール表を先に作る |
データ連携が大半で件数の多い顧問先なら、縮む分数に件数が掛かるので、式の上の戻りがいちばん大きく出ます。ルール表がまだ無い顧問先なら、候補より先に上席が担当者どうしの科目の違いを表にまとめます。
戻りにくい顧問先の場合、時間が記録シートの入力の欄から、確認や問い合わせの欄へ移るだけです。紙の郵送では開封・仕分け・スキャンの時間が候補の前に残り、読み取りが外れた証憑は1枚ずつ見直します。担当ごとに科目が違う顧問先の場合は、候補がどちらかの担当の癖を拾い、監査担当はどちらが正しいかを決める時間まで取られます。
同じ日・同じ額の振込が多い顧問先の場合、取り違えた紐付け案が採られると、売掛金の消し込みが月をまたいでずれます。月末の残高照合で差が出たら、二重取込と取り違えを先に疑う順番を所内で決めておきます。
候補の費用が式のどこに入るかは、記帳のAI化の費用の記事に、読み取りサービスの利用料が仕訳の本数で動く例があります。仕訳の確定から紐付けまでの工程ごとの記事は記帳のハブに、証憑回収や月次の記事は会計事務所のAI活用トップに並んでいます。
戻らない顧問先は報酬か自計化を見直す
戻りにくい側に入った顧問先は、提出の形を変えてもらうか、報酬の根拠を見直すか、自計化へ移すかを顧問先ごとに選びます。候補を入れる判断は、その後です。
撮影かPDFでの提出に切り替えてもらえるなら、形が変わった翌月から候補を入れる側へ移せます。紙の郵送が続き、電子での提出も頼めない顧問先には、候補を入れないほうが時間は少なく済みます。縮む時間より、読み取りの見直しで増える時間が大きくなるからです。
報酬を仕訳数の帯だけで決めているなら、式で出した一件あたりの分数と証憑の形を並べ、顧問先に説明する材料にします。顧問先の経理担当が会計ソフトに入力できる体制なら、自計化も選べます。入力は顧問先に移り、事務所は月次の確認と試算表の説明に回ります。
候補は、戻りやすい側と条件つきの側の1社ずつから試します。2社を並べておけば、紐付けの確認がどこまで残るかを同じ月の記録で見比べられます。上席が前後で比べる数は、入力分と確認分、候補をそのまま採った割合、監査担当が後で直した件数です。
採った割合が高くても直した件数が増えている形の顧問先には、候補を広げません。その形はルール表の作り直しへ戻すか、報酬と自計化の見直しの側へ回すかを所長が選びます。
明日から始める3ステップ
年末調整と確定申告にかからない月を1つ決め、記帳代行の顧問先ごとに入力・確認・問い合わせの時刻を書く記録シートを配る
- 担当
- 監査担当の上席
- 次へ進む目安
- ひと月分の記録が、全顧問先で入力分と確認分に分かれてそろった
記録と月額報酬を採算の式に入れ、顧問先を5つの形のどれに当たるかで並べ替える
- 担当
- 所長
- 次へ進む目安
- 候補を試す顧問先と、提出の形・報酬・自計化を先に見直す顧問先の一覧ができた
戻りやすい1社と条件つきの1社で仕訳候補を試し、直した件数と候補をそのまま採った割合を記録の月と同じ区切りで書き出す
- 担当
- 監査担当
- 次へ進む目安
- 直した件数が記録の月を下回った形の顧問先だけ、翌月に1社ずつ足す
この記事の見方を、自社に当てはめる
- 得られるもの
- 事務所の段階、仕訳候補づくりや資料の催促などのうち先に試す1工程とその理由、監査担当や税理士が見る所と止める条件、2週間の手順
- 所要時間
- 約1分(6問)
- 登録
- 結果を見るまで登録は要りません
- 押した後
- 答えるとその場で、最初にAIへ任せる1工程と、人が確かめる所、2週間の試し方が出ます。資料として受け取るときだけ、会社名・お名前・メール・役職を入力します。
出典・参考資料5件
- 税理士法(昭和26年法律第237号)(第2条第1項・第41条の2)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成10年法律第25号)(第7条)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 国税庁「令和6事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」e-Tax利用率(令和6年度)国税庁 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条・第27条第1項・第5項第1号)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)個人情報保護委員会 確認日 2026.09.28
編集・監修体制BoostX編集部
BoostX編集部(株式会社BoostX)が、官公庁・業界団体などの一次情報を原典で確かめて書いています。下書きにはAIを使い、編集担当者が内容と出典を確認してから公開しています。
更新履歴
最終更新
締めを、戻りやすい顧問先と条件つきの顧問先を1社ずつ試して比べる理由と、直した件数が増えた形の顧問先を所長がどこへ回すかの説明に改めた
すべての更新履歴3件
- 締めを、戻りやすい顧問先と条件つきの顧問先を1社ずつ試して比べる理由と、直した件数が増えた形の顧問先を所長がどこへ回すかの説明に改めた
- 旧題「記帳代行の採算をAIの仕訳候補で戻せる顧問先、戻せない顧問先」を検索語に寄せて改題。仮の場面で始まる冒頭を外し、証憑から試算表までの分担図を最初の節へ移した。採算の式に担当別の時間単価と候補の月額費用を入れて記入表と揃え、税理士が区分を確定する根拠を第2条第1項・第41条の2に直した。締めを上席が数える3つの数字と戻し先に組み直した
- 冒頭の場面を仮の例として短くし、要点の箇条を外した。工程の図と境界の表を、入力から確定までの図1つにまとめ、判断表を3列に。見出しを9本から6本にまとめた