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AI活用の基礎・選び方

会計事務所の生成AIツールの選び方|4製品の月額と入れない書類

所内で標準にする生成AIツールを1本に絞りたい、会計事務所の所長と管理部門・品質担当が読む前提で書いています。

法人向けのプランなら試算表も扶養控除等申告書も入れてよい、と考えて製品の比較から始めると、契約の後で入れてよい資料の線引きに戻ることになります。職員がすでに個人のアカウントで生成AIを使い始めている事務所ほど、製品を比べる前に所内で決めておくことがあります。

AI活用の基礎・選び方 更新 8分 運営 株式会社BoostX

会計事務所の生成AIツール選定でAIに任せられる工程|標準の決定は所長

先に結論

まず所長が、扶養控除等申告書から税法・通達までを4つに分けた区分表を決裁し、その後で標準のツールを選びます。個人番号の載る書類はどの製品のアカウントでも入れず、個人情報が残る資料は、事業者が中身を取り扱わない旨の契約とアクセス制限があるアカウントか、委託として監督できる契約のアカウントに限ります。

AIに任せるのは、候補の利用規約から学習利用・保存・再委託などの条項を抜き出す下書きと、試用の表の集計までです。抜き出した条項は管理部門が原文と照合し、個人データの扱いの判定と許す区分、標準の1本とアカウント数は所長が決めます。

試用は議事録や資料の催促文など税務判断を含まない業務で、たとえば2週間(期間は所長が決めます)行い、年末調整と給与計算は外します。区分表が無いまま年末調整に入る事務所は、契約を確定申告の後へ回します。

守秘義務と番号法の制限は、製品名でなく資料の中身にかかる

生成AIツールに入れてよい範囲は、預かる情報を4つに分け、区分ごとに許す契約の条件を決めると定まります。税理士法の守秘と監督も、番号法の提供の制限も、向いているのは預かった情報そのもので、ツールの名前には触れていないからです。

税理士法第38条は、正当な理由なく税理士業務に関して知り得た秘密を漏らすことを禁じています。第54条は同じ義務を使用人その他の従業者に課し、第41条の2は使用人等を監督する義務を税理士に置いています。入力担当が個人のアカウントに試算表を貼った場合も、監督の責任は所長に残ります。

区分 所内の資料の例 許す契約の条件
公開情報 税法・通達・所内の書式 学習利用の扱いを確かめれば、どの候補でも試せる
顧問先の財務情報 顧問先名を伏せた法人の試算表・決算書 入力を学習に使わない契約のアカウントに限る
個人情報が残る資料 総勘定元帳の摘要、給与台帳、個人事業主の試算表 事業者が中身を取り扱わない契約か、委託として監督できる契約に限る
特定個人情報 扶養控除等申告書、個人番号の入った書類 どの契約でも入力の対象から外す

法人の資料でも、個人情報が無いとは言い切れません。総勘定元帳の摘要には役員への仮払いや個人の外注先の氏名が残り、勘定科目内訳明細書も同じです。迷う資料は、表で一つ下の行にある、より厳しい区分に置きます。

特定個人情報は、番号法第19条が提供を、第20条が収集と保管を、列挙した場合に限っています。外部サービスへの入力がどの行為に当たるかは契約と仕組みで変わるため、所内の運用として最初から入力しない区分に置きます。

候補は利用規約の条項を同じ欄に並べて比べる

候補の比較は、利用規約の条項を同じ欄に並べた1枚のシートで行い、同じ製品でも個人向けと法人向けのプランは別の紙にします。条項を抜き出す欄と人が判定する欄を同じ紙に置けば、誰がどこまで書いたかが紙の上で分かれます。

図の要点:候補比較シート1製品1枚の10欄。製品とプランは人が書く。入力を学習に使うか、保存場所と保存期間、契約終了時の削除、再委託先、管理者の権限と操作ログ、漏えい時の連絡の6欄は、AIが利用規約から条項を原文のまま抜き出す。個人データの扱い(取り扱わない定めか、委託か、第三者提供か)、照合した日と条項番号、許す区分の3欄は人が書き、許す区分は所長が決める。

AIが抜き出した条項は原文と照合し、許す区分は所長が書く

製品とプラン
例: 対話型AIの法人向けプラン・年払い・10人分人が確定
入力を学習に使うか
利用規約の該当条項を原文のまま抜き出すAI が下書き
保存場所と保存期間
保存先の国と、会話を残す日数の条項AI が下書き
契約終了時の削除
解約後にデータが消える時期の条項AI が下書き
再委託先
処理を任せる事業者の一覧が載る場所AI が下書き
管理者の権限と操作ログ
利用者の停止と、入力記録を見られるかAI が下書き
漏えい時の連絡
事故を知らせる期限と連絡先の条項AI が下書き
個人データの扱い
取り扱わない定めか、委託か、第三者提供か人が確定
照合した日と条項番号
管理部門が原文で確かめた日と条項人が確定
許す区分
例: 顧問先の財務情報まで。個人情報が残る資料は不可人が確定

AIが抜き出した条項は、管理部門が利用規約の原文と1行ずつ照合します。「学習に使わない」と要約された条項が、管理者が設定を切り替えた場合に限る書き方になっていることもあるからです。

許す区分の欄を埋めるのは所長です。管理部門は照合の結果までを渡し、区分は決めません。規約は改定されるので、照合は契約更新のたびにやり直します。

個人データの扱いの欄を埋める3つの読み方

個人情報が残る資料を外部の生成AIに入れる扱いは、次の3つのどれに当たるかで変わり、サービスがデータを保存するかどうかでは決まりません。1つ目は、事業者が中身に触れない場合です。サーバに保存されていても、事業者がその個人データを取り扱わない旨を契約で定め、アクセスも適切に制限していれば、そもそも提供の扱いになりません。

2つ目は、事業者が個人データを取り扱う契約の場合です。取扱いの委託と言える内容かを見て、事務所は委託先を監督します(個人情報保護法第25条)。シートの再委託先と漏えい時の連絡の欄は、委託先を監督するときに確かめる材料になります。

委託とも言えない契約なら第三者提供に当たり、原則として本人の同意を先に得ることになります(第27条)。顧問先の従業員や取引先の一人ひとりから同意を取るのは難しいため、この扱いになるサービスには個人情報が残る資料を入れない運用が現実的です。

提供先(AIサービスの運営会社)が国外の事業者なら、もう一つ確かめることがあります。国外の事業者への委託は、同等の水準の国や体制の例外に当たらなければ、第28条で本人の同意が要ります。事業者が取り扱わない旨を契約で定め、アクセスも制限していれば、国外のサーバに保存されても提供には当たりません。

4製品の1人あたり月額と契約の前提

候補は、メールや文書ソフトに付く生成AIと、対話型AIの法人向けプランの2種類です。公式の料金表の月額と、契約の前提は次のとおりです。

製品とプラン 1人あたりの月額(公式料金表) 契約の前提
Google Workspace Business Standard 1,600円(税別) メールと文書の基盤ごと契約。割引期間の値も並ぶ
Microsoft 365 Copilot Business 3,148円(年払い・税別、割引期間は2,698円) 利用中の Microsoft 365 に足すアドオン
ChatGPT Business 標準シート 3,050円(年額課金)、月額課金は3,850円 料金表に税込・税別の表記なし
Claude Team スタンダードシート 20ドル(年払い)、月払いは25ドル ドル建てで為替により円の額が動く

Copilot Business は単体では動かず、3,148円は Microsoft 365 の契約に上乗せする単価です。共有ドライブもメールも Microsoft 365 にある事務所なら、資料を別のサービスへ貼り直さずに済むので、文書ソフト側の候補はこちらが有力になります。Google Workspace で揃えている事務所なら逆です。

ChatGPT Business と Claude Team は、基盤と切り離して契約する単体のプランです。どちらも料金表で、業務の入力を既定では学習に使わないと示しています。

円建てとドル建て、年払いと月払いが混ざるため、稟議には年払いの総額を円に直した値と、直した日の為替を並べます。人数を掛けた年額や、記帳の仕組みを外に頼むときの見積の読み方は、生成AIの年額と記帳の見積を並べた費用の記事で試算しています。

会計ソフトの付属機能で足りる事務所

顧問先ごとの会計ソフトがほぼ1種類にそろい、頼みたい仕事が仕訳の候補と証憑の読み取りに限られる事務所なら、付属機能で足ります。付属機能は、そのソフトの勘定科目と過去の仕訳を手本に候補を出すからです。

弱いのは、扱える範囲の狭さです。扱えるのはソフトの中の仕訳と証憑までで、月次の説明メモや税制改正の要点、資料の催促文は外に出ます。顧問先によってソフトが違う事務所では、利用ルールもソフトの種類だけ要ります。

ソフトが1種類なら、仕訳は付属機能に任せ、文章の仕事だけを表の候補の1本にまとめる組み合わせが素直です。ソフトがたとえば3種類以上に分かれる事務所では、付属機能を標準にせず、区分表と候補比較シートで1本を選ぶほうが先になります。

ツール選び以外の基礎の論点はAI活用の基礎・選び方から、業務ごとの順番は会計・税理士のAI活用の全体像からたどれます。どちらも、区分表を決めた後に読むと順番を組みやすくなります。

2週間を目安にした試用で、生成AIツールを1本に絞る

試用は、区分表で公開情報か顧問先の財務情報に入る業務のうち、税務判断を含まないものから始めます。期間はたとえば2週間で、決めるのは所長です。所内会議の議事録、資料の催促文、税制改正の要点の下書きなら、誤っても所内で気づけます。

月次の説明メモは、試算表の増減を言葉にするだけなら試せます。ただし「来期は役員報酬を見直す余地がある」と一行入れば、税務相談に近い内容になります。このメモを試すなら、税理士が送る前に読む手順を先に決めます。年末調整と給与計算は、扶養控除等申告書が混ざるので最初から外します。

試用のあいだは、業務名・件数・1件にかかった分・差し戻しの回数を毎日表につけます。この表の集計まではAIに任せて構いません。

【説明用の架空の記入例】試用3日目の1行です。業務名: 資料の催促文/件数: 6件/1件にかかった分: 4分/差し戻しの回数: 1回(顧問先の担当者名の誤り)。件数と分数は仮の数字で、目安ではありません。

表を見て標準の1本とアカウント数を決めるのは所長で、この判断はAIに渡しません。2本を残して両方と契約すると、月額も利用ルールも二重になるからです。申告書の下書きまで広げるときの分担は、申告書づくりでAIに渡す工程の記事で続きを読めます。

契約は年末調整の前か、確定申告の後か

区分表が決裁済みで、試用の表を埋める人がいるなら、年末調整の書類が届く前に事務所の標準のアカウントを契約して構いません。職員が個人のアカウントから事務所のアカウントへ移る時期を、書類の山より前に置けるからです。

区分表が無いまま年末調整に入るなら、契約は確定申告が終わる4月まで待つほうが損は小さく済みます。この時期、所長は巡回監査と申告で事務所を空ける日が続き、区分の判断を聞けない入力担当は手を止めるか個人のアカウントに戻ります。どちらに転んでも、月額だけが残ります。

契約の後は、品質担当が毎月の初めに管理画面の利用者数を数え、顧問先名の入った資料を扱う職員の人数と比べます。人数に達していればアカウント数はそのまま続け、利用者のほうが少ない月は、まだ個人のアカウントで作業している職員の業務を区分表で確かめ直し、許す区分に入る作業から事務所のアカウントへ移します。

区分表の決裁は所長の手に残り、条項の読み合わせで外部を比べる

区分表と標準の1本は、所長が決裁し、管理部門が規約の原文を条項番号まで照合できるなら所内で決め切れます。候補比較シートのうちAIが抜き出す6欄は管理部門の照合で確かめられ、個人データの扱い・照合した日・許す区分の3欄はもともと所内の判断だからです。

外部を比べるのは、個人データの扱いの欄が規約から読み切れないときです。取り扱う契約が委託と言えるか、国外の事業者に第28条の同意が要るかを所内で判定できないままアカウントを配ると、個人情報が残る資料の区分が空のまま残ります。この読み合わせを外部の顧問と組む形なら、許す区分を書く手は所長に残せます。

もう1つは、顧問先の会計ソフトがたとえば3種類以上に分かれ、付属機能を標準にできない事務所です。区分表を業務ごとの利用ルールへ落とす作業が増えるため、ルールの組み方から外部の目を入れるかを、試用の表を見た後に決めます。外に頼む前に、管理部門は個人データの扱いの欄が空いたままのシートの枚数を数え、空欄が残る候補を外してから比べます。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 管理部門の責任者

    扶養控除等申告書・試算表・総勘定元帳・給与台帳を、4区分のどこに置くかを表に書いて所長の決裁に回す

    次へ進む目安4つの資料の区分が、決裁済みの表として所内に配られた

  2. 担当 管理部門の担当者

    候補の製品ごとに比較シートを1枚ずつ作り、AIが抜き出した学習利用・保存・再委託の条項を原文と照合する

    次へ進む目安どのシートも照合した日と条項番号が埋まり、所長が許す区分を書き込んだ

  3. 担当 入力担当と監査担当

    議事録と資料の催促文でたとえば2週間(期間は所長が決める)試し、業務名・件数・1件の分・差し戻しの回数を毎日つける

    次へ進む目安所長が試用の表を読み、標準の1本とアカウント数、契約する時期を選んだ

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出典

  1. 税理士法(昭和26年法律第237号)(第2条の3・第38条・第41条の2・第54条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  2. 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)(第19条・第20条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  3. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第25条・第27条第1項・第5項第1号・第28条第1項(外国にある第三者への提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  4. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-1(外国にある第三者への委託)・Q12-3(外国にあるサーバへの保存) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.28
  5. Google「Google Workspace 料金プラン」(Business Standard) Google 確認日 2026.09.27
  6. Microsoft「Microsoft 365 Copilot Business」(料金) Microsoft 確認日 2026.09.27
  7. OpenAI「ChatGPT 料金」ビジネス・エンタープライズ向け(Business 標準シート) OpenAI 確認日 2026.09.27
  8. Anthropic「プランと料金」(Team プランのスタンダードシート・Team プランのデータの扱い) Anthropic 確認日 2026.09.27

編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり

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