生成AIの成果物を確認する7項目、見積と価格改定案内を送る前に誰が見るか
AIは下書きの横に元資料の行を並べ、単価と数量は営業事務、食品の表示は品質担当が確かめる
送る前の7項目は下書きでなく元資料の値を正とし、AIは該当行を並べるまで。見積・案内・カタログ文ごとに、照らす元資料と確認者を割り振れる。

30秒でわかること
何が問題か
12入×10ケースを10個と読んだ見積が通ると、注文書から請求書まで同じ誤った数量のまま進む。
何を見れば判断できるか
品番・数量と単位・単価・適用日・取引条件・表示・宛先を、価格表や決裁、規格書と照らす。
誰が何をすれば解決するか
単価と数量は営業事務、表示は品質担当が確かめ、確認を外す文書は営業責任者が記録で決める。
書式の整った見積が先にできあがると確認が甘くなり、「12入×10c/s」を10個と読んだ数量や改定前の単価が、そのまま得意先へ出やすくなります。
見積・案内・カタログ文は、照合する元資料を持つ人が確かめる
金額・日付・表示は、その元資料を更新する人が見たほうが食い違いに気づけるため、作った担当者の確認は品番と宛先までにとどめます。
図の要点:作った担当者・AI・営業事務・品質担当の4つの担当で、見積・価格改定の案内・カタログ文を送るまでの9段。AIは下書きの横に入数と価格表の行を並べ、案内の別紙とカタログ文を下書きする。単価・数量・条件と別紙の品番・適用日は営業事務が元資料と照らし、原材料と特定原材料の表記は品質担当が規格書の版で照らす。承認の記録が無い値引は作った担当者へ、決裁に無い品番は営業責任者へ、規格書の空欄は仕入先へ戻す。
合わない行の戻し先は、値引なら作った担当者、決裁に無い品番なら営業責任者、空欄の表示なら仕入先
作った担当者
AI
営業事務
品質担当
- 作った担当者
名前を消した依頼と、その得意先の価格表の行を渡す
他の得意先の価格表は渡さない
- AI
品番・数量・単価を入れ、横に入数と価格表の行を並べる
- 作った担当者
品番と宛先を商品マスター・得意先マスターで確かめる
戻す品名だけの依頼は得意先に品番を聞く
- 営業事務
単価・数量と単位・期限・条件を元資料と照合
戻す承認の記録が無い値引は作った担当者へ
- AI
価格改定の決裁から、案内文と対象品番の別紙を下書き
- 営業事務
別紙の品番・件数と適用日を決裁の一覧と照合
戻す決裁に無い品番は営業責任者へ
- AI
カタログ文を下書きし、原材料とアレルゲンは規格書から写す
- 品質担当
原材料と特定原材料の表記を規格書の版で照合
戻す規格書で空欄の欄は仕入先に聞く
- 作った担当者
確認済みの版を送り、送付控えに入れる
確認した人の名前と日付を控えに書く
自社の記録で数えるのは、先月の送付控えで営業事務の照合を通らずに出た文書の件数で、多い種類から図の営業事務の段に乗せます。
作った本人の確認だけで送ると、自分の頼んだ内容を前提に読んでしまいます。価格表の改定を知らなかった担当者は、改定前の単価を見ても手が止まりません。AIが元資料と一致すると並べた行も、営業事務は元資料の側から1行ずつ見ます。価格表が古ければ、古い単価どうしでも一致と出るからです。
営業所に営業担当がひとりしかいない日は、送る前に別の人が見る段を置けません。その場合は、翌朝に営業責任者が、前日に送ったPDFを送付控えで見る事後の確認に切り替えます。得意先の発注が確定する前に訂正を入れられれば、誤りは出荷と請求まで進みません。
休業日や配送の締め時刻の変更のように、金額も数量も入らない定型の案内なら、作った担当者が7項目で確かめて送るだけで足ります。食品や化学品を扱わない専門商社では、品質担当の段を、型式・寸法・材質を仕様書と照合する商品担当に置き換えます。
7項目とも元資料を正とし、単価と数量は照合を省かない
7項目のどれも、下書きの数字ではなく元資料の値を正とします。見積書では7項目のほぼすべて、価格改定の案内は単価・適用日と有効期限・取引条件・宛先、カタログ文は品番・数量と単位・表示が中心です。
| 確かめる項目 | 照合する元資料 | 下書きで起きやすいずれ |
|---|---|---|
| 品番 | 商品マスター・得意先の品番対応表 | 品名の似た別の品番が入る |
| 数量と単位 | 商品マスターの入数と販売単位 | ケースとバラを取り違える |
| 単価 | 得意先別価格表・値引承認の記録 | 改定前の値や税込の参考価格が入る |
| 適用日と有効期限 | 価格改定の決裁・見積書テンプレート | 「出荷分より」と「受注分より」が入れ替わる |
| 取引条件 | 取引基本契約書の支払・納入条件 | 前回の見積だけの条件が写る |
| 表示 | 仕入先の規格書 | 規格書に無い原材料や一文が足される |
| 宛先 | 依頼メールの差出人・得意先マスター | 雛形にした別の得意先の社名が残る |
表のうち、誤りが得意先の請求まで進みやすいのは単価と数量です。この2項目だけは、作った担当者が問題ないと言っても営業事務の照合を省きません。
単価は価格表を先に開き、見積の行へ目を移す
下書きを上から読むと、もっともらしい数字は正しく見えてしまいます。順番を逆にして、得意先別価格表の該当行を先に開き、そこから見積の行を見ます。
掛率で出す品目は、定価と掛率の両方が今の価格表と同じかを確かめます。定価だけを改定して掛率を据え置いた後は、下書きがどちらの定価で計算したかで単価が変わるからです。依頼メールに税込の参考価格が書いてあると、その数字が税抜の欄に入ることもあります。
値引の行で照合する相手は、値引承認の記録です。前回の見積をAIに渡して「同じ形で」と頼むと、前回だけの特別値引まで今回の見積に写ります。承認の記録が無い値引は、営業事務が作った担当者へ戻します。下書きから消して営業責任者に聞き直すのは、作った担当者の仕事です。
得意先別価格表が営業担当ごとのExcelに分かれ、どれが最新か誰も言い切れない会社には、単価の欄をAIに埋めさせる形が向きません。単価を空欄にした下書きを作らせて、営業担当が書き入れます。
入数の読み違いは出荷と請求まで同じ数で進む
冒頭の「12入×10c/s」なら、得意先が求めているのは120個です。これを10個と読んだ見積の下書きは合計金額が小さく出るので、高すぎると指摘する人がいません。見積が通ると、注文書も受注入力もピッキングリストも請求書も、その数のまま進みます。
防ぐには、商品マスターの入数と販売単位を見積の各行の横に置き、数量の欄に単位を必ず書かせます。「10」とだけある行は、単位が決まるまで送りません。受注の側でも同じ取り違えは起きるので、FAXで届いた注文をAIで下書きするときに保留にする行で使う品番対応表と、見積の照合に使う表は一つにしておきます。
価格改定の案内は受注済み分の扱いを決めてから送る
価格改定の案内文は、適用日・対象品番・受注済み分の扱いを改定の決裁と照合してから送ります。「10月1日出荷分より」と「10月1日受注分より」を、AIはどちらも同じくらい自然な文として書きます。どちらを取るかで変わるのが、9月末に受けた注文の請求単価です。
対象品番は、営業事務が決裁の一覧と案内の別紙を品番で照らし合わせ、件数が合うかを先に見ます。本文に「一部商品」とだけ書く案内なら、別紙の一覧が決裁と同じかどうかが正否の分かれ目です。
有効期限内の見積を出している得意先からは、その見積の単価で注文が来ることがあります。どちらの単価で受けるかは、案内を出す前に営業責任者の判断で固めておきます。決めないまま一律の案内を送ると、電話を受けた営業担当が答えられません。
値上げの幅と時期は自社で決めます。独占禁止法が禁じる不当な取引制限には、事業者が他の事業者と共同して対価を決め、引き上げるなどして、一定の取引分野の競争を実質的に制限することが含まれます。そのため、AIに作らせた価格改定の案や案内文を、同業他社と幅や時期をそろえる話の材料にはしません。
値上げ案内1件でAIに渡す情報の範囲は、値上げ案内1件の分担と10席1年の料金を並べた記事で扱っています。
カタログ文は規格書から写し、他社の文面と比べる
食品のカタログ文に載せる原材料とアレルゲンは、AIに補わせず、仕入先の規格書の表記をそのまま写させます。商品名と特徴だけを渡して説明文を頼むと、ありがちな原材料や「保存料不使用」の一文が足されることがあります。規格書に無い一文には根拠がありません。
食品表示法第5条は、表示の基準どおりに表示していない食品を売ることを、食品関連事業者等に禁じています。カタログやWebの説明文がどこまで表示の基準の対象になるかは、一般消費者向けか業務用か、どの媒体に載せるかで変わります。その判断は品質担当の持ち分です。迷うものは専門家に確かめます。
原稿の横には、写した規格書の版と改訂日を書いておきます。仕入先から規格書の改訂が届いたら、その品番のカタログ文を見直す合図です。規格書の表示項目を商品マスターに持たせておけば、商品マスターへ規格書の表示項目を持たせる登録の欄が、そのままカタログ文の元になります。
他社のカタログに似た文面は使う前に比べる
著作権の侵害になるかどうかは、AIを使った場合も、人が書いた場合と同じく、既存の著作物との類似性と依拠性で判断されます。生成した時点で侵害にならなくても、利用する時点で別に検討が要ります。カタログ文を作った担当者にとって、比べる相手は競合のカタログです。
社内で防げるのは手前の部分です。他社のカタログ文を貼り付けて「書き直して」とAIに頼むことはしません。元の文を見て作ったことが、指示文そのものに残るからです。生成に使った指示文と下書きは、送った版と一緒に残します。
似ていると気づいた文面をそのまま使うかどうかは、社内で決めずに弁護士に聞きます。仕入先の商品写真をAIで加工して載せてよいかも同じです。聞くときは、下書き・AIへ渡した指示文・似ていると思った元の資料をそろえて渡します。
依頼メールや価格表を生成AIに渡してよいか?
渡すのは、その得意先の依頼と価格表の該当行までにします。他の得意先の価格表を丸ごと渡せば、他社の単価が下書きに混ざるでしょう。別の得意先宛ての見積を雛形にすると、その社名が本文に残ります。
法人どうしの取引の資料でも、個人情報が入っていないとは言い切れません。依頼メールの署名欄や得意先マスターには、購買担当者の氏名・部署・メールアドレスが載っています。
外部の生成AIサービスに入れたときの扱いは3通りです。入力された依頼文を事業者が取り扱わないと契約に書かれ、見られる人も絞られていれば、先方のサーバに残っていても個人データの提供には数えません。
事業者が依頼文を取り扱う契約なら、委託と言えるかを契約で確かめます。言えれば委託先の監督(第25条)を負い、言えなければ第三者提供として第27条で前もって本人の同意をもらうのが原則です。どれに当たるかを確かめるまで、渡す資料から担当者名を外します。
運営が海外の事業者なら、委託の形であっても、第28条で本人の同意が要るかを見ます。契約で読む項目は得意先の担当者名を生成AIに渡す前の契約の確かめ方にまとめてあり、確認が済むまで営業担当は担当者名と連絡先を消した依頼文を渡します。得意先から受け取った図面や仕様書に秘密保持の取り決めがあれば、その範囲も同じときに確かめてください。
メールで送った見積はデータのまま保存する
見積書をメールで送る取引は電子取引にあたるため、確かめ終えて送った版をデータのまま保存します。電子帳簿保存法の定義では、見積書にふつう書かれる内容が取引情報で、それをメールなどで受け渡す取引が電子取引です。そのうえで同法第7条は、所得税・法人税の保存義務者に、その取引情報のデータの保存を義務づけています。
残すのは、実際に送ったPDFで、AIの下書きや途中の版ではありません。取引の日付・得意先名・金額で後から探せる名前にし、確認した人の名前と日付は控えの側に書きます。保存の方法が検索などの要件を満たすかは、経理が顧問の税理士に確かめて決めます。
送付控えのフォルダは得意先ごとに一つ決め、送った担当者がその日のうちに入れます。送った版と下書きが別の場所に散らばると、「先月の見積と違う」と言われたときに、どの版を送ったかを示せません。
誤りの記録で、別の人の確認を外せる文書を決める
別の人の確認を外してよい文書は、誤りの記録簿を見て決めます。営業事務が確認で見つけた誤りを、日付・文書の種類・7項目のどれか・原因が元資料の側か指示の側か、の4つに分けて一行ずつ書いた記録簿です。
原因が価格表の側なら、改定の決裁から得意先別価格表の更新までに何日空いたかを見ます。同じ品番で入数の誤りが続くなら、商品マスターの入数が空欄か古いままです。指示の側なら、営業事務の責任者が「数量には必ず単位を付ける」「価格表に無い値引は書かない」のような一行を指示文に足します。
本人の確認へ移した後でも、単価の誤りが一度でも得意先に届いた文書の種類は、営業責任者が営業事務の照合に置き直します。7項目に分けた列があれば、止まっていた誤りがどの項目で再び出たかまで記録簿で追えます。
手を付ける順番は、営業事務による見積の単価と数量の照合が先です。見積は依頼のたびに作る文書なので、直した行が週ごとに記録簿へたまり、案内やカタログ文より早く判断の材料がそろいます。
明日から始める3ステップ
来週送る見積を1件選び、得意先別価格表の該当行を先に開いてから、単価・数量・単位を行ごとに照らす
- 担当
- 営業事務
- 次へ進む目安
- その見積の全行に、照らした元資料の名前と確認者の印が入っている
直した行を、日付・文書の種類・7項目のどれか・価格表の側か指示の側か、の4列で書き込む記録簿を共有フォルダに置く
- 担当
- 営業事務の責任者
- 次へ進む目安
- 照合で直した行が、直したその日のうちに記録簿へ1行ずつ載るようになった
月初に記録簿を開き、直した行が出ていない文書の種類を挙げて、作った本人の確認へ移すかを決める
- 担当
- 営業責任者
- 次へ進む目安
- 直した行が0件の週が自社で決めた週数(例: 6週)に届いた文書の種類だけを本人の確認へ移し、ほかは営業事務の照合に据え置いた
この記事の見方を、自社に当てはめる
- 得られるもの
- 自社の段階と、6つの候補から最初にAIへ任せる1工程(照会の回答の下書き、注文書の取り込み など)、営業事務や営業責任者が確かめる所、止める条件、2週間の試し方が出る
- 所要時間
- 約1分(6問)
- 登録
- 結果を見るまで登録は要りません
- 押した後
- 答えるとその場で、最初にAIへ任せる1工程と、人が確かめる所、2週間の試し方が出ます。資料として受け取るときだけ、会社名・お名前・メール・役職を入力します。
出典・参考資料6件
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)(第2条第6項・第3条)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 食品表示法(平成25年法律第70号)(第5条)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 文化庁著作権課「著作権テキスト(令和8年度版)」AIと著作権について(生成・利用段階の基本的な考え方)・AIと著作権について(生成・利用段階の留意点)文化庁 確認日 2026.09.28
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成10年法律第25号)(第2条第5号・第7条)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第25条(委託先の監督)・第27条第1項(第三者提供の制限)・第27条第5項第1号(委託に伴う提供)・第28条第1項(外国にある第三者への提供の制限)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
編集・監修体制BoostX編集部
BoostX編集部(株式会社BoostX)が、官公庁・業界団体などの一次情報を原典で確かめて書いています。下書きにはAIを使い、編集担当者が内容と出典を確認してから公開しています。
更新履歴
最終更新
30秒の要点の1つ目を「12入×10ケースを10個と読んだ」見積の例に直した。図のすぐ後に、先月の送付控えで営業事務の照合を通らずに出た見積を数える話を置き、最後の章は、単価の誤りが得意先に届いた文書を照合へ置き直す条件から書き直した
すべての更新履歴4件
- 30秒の要点の1つ目を「12入×10ケースを10個と読んだ」見積の例に直した。図のすぐ後に、先月の送付控えで営業事務の照合を通らずに出た見積を数える話を置き、最後の章は、単価の誤りが得意先に届いた文書を照合へ置き直す条件から書き直した
- 冒頭に一文の結論と30秒で読める要点を置いた。最初の2つの見出しを、元資料を持つ人が確かめることと、単価と数量の照合を省かないことを示す答えの形に改め、分担の図のすぐ後に文書の種類ごとに決めることを書いた。最後の章を記録簿を7項目に分ける理由と戻し先に絞り、明日からの3つの手順を担当ごとに示した
- タイトルを「生成AIの成果物を確認する7項目、見積と価格改定案内を送る前に誰が見るか」に改めた(旧タイトル「AIで作った見積・案内・カタログ文を得意先に出す前に、人が確かめる項目」)。送る前に誰がどの元資料と照らすかを冒頭で答え、作った担当者・AI・営業事務・品質担当の分担の図をすぐ後に置いた。AIが一致と並べた行も営業事務が元資料から見ること、単価と数量の照合は省かないこと、承認の記録が無い値引は営業事務から作った担当者へ戻すことを書き足した。本文から文化庁テキストの名指しを外し、個人情報保護法第28条と個人情報保護委員会Q&A 7-53を出典に足した。同じ資料の出典を1つにまとめた
- 見出しを9本から7本に絞り、冒頭の仮の場面と要点の箇条を外して答えから始めた。送付前の工程図と4列の確認表を、作った担当者・AI・営業事務・品質担当の分担の図と3列の表に替え、依頼メールや価格表を生成AIに渡すときの個人情報(委託と第三者提供)の説明を足した。著作権の出典を文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)から令和8年度版の著作権テキストへ替え、情報通信白書の利用率の数字を外した