証憑回収の催促、会計事務所がAIに任せるのは未提出一覧と下書きまで
未提出資料の催促をAIに任せたいが、誤った催促や顧問先との関係の悪化が心配な会計事務所の、監査担当の責任者・所長・事務担当
月次の提出期限を過ぎた週、監査担当は受領チェック表(Excel)の空欄を見ながら、通帳のコピーやカード明細を顧問先ごとにメールやチャットで頼み直します。毎月同じ作業に見えても、資料が担当者個人に届いていた、決算月が近いといった事情で、文面も急ぎ方も変わります。この頼み直しのどこまでをAIに渡せるのか、誤った催促がどこから生まれるのかが分かります。

先に結論
未提出資料の催促でAIに任せられるのは、必要資料一覧と受領チェック表を突き合わせた未提出一覧づくりと、顧問先ごとの催促文の下書き・送信予約までです。どのくらい強く、いつ催促し、電話に切り替えるかは監査担当が顧問先ごとに決め、申告や決算の期限に響く遅れは所長(税理士)に伝えます。
資料が担当者個人のチャットや郵送で届き、チェック表に反映されない顧問先があるうちは、AIの下書きを送信予約に載せません。申告期限まで日が無い顧問先も同じ扱いで、監査担当が受領の有無を確かめ、自分で連絡します。
未提出一覧はAIが作れ、催促の強さは人が決める
突き合わせと下書きは、受領チェック表(Excel)が正しければ毎月同じ手順で繰り返せるのでAIに向きます。催促の強さは、受領チェック表に載らない顧問先の事情で決まるので、監査担当の判断として残ります。
図の要点:未提出資料の催促の流れを示した図。提出期限が過ぎると、AIが必要資料一覧と受領チェック表を突き合わせて、前回の提出日と未提出の月数を添えた未提出一覧を出す。監査担当が催促の強さ・時期・電話への切り替えを決め、AIが顧問先ごとの催促文を下書きして送信予約する。送信前に監査担当が別の経路で届いた資料がないかを確かめ、資料を受領した担当者がチェック表に記録する。
AIが作る一覧と下書きは、監査担当の判定と送信前の確認を通ってから顧問先へ届く
-
必要資料一覧と受領チェック表を突き合わせる
提出期限を過ぎた月が対象
AI
-
未提出一覧を出す
前回の提出日と未提出の月数を添える
AI
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催促の強さ・時期・電話への切り替えを決める
期限に響く遅れは所長へ伝える
監査担当
-
顧問先ごとの催促文を下書きし送信予約する
資料名と提出の形を書く
AI
-
送信前に一覧と文面を確かめる
別の経路で届いた資料がないか
監査担当
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受領を記録しチェック表を更新する
受領した日に記入
受領した担当者
未提出一覧とは、顧問先ごとの必要資料一覧と受領チェック表を突き合わせ、期限を過ぎても届いていない資料を顧問先・対象月・資料の種類で並べた一覧です。この一覧が催促の起点になり、監査担当の判断は顧問先へ届く前に2回入ります。2回目の確認がどれだけ短く済むかは、受領チェック表がどれだけ正しく更新されているかで変わります。
AIに渡すのは、顧問先ごとの必要資料一覧、受領チェック表の当月と前月の列、提出期限の日付です。返させるのは、顧問先・対象月・資料名・前回の提出日・未提出の月数の5列の一覧です。チェック表に行が無い資料は、推測で埋めずに「未確認」と返すよう指示します。
顧問先名や口座番号を入れる前に、使うAIサービスへ入力してよい情報かを、所内の情報の区分と利用規約で確かめます。区分の決め方は生成AIツールに入れない書類を決めた記事にあります。
AIが判断できないのは、遅れの理由です。担当者が休んでいる、資料をなくした、資金繰りが苦しく経理に手が回らない、といった事情はチェック表のどこにも書かれていません。同じ未提出でも、理由によって文面の強さも、待つか電話するかも変わります。
証憑回収のうち、届いた資料の読み取りと仕分けは受領の後の作業です。届いた証憑から作るAIの仕訳候補の採否は記帳のAI仕訳を項目ごとに分けた記事で扱いました。
資料の依頼から受領までの他の作業は証憑回収の業務ページにまとめています。照合・申告・給与といった別の業務の記事は、業務ごとの記事一覧から開けます。
受領チェック表が古いと、AIは誤った催促を送る
AIの突き合わせは受領チェック表を正しいものとして扱うので、表に載っていない受領があると、届いている資料まで未提出として催促します。
以下は、業務の流れを示すための仮の場面です。提出期限を過ぎた週に、監査担当がチェック表の空欄を見て通帳のコピーを催促しました。顧問先からは「先週、担当の方のチャットに送りました」と返事が来ます。資料は届いていたのに、受領した担当者がチェック表を更新していませんでした。
誤った催促が出る原因は、受領の経路と必要資料一覧の中身にあります。
| 誤催促の原因 | 起きること | 止め方 |
|---|---|---|
| 担当者個人のチャットに届く | 届いた資料をまた催促する | 共有の保存先へ移して記録 |
| 郵送で届き開封が遅れる | 開封前に催促が出る | 郵送の多い先は送信予約に載せない |
| データ連携済みの口座 | 不要な通帳のコピーを頼む | 必要資料一覧から外す |
| 全顧問先に同じ文面 | 提出済みの資料まで再送される | 未提出の資料名だけを書く |
誤った催促を防ぐには、送信までを次の順で回します。
- 担当者個人に届いた資料も、受領した担当者がチェック表に記録する
- AIに突き合わせをさせ、未提出一覧を出す
- 送信前に監査担当が一覧を見て、別の経路で届いていないか確かめる
- 確かめた顧問先は、AIの下書きを送信予約で送る
チェック表に反映されない受領経路が残る顧問先は、一覧を見るだけでは別の経路の受領に気づけないため、送信予約には向きません。監査担当が、受領した担当者のチャットや郵便物を確かめ、自分で連絡します。申告期限まで日が無い顧問先も、催促の誤りや遅れが期限に響くので、同じく送信予約に載せません。
誤った催促を送ってしまったら、気づいた監査担当が顧問先へ、資料は受け取っていると伝えてお詫びします。あわせて、記録が漏れた経路をチェック表の備考に書き残します。同じ経路の漏れが続く顧問先は、その経路が共有の保存先に移るまで送信予約に戻しません。
催促の強さと時期は、遅れの理由と残り日数で決める
催促の強さと時期は、遅れの理由、申告や決算までの残り日数、その顧問先の過去の遅れ方の3つを見て、監査担当が顧問先ごとに決めます。AIが出せるのは、残り日数と過去の遅れ方の材料までです。次の表の「一覧に添える材料」は、AIに未提出一覧へ出させる項目です。
毎月遅れるが必ず出す顧問先と、普段は期限を守る顧問先が初めて遅れた場合とでは、遅れの意味が違います。前者は1回目の案内で足りることもありますが、後者は経理の担当者が替わったなど、事情を聞く電話が先になることがあります。
| 催促の段階 | 一覧に添える材料 | 監査担当・所長が決めること |
|---|---|---|
| 1回目の案内 | 未提出の資料名と前回の提出日 | 送るかと文面の強さ(監査担当) |
| 2回目の連絡 | 未提出の月数と1回目の返信 | 時期と担当者名で出すか(監査担当) |
| 電話への切り替え | 申告・決算の期限までの日数 | 電話するか(監査担当) |
| 期限に響く遅れ | 期限までの日数と残る資料 | 申告・決算の段取り(所長) |
1回目から2回目までの間隔と、電話に切り替える残り日数は、事務所の基準として所長と監査担当が決める項目です。決算月や申告期限が近い月は、普段どおりの遅れ方であっても、電話へ切り替える判断が早くなります。基準を決めたら、AIには日数の計算だけをさせ、段階の判定は監査担当が一覧の上で付けます。
催促を始めた月から、顧問先ごとに資料の回収完了日と、監査担当が催促に使った時間を記録し、導入前の月と並べます。回収完了日が早まらず催促の時間も減らない顧問先は、AIの下書きをやめ、監査担当の電話を中心にした催促へ戻します。
催促文に書く資料の形、電子取引データは紙で受けない
メールやダウンロードで受け取った請求書・領収書などの電子取引データは、電子帳簿保存法により、所得税・法人税の保存義務者である顧問先がデータのまま保存しなければなりません。催促では、印刷した紙ではなく元のデータを送ってもらうよう頼みます。
国税庁のパンフレットは、書面なら保存が必要な注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子取引データを、電子保存の対象として挙げています。顧問先がメールで受け取った請求書のPDFを印刷して郵送してくる場合、事務所に届くのは写しの紙です。元のデータが顧問先に残っているかを、監査担当が確かめます。
AIに下書きさせる催促文には、未提出一覧の行ごとに次の3つを入れさせ、一覧に無い資料は書かせません。
- 資料名と対象月(例: 3月分の通帳、2月分のカード明細)
- 提出の形(電子取引データは元のファイル、紙の領収書は撮影かスキャン)
- 提出先(担当者個人ではなく、事務所の共有の受付先)
ファイル名の付け方を添えるのも一つの方法です。電子取引データの保存には、日付・金額・取引先の3つの要素で検索できることが求められます。パンフレットは、日付・金額・取引先の順に付けたファイル名のデータを特定のフォルダに集める方法でも、この検索要件を満たせると示しています。
基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の方等は、データのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件を満たす必要がありません。顧問先がこれに当たり、ダウンロードの求めに応じられるなら、ファイル名の添え書きは省けます。当たるかどうか分からない顧問先には、監査担当が確かめるまで添え書きを残します。
受領経路とチェック表をつなぐ仕組みは、外部に頼めるか?
外部に頼みやすいのは、仕組みとして毎月同じに動く部分です。受領経路を受領チェック表へ集める仕組みと、未提出一覧から催促文の下書き・送信予約までを回す仕組みがこれに当たります。
受領経路がチャット・メール・郵送・クラウドストレージに分かれて顧問先ごとに違い、チェック表も担当者ごとのExcelに分かれている事務所ほど、仕組みづくりの手間は大きくなります。頼んだときの費用の出方は、AI導入の見積で所内に残る作業を扱った記事に載せています。
催促の強さ・時期・電話に切り替える基準と、顧問先ごとの例外の一覧は、外部の作業に含めません。顧問先との関係と遅れの事情を知る監査担当と所長が、所内で決めて書き残します。
外部へ受領チェック表や催促文を渡す前に、所長が渡す情報の範囲を決めます。税理士法は税理士と使用人等に守秘義務を課し(第38条・第54条)、使用人等への監督も税理士の義務としています(第41条の2)。顧問先の個人データを含む場合、個人情報保護法第27条第5項第1号の委託に伴う提供に当たるかは、契約の中身で確かめます。
外部と話す前に最初に着手する工程は、受領経路の書き出しです。監査担当の責任者が、試す顧問先ごとに資料の届く経路を並べ、チェック表に載らない経路がいくつあるかを数えます。
同じ月に監査担当は、回収完了日(日付)・催促回数(回)・催促に使った時間(分)を、試す顧問先ごとにひと月分記録します。仕組みを入れた後の月も同じ単位で記録すれば、外部に頼んだ効果を比べられます。
明日から始める3ステップ
担当 監査担当の責任者
試す顧問先を選び、顧問先ごとに資料が届く経路(共有アドレス・担当者個人のチャット・郵送・クラウドストレージ・データ連携)を受領チェック表の横に書き出す
次へ進む目安試す顧問先のすべてに受領経路が書かれ、チェック表に載らない経路がある顧問先に印が付いた
担当 監査担当
印の付いていない顧問先について、必要資料一覧と受領チェック表をAIに突き合わせさせ、前回の提出日と未提出の月数を添えた未提出一覧と催促文の下書きを出させる
次へ進む目安未提出一覧の全行で、受領済みの資料が混ざっていないかを監査担当が確かめ、誤っていた行の原因が一覧に書かれた
担当 監査担当(期限に響く遅れは所長・税理士)
下書きごとに強さ・時期・電話への切り替えを決めて送信予約し、期限に響く遅れの顧問先を所長へ伝え、月末に回収完了日と催促に使った時間を記録する
次へ進む目安試した顧問先ごとに、送った催促の回数・回収完了日・催促に使った時間が導入前の月と並べて記録された
無料相談(オンライン)
BoostXは、会計事務所の記帳・月次・申告準備へのAI導入を支援しています
01無料相談
証憑の回収・記帳・申告の準備から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法・平成10年法律第25号)(第7条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.19
- 国税庁「電子取引データを適切に保存できていますか?」(令和6年11月)(表面「そもそもどういった電子取引データを保存する必要があるの?」・表面「原則的な電子取引データ保存のルールは3つ!!」・表面の注・裏面) 国税庁 確認日 2026.10.19
- 税理士法(昭和26年法律第237号)(第38条・第54条・第41条の2) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.19
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第27条第5項第1号) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.19
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