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照合・月次

預金照合のAIは差異と原因候補まで、未達と誤りを分けるのは監査担当

この記事は、月次監査で顧問先の預金残高を通帳や銀行データと突き合わせ、合わない口座の原因を探す立場にある、会計事務所の監査担当・所長・税理士向けです。

残高が合わない口座に、原因を決めないまま修正仕訳を入れて通帳に合わせると、翌月の通帳で今度は逆向きのずれが出ます。銀行データ連携・通帳の手入力・OCRが顧問先ごとに混ざっていれば、差異の行を探すだけで監査の時間がなくなります。AIに渡せる差異探しの範囲と、帳簿を直す差異・直さない差異の分け方が、この記事で答えることです。

照合・月次 7分 運営 株式会社BoostX

照合・月次の現場のイメージ写真

先に結論

預金残高の照合でAIに任せられるのは、口座ごとに帳簿と通帳が合わなくなった月と行を見つけ、未達取引・取込漏れ・二重取込などの原因候補を、確かめる資料の名前と一緒に並べるところまでです。どの候補が本当の原因かを決め、修正仕訳を入れるかどうかを決めるのは監査担当です。

原因によって帳簿の扱いが変わります。月末の振込が銀行で翌月に処理された未達取引は帳簿の誤りではないので、帳簿は直さずに残高照合表へ差異として残します。修正仕訳を入れるのは、取込漏れ・二重取込・金額や科目の誤り・開始残高の誤りと確かめた差異だけです。

銀行データ連携と通帳の写しの読み取りの両方から明細が入っている口座では、AIに差異を判定させる前に、取込経路を口座ごとに1つに決めます。

未達か誤りかは、銀行の処理日と明細の取込経路で見分ける

預金の差異が未達か誤りかは、銀行が入出金を処理した日、明細が会計ソフトに入った経路、顧問先が月末に出した振込や新しく開いた口座の3つで見分けます。AIは残高試算表の普通預金と明細を突き合わせ、合わなくなった月と行までは示せます。

図の要点:預金照合を4つの段で示した図。口座ごとに帳簿残高・通帳の月末残高・連携で取得した残高と取込経路を並べ、AIが合わなくなった最初の月と行を見つけて5つの型の候補と確かめる資料を返す。監査担当が通帳・取得状況・顧問先への確認で原因を確かめ、取込経路が2つの口座は1つに決めて照合し直す。誤りは修正仕訳にし、未達取引と原因が分からない差異は照合表に残して翌月に追う。

未達か誤りかは、通帳と顧問先の答えを見てから決める

口座ごとに並べる3つの残高

  • 残高試算表の普通預金(補助科目別)の月末残高
  • 通帳かネットバンキングの月末残高
  • 連携で取得した残高と、明細の取込経路

AIが返す差異の一覧

  • 帳簿と通帳が合わなくなった最初の月と行
  • 5つの型のどれに当たるかの候補
  • 確かめる資料の名前。無ければ「未確認」

監査担当が確かめる原因

  • 通帳・連携の取得状況・顧問先の答えで型を確かめる
  • 戻す: 取込経路が2つの口座は1つに決めて照合し直す

照合表と仕訳に残すもの

  • 誤りと確かめた差異は修正仕訳にする
  • 未達取引と原因不明の差異は照合表に残す

処理日は翌月の通帳で、取込経路は顧問先との取り決めで、月末の動きは顧問先の答えで確かめるしかありません。そのため図の「監査担当が確かめる原因」では、通帳の写しや顧問先の答えを開きます。「戻す」に当たる口座は、照合し直すまで「照合表と仕訳に残すもの」へ進めません。この確認を飛ばすと未達取引にまで修正仕訳を入れ、翌月の通帳で逆のずれを作ります。

ここでは預金に絞ります。売掛金・買掛金の消込は、同じ照合・月次の業務の別の作業です。照合の手前の仕訳の確定は、記帳でAI仕訳の候補を確定する範囲で扱っています。

口座ごとに帳簿・通帳・連携の残高を並べる

残高照合表は、口座ごとに帳簿残高・通帳の月末残高・連携で取得した残高の3つを同じ月末の日付で並べ、明細がどの経路で入ったかを書く列を足して作ります。複数の口座を合計して合わせると、別の口座の差異どうしが打ち消し合い、合計では合って見えることがあるためです。

銀行データ連携は、預金者の委託を受けた事業者が銀行から口座の情報を電子的に取得して渡す仕組みで、銀行法では電子決済等代行業に当たります。取得が止まっていた期間の明細は会計ソフトに届かないので、連携の画面の残高だけを見ていると、通帳にある入出金が帳簿に無いことに気づけません。そのため、通帳の月末残高は連携の残高とは別の列に書きます。

次の場面は、説明のために作った仮のものです。月次監査の日に、監査担当が顧問先の残高試算表を開き、普通預金の3口座を通帳の写しと見比べます。2口座は合い、1口座だけ帳簿の方が多くなっていました。この口座は銀行データ連携を入れた後も、顧問先の経理担当が通帳を撮影して送り続けており、事務所でもその写しをOCRで読み取って取り込んでいました。

【説明用の架空の記入例】合わなかった1口座の行です。

照合表の列 この月の値 書く人
帳簿残高 2,486,000円 AI(試算表から転記)
通帳の月末残高 2,366,000円 AI(写しから転記)
連携で取得した残高 2,366,000円 AI(取得残高を転記)
取込経路 連携と通帳のOCR 監査担当
差異 帳簿が120,000円多い AI
原因の型 確認中(二重取込の候補) 監査担当

取込経路の列を監査担当が書くのは、どの経路で明細を入れているかが顧問先と事務所の間の取り決めで、会計ソフトのデータだけでは分からないことがあるからです。

残高差異の原因候補は5つの型でAIに出させる

AIには、差異の行ごとに5つの型のどれに当たりそうかを選ばせ、その型を確かめるために監査担当が開く資料の名前を添えさせます。会計ソフトの提供元も、残高照合で合わない原因を挙げています。取得した明細が仕訳になっていない、金額や科目の誤り、取得できていない期間の入力誤り、開始残高の誤りなどで、表の型と重なります。

差異の型 AIが示す手がかり 監査担当が開く資料
未達取引 帳簿にあり当月の通帳に無い月末の行 翌月の通帳・振込の控え
取込漏れ・仕訳未登録 仕訳になっていない明細・取得の空白期間 該当期間の通帳・取得状況
二重取込 同じ日付・同じ金額の2行 取込経路の記録・通帳の行
金額・科目の誤り 通帳と金額が違う行・別科目の行 通帳・請求書や領収書
開始残高の誤り 連携開始の月や期首から続く差額 前期末の通帳・前期の決算書

3列目の資料を開くまで、型は候補のままです。差異が出た口座では、まず二重取込を確かめます。取込経路が2つある口座で起きやすく、ほかの型を探す前に消せるからです。自社の2つの口座の間で資金を移した取引も、両方の口座の明細に出るため、両方から仕訳を起こすと同じ仕訳が2本になります。

連携を始めた月から合わない口座は、期中の仕訳を遡る前に開始残高を確かめます。どの型か見当が付かない口座は、期首から月ごとに帳簿と通帳の残高を並べさせ、最初に合わなくなった月を探させると、遡る範囲がその月の明細に絞れます。

通帳や入出金明細には、給与を振り込んだ従業員の名前や、振込人の個人名が1行ごとに並びます。そのためAIに渡すのは差異のある口座の当月分に限り、ほかの口座や前月以前の明細はまとめて入れません。

税理士法は、税理士本人にも職員にも、業務で知り得た秘密を正当な理由なく漏らさない義務を課しています。そのため、会計ソフトの銀行データ連携の画面を開ける職員も、その顧問先の監査担当と上席に限っているかを所長が確かめます。

外部の生成AIサービスを使うなら、入力データの保存期間と学習への利用の有無を規約で確かめてからにします。条項の比べ方は生成AIサービスの規約を同じ欄で比べる記事にあります。

AIに渡すのは、差異のある口座の当月の普通預金の元帳、通帳かネットバンキングの入出金明細、連携で明細を取得できなかった期間の3つです。指示には次の4点を書きます。

  1. 元帳と明細を日付と金額で並べ、片方にしか無い行と、同じ日付・同じ金額の行を出す
  2. 行ごとに5つの型から候補を1つ選び、選んだ理由になった行を添える
  3. 確かめる資料の名前を書き、理由になる行が無ければ「未確認」と返す
  4. 修正仕訳の案は書かない

4点目を外すと、仕訳の案が付いた一覧が返ります。案が手元にあると、資料を開く前に入力してしまうからです。返った一覧は、監査担当が照合表の行と通帳を見比べながら1行ずつ確かめます。

未達取引は帳簿を直さず、誤りだけを修正仕訳にする

未達取引とは、帳簿には記録したものの、銀行の処理が翌月になるなどして月末の通帳残高にまだ反映されていない入出金のことで、帳簿の誤りではありません。たとえば月末日にネットバンキングで指示した振込が、銀行では翌営業日の処理になる場合です。この差異に修正仕訳を入れて通帳に合わせると、翌月に銀行の処理が済んだ時点で、今度は帳簿の側が足りなくなります。

監査担当が型を確かめた後の帳簿の扱いは、型ごとに次のとおりです。

  • 未達取引は帳簿を直さない。照合表に残し、翌月の通帳にその行が出たことを確かめてから消す
  • 取込漏れと二重取込は、通帳の行と照合してから、漏れた仕訳を起こすか、重複した仕訳を取り消す
  • 金額・科目の誤りは、通帳と請求書や領収書で正しい金額と科目を確かめてから修正仕訳を入れる
  • 開始残高の誤りは、前期末の残高と照合して開始残高を直す。前期以前の仕訳まで遡る修正は税理士の確認を通す

AIが二重取込と書いた行でも、通帳に同じ日付・同じ金額の入金が本当に2回ある場合があります。同じ取引先が同じ日に同じ額を2回振り込むことは、分割の支払いなどで起こり得るからです。候補だけを見て仕訳を取り消すと、本物の入金を帳簿から消すことになります。取り消す前に、通帳の該当する日に行が1つか2つかを監査担当が数えます。

通帳にも連携の記録にも答えが無い差異は、顧問先の経理担当に聞きます。聞くのは、月末に出した振込、事務所が知らされていない口座の追加、事務所の外で取り込んだ明細の有無など、通帳だけでは分からない事情です。

解消しない差異は件数と日数で翌月に残す

その月に原因を確かめられない差異は、仮の科目で残高を合わせず、照合表の持ち越し欄に残して翌月に追います。仮払金や雑損失で合わせると、照合表の上では差異が消え、翌月の監査担当は探す理由を失います。金額が小さい差異でも同じです。

持ち越し欄には、次の4つを書きます。

  • 口座と差異の金額
  • 差異が見つかった日と、そこからの経過日数
  • 型の候補と、答えを待っている相手(顧問先の経理担当など)
  • 未達取引なら、通帳に出るはずの翌月の日付

翌月の照合では、AIに当月の差異と一緒に持ち越し欄の行も渡し、当月の通帳で消えた行を印を付けて返させます。消えたかどうかを最後に通帳で見るのは、監査担当です。

同じ口座で同じ型の差異が翌月も出たら、照合の手順ではなく取込経路の決め方に戻ります。二重取込が続く口座なら、連携と通帳のOCRのどちらを残すかを顧問先と決め直します。通帳の写しが毎月そろって届かないことが原因なら、手前の証憑回収の催促でAIに任せる範囲の見直しが先です。照合を終えた後の試算表の説明は、月次試算表の要約と監査担当が選ぶ論点に続きます。

取込経路が混在する事務所ほど、照合表づくりを外部と組む

顧問先ごとに銀行データ連携・通帳の撮影・OCR・手入力が混ざる事務所では、口座が増えるたびに取込経路の確認から始まります。こうした事務所ほど、照合表を毎月自動で作る仕組みを外部と組む効果が大きくなります。3つの残高を並べる作業と、差異の行に型の候補を付ける作業は、毎月同じ手順で進むからです。

外部に出せるのは、連携の設定と取得状況の一覧、照合表の自動作成、候補の出し方の指示です。差異の型の定義と、原因を確かめて修正仕訳を入れるか照合表に残すかの判断は、顧問先の事情を聞ける監査担当の仕事として所内に置きます。

顧問先と口座が少なく、取込経路が口座ごとに1つに決まっている事務所なら、会計ソフトの残高照合の画面と照合表の様式で足ります。AIより先に、監査担当の間で照合表の列と持ち越し欄の書き方をそろえます。

外部と組んだ後も、顧問先ごとに監査担当が、差異が見つかってから解消するまでの日数と、月末に残った未解消の件数を数えます。件数が月を追って減らない口座は、候補の出し方ではなく取込経路の決め方へ戻します。

連携を始めた月の口座だけは、仕組みに載せる前に、監査担当が開始残高を前期末の通帳と照合します。開始残高がずれたまま載せると、毎月同じ額の差異が候補として出続け、どの月の照合でも原因を確かめる作業に進めません。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 監査担当

    次の月次監査で受け持つ顧問先の口座を書き出し、口座ごとに帳簿残高・通帳の月末残高・連携で取得した残高と、明細がどの経路で入っているかを残高照合表に書く

    次へ進む目安全口座で3つの残高と取込経路が1行ずつ埋まり、取込経路が2つある口座に印が付いた

  2. 担当 監査担当(入力してよいデータの範囲は所長が決める)

    差異のある口座について、当月の普通預金の元帳・入出金明細・連携の取得状況をAIに渡し、差異の行ごとに5つの型の候補と確かめる資料を返させる。理由になる行が無いものは「未確認」と書かせ、修正仕訳の案は書かせない

    次へ進む目安差異の行ごとに型の候補と資料の名前が並び、修正仕訳の案が1行も無い一覧ができた

  3. 担当 監査担当

    一覧の行ごとに通帳・連携の取得状況・顧問先への確認で原因を確かめ、誤りは修正仕訳にし、未達取引と原因が分からない差異は照合表の持ち越し欄に金額・発生日・確認を待つ相手を書く

    次へ進む目安差異のすべてに確定した型か「確認中」が書かれ、持ち越す差異が照合表の持ち越し欄に載った

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出典

  1. マネーフォワード クラウド会計サポート「「残高照合」画面で口座残高と帳簿残高の不一致が発生していますが、原因がわかりません。」(不一致の原因の一覧・データ連携で取得した明細が仕訳として登録されていない・口座残高情報が取得できていない期間に入力誤りがある) 株式会社マネーフォワード 確認日 2026.10.24
  2. 銀行法(昭和56年法律第59号)(第2条第21項第2号・第22項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.24
  3. 税理士法(昭和26年法律第237号)(第38条・第54条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.24

編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり

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