商社の商品登録はAIでどこまで?単価と適用日で止める4つの行と取扱い可否
仕入先の新商品をカタログや価格表から商品マスターへ登録している、商社・卸売の商品担当と営業事務の責任者、業務部長が読む記事です。
仕入先から届いた新商品案内と価格表は、品番・規格・入数・単価を登録票に写し終えるまで、見積にも受注にも使えません。写す作業を生成AIに回せば登録待ちは減らせますが、ケース単価とバラ単価の取り違えも同じ速さでマスターに入ります。登録票のどの欄をAIに下書きさせ、どの行で登録を止め、取扱いの可否を誰が決めるかを、欄ごとに整理しました。

先に結論
登録票の下書きまではAIに作らせ、取扱いの可否と自社品番の付番、単価・入数・単位・適用日の原本照合は人が受け持ちます。AIが抜き出すのは、新商品案内と価格表にある品番・規格・入数・単位・単価・適用日と、既存の行と重複の疑いがある商品の印です。取扱いと付番は商品担当が規格書と取引条件を見て決め、照合は営業事務が仕入先の原本と全行で行ってから登録します。
単価がケースかバラか読めない行、適用開始日がどこにも書かれていない価格、既存品番と末尾だけ違う商品、規格書の届いていない商品は、下書きができていても登録せず、仕入先か商品担当へ戻します。
登録の誤りは、見積と出荷の誤りになって返ってくる
商品マスターに入った1行は、その後の見積・受注・出荷指示・請求のすべてで参照されるため、マスターに入れる前に人が原本と照合する場所を流れの中に置きます。規格書が後から届く商品は、届くまで取扱いの判断を保留にします。
図の要点:仕入先から届く新商品案内・価格表・規格書から商品マスターへの反映までを5つに分けた図。AIは品番・規格・入数・単位・単価・適用日を1行1品番で抜き出して重複の疑いに印を付け、営業事務が単価・入数・単位・適用日を原本と全行照合し、読めない行は仕入先へ戻す。商品担当が重複の疑いの行と取扱いの可否・自社品番を決め、承認後に営業事務が登録して営業と倉庫へ知らせる。
単価・入数・単位・適用日は、原本と照合し終えるまでマスターに入れない
仕入先から届く資料
- 新商品案内(PDF)と価格表(PDFかExcel)
- 規格書・仕様書(取扱いの判断に使う)
- 商品マスターから出した同じ仕入先の既存の行
AIが作る登録票の下書き
- 品番・規格・入数・単位・単価・適用日を1行1品番で抜き出す
- 既存の行と品番や品名が近い行に「重複の疑い」と書く
営業事務が原本と照合する欄
- 単価・入数・単位・適用日は全行を原本で確かめる
- 戻す: 読めない行は仕入先に問い合わせる
商品担当が決めること
- 取扱いの可否を、規格書と取引条件を見て決める
- 重複の疑いの行が別の商品かを確かめる
- 自社品番を付番ルールどおりに付ける
- 戻す: 規格書が無ければ仕入先に取り寄せる
商品マスターへの反映
- 判断の済んだ行だけを営業事務が登録する
- 営業と倉庫に新しい品番と入数を知らせる
登録票の段階なら原本と並べて直せる読み違いも、マスターに入った後は、得意先から単価や数量の違いを指摘されるまで気づかれないことがあります。AIの抜き出しは、仕入先の原本と1行ずつ並べれば正しいかどうかを確かめられ、その手間は写す手間より軽く済みます。登録票の下書きまでをAIに回し、マスターに入れる前の照合を人に残すのはこのためです。
取扱うかどうかの判断は、確かめ方が違います。得意先が求める規格に合うか、既存の取扱品と売り先がぶつからないか、最小発注単位や返品の条件で採算が合うかは、案内にも価格表にも書かれていません。AIに渡せるのは、判断に要る資料がそろっているかの確認までです。
図のうち、営業事務の照合を「印の付いた行だけ」に減らしたくなるのは、AIの下書きが整って見えるからです。単価・入数・単位・適用日の4つの欄だけは、印の有無にかかわらず全行を見ます。
カタログ受領から登録票の下書きができるまで
登録票の下書きに使う入力は、新商品案内(カタログ)、価格表、商品マスターから出力した同じ仕入先の既存の行(仕入先品番・品名・入数・単位・仕入単価・JANコード)の3つです。ここでは説明用の仮の業務例として、ある仕入先から新商品12品番の案内PDFと、別紙の価格表Excelが届いたとします。
AIへの指示には、次のことを書きます。
- 1行に1品番で、品番・品名・規格・入数・単位・単価・適用開始日を表にする
- 資料に書かれていない値は補わず「未確認」と書く
- 単価には、ケース単価かバラ単価かを原文のまま添える
- 適用開始日が本文に無ければ脚注と別紙を探し、どこから取ったかを書く
- 既存の行と品番の末尾だけ違う行や品名が近い行は「重複の疑い」とし、まとめない
仕入単価と取引条件は社外に出す前提の情報ではないため、価格表を読ませるのは、社内で業務利用を認め、入力が学習に使われない契約の生成AIサービスに限ります。仕入先と秘密保持の取り決めがあれば、社外のサービスに渡してよいかも確かめます。資料ごとの入力の区分は商社の生成AIツール比較と入力してよい資料で扱っています。
下書きの1行は、たとえば次のようになります。品番も金額も説明用の架空の記入例です。
| 欄 | 説明用の架空の記入例 | 照合する原本の箇所 |
|---|---|---|
| 仕入先品番 | KX-2040B | 新商品案内の品番欄 |
| 品名・規格 | 樹脂コンテナ 40L | 案内の仕様欄と規格書 |
| 入数・単位 | 1ケース6個 | 価格表の入数欄 |
| 仕入単価 | 仮に置いた4,800円(ケース単価) | 価格表の単価と注記 |
| 適用開始日 | 未確認(脚注に記載あり) | 価格表の脚注・別紙 |
| JANコード | 未確認(案内に記載なし) | 仕入先に問い合わせる |
| 重複の疑い | KX-2040A(末尾違い) | 商品マスターの既存の行 |
| 取扱いの可否 | 商品担当が記入 | 規格書と取引条件 |
| 自社品番 | 商品担当が付番 | 自社の付番ルール |
この例で営業事務が最初に見るのは、仕入単価の欄です。マスターがバラ単価で持つ会社なら、登録する仕入単価は、仮に置いた4,800円を6個で割った800円です。この仮定の4,800円をそのままバラ単価の欄に入れると、1個の単価が6倍になり、その単価で見積が出ます。
照合が済んだ登録票は、商品担当が取扱いの可否と自社品番を書き入れてから、営業事務がマスターに登録します。得意先が自社の品番で注文してくる商品は、同じ日に得意先品番の対応表にも行を足すと、最初の注文で受注入力が止まりません。
単価の単位と適用日が読めない行は、登録しない
次の4つのどれかに当たる行は、下書きができていても商品マスターに入れず、戻す先へ回します。
| 登録を止める行 | 誰に戻し、何を確かめるか |
|---|---|
| 単価がケースかバラか書かれていない | 仕入先に単位と入数を聞く |
| 適用開始日が案内にも価格表にも無い | 仕入先に開始日を書面でもらう |
| 既存品番と末尾だけ違う・品名が近い | 商品担当が別の商品か確かめる |
| 規格書・仕様書が届いていない | 商品担当が仕入先に取り寄せる |
単位と適用日の行を止めるのは、どちらも本文とは別の注記や脚注に書かれていることがあり、AIが本文だけを読むと「未確認」にならずに別の値を入れてしまうことがあるからです。適用開始日の無い価格を登録すると、営業は今日から使える単価だと受け取ります。
品番の末尾だけが違う行は、色違いや入数違いの別商品のこともあれば、同じ商品の型番の改訂のこともあります。どちらかは仕入先の案内だけでは決まらないので、AIには印を付けさせるだけにします。
既存のマスターにすでにある重複をまとめる基準や、旧品番の扱いは卸売の商品マスタ名寄せの手順で扱っています。既存品の単価を変える改定通知は、新商品の登録とは別の流れで、仕入価格の改定を得意先別の売価に反映する作業にまとめています。
取扱いの可否は、規格書と取引条件を見て商品担当が決める
取扱いの可否とは、その商品を自社の商品マスターに載せて得意先へ売ってよいかを、商品担当が規格書・表示・取引条件の3つを見て決めることです。AIはこのうち、資料に書かれている項目の抜き出しと、欠けている資料の一覧を出すところまでを受け持ちます。
規格書では、寸法・材質・規格が売り込む得意先の求めに合うかを見ます。表示では、食品の原材料やアレルゲン、電気製品の定格など、得意先へ渡す情報が仕入先の資料にそろっているかを確かめます。取引条件では、最小発注単位・リードタイム・返品の可否が、見込む売れ方で採算に合うかを考えます。
令和3年経済センサス‐活動調査では、卸売業の事業所数は34万8889事業所でした。産業小分類で多いのは、産業機械器具卸売業(卸売業計の11.1%)、建築材料卸売業(9.8%)、食料・飲料卸売業(9.2%)です。3つの確認のうちどれに時間がかかるかは、自社が扱う分野で変わります。
判断した結果は、登録票に「取扱う・取扱わない・保留」と、判断した人・判断日・理由を残します。取扱わないと決めた商品も記録しておけば、同じ商品の案内が別の営業担当経由で届いたときに、同じ検討をやり直さずに済みます。
自社品番の付番ルールが書き出されていない会社は、AIに読み取らせる前に付番を決めます。仕入先品番をそのまま自社品番に使っていると、仕入先を変えたときに同じ商品が別の品番に分かれます。ルールが担当者の頭の中にしかなければ、AIは付番の候補も出せません。
仕入先の資料がPDFか表かで、照合の量が変わる
営業事務が原本との照合にかける時間は、仕入先から届く資料の形でほぼ決まります。列のそろったExcelの価格表なら、列の対応を一度決めれば表計算の取り込みで登録票ができるので、生成AIを使うまでもありません。AIの抜き出しが役に立つのは文字の入ったPDFで、照合は単価・入数・単位・適用日の4つの欄を中心に見ます。
スキャンしたPDFや紙のカタログは数字の読み違いが混じりやすく、全欄を原本と照合することになります。こうした仕入先には、AIを入れる前にExcelで送ってもらえないかを聞きます。
AIを入れる前に、新商品の登録について3つの値をひと月分記録しておきます。1件あたりの登録時間(案内の受領から登録まで)、照合で直したか仕入先に戻した行の数、登録の後で見つかった重複登録の件数です。
AIの下書きを使い始めた後も、同じ3つを仕入先ごとに数えます。たとえば8週分数えても差し戻した行の数が減らない仕入先は、商品担当の判断でAIの下書きをやめ、資料をExcelで送ってもらう相談に切り替えます。
続けるかどうかを仕入先ごとに決めるのは、資料の形が仕入先ごとに違うからです。登録の流れ全体と、代替品や廃番の扱いは商品・マスターの業務の記事に、受注や在庫など他の業務は商社・卸売の業務別の記事にまとめています。
1社の登録時間と仕入先の数で、外部に頼むかを決める
最初の対象は、PDFで届く仕入先のうち、新商品の案内が多い1社の登録です。営業事務がその仕入先の登録票で、1件あたりの登録時間と差し戻した行の数を数えます。外部の仕組みでは、脚注や別紙にしか無い適用開始日の読み違いが残りやすいため、この1社の価格表は、外部に試させるときに「未確認」と出るかを確かめる原本としても取っておきます。
照合の済んだ登録票を基幹システムへ手で打ち直している会社では、打ち直しのときに照合した値とは別の値が入ることもあります。外部に要件を出すなら、取扱いの可否と判断日が空欄の行を基幹システムが受け付けないことと、照合した営業事務の名前と照合日が同じ行に残ることを入れます。
外部に頼むかの判断に使うのは、1社で測った1件あたりの登録時間に、月の新商品の件数とPDFで届く仕入先の数を掛けた、月の登録時間です。商品担当と業務部長がこの時間を外部の開発の見積額と同じ表に並べ、件数が少なく手の登録で回る月が続くなら、生成AIの下書きと営業事務の照合のまま続けます。
明日から始める3ステップ
担当 商品担当
直近1か月に登録した新商品の登録記録を仕入先ごとに並べ、単価・入数・単位・適用日を仕入先の原本と照合して、誤っていた行と後から見つかった重複登録を数える
次へ進む目安仕入先ごとに、登録した件数・誤っていた行の数・重複登録の件数が1つの表にまとまった
担当 商品担当の責任者(業務部長が承認)
自社品番の付番ルールを1枚に書き出し、登録票に取扱いの可否・判断した人・判断日・理由の欄を足す
次へ進む目安付番ルールの1枚と、取扱いの判断欄が入った登録票の見本を業務部長が承認した
担当 営業事務(記録の確認は商品担当)
次に届く新商品案内1件で、AIに登録票を下書きさせ、営業事務が原本と照合してから登録し、1件あたりの登録時間・差し戻した行の数・重複登録の件数を記録する
次へ進む目安1件分の3つの値が、導入前に数えた表と同じ表に記録された
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01無料相談
注文の入力・商品マスタ・照会への回答から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査 産業別集計(卸売業,小売業に関する集計)結果の概要」概況 1.事業所数及び従業者数(1)卸売業 総務省統計局 確認日 2026.10.22
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり










