たとえば、研修会社から「1人20万円・2日間で12時間のライブ配信」という生成AI研修の見積が届いた総務課長が、「最大75%」と書かれた記事を3本読んでも、自社の研修がその率になるのか、eラーニングに替えても同じか、計画届と契約のどちらが先かは決まりません。75%は人材開発支援助成金のうち事業展開等リスキリング支援コース(中小企業)の経費助成率です。条件は3つで、DX化に関連する専門的な訓練であること、実訓練時間が10時間以上であること、計画届を研修開始の6か月前から1か月前までに出すことです。受講料には1人あたりの限度額(30万円から)があり、オンデマンドのeラーニングは経費助成のみで1年度1回までという線もあります。以下では、コースの当てはめ、限度額を使った戻る額の計算、計画届と支給申請の期限、研修会社に求める書類の順に、厚生労働省が令和8年8月3日に出した各コースのパンフレット(詳細版)の数値で整理します。
- 75%は事業展開等リスキリング支援コース(中小企業)の経費助成率。生成AI研修で使うには「DX化に関連する専門的な知識・技能の訓練」と説明でき、実訓練時間10時間以上であることが要る。説明できなければ人材育成支援コースの45%で見積もる
- 戻る額は率より限度額で決まる。1人1訓練の経費助成は実訓練時間10時間以上100時間未満で30万円まで。受講料が1人40万円を超えると75%は頭打ち。賃金助成は1人1時間1,000円
- 計画届は研修開始の6か月前から1か月前まで、支給申請は終了翌日から2か月以内。eラーニングは経費助成のみ・限度額15万円・1年度1回。コンサルタントの指導と既存アプリの操作説明は対象外
目次
人材開発支援助成金とはどんな制度か
人材開発支援助成金とは、事業主が雇用する労働者に職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる職業訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を国が助成する制度です。申請できるのは雇用保険の適用事業所の事業主、受講者は雇用保険の被保険者です。従業員を雇っていない一人社長は申請できず、パートやアルバイトでも被保険者なら対象です。
コースは7つあり、生成AI研修に関係するのは人材育成支援・人への投資促進・事業展開等リスキリング支援の3つです。令和8年8月3日以降に提出する計画届からパンフレットが切り替わり、eラーニングの回数制限と対象外となる訓練の線引きが変わりました(経過措置あり)。この記事の助成率・賃金助成額・限度額はその版に合わせているので、前の版をもとにした解説記事とは数値や線引きが違う箇所があります。
助成の2本柱は経費助成と賃金助成
助成は2種類に分かれます。1つは受講料・教材費などの訓練経費に率を掛けて戻る経費助成、もう1つは訓練中に支払った賃金に対して1人1時間あたりの定額で戻る賃金助成です。率と額はコースと企業規模で違い、令和8年8月3日版の主な値は次のとおりです。括弧の中は大企業の値です。
| コース・訓練 | 経費助成率 | 賃金助成(1人1時間) |
|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 75%(60%) | 1,000円(500円) |
| 人材育成支援コース・人材育成訓練 | 45%(30%)、賃金要件等を満たすと60%(45%) | 800円(400円)、賃金要件等を満たすと1,000円(500円) |
| 人への投資促進コース・高度デジタル人材訓練 | 75%(60%) | 1,000円(500円) |
| 人への投資促進コース・定額制訓練 | 60%(45%)、賃金要件等を満たすと75%(60%) | 対象外 |
人材育成訓練の45%は正規雇用労働者等の率で、非正規雇用労働者を受講させる場合は70%、賃金要件等を満たすと85%です。賃金要件とは、訓練終了日の翌日から1年以内に毎月決まって支払う賃金を5%以上上げること、資格等手当要件は手当を就業規則等に定めて支払い3%以上上げることを指します。どちらも訓練が終わってからの話なので、申請時に率を上乗せして計算しないほうが安全です。
中小企業かどうかは業種別の資本金か人数で決まる
率が高いほうの「中小企業事業主」に当たるかは、主たる事業ごとに資本金または常時雇用する労働者数のどちらか一方で判定します。判定時点は支給申請時で、資本金を持たない医療法人や社会福祉法人は人数で見ます。
| 主たる事業 | 資本金または出資の総額 | 常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種(製造・建設・運輸など) | 3億円以下 | 300人以下 |
業種区分は総務省の日本標準産業分類で見ます。情報サービス業・専門サービス業・医療福祉・教育はサービス業に入るので、101人以上なら資本金5,000万円以下でなければ大企業の率です。
1事業所が1年度に受け取れる上限
1年度(4月1日から翌年3月31日・支給申請日基準)に1事業所が受け取れる額と、受講回数には別々の上限があります。
| コース | 1事業所・1年度の上限 | 受講回数の上限(1労働者) |
|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援 | 1億円 | 1年度3回(eラーニングは1回) |
| 人への投資促進 | 2,500万円(自発的職業能力開発訓練は300万円) | 定額制は両コース合わせて1年度3回 |
| 人材育成支援 | 1,000万円 | 1年度3回 |
賃金助成の限度時間は1人1訓練1,200時間(専門実践教育訓練は1,600時間)です。リスキリング支援コースには設備投資加算もあり、中小企業が賃金要件か資格等手当要件を満たして事業展開促進機器等を導入すると、導入費用の50%(1人15万円・10人以上は150万円まで)が通常分とは別に出ます。従業員30人に12時間の研修を1回行う規模なら、上限より先に1人あたりの限度額(次の章)が効きます。
AI研修で使える3つのコース
DX化に関連する専門的な知識・技能の訓練だと説明できるなら事業展開等リスキリング支援コース(75%)、説明が立たないなら人材育成支援コースの人材育成訓練(45%)、ITSS・DSS-Pレベル3・4に当たる訓練か定額制サービスなら人への投資促進コース——この順に当てはめると決まります。
| コース | 経費助成率・賃金助成 | 1人1訓練の限度額 | 生成AI研修との相性 | つまずく点 |
|---|---|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援 | 75%・1,000円 | 30万円/40万円/50万円(10時間以上・100時間以上・200時間以上)、eラーニングは15万円 | DX化の訓練として組めば第1候補。令和8年度末までの時限措置 | 操作説明・コンサル指導が混ざると対象外。事業展開等実施計画(様式第1-3号)が要る |
| 人材育成支援(人材育成訓練) | 45%・800円 | コース全体で1事業所1年度1,000万円 | 職務に関連する10時間以上のOFF-JTなら幅広く当たる | 率が低い。職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の周知が先 |
| 人への投資促進 | 高度デジタル75%・1,000円/定額制60%・賃金助成なし | 高度デジタル30万円/40万円/50万円、定額制は1人1月2万円 | 生成AI研修はレベル3・4の要件に届きにくい。サブスク型なら定額制訓練 | 定額制は他の方式と組み合わせ不可、講座の5割以上が対象外だと全体が対象外 |
1. 事業展開等リスキリング支援コース(75%・生成AI研修の第1候補)
対象はOFF-JTで実訓練時間数が10時間以上の訓練のうち、①事業展開に伴い新たな分野で必要となる専門的な知識・技能の訓練、②企業内のデジタル・DX化やグリーン・カーボンニュートラル化に関連する業務に就かせる上で必要となる訓練、③企業内の人事・人材育成に関する計画に基づき3年以内に就く予定の職務に必要な訓練、のいずれかです。生成AI研修は②で組むのが現実的で、パンフレットの例示にも、RPAとAIで請求書・日報の電子化や配送ルートの見直しを進めるためのデジタル人材育成の訓練や、営業部門でITツールを使ったWEB集客のノウハウを習得する講座が載っています。①で組む場合、事業展開は訓練開始日から3年以内に実施予定か6か月前までに実施したものに限られます。
このコースは令和4年度から8年度までの期間限定として創設され、人材育成支援コースのパンフレットでも「令和8年度末までの時限措置」と書かれています。令和9年度以降の扱いは厚生労働省の発表を待つしかないので、令和8年度中に75%で受けるなら、研修開始日と計画届の提出期間(開始の6か月前から1か月前まで)を先に逆算しておく判断になります。
2. 人材育成支援コース(45%・説明が立たないときの受け皿)
職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる10時間以上のOFF-JTなら幅広く対象になる、最も汎用的なコースです。経費助成率は45%(大企業30%)、賃金助成は800円(400円)で、リスキリング支援コースより率は低いものの、「事業展開」「DX化」の説明を求められません。生成AI研修の中身が業務上の判断に生成AIを使う専門的な訓練であることは同じで、違うのは会社側の説明が立つかどうかです。10時間という線の数え方(休憩・移動・オリエンテーションの扱い)は、生成AI研修の助成金で10時間の落とし穴に当たる条件で分けて書いています。
3. 人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練と定額制訓練)
高度デジタル人材訓練はITSS(ITスキル標準)・DSS-P(DX推進スキル標準)のレベル3・4となる訓練や情報工学系の大学への入学などが対象で、率は75%(60%)と高い一方、一般的な生成AI研修はこの水準に届きにくいのが実情です。もう1つの定額制訓練は、サブスクリプション型の研修サービス(受け放題)を使う場合の枠で、経費助成60%(45%)、賃金助成はありません。講座一覧のうち対象外訓練が5割以上だとサービス全体が対象外です。月額の動画講座で全社員に学ばせるならこの枠、講師が自社の業務を題材に2日間教えるならリスキリング支援コースか人材育成支援コース、という分かれ方です。人への投資促進コースの1人あたり限度額(中小企業・括弧は大企業)は次のとおりです。
| 訓練メニュー | 実訓練100時間未満 | 100〜200時間未満 | 200時間以上 |
|---|---|---|---|
| 高度デジタル人材訓練 | 30万円(20万円) | 40万円(25万円) | 50万円(30万円) |
| 情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 15万円(10万円) | 30万円(20万円) | 50万円(30万円) |
| 定額制訓練 | 1人1月あたり2万円 | ||
| 自発的職業能力開発訓練 | 7万円 | 15万円 | 20万円 |
仮の受講料で計算すると、率より限度額が効く
仮に、中小企業が事業展開等リスキリング支援コースで、同時双方向型(ライブ配信)・実訓練時間12時間の研修を受けるとして、受講料だけを変えて並べます。10時間以上100時間未満なので1人1訓練の限度額は30万円、賃金助成は12時間×1,000円=1万2,000円でどの行も同じです。
| 受講料(1人あたり・仮) | 受講料×75% | 経費助成(限度額30万円) | 受講料のうち会社が持つ額 |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 7万5,000円 | 7万5,000円 | 2万5,000円 |
| 20万円 | 15万円 | 15万円 | 5万円 |
| 30万円 | 22万5,000円 | 22万5,000円 | 7万5,000円 |
| 40万円 | 30万円 | 30万円 | 10万円 |
| 48万円(20時間) | 36万円 | 30万円で頭打ち | 18万円 |
| 60万円 | 45万円 | 30万円で頭打ち | 30万円 |
受講料が1人40万円を超えたあたりから「75%」は実質の率ではなくなり、限度額で計算したほうが見積に近づきます。消費税の扱いと賃金要件による上乗せはこの計算に入れていません。受講料そのものの相場は、生成AI研修の費用相場と安い研修で損しない選び方で比べています。
申請から受給までの5段階
申請は「研修を受けてから書類を出す」仕事ではなく、「開始日から逆算して計画届を出し、終わってから2か月以内に支給申請する」仕事です。担当は総務・人事の責任者(職業能力開発推進者に選任した課長など)と承認する社長の2人で足ります。
| 段階 | 担当 | 入力(手元に要るもの) | 出力 | 判断の有無 | 期限 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 訓練計画をつくる | 総務・人事責任者 | 研修会社の受講案内・カリキュラム・受講料体系、対象者の雇用契約書 | コースの仮決め・対象労働者一覧の下書き | あり(コース・対象者・方式) | 計画届の前(開始7か月前が目安) |
| 2 計画届を出す(6か月前〜1か月前) | 総務・人事責任者→社長承認 | 職業訓練実施計画届(様式第1-1号)、事業展開等実施計画(様式第1-3号)、事前確認書、契約書または申込書の写し | 労働局への提出控え | あり(提出日・契約時期) | 開始6か月前〜1か月前 |
| 3 研修を実施する | 受講者・研修会社・総務 | 届け出たカリキュラム、出勤簿・タイムカード、賃金台帳 | OFF-JT実施状況報告書の材料(訓練日ごとの実施時間・出席) | なし(変更があれば変更届) | 届け出た実施期間 |
| 4 支給申請する(終了翌日から2か月以内) | 総務・人事責任者(社労士に委任可) | 支給申請書、経費助成の内訳、領収書、修了証、訓練実施者の承諾書、受講料等の価格設定に関する疎明書 | 支給申請書一式 | あり(賃金助成を申請するか) | 終了翌日から2か月以内 |
| 5 審査・支給 | 労働局 | 申請書一式 | 支給決定・振込 | なし(照会対応のみ) | 期限の定めなし |

段階1: 訓練計画を策定する
研修会社の受講案内を見ながら、対象者・実訓練時間数・実施方式・実施日を固めます。決める判断は3つで、どのコースで出すか、受講者に非正規雇用労働者を含めるか(人材育成訓練は率が変わる)、同時双方向型かeラーニングか(賃金助成の有無と限度額が変わる)です。計画届の提出日までに職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定・周知が要るので、まだなら最初に片付けます。
段階2: 計画届を労働局へ届け出る(研修開始の6か月前から1か月前まで)
職業訓練実施計画届は、訓練開始日から起算して6か月前から1か月前までの間に、事業所の所在地を管轄する労働局へ出します。月末や31日が絡むとずれるので、パンフレットの例をそのまま置きます。
| 訓練開始日 | 提出期間の初日 | 提出期間の末日 |
|---|---|---|
| 7月1日 | 1月1日 | 6月1日 |
| 7月15日 | 1月15日 | 6月15日 |
| 7月30日 | 1月30日 | 6月30日 |
| 7月31日 | 1月31日 | 6月30日 |
| 9月30日 | 3月30日 | 8月30日 |
| 3月29日 | 9月29日 | 2月28日(うるう年は2月29日) |
| 3月30日 | 9月30日 | 2月28日(うるう年は2月29日) |
| 3月31日 | 9月30日 | 2月28日(うるう年は2月29日) |
事業展開等リスキリング支援コースではこれに事業展開等実施計画(様式第1-3号)と事前確認書(様式第11号)が加わり、事業外訓練なら研修会社との契約書または受講案内・申込書の写しも添えます。人事・人材育成計画に基づく③の訓練で出す中小企業は、認定経営革新等支援機関の確認を先に受けます。
段階3: 研修を実施し、記録を残す
届け出たカリキュラムどおりに実施し、訓練日ごとの実施時間と出席を残します。賃金助成を申請するなら、受講日の属する賃金対象期間の出勤簿またはタイムカードと賃金台帳が要ります。労働局の職員が事前連絡なく実施場所を訪れることがあり、協力しないと不支給です。日時や内容を変えるときは期限までに変更届を出し、出さずに実施した部分は対象になりません。
段階4: 支給申請書を提出する(研修終了の翌日から2か月以内)
支給申請は訓練終了日(計画届に書いた訓練の実施期間の最終日)の翌日から2か月以内が厳守です。9月30日に終わる研修なら11月30日が期限です(パンフレットの図の例)。添付するのは支給申請書、経費助成の内訳、領収書等、OFF-JT実施状況報告書(eラーニングなら実施結果報告書とLMS情報の写し・修了証)、受講者の雇用契約書の写し、受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)、訓練実施者の承諾書などです。経費は支給申請日までに事業主が全額負担していることが前提で、研修会社からの返金や協賛金を受けていると全額負担にならず対象外になります。
段階5: 審査・支給決定——いつ受け取れるのか
いつ振り込まれるかは明示されていません。パンフレットは「確認項目が多いため他の助成金よりも支給可否の決定までに時間がかかる」と書き、予算の範囲内で支給されるとも添えています。受講料は先に全額払うので、戻るまでの資金は会社が持つ前提で組みます。デジタル化・AI導入補助金など同一の経費を対象にする他の制度と重なると、併給調整でどちらか一方しか支給されない場合があります。
人に残る判断は4つ
社労士や研修会社に任せられない判断は4つです。1つ目はコースの選択で、DX化の訓練として説明する責任は申請事業主にあります。2つ目は事業展開等実施計画に書く「訓練で得た技能をどの業務に使うか」で、経営の方針そのものです。3つ目は契約・申込の時期で、計画届との順番を間違えると取り返しがつきません。4つ目は非正規雇用労働者を含めるかと賃金要件(5%)を追うかで、人件費と就業規則に関わる経営判断です。
申請で不支給にならないための4つの注意点
不支給の原因は、書類の書き間違いより「順番」と「中身の線引き」にあります。令和8年8月3日の改正で動いた線を含め、4つに絞ります。
注意点1: 計画届より先に研修会社と契約・申込をしない
計画届を出さずに実施した研修に助成金は出ません。これに加えて令和8年8月3日版では、研修会社との契約締結または申込が令和8年8月2日以前なら令和8年5月14日改正の支給要領を適用するという経過措置が置かれ、労働局は契約書・申込書の日付を見ています。契約や申込の日付が計画届の前後どちらに落ちるかで適用される要領が変わる以上、「研修日を押さえてから申請を考える」順番は危険です。研修開始日を決めたら、6か月前から1か月前の提出期間に計画届を出し、契約・申込の日付をその流れに合わせます。
注意点2: ChatGPTの操作研修は対象になるのか——専門的な知識・技能として組む
画面操作の習得だけなら対象外になり得ます。パンフレットは「初歩的な操作を行う内容のみの訓練」「単に既存のアプリやシステムを購入してその操作方法を習得する場合」「コンサルタントによる指導」を対象外と明記し、対象とならないOFF-JTの表には「コンサルタントによる経営改善の指導」「自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明」が並びます。令和8年8月3日以降の計画では、DX化に関する訓練でも職務に直接関連しない内容や職業人共通の内容は対象外です。生成AI研修を通すには、「営業部門が商談資料を組み立てる判断に生成AIを使う」「経理が証憑の照合に使う」のように、業務上の判断と結びついた専門的な訓練としてカリキュラムを組みます。操作説明が一部に混ざっている場合、その時間は助成対象から除かれ、除いた後で10時間以上が要ります。
注意点3: eラーニングは経費助成のみ・限度額15万円・1年度1回
オンデマンドのeラーニング・通信制・定額制サービス・育児休業中訓練は経費助成だけで、賃金助成はありません。講師がリアルタイムで教える同時双方向型の通信訓練は通学制と同じ扱いなので、オンラインで受けるなら「録画の視聴か、ライブか」で助成の形が変わります。事業展開等リスキリング支援コース(中小企業)で並べると次のとおりです。
| 実施方式 | 経費助成率 | 賃金助成 | 1人あたり限度額 | 受講回数の上限 |
|---|---|---|---|---|
| 通学制・同時双方向型 | 75% | 1,000円/時間(1,200時間まで) | 30万円/40万円/50万円 | 1労働者1年度3回 |
| eラーニング・通信制 | 75% | なし | 15万円 | eラーニングは1年度1回 |
| 定額制サービス | 75% | なし | 1人1月2万円 | 両コース合わせて1年度3回 |
eラーニングの要件は標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上で、LMSで進捗管理ができることと、支給申請時に修了証とLMS情報の写しを出すことが要ります。eラーニングの1年度1回の制限は、令和8年8月3日以降に提出する計画届から始まりました。
注意点4: 助成金対応価格と承諾書——研修会社側の要件
助成金の有無だけで受講料に差をつけている場合、その差額部分は算定経費にならない場合があります。「助成金を使うなら30万円、使わないなら10万円」のような価格設定が典型で、見積は通常価格と同じかを確かめます。もう1つ、訓練実施者(研修会社)が不正受給に関与した場合の名称公表と連帯債務を承諾していない訓練は支給申請できず、訓練実施者の承諾書は必ず出す書類です。承諾書を出せない研修会社とは、助成金を前提にした契約が成立しません。
AI研修の助成金申請をスムーズに進めるコツ
手が止まるのは、書類の数より「誰に何を頼めばよいか」が決まっていないときです。社労士・研修会社・労働局の3者に頼む範囲を分けます。
社会保険労務士に頼む範囲を決める
計画届と支給申請書の作成・提出は社労士に代理を頼めます(代理人の場合は委任状の原本が要ります)。頼む価値があるのは、コースの当てはめの最終確認、事業展開等実施計画の文章化、賃金台帳・出勤簿など賃金助成の裏付けの整え方です。費用は社労士ごとに違うので見積を取り、コースの選択と「訓練で得た技能をどの業務に使うか」は自社で決めてから渡します。
研修会社に求める4つの書類
計画届と支給申請で研修会社から受け取る書類は、①訓練の実施目的・実施日時・訓練日ごとの実施内容・実施場所・実訓練時間数・受講料(料金体系)が分かるカリキュラムや受講案内、②教育訓練機関の名称・所在地・連絡先・契約内容・契約期間が分かる契約書または受講案内と申込書、③支給申請時の修了証(eラーニングならLMS情報の写しも)、④訓練実施者の承諾書の4つです。「助成金に対応していますか」と聞くより、この4つを出せるかを聞くほうが早く、曖昧な会社は候補から外せます。受講料とカリキュラムを先に固めてから計画届に入りたい場合は、生成AI研修の内容と料金(基礎研修パック33万円・実践研修パック55万円・研修×定着プログラム110万円〜、いずれも税込)を確認しておくと、様式に書く時間数と金額が揃います。
管轄の労働局に事前相談する
コースの当てはめ・カリキュラムの線引き・計画届の書き方は、管轄の労働局(都道府県によってはハローワーク)に提出前に相談できます。持っていくのは研修会社のカリキュラムと受講案内、対象者の雇用契約書、事業展開等実施計画の下書きで、「この研修のどの部分が操作説明と見なされるか」を聞くと、実訓練時間数の数え直しが提出前に済みます。パンフレットの版(令和8年8月3日版はPL080803)と提出日の関係も一緒に確かめます。
自社だけで申請を進めると、どこで止まるのか?
止まるのは書類ではなく、研修の中身の説明です。「DX化に関連する専門的な訓練か」「どこまでが操作説明か」は、研修の設計を分かっている人にしか答えられません。汎用カリキュラムをそのまま載せると、画面説明の時間が実訓練時間数から削られ、10時間を割ることがあります。
止まる所1: 研修内容がDX化の訓練だと説明できない
「生成AIを学ぶ」では②DX化の要件に乗りません。どの部署のどの業務で、どの判断に生成AIを使えるようになるかを、事業展開等実施計画に書ける言葉で持っている必要があります。説明が立たないときの受け皿は人材育成支援コースの45%で、率の差は受講料20万円なら6万円です。この差を取りにいくか45%で早く出すかは、研修の設計を業務に寄せられるかで決まります。
止まる所2: 顧問・コンサルの助言と研修が1つの契約に混ざる
コンサルタントによる経営改善の指導は対象外、実訓練時間数とカリキュラムが分かる研修は対象、という線があります。顧問契約の中で社員に教える時間は指導として扱われる可能性が高く、助成金の対象にするなら研修を切り出して別の契約と別のカリキュラムにします。AI顧問の月額の中で業務をAI化する支援と、助成金を使う研修は、同じ会社に頼む場合でも書類の上では分けておく判断です。
止まる所3: 計画届の提出期間と研修会社の空きが合わない
提出期間は研修開始の6か月前から1か月前までなので、研修会社の最短日程が3週間後だと出せず、半年以上先の日程も出せません。研修会社に日程を押さえてもらう前に、「計画届を出してから1か月以上あとの開始日」で候補を出してもらう順番にすると、ここで止まりません。研修後に使われなくなる問題は助成金とは別の話で、AIリスキリングで研修費をムダにしない中小企業の条件で扱っています。
ビフォーアフター:助成金の申請がここまで変わる
変わるのは手続きの速さではなく、計算の仕方と順番です。受講料20万円・12時間の研修で比べます。
率で考え、研修を頼んでから申請を考える
「最大75%」を自社の研修にそのまま当てはめ、受講料48万円なら36万円戻ると見込む。研修会社の最短日程で申し込み、計画届は後から社労士に頼む。カリキュラムは研修会社の汎用版で、操作説明と業務演習の時間が分かれていない。
限度額と時間数で計算し、計画届の提出期間から研修日を決める
受講料20万円・12時間なら経費助成15万円と賃金助成1万2,000円、会社が持つ5万円で稟議を組む。48万円の研修なら限度額30万円で頭打ちと分かり、18万円で組む。コースはDX化の訓練として説明できるかで決め、できなければ45%で出す。研修開始日は計画届の提出期間(6か月前から1か月前)から逆算し、契約・申込の日付をその後に置く。カリキュラムは業務上の判断に生成AIを使う専門的な訓練として組み、操作説明の時間を実訓練時間数から外して10時間以上を確保する。
違い:3つの数字が先に決まる
戻る額(限度額との比較)、提出日(6か月前〜1か月前)、実訓練時間数(10時間以上・操作説明を除く)の3つが研修会社と契約する前に決まっていることが、ビフォーとアフターの差です。
この記事のまとめ
- 最初に決めるのはコースではなく研修の説明。「どの業務のどの判断に生成AIを使えるようになるか」を1文で書けるなら事業展開等リスキリング支援コース(75%)、書けなければ人材育成支援コース(45%)で出す
- 稟議の数字は率ではなく限度額で組む。1人1訓練30万円(10時間以上100時間未満・同時双方向型か通学制)、eラーニングは15万円。受講料が1人40万円を超えたら75%は頭打ち
- 研修会社を選ぶ基準は「助成金対応」の文言ではなく、カリキュラム(実訓練時間数・受講料体系)・契約書・修了証・訓練実施者の承諾書の4つを出せるかと、助成金の有無で価格を変えていないか
- 測るのは3つ。計画届の提出日が開始の6か月前から1か月前に入っているか、操作説明を除いた実訓練時間数が10時間以上か、支給申請を終了翌日から2か月以内に出したか。担当は職業能力開発推進者として選任した総務・人事の責任者が月次で見る
- 令和8年度末までの時限措置とされている75%を使うなら、研修日より先に計画届の提出期間を暦に置く。数値は令和8年8月3日版で、年度途中の変更は厚生労働省のページで確かめる
公開日:2026年4月
読んで終わりにしないために
「自社の場合は、どうすれば?」
その答えを、最大45分で持ち帰る。
記事で分かるのは、一般論まで。AI導入を専門に見ている担当が、貴社の業務に当てはめて“次の一手”だけを一緒に整理します。
この相談で持ち帰れるもの
- 01
自社業務に当てはめたAI活用マップ
- 02
投資対効果(ROI)のシミュレーション
- 03
いまの悩み・疑問への、その場の個別回答


